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プロローグ
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彼が病室のドアを開けると、寝台の上の彼女は横になったままゆっくりとこちらへ向き直った。
浅黒い彼とは真逆の、色素の薄い肌に髪に、日光が降り注いでいる。
白い壁。白いシーツ。彼女の頭に巻かれた白い包帯。
馬車に轢かれそうになった子供を助けるために怪我をした彼女。
普段から教会で他者のために身を粉にして活動する彼女だ、目の前で危険な目にあおうとしている幼い子供を助けずにはいられなかったのだろう。
困っている人がいれば手を貸し、見返りを求めることをしない。その精神と行いは素晴らしいものではあるが、彼女のそれは度が過ぎていると思う。特に今回は。
こういう人間を世間は聖人と呼ぶのかもしれないが、身近な人間──行き過ぎた献身ゆえに彼女には友人と呼べる存在がいなかった──である彼としては、ただただ心配させられるこっちの身にもなれと言いたいくらいだ。
しかし、彼が実際にそれを口に出すことはなかった。
浅黒い彼とは真逆の、色素の薄い肌に髪に、日光が降り注いでいる。
白い壁。白いシーツ。彼女の頭に巻かれた白い包帯。
馬車に轢かれそうになった子供を助けるために怪我をした彼女。
普段から教会で他者のために身を粉にして活動する彼女だ、目の前で危険な目にあおうとしている幼い子供を助けずにはいられなかったのだろう。
困っている人がいれば手を貸し、見返りを求めることをしない。その精神と行いは素晴らしいものではあるが、彼女のそれは度が過ぎていると思う。特に今回は。
こういう人間を世間は聖人と呼ぶのかもしれないが、身近な人間──行き過ぎた献身ゆえに彼女には友人と呼べる存在がいなかった──である彼としては、ただただ心配させられるこっちの身にもなれと言いたいくらいだ。
しかし、彼が実際にそれを口に出すことはなかった。
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