ライターズワールドオンライン~非戦闘ジョブ「アマ小説家」で最弱スキル「ゴミ拾い」の俺が崩壊世界でなりあがる~

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1章

7話:なんて素敵なE世界転移

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「スサノオ先生って固有スキルがスペクタクル鑑定なんですよね? 鑑定スキルなんてすごいです! 超カッコよくて強そう!  それにめちゃくちゃ作家っぽいですよね! スサノオ先生が小説を書くのに困ったときは言ってくださいね! 俺スサノオ先生の手垢食べます! ドクターフィッシュ的な感じです!」

「すいませんスサノオ先生、ヤクルさんはゴミ拾いリサイクルの固有スキル保持者で、ゴミを収集する癖があって、特に作家のゴミをなんでも欲しがるんです……駄目ですよヤクルさん」

 のゐるがヤクルの発言に警鐘を鳴らす。とはいえベタ褒めに続き、手垢発言もスサノオに影響しなかった。

「うるさいぞこの男、黙らせろ。僕はこの異常な世界を作り変えたいと思って考えているんだ。覚えておけ、この世界をよりよく作り直すなら手段は選んではいられない・・・・・・・・・・・・んだ。話したくないからどこかに言ってくれ。特にこの男みたいな徳もなければなんの信条もないただの馬鹿とはな」

「いやいやスサノオ先生、俺は馬鹿ですけど話す価値くらいあると思いますよ。えーと……そのー、なんか殺し合いはよくない・・・・・・・・・って思ってます……えーとはい。なんかそういうあれです、あとはみんな手を取り合って笑顔でいれたらいいですよねー。なんて、えっと、はいー」

「フン、ではそのためにはどうすればいい? 言ってみろ」

「えー……? なんかみんなでわーい! みたいになればみんなハッピーで、うーん……」

「ヤクルさんって、作品愛を熱弁したり人を励ましたりはできるのに、自分の意見は主張できないんですね……」

 と、のゐるは述べるが、ヤクルとスサノオは正反対の考え方をしていたため、お互いに言葉を交わしてもわかりあうことは難しかっただろう。

 この世界をよりよくする為には手段を選ばない一殺多生のスサノオと、なるべく手を取り合うことを重んじたいヤクル。浮かべるその表情も対照的であった。



 ……水と油のふたりをよそに、あまりにもあっけなく世界が終わっていった。

 飛行船のそとに眩しいほどの光が広がって、ひとも獣人も鳥人も魚人も、みな一様に丸窓から滅亡していくさまを見下ろしていた。
『~♪』

 ざわつく乗客たちを割って鼻歌交じりにやってきたのはペストくちばしマスクで表情を隠す大柄な男だ。

『はい、世界は滅亡しました・・・・・・・・・。あっけないものですね。ではみなさんにはこれからパラシュート落下で爆発後の地上に降りて貰い、新しくて合理的ないい世界で、自由な暮らしをお楽しみいただきます。貴方たち小説家のみなさんが、新しい物語をこの世界に紡ぎだしてくれることを願っております』

 彼は自ら乗客に囲まれたころ、ようやく鼻歌をやめ、話しはじめていた。

『名付けていい世界転移! どこか親しみのある響きでしょう? どうぞ胸躍らせながら、新しい世界への第一歩を踏み出してくださいませ』

 乗客はみな世界転移を思い浮かべたが、わざわざ口に出すまでもないとそれぞれ心に留めた。

『……あ、飛行船に残っても構いませんが、飛行船はあと数分で大爆発しますので、残っていたら死んでしまいますからね』

 男は宣伝口調でそう述べるが、誰もが更なる説明を求めた。

 男に並ぶほど大柄な獣人の男が、詰め寄って正論を放つ。

「ちょちょちょ、もう少し細かく教えてくれよ。俺は獣人だけど都会育ちなんだよ。こんなところでいきなりサバイバルしろって放られても生活できねぇぞ……道理に叶わねぇって」

『これはこれはナナジマ先生。大丈夫です、気の持ちようですよ。私が話せるのはそれだけですね。特に貴方だけを贔屓ひいきする必要もありませんので』

 その返しに、ナナジマ先生と呼ばれた栗毛の獣人はしゅんと耳を畳んでしまった。

 風貌こそオオカミ男であり強そうなこの男だが、案外打たれ弱いようだった。

 不満を漏らすのは彼だけではない。双子の猫耳少女が割って入った。

「僕らにどうやったら生きていけるか教えてよ変なマスクさん……そもそもパラシュート降下なんてしたことないし……」

 そう話すのは、姉の和久井ヒナタだ。

「そうだよ、パラシュートの使い方教えてよ。あたし使い方わかんないんだけど。このまま落ちたら死んじゃうよ。そんなんで全滅しちゃったらマスクさんにとっても喜ばしくないんじゃないの? もっと合理的にいこうよ」

 同意してそう話すのは、妹のヒカゲである。男は一切ひるまず言葉を返した。

『これはこれは和久井姉妹のお二方。先生方もご心配なさらず。お二人もナナジマ先生も、決して高いステータスとはいえないですが、ここにいるのはみな作家の先生方ですから。みな似たり寄ったりのステータスです。つまり先生お二人が落ちてそのままお亡くなりになるのであれば、みなさんお亡くなりになるのです。大丈夫ですよ、我々はきちんと公平になるように考えました・・・・・・・・・・・・・ので』

 作家たちのステータスはそれほど高くはない。体力、攻撃力、防御力、素早さ、魔力……それぞれが二桁程度の平凡な数値でしかない。

 ペストマスクの男は知能ステータスの高い者を数名散見していたが、ナナジマがいうように、生活サバイバルをするに十分な能力を持ち合わせる者は皆無だ。男の言葉を聞いたコンビ小説家の和久井姉妹もまた、ナナジマと同じようにしゅんと猫耳を畳んでしまった。

 ざわつく取り巻きたちを割って、今度はスサノオが男に意見した。

「訳がわからないから説明してほしいんだが」

『おや、スサノオ先生、なにやら不満そうですね』

「不満だな。僕らは新世界で生きることを強いているが、そもそもどうしてそんなことになっているか、聞かされていないんだから」

『新世界で生きることは素晴らしいことです。そんな気持ちを覚える方に私は初めて出会いましたよ。周りをご覧ください! どうです? みなさん胸躍っていらっしゃいますよ!』



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