愛及屋君

姫柊 夕海

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一話

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永々ななってばしつこい!いつも私のことに口出してきて。双子なんだからお姉ちゃんぶらなくてもいいでしょ!」
「あっ、待って愛々めめ!」
永々の呼び止める声を無視して私は廊下を駆け抜けた。
双子の姉永々は私のことを溺愛している。自惚れなんかではないし、そんな姉のことが私も大好きだ。それこそ小学生まではずっと永々の後ろをついてまわっていた。しかし中学に上がり、思春期に入ると、家族には話しにくいことも増え自然と友達と一緒にいることのほうが多くなった。それでも今までのように接してくる永々の過保護が鬱陶しく感じるようになってきてつい反発してしまうのだ。さっきの喧嘩だってなにに怒ってたのかすでに核の部分は見失っているしきっと永々の言っていることが正しかった。
やっぱり戻って謝るべきか悶々とするうち、いつの間にか私は廊下の端に来ていた。廊下の突き当たりの右にある少し開けたスペースに使わなくなった机や椅子が積み上げられている。一年以上過ごしてきた校舎とはいえ立ち寄る意思がなければ知らないままの場所もある。ここもその一つだ。あまり光が通らず薄暗い雰囲気で埃っぽいため誰も立ち寄らないだろう。しかし今の私にはこの静けさがとても心地良い。昼休みが終わるまでまだ20分もあるし、と座ろうと思い一つ椅子をおろすとその後ろに扉があるのを見つけた。酷く錆びついていて、ぶら下がっている錠前もなぜか鍵が外れていて意味を成していない。好奇心に抗えず私はそっとドアノブを捻った。ぎぃと耳障りな音を立てて扉は案外あっさりと開いた。少し冷たい風がスカートを揺らす。扉の先は外だった。扉の先の左手に螺旋階段があるのが見え、登れるか確かめようと一歩踏み出そうとしたところで突風に身体が押し戻された。隣の棟との間に位置するのだから風が強くて当然だ。封鎖された痕跡があるのもこれが原因だろう。乱れたスカートを直してもう一度階段を見やる。が、さすがにもう踏み出す勇気は出ない。私はそっと扉を閉め引き返した。
帰り道、永々に「昼はごめん…。」と謝ると永々の左手が私の右手をぎゅっと握った。「愛々が謝ることなんて一つもなかったよ。こうやって今も一緒に帰ってくれるのに離れていっちゃうって杞憂してる私すっごく姉バカかも。」そう笑う永々の踵を蹴って私は耳にこもった熱を振り払うように走り出した。
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