イケメン執事に呼び止められた結果、美少年のお世話係となりました。

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マリアスイッチ

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翌日から、早寝早起きの坊っちゃまに合わせたアルバイト生活が始まった。

結局、アルバートさんが考えた台本を全部言い終わる前に坊っちゃまが寝てしまったので、言えてない台詞は後々使うとして。目下の課題は表情キープだ。何故ならば…。

「ねーマリア!これ読んで!」

絵本を持ってきた坊っちゃまは、当たり前のように私の膝に座り、ニコニコの笑顔で(かっ可愛いっ!)見上げてくる。つまりは近いのだ。
生まれつき目が悪いといってもぼんやりと輪郭と色の区別はつくらしく、この可愛いさに思わず破顔しようもんならバレてしまう可能性もある。
そうならない為にも、きゅっと気を引きしめマリアスイッチをONにする。

「坊っちゃま、お勉強の先生がいらっしゃる時間までですよ。ですので、こちらの一冊だけです」

3、4冊抱えていた坊っちゃまの手から一冊だけ受け取る。

「えぇ~…。お勉強、やだな…。先生がいる時は、マリア、いっしょにいてくれないもん」

いじけたような顔も大変お可愛らしい坊っちゃまだが、ここで絆されてはマリアの名が廃る。

「お勉強が終わりましたら…今日は天気もいいですし、お庭でお昼にしましょう?坊っちゃまの大好きなイチゴのサンドイッチもバスケットに入れて…」

すると、坊っちゃまの顔がパアッと輝く。

「ジャムのも忘れちゃだめだよっ?飲み物はミルクがいい!」

「かしこまりました。お野菜とハムのサンドイッチも食べましょうね?マリアもご一緒しますから」

コクコクと何度も頷く坊っちゃまの髪を優しく整えてから絵本を読み聞かせる。マリアはあまり抑揚をつけず、子守唄のようにゆっくりと読む。
頭に叩き込んだ資料を思い出しながら、ゆっくりと丁寧に絵本を読み上げていった。


▪▪▪


キッチンに坊っちゃまの希望を伝えてサンドイッチ入りバスケットを準備してもらってる間、束の間の休みとなった。

「ふぅ~…」

従業員控え室となっている1階奥の部屋。更に奥まった一角が私の休憩場所だ。誤って坊っちゃまが入ってきてもすぐには見えないし、隠れることも出来る。
ソファに身を沈め、体から力を抜いた。マリアスイッチは気力もいるので、ずっとONにしておくと、クタクタになるのだ。

(しっかし、私って女優だったんだなぁ。1日で別人になりきれるなんて…)

自分の知られざる才能を見つけ悦に入っているとパコンと軽い衝撃が、ソファのひじ掛けに置いていた頭上に響いた。

「気を抜きすぎだ。マリアはそんな間抜けな顔はしないぞ」

紙の束を丸めて持っているアルバートさんと目が合った。

「あ、アルバートさん…。えっと、その手に持っている紙の束はもしや…」

「もちろん、追加の資料だ。マリアの追加情報に加え、坊っちゃまの好みの詳細、今後行われるダードヴィッフィリア家の行事などが書かれている。マリアならば知っていて当たり前のことだからな」

(おおぅふ…。まだ覚えること一杯なのね~)

ヨロヨロと起き上がり紙の束を受け取ると、ポンと頭に手を置かれた。
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