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レイヴン
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真っ白な世界に幼い次郎が立っている。そして手を繋いでいる二人の大人。
「パパ、ママ」
次郎が言うと二人は手を離してしまい、歩き出した。
「待って!」
次郎は懸命に追いかけたが二人との距離は離れていくばかり。寂しさで目尻が熱くなる。
手を伸ばすも二人に届くことはなかった。
「はっ」
汗を浮かべた次郎が目を覚ます。
どうやら夢を見ていたようだ。次郎は体を動かすと床で寝た代償として体が悲鳴をあげていた。
起き上がるとミレイユとラムはまだ眠っていた。しかし隣で寝ていたレイヴンの姿がない。
「レイヴン?」
レイヴンのことだから朝早くから街で何かしているのだろうと次郎は結論づけると洗顔するために事前に教えられていた森の湖に向かうことにした。
外に出るとまだ少し暗かった。次郎は軽く伸びをして、歩き出した。
ギルドから湖の距離はそこまで遠くなく、思いの外早く着いた。湖は広く、とても澄んでいて美しい。次郎はしゃがみこみ、水を手で掬った。掬った水で顔を洗い、タオルを持参していなかったため、しょうがなく袖で顔を拭いた。
「ん?他に人がいるのか?」
顔を拭ったあと、次郎の視界に人影が見えた。そしてこっちに向かって来ている。
次郎は嫌な予感がした。これはよくある美少女の水浴びを見てしまいビンタされるやつだと思ったからだ。人影が数メートルのところまで来てしまい、次郎が逃げようとしたときだった。
「次郎さん?」
どこかで聞いたことがある口調。次郎はすぐに人影の正体が分かった。レイヴンであると。
「なんだ、レイヴンか驚いたよ」
次郎が安堵して振り返るとあり得ない光景に目を見開いた。
昇った太陽の光がレイヴンを照らしていた。さらさらとした美しい蒼の髪の毛。
ラムほどではないがそこそこ大きい乳房。
引き締まったウェスト。まるでそれは
「お前、女だったのか!」
次郎は、レイヴンが女だったという事実と目の前の女性の肢体があるということに狼狽し、眼を手で覆いながら言った。
「だ、騙すつもりはなかったのです!」
レイヴンが赤面してしゃがみこんだ。
全く気づかなかった。たぶんミレイユとラムも気づいていない。それぐらいレイヴンの男装は上手かった。
「と、とりあえず服を着てくれ」
「着たいですけど、な、なら次郎さんそこを空けてくれませんか?」
レイヴンが震えた声で言う。
次郎は慌てて場所を離れた。すると、次郎は背後から大きな気配を感じた。
振り返るとレイヴンの背後から巨大な海蛇が顔を出していた。レイヴンは気づいていない様子だ。
「危ない!」
声を発する前に、体は動いていた。
海蛇に次郎の拳がめり込み、吹き飛ぶ。
アッパーが決まり、海蛇が天に昇る。そしてその姿が露になった。
鋼鉄のように固い鱗。海蛇ではなく、龍のような體。目の前にいる化け物を次郎たちは知っていた。
「レヴィアタン」
次郎が苦悶の声をあげる。
宙で一回転したレヴィアタンが浮いたまま攻撃を仕掛ける。
口から出た夥しい量の水を避け、次郎が神速でレヴィアタンの下腹部に接近した。
「次郎!上から来ます!」
陸に上がったレイヴンが叫ぶ。
次郎が横に移動すると真上から水流が流れた。
「次は左から来ます!」
次郎が首肯し、頭部に近づく。レイヴンの指示がなければレヴィアタンの尾で叩かれているところだった。
レイヴンはレヴィアタンの筋肉の微動で攻撃を予測したのだ。
頭部に接近した次郎はフルパワーで拳をぶつけた。頭部が粉々に砕け、體が海へと沈む。それは次郎たちの勝利を意味した。
陸へ着地するとアイテム欄に
『レヴィアタンの肉』
と表示され、次郎は苦笑いをした。
「お疲れ様です」
服を一枚羽織ったレイヴンが言った。
その格好と眼鏡をかけていないレイヴンは妙に艶かしかった。
「いや、そのレイヴンのおかげでもあるしな。助かったよ」
眼のやり場に困って眼をキョロキョロさせていた。
「こちらこそ。次郎がいなかったら危ないところでした」
レイヴンは微笑むと、着替えに戻ろうとした。そしてなにかを思い出して振り返ると
「今から着替えるので見ないでくださいね!」
少し顔を顔を赤らめてそう言った。
その瞬間レイヴンのもうひとつの能力、天然が発動され、足を滑らした。
「危ない!!」
嫌な予感がしていた次郎が手を伸ばす。しかし間に合わず体重を前に倒していた次郎も足を滑らしてしまい、レイヴンを押し倒してしまった。
「いってて。。。ん?なんだ?」
真っ暗な空間のなかで手の触感を感じる。
沈みこむような柔らかさに吸い付くような触り心地。次郎は一連の流れで自分の今の現状を悟った。恐る恐る顔をあげようとする。すると
「ひゃっ、あん」
と女性の喘ぎ声が聞こえた。
顔を上げた次郎の目の前には案の定、レイヴンがいた。涙眼を浮かべて。
「あ、あの、ごちそうさまです」
次郎がそう言うとビンタがとんできた。
強烈な一撃。
「次郎のエッチ!」
それからギルドに戻った次郎たちは事について話した。事前に土下座して頼み込んだからかレイヴンはあの事については話さなかった。
「ちょっとまって、今まで性別を偽ってきたってこと?」
眼を丸くしたミレイユが言った。
「でもレイヴンには胸がないっスよねってあれ!?レイヴンにご立派な胸が!?」
ラムが素っ頓狂な声をあげるとレイヴンは恥ずかしそうに胸を隠した。
レイヴン曰く今まではばれないようにさらしを巻いていたらしい。さぞ苦しかっただろうに。
「でもゲーム内でも男だったよね?」
「はい。なので現実の性別のままゲーム内での装備を身に付けているような感じです。」
レイヴンが身に付けている服を触りながら言った。男が着る服なのに妙に色気があった。
「にしても同じ学校に通ってたラムは気づかなかったのかよ?」
ソファーベッドで寛いでいたラムがやる気のない声で言う。
「知らなかったスよー、まさかクラスメートの真零さんだったなんて」
「真零さん?あーレイヴンの名前か。そういえば二人の本名を聞いてなかったな」
次郎が言うとラムがむくむくと起き上がりいつも通りの声に戻った。
「私はそのまんまッスよ。胡桃沢楽夢。楽しい夢と書いてラムっスよ。」
ラムなんて名前が存在したことに次郎は少し苦笑いをした。
「私は日賢真零と言います。真の零と書いてまれいと呼びます」
二人が自己紹介を終えるとミレイユと次郎も自己紹介をした。なぜか次郎の自己紹介だけ名前に特徴が無さすぎて新鮮味を感じられなかった。
「パパ、ママ」
次郎が言うと二人は手を離してしまい、歩き出した。
「待って!」
次郎は懸命に追いかけたが二人との距離は離れていくばかり。寂しさで目尻が熱くなる。
手を伸ばすも二人に届くことはなかった。
「はっ」
汗を浮かべた次郎が目を覚ます。
どうやら夢を見ていたようだ。次郎は体を動かすと床で寝た代償として体が悲鳴をあげていた。
起き上がるとミレイユとラムはまだ眠っていた。しかし隣で寝ていたレイヴンの姿がない。
「レイヴン?」
レイヴンのことだから朝早くから街で何かしているのだろうと次郎は結論づけると洗顔するために事前に教えられていた森の湖に向かうことにした。
外に出るとまだ少し暗かった。次郎は軽く伸びをして、歩き出した。
ギルドから湖の距離はそこまで遠くなく、思いの外早く着いた。湖は広く、とても澄んでいて美しい。次郎はしゃがみこみ、水を手で掬った。掬った水で顔を洗い、タオルを持参していなかったため、しょうがなく袖で顔を拭いた。
「ん?他に人がいるのか?」
顔を拭ったあと、次郎の視界に人影が見えた。そしてこっちに向かって来ている。
次郎は嫌な予感がした。これはよくある美少女の水浴びを見てしまいビンタされるやつだと思ったからだ。人影が数メートルのところまで来てしまい、次郎が逃げようとしたときだった。
「次郎さん?」
どこかで聞いたことがある口調。次郎はすぐに人影の正体が分かった。レイヴンであると。
「なんだ、レイヴンか驚いたよ」
次郎が安堵して振り返るとあり得ない光景に目を見開いた。
昇った太陽の光がレイヴンを照らしていた。さらさらとした美しい蒼の髪の毛。
ラムほどではないがそこそこ大きい乳房。
引き締まったウェスト。まるでそれは
「お前、女だったのか!」
次郎は、レイヴンが女だったという事実と目の前の女性の肢体があるということに狼狽し、眼を手で覆いながら言った。
「だ、騙すつもりはなかったのです!」
レイヴンが赤面してしゃがみこんだ。
全く気づかなかった。たぶんミレイユとラムも気づいていない。それぐらいレイヴンの男装は上手かった。
「と、とりあえず服を着てくれ」
「着たいですけど、な、なら次郎さんそこを空けてくれませんか?」
レイヴンが震えた声で言う。
次郎は慌てて場所を離れた。すると、次郎は背後から大きな気配を感じた。
振り返るとレイヴンの背後から巨大な海蛇が顔を出していた。レイヴンは気づいていない様子だ。
「危ない!」
声を発する前に、体は動いていた。
海蛇に次郎の拳がめり込み、吹き飛ぶ。
アッパーが決まり、海蛇が天に昇る。そしてその姿が露になった。
鋼鉄のように固い鱗。海蛇ではなく、龍のような體。目の前にいる化け物を次郎たちは知っていた。
「レヴィアタン」
次郎が苦悶の声をあげる。
宙で一回転したレヴィアタンが浮いたまま攻撃を仕掛ける。
口から出た夥しい量の水を避け、次郎が神速でレヴィアタンの下腹部に接近した。
「次郎!上から来ます!」
陸に上がったレイヴンが叫ぶ。
次郎が横に移動すると真上から水流が流れた。
「次は左から来ます!」
次郎が首肯し、頭部に近づく。レイヴンの指示がなければレヴィアタンの尾で叩かれているところだった。
レイヴンはレヴィアタンの筋肉の微動で攻撃を予測したのだ。
頭部に接近した次郎はフルパワーで拳をぶつけた。頭部が粉々に砕け、體が海へと沈む。それは次郎たちの勝利を意味した。
陸へ着地するとアイテム欄に
『レヴィアタンの肉』
と表示され、次郎は苦笑いをした。
「お疲れ様です」
服を一枚羽織ったレイヴンが言った。
その格好と眼鏡をかけていないレイヴンは妙に艶かしかった。
「いや、そのレイヴンのおかげでもあるしな。助かったよ」
眼のやり場に困って眼をキョロキョロさせていた。
「こちらこそ。次郎がいなかったら危ないところでした」
レイヴンは微笑むと、着替えに戻ろうとした。そしてなにかを思い出して振り返ると
「今から着替えるので見ないでくださいね!」
少し顔を顔を赤らめてそう言った。
その瞬間レイヴンのもうひとつの能力、天然が発動され、足を滑らした。
「危ない!!」
嫌な予感がしていた次郎が手を伸ばす。しかし間に合わず体重を前に倒していた次郎も足を滑らしてしまい、レイヴンを押し倒してしまった。
「いってて。。。ん?なんだ?」
真っ暗な空間のなかで手の触感を感じる。
沈みこむような柔らかさに吸い付くような触り心地。次郎は一連の流れで自分の今の現状を悟った。恐る恐る顔をあげようとする。すると
「ひゃっ、あん」
と女性の喘ぎ声が聞こえた。
顔を上げた次郎の目の前には案の定、レイヴンがいた。涙眼を浮かべて。
「あ、あの、ごちそうさまです」
次郎がそう言うとビンタがとんできた。
強烈な一撃。
「次郎のエッチ!」
それからギルドに戻った次郎たちは事について話した。事前に土下座して頼み込んだからかレイヴンはあの事については話さなかった。
「ちょっとまって、今まで性別を偽ってきたってこと?」
眼を丸くしたミレイユが言った。
「でもレイヴンには胸がないっスよねってあれ!?レイヴンにご立派な胸が!?」
ラムが素っ頓狂な声をあげるとレイヴンは恥ずかしそうに胸を隠した。
レイヴン曰く今まではばれないようにさらしを巻いていたらしい。さぞ苦しかっただろうに。
「でもゲーム内でも男だったよね?」
「はい。なので現実の性別のままゲーム内での装備を身に付けているような感じです。」
レイヴンが身に付けている服を触りながら言った。男が着る服なのに妙に色気があった。
「にしても同じ学校に通ってたラムは気づかなかったのかよ?」
ソファーベッドで寛いでいたラムがやる気のない声で言う。
「知らなかったスよー、まさかクラスメートの真零さんだったなんて」
「真零さん?あーレイヴンの名前か。そういえば二人の本名を聞いてなかったな」
次郎が言うとラムがむくむくと起き上がりいつも通りの声に戻った。
「私はそのまんまッスよ。胡桃沢楽夢。楽しい夢と書いてラムっスよ。」
ラムなんて名前が存在したことに次郎は少し苦笑いをした。
「私は日賢真零と言います。真の零と書いてまれいと呼びます」
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