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悪役令嬢、ほっぺにちゅーされる
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「途中まで送ろうか?」
「あかんあかん、もう暗なるし、はよお家帰り」
楽しい時間というものはあっという間に過ぎ去るもので、もうアキラくんは電車に乗らなくてはならない時間になってしまった。
「せやけど、ほんま楽しかった」
「ね! 次は神戸か京都、案内してね」
「ええで! ほんま楽しみ」
駅で電車を待ちながら、ベンチに並んで座って次の約束をする。
「連れて行きたいとこな、いっぱいあるんや」
「ほんと? 楽しみにしてる」
「おう」
アキラくんは本当に嬉しそうに笑って、それからソワソワと周りの様子を見た。
「? どうしたの?」
「んー、えっと、な」
アキラくんが逡巡している間に、電車がくる、というアナウンスが入った。
「……もう来たんか」
「うん、気をつけてね」
「ん、華」
「なに?」
返事をするかしないかという間に、アキラくんは私の頰に、そっと唇を押し当てた。
「……嫌やった?」
「? ほっぺ? 別に」
(ほっぺにちゅー、流行ってんのかな)
ちょっと前の、樹くんといい。
軽く首をかしげる。
アキラくんはほっとしたように笑って「ほな!」と電車に乗り込んでいった。
「じゃあ、お母さんによろしくね!」
「おう、華のばあちゃんにもな」
電車の窓から手を振るアキラくん。
私も一生懸命に手を振る。電車が見えなくなるまで。
すっかり電車が見えなくなって、私も帰ろう、と改札を出たときだった。
「設楽、華さん」
名前を呼ばれて、振り返る。
(? 誰だろう)
振り返った先には、以前、見たことのある顔ーー。
(ええっと、……あ)
名前を思い出し、その名前を呼んだ。
「……、久保、先生」
「こんにちは」
私はすこし後ずさる。
(なんでここに……?)
少なくとも、いいことではない、気がする。
「ああ、警戒されるのも無理はないと思います」
久保は少し悲しそうに言った。
「しかしその、偶然見つけて……少し相談に乗ってもらえたらと」
「相談?」
私は眉をひそめた。
(どういうこと?)
「実は、あの時被害にあった…….僕が酷い態度を取ってしまった生徒さんたちに、謝ってまわっているんです」
「え」
意外な展開に、私は驚きを隠せなかった。
「ですが、大友ひよりさんだけは……ぼくがやったことを思えば当然でしょうが、お会いすることもできず」
「あ、当たり前です、あんな酷いことを言っておいて」
「分かってます。承知の上です、それでも一度、謝らせてほしくて」
わたしは久保をジッと見つめた。
(まぁ、気持ちは……わからなくも、ない)
ひよりちゃんも、謝ってもらったら何かまたスッキリするかもだし。
「……、わかりました、少しだけなら」
暗くなるまで、まだ時間はありそうだだった。
「ありがとう。じゃあ、そうだ、そこの公園で」
指を指す先には、小さな公園。
(人目もありそうだし)
いいですよ、と公園へ向かう。
「あの四阿にしましょう、何か飲み物でも買ってきます」
公園の入り口、路上駐車された車の横についた時に、公園の隅にある四阿を指さされた。
「いえ、おかまないなく」
私がそう答えた時だった。
首に、強い、ずんっとした衝撃が走った。
(……え、なに?)
そのまま、意識が薄れていく。
視界の隅で、久保は笑っていた。
「あかんあかん、もう暗なるし、はよお家帰り」
楽しい時間というものはあっという間に過ぎ去るもので、もうアキラくんは電車に乗らなくてはならない時間になってしまった。
「せやけど、ほんま楽しかった」
「ね! 次は神戸か京都、案内してね」
「ええで! ほんま楽しみ」
駅で電車を待ちながら、ベンチに並んで座って次の約束をする。
「連れて行きたいとこな、いっぱいあるんや」
「ほんと? 楽しみにしてる」
「おう」
アキラくんは本当に嬉しそうに笑って、それからソワソワと周りの様子を見た。
「? どうしたの?」
「んー、えっと、な」
アキラくんが逡巡している間に、電車がくる、というアナウンスが入った。
「……もう来たんか」
「うん、気をつけてね」
「ん、華」
「なに?」
返事をするかしないかという間に、アキラくんは私の頰に、そっと唇を押し当てた。
「……嫌やった?」
「? ほっぺ? 別に」
(ほっぺにちゅー、流行ってんのかな)
ちょっと前の、樹くんといい。
軽く首をかしげる。
アキラくんはほっとしたように笑って「ほな!」と電車に乗り込んでいった。
「じゃあ、お母さんによろしくね!」
「おう、華のばあちゃんにもな」
電車の窓から手を振るアキラくん。
私も一生懸命に手を振る。電車が見えなくなるまで。
すっかり電車が見えなくなって、私も帰ろう、と改札を出たときだった。
「設楽、華さん」
名前を呼ばれて、振り返る。
(? 誰だろう)
振り返った先には、以前、見たことのある顔ーー。
(ええっと、……あ)
名前を思い出し、その名前を呼んだ。
「……、久保、先生」
「こんにちは」
私はすこし後ずさる。
(なんでここに……?)
少なくとも、いいことではない、気がする。
「ああ、警戒されるのも無理はないと思います」
久保は少し悲しそうに言った。
「しかしその、偶然見つけて……少し相談に乗ってもらえたらと」
「相談?」
私は眉をひそめた。
(どういうこと?)
「実は、あの時被害にあった…….僕が酷い態度を取ってしまった生徒さんたちに、謝ってまわっているんです」
「え」
意外な展開に、私は驚きを隠せなかった。
「ですが、大友ひよりさんだけは……ぼくがやったことを思えば当然でしょうが、お会いすることもできず」
「あ、当たり前です、あんな酷いことを言っておいて」
「分かってます。承知の上です、それでも一度、謝らせてほしくて」
わたしは久保をジッと見つめた。
(まぁ、気持ちは……わからなくも、ない)
ひよりちゃんも、謝ってもらったら何かまたスッキリするかもだし。
「……、わかりました、少しだけなら」
暗くなるまで、まだ時間はありそうだだった。
「ありがとう。じゃあ、そうだ、そこの公園で」
指を指す先には、小さな公園。
(人目もありそうだし)
いいですよ、と公園へ向かう。
「あの四阿にしましょう、何か飲み物でも買ってきます」
公園の入り口、路上駐車された車の横についた時に、公園の隅にある四阿を指さされた。
「いえ、おかまないなく」
私がそう答えた時だった。
首に、強い、ずんっとした衝撃が走った。
(……え、なに?)
そのまま、意識が薄れていく。
視界の隅で、久保は笑っていた。
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