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【高校編】分岐・相良仁
相談
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葉桜の緑が風に揺れる。
放課後、あまり人気のない学内の庭園(ゲームで華が断罪されてたとのとは、また違うところ)、ベンチから葉桜の濃い緑を見上げつつ、私と千晶ちゃんはぼそぼそと会話をしていた。
「え、それってさ。華ちゃん、相良さんのこと好きじゃん」
「そう、じゃないかもなんだけど」
「なんで? めちゃくちゃヤキモチ妬いてるじゃん」
「そうじゃなくて、私、ほんと押しに弱いから」
単に押されて動揺してるだけかもなんだよね、と小さく言った。自分の感情がよく分からない。仁はずっと友達だと思ってたんだし。
「でも、相良さんも前世から華ちゃんのこと好きだったんでしょ?」
「も、って何。も、って」
「華ちゃんも前世で、ちょっとときめいたことあったって」
「うーん、それはそうなんだけど、うーん」
私は何度も首をひねった。
(なんであの時、あんなに辛くなっちゃったんだろ)
付き合ってるわけじゃない。なんでもない。なんの関係でもない、はずだ。私と仁は。
(そりゃ、なんか事あるごとにアピールっぽい、ことはされてるけど)
思い出すと赤面してしまう。
そんな私を横目で見て、千晶ちゃんは笑った。
「まぁまぁまぁ、いいんじゃない? ゆっくり考えたら」
千晶ちゃんは私の頭をぽん、と撫でてくれた。
「ここまで待ってくれたんだから、焦んなくていいでしょ」
「……かな」
ちょっと言い淀む。前世合わせたら、どんだけ待たせてるんだろう。前世では、散々恋愛相談やら愚痴やら話しちゃってたし。
(私だったら嫌いになっちゃってるかも)
そんな風に思う。
(ほんとに、好きでいてくれてるんだ)
それは分かってる、てか。
思い出して、またもや赤面する。
(抱きしめられてしまった)
男のひと、だった。
や、当たり前なんだけど。うん。
ふと黙り込んで、千晶ちゃんと並んでまた葉桜を眺めていた。
「あ」
「なに?」
千晶ちゃんが思い出したように言う。
「イースターだね」
「あー」
復活祭。
「"ゲーム"でもやったね」
「最初の方のイベントだったよね」
私は頷きながら答えた。イースターの卵探しイベントのあと、ダンスパーティーまであるのだ。盛り込み感すごい。
本来は日曜日の行事だけど、この学校では翌月曜日にやる。
「来年はドタバタかなぁ」
私はハァ、と遠い目をして言った。
「ヒロインちゃん入学してくるもんなぁ」
「まぁね」
千晶ちゃんは苦笑いした。
「でも関わらないつもりなんでしょ?」
「当たり前だよ~」
私は大きく空を仰いだ。
「無難に生きていきたい……」
「でも相良さんとだったら無難には行けないよね」
「う」
たしかに。ボディーガード兼先生と恋愛って、……敦子さんなんて言うか。思わず思い浮かべるのは保護者の顔。
「てか華ちゃん、何しても無難には行けないんじゃ」
「え!? なんでっ」
「だってこのままだったら、樹くんのお嫁さんでしょ」
「樹くん?」
私は瞬きをした。
「樹くん、そのうちステキな恋愛するんじゃ」
「そーかなぁ~~」
千晶ちゃんは含みのある笑い方をする。
「実のところ、わたしは樹くんと華ちゃんがくっつけばいいと思ってるから」
「な、なにそれ」
時々言うよなぁ、千晶ちゃん。それ。
「お似合いだよ」
「そうは思えないけど」
「ドレス、プレゼントしてくれたんでしょ」
「うん」
イースターのパーティ用のドレス。一応ドレスコードとしては、セミアフタヌーンドレス準拠らしくて、どんなの買えばいいか分からなかったから、正直助かった。なんなのセミアフタヌーン。
「あの子はねぇ、身内にはほんっとに優しいの」
おばあちゃんズが決めた許婚の私にも、昔からほんとに優しい。
「あの子ね」
「? うん」
「ま、華ちゃんナカミはいい年だもんね」
「む、人のこと言えないでしょ」
「まーね」
ふふふ、と笑う千晶ちゃん。
「どんなドレス?」
「ええと、濃いめの水色っていうのかな、デザインは割とシンプルで大人っぽいかんじ」
「さすが樹くん、華ちゃんの好み分かってるね」
「あは、まぁね」
ゲームの華さんはフリフリリボンのドレス(似合ってたけど)なんか着てましたけどね。私は絶対ヤなんだよなぁ。
「千晶ちゃんはどんなの?」
「今から買いに行くの」
そして微笑んで、立ち上がる。ちょっとからかうように続けた。
「楽しみにしてるね、樹くんが選んでくれたドレス」
「あ、うん」
「また明日ね」
「ばいばい」
千晶ちゃんに手を振って、またほんの少しぼうっと葉桜の緑を眺めていると、ふと横に誰かが座ってきた。
「よう」
「仁」
ちょっとドキリとする。
(……?)
ものすごく無表情。というか、無表情を装ってるというか?
「どうしたの?」
「……なにも?」
仁ははぁ、とため息をついて、それからふと私の手首に触れた。
「……つけてくれてる」
「あ、うん。使いやすいよ。ありがと」
私は腕を上げて、時計を見せた。仁がくれた腕時計。
仁はその手をそのままとった。
「?」
不思議に思った瞬間には、手の甲にキスをされていた。
「じ、じん」
なにも言わず、その手を自分の頬に寄せる。
「俺、大人なのになぁ」
「し、知ってるけど」
抱きしめられた感覚を思い出す。大人の男のひとだ、って思った。肩幅とか、胸板とか、今、私の手に添えられた、この手も。
「どうして?」
「嫉妬とかすごい」
「どしたの、急に」
私はどぎまぎしてふい、と顔を背ける。
「なんでも」
仁は少し目を閉じた。そしてもう一度だけ、なんでもない、とそう小さく繰り返した。
放課後、あまり人気のない学内の庭園(ゲームで華が断罪されてたとのとは、また違うところ)、ベンチから葉桜の濃い緑を見上げつつ、私と千晶ちゃんはぼそぼそと会話をしていた。
「え、それってさ。華ちゃん、相良さんのこと好きじゃん」
「そう、じゃないかもなんだけど」
「なんで? めちゃくちゃヤキモチ妬いてるじゃん」
「そうじゃなくて、私、ほんと押しに弱いから」
単に押されて動揺してるだけかもなんだよね、と小さく言った。自分の感情がよく分からない。仁はずっと友達だと思ってたんだし。
「でも、相良さんも前世から華ちゃんのこと好きだったんでしょ?」
「も、って何。も、って」
「華ちゃんも前世で、ちょっとときめいたことあったって」
「うーん、それはそうなんだけど、うーん」
私は何度も首をひねった。
(なんであの時、あんなに辛くなっちゃったんだろ)
付き合ってるわけじゃない。なんでもない。なんの関係でもない、はずだ。私と仁は。
(そりゃ、なんか事あるごとにアピールっぽい、ことはされてるけど)
思い出すと赤面してしまう。
そんな私を横目で見て、千晶ちゃんは笑った。
「まぁまぁまぁ、いいんじゃない? ゆっくり考えたら」
千晶ちゃんは私の頭をぽん、と撫でてくれた。
「ここまで待ってくれたんだから、焦んなくていいでしょ」
「……かな」
ちょっと言い淀む。前世合わせたら、どんだけ待たせてるんだろう。前世では、散々恋愛相談やら愚痴やら話しちゃってたし。
(私だったら嫌いになっちゃってるかも)
そんな風に思う。
(ほんとに、好きでいてくれてるんだ)
それは分かってる、てか。
思い出して、またもや赤面する。
(抱きしめられてしまった)
男のひと、だった。
や、当たり前なんだけど。うん。
ふと黙り込んで、千晶ちゃんと並んでまた葉桜を眺めていた。
「あ」
「なに?」
千晶ちゃんが思い出したように言う。
「イースターだね」
「あー」
復活祭。
「"ゲーム"でもやったね」
「最初の方のイベントだったよね」
私は頷きながら答えた。イースターの卵探しイベントのあと、ダンスパーティーまであるのだ。盛り込み感すごい。
本来は日曜日の行事だけど、この学校では翌月曜日にやる。
「来年はドタバタかなぁ」
私はハァ、と遠い目をして言った。
「ヒロインちゃん入学してくるもんなぁ」
「まぁね」
千晶ちゃんは苦笑いした。
「でも関わらないつもりなんでしょ?」
「当たり前だよ~」
私は大きく空を仰いだ。
「無難に生きていきたい……」
「でも相良さんとだったら無難には行けないよね」
「う」
たしかに。ボディーガード兼先生と恋愛って、……敦子さんなんて言うか。思わず思い浮かべるのは保護者の顔。
「てか華ちゃん、何しても無難には行けないんじゃ」
「え!? なんでっ」
「だってこのままだったら、樹くんのお嫁さんでしょ」
「樹くん?」
私は瞬きをした。
「樹くん、そのうちステキな恋愛するんじゃ」
「そーかなぁ~~」
千晶ちゃんは含みのある笑い方をする。
「実のところ、わたしは樹くんと華ちゃんがくっつけばいいと思ってるから」
「な、なにそれ」
時々言うよなぁ、千晶ちゃん。それ。
「お似合いだよ」
「そうは思えないけど」
「ドレス、プレゼントしてくれたんでしょ」
「うん」
イースターのパーティ用のドレス。一応ドレスコードとしては、セミアフタヌーンドレス準拠らしくて、どんなの買えばいいか分からなかったから、正直助かった。なんなのセミアフタヌーン。
「あの子はねぇ、身内にはほんっとに優しいの」
おばあちゃんズが決めた許婚の私にも、昔からほんとに優しい。
「あの子ね」
「? うん」
「ま、華ちゃんナカミはいい年だもんね」
「む、人のこと言えないでしょ」
「まーね」
ふふふ、と笑う千晶ちゃん。
「どんなドレス?」
「ええと、濃いめの水色っていうのかな、デザインは割とシンプルで大人っぽいかんじ」
「さすが樹くん、華ちゃんの好み分かってるね」
「あは、まぁね」
ゲームの華さんはフリフリリボンのドレス(似合ってたけど)なんか着てましたけどね。私は絶対ヤなんだよなぁ。
「千晶ちゃんはどんなの?」
「今から買いに行くの」
そして微笑んで、立ち上がる。ちょっとからかうように続けた。
「楽しみにしてるね、樹くんが選んでくれたドレス」
「あ、うん」
「また明日ね」
「ばいばい」
千晶ちゃんに手を振って、またほんの少しぼうっと葉桜の緑を眺めていると、ふと横に誰かが座ってきた。
「よう」
「仁」
ちょっとドキリとする。
(……?)
ものすごく無表情。というか、無表情を装ってるというか?
「どうしたの?」
「……なにも?」
仁ははぁ、とため息をついて、それからふと私の手首に触れた。
「……つけてくれてる」
「あ、うん。使いやすいよ。ありがと」
私は腕を上げて、時計を見せた。仁がくれた腕時計。
仁はその手をそのままとった。
「?」
不思議に思った瞬間には、手の甲にキスをされていた。
「じ、じん」
なにも言わず、その手を自分の頬に寄せる。
「俺、大人なのになぁ」
「し、知ってるけど」
抱きしめられた感覚を思い出す。大人の男のひとだ、って思った。肩幅とか、胸板とか、今、私の手に添えられた、この手も。
「どうして?」
「嫉妬とかすごい」
「どしたの、急に」
私はどぎまぎしてふい、と顔を背ける。
「なんでも」
仁は少し目を閉じた。そしてもう一度だけ、なんでもない、とそう小さく繰り返した。
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