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【高校編】分岐・相良仁
卵はどこ?
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この学校には結構イベントがあって(まぁ乙女ゲームの舞台になるくらいだからイベントたくさんなきゃね)そのうちの一つが復活祭だ。
「何するのイースター」
「飯食って卵探す」
「適当だなぁ」
第二社会準備室、そこで私はドレス姿でボケーっと窓の外を眺めていた。
ドレス姿なのは、このイベントの謎の一つなんだけど、とにかくこの後ダンスパーティーまであるのだ。さすが乙女ゲー、いちいち着飾らせる。まぁドレスは無料レンタルあるので、お金かかんないんだけど。
(私も、最初はレンタルのつもりだったんだけど)
私は濃い水色のドレスの裾を、軽くつまんでみる。
(樹くんさすがだよ)
樹くんからのプレゼントのドレス。シンプルかつ、高校生にしては大人っぽいデザインでお気に入りだ。
(何かお礼しなきゃだよなー……)
なにがいいかなぁ。
「探さないの卵」
ふと、仁が書類を整理しながら言う。こっちを見もしない。
(……褒めてもらえるかなぁって)
ふう、私はこっそりため息をついた。
なんだか仁に見せたくて、わざわざイベント中に準備室来てみたんだけど、仁はチラッと見ただけで後は忙しそうに書類に向かっていた。
(男の人で褒めてくれたの、樹くんだけだなぁ)
女の子たちには「大人っぽい!」って好評だったんだけど、うーん。やっぱり私、残念悪役令嬢なんだろうな。似合ってないのかも。中身が中身だしなぁ。
アキラくん圭くんあたりは遭遇したらべた褒めしてもらえそうだけど、中等部とは校舎が違うし。
(いや別に、男子に褒めてもらいたい訳じゃなかったんだけど)
でもさ、なんとなく仁には褒めて欲しかった。
(なにガッカリしてんだろ私)
仁がいくら「好き」って言ってくれてるからって、いつも構ってもらえるわけじゃない。
(てか……私、わがままだな)
はっきりした答えも出てないくせに、仁に「綺麗だ」とか思ってもらいたかったなんて、うん、なんかわがままだし、嫌な女だ。
(そもそもこれ、他の人からの贈り物だし)
仁は知らないだろうけど、良くないよね、うん、良くない。
改めてそう考えて、ふう、と息をついて立ち上がった。
今日は切り替えて、イベント楽しもう。仁は仁で忙しそうだし。
「卵探してくるー。なんか貰えるらしいから」
このイベント、景品がなにかと豪華なのだ。学業に関係あるものばかりだけど、例えば万年筆だとか腕時計だとか。
(しかし狙うはカフェテリアの年間スイーツパスポート)
普通には売ってない。1年間、学内のカフェテリアでスイーツ食べ放題という最ッッッ高の商品である。
(これは必ずゲットしなくてはですよ)
気合いがむんと入る。
「おー」
仁はヒラヒラと(相変わらずこちらを見もせずに)手を振っていた。
(ふーんだ)
心の中で舌を出す。あそこまで露骨に「仕事邪魔すんな」って雰囲気になんなくてもさー……。
(まぁ忙しいよね)
私なんかの護衛もしなきゃだし、学校の仕事は学校の仕事であるし(今年も担任)今度肩でも揉んでやるかぁ、と思いながら廊下をうろついていた時だった。
「設楽さん」
「?」
振り向くと、よく知らない女の子たち。私は首を傾げた。
(だ、だれだっけ)
12クラスあるし、まだ入学したてだし、他のクラスの子は正直顔も名前も曖昧なのだ。
その上、この子たち仮装していた。仮面舞踏会みたいな、目だけの仮面。
私は首を傾げた。イースターって、そんなイベントだったっけ?
「あたしたち、鹿王院君と同じクラスなんだけど」
「あ、はい」
「鹿王院君が呼んでたから、伝えに」
「? ありがとうございます」
樹くんが呼んでた?
不思議に思いながら「ついてきて」という女の子たちの後に続く。
「ここ」
言われて入ったのは、教室棟の5階の隅っこにある、半分倉庫のように使われている空き教室。机が所狭しと並べられていた。
(こんなところに?)
「? あの、本当に」
樹くんが、と言ったときにはもう扉は閉められていた。
「え!? ちょっと」
扉の向こうからは、キャハハという声。
「いい気になってんじゃないわよ!」
「パーティ終わるまでここにいなさい!」
「こんなとこ誰も通らないから、今日中には見つけてもらえないかもね!」
遠ざかる声。
「え、待って!」
一応言うけれど、反応はない。
(つっかえ棒みたいなもの?)
教室の前後の扉で試してみたけれど、びくともしない。ご丁寧に、廊下側の窓も開かなくなっていた。
(……ま、いいか)
私は並べられていた机の上に座る。幸い運び込まれたばかりなのか、埃もほとんどなかった。
両手を腰の横について、のんびりと構える。怖くなんかない。だって、私にはーーそう思って笑ってしまう。
扉のすりガラス越しに人の影、すぐに開かれる扉。
「……なんだ、ヨユーそうだなお前」
「だって仁来てくれるって分かってたもの」
私がそう言うと、仁はほんの少し目を見開いて、それから扉を閉めた。
「?」
ゆっくりと歩いてくる。私のほんの少し手前で立ち止まって、ただじっと私を見下ろしてくる。
「仁?」
私は仁を見上げて、何も言えなくなった。
(なんでそんな切ない目をするの?)
仁の手が、私の髪に触れて、私は息を飲む。
心臓が、ドキリと大きく高鳴った気が、した。
「何するのイースター」
「飯食って卵探す」
「適当だなぁ」
第二社会準備室、そこで私はドレス姿でボケーっと窓の外を眺めていた。
ドレス姿なのは、このイベントの謎の一つなんだけど、とにかくこの後ダンスパーティーまであるのだ。さすが乙女ゲー、いちいち着飾らせる。まぁドレスは無料レンタルあるので、お金かかんないんだけど。
(私も、最初はレンタルのつもりだったんだけど)
私は濃い水色のドレスの裾を、軽くつまんでみる。
(樹くんさすがだよ)
樹くんからのプレゼントのドレス。シンプルかつ、高校生にしては大人っぽいデザインでお気に入りだ。
(何かお礼しなきゃだよなー……)
なにがいいかなぁ。
「探さないの卵」
ふと、仁が書類を整理しながら言う。こっちを見もしない。
(……褒めてもらえるかなぁって)
ふう、私はこっそりため息をついた。
なんだか仁に見せたくて、わざわざイベント中に準備室来てみたんだけど、仁はチラッと見ただけで後は忙しそうに書類に向かっていた。
(男の人で褒めてくれたの、樹くんだけだなぁ)
女の子たちには「大人っぽい!」って好評だったんだけど、うーん。やっぱり私、残念悪役令嬢なんだろうな。似合ってないのかも。中身が中身だしなぁ。
アキラくん圭くんあたりは遭遇したらべた褒めしてもらえそうだけど、中等部とは校舎が違うし。
(いや別に、男子に褒めてもらいたい訳じゃなかったんだけど)
でもさ、なんとなく仁には褒めて欲しかった。
(なにガッカリしてんだろ私)
仁がいくら「好き」って言ってくれてるからって、いつも構ってもらえるわけじゃない。
(てか……私、わがままだな)
はっきりした答えも出てないくせに、仁に「綺麗だ」とか思ってもらいたかったなんて、うん、なんかわがままだし、嫌な女だ。
(そもそもこれ、他の人からの贈り物だし)
仁は知らないだろうけど、良くないよね、うん、良くない。
改めてそう考えて、ふう、と息をついて立ち上がった。
今日は切り替えて、イベント楽しもう。仁は仁で忙しそうだし。
「卵探してくるー。なんか貰えるらしいから」
このイベント、景品がなにかと豪華なのだ。学業に関係あるものばかりだけど、例えば万年筆だとか腕時計だとか。
(しかし狙うはカフェテリアの年間スイーツパスポート)
普通には売ってない。1年間、学内のカフェテリアでスイーツ食べ放題という最ッッッ高の商品である。
(これは必ずゲットしなくてはですよ)
気合いがむんと入る。
「おー」
仁はヒラヒラと(相変わらずこちらを見もせずに)手を振っていた。
(ふーんだ)
心の中で舌を出す。あそこまで露骨に「仕事邪魔すんな」って雰囲気になんなくてもさー……。
(まぁ忙しいよね)
私なんかの護衛もしなきゃだし、学校の仕事は学校の仕事であるし(今年も担任)今度肩でも揉んでやるかぁ、と思いながら廊下をうろついていた時だった。
「設楽さん」
「?」
振り向くと、よく知らない女の子たち。私は首を傾げた。
(だ、だれだっけ)
12クラスあるし、まだ入学したてだし、他のクラスの子は正直顔も名前も曖昧なのだ。
その上、この子たち仮装していた。仮面舞踏会みたいな、目だけの仮面。
私は首を傾げた。イースターって、そんなイベントだったっけ?
「あたしたち、鹿王院君と同じクラスなんだけど」
「あ、はい」
「鹿王院君が呼んでたから、伝えに」
「? ありがとうございます」
樹くんが呼んでた?
不思議に思いながら「ついてきて」という女の子たちの後に続く。
「ここ」
言われて入ったのは、教室棟の5階の隅っこにある、半分倉庫のように使われている空き教室。机が所狭しと並べられていた。
(こんなところに?)
「? あの、本当に」
樹くんが、と言ったときにはもう扉は閉められていた。
「え!? ちょっと」
扉の向こうからは、キャハハという声。
「いい気になってんじゃないわよ!」
「パーティ終わるまでここにいなさい!」
「こんなとこ誰も通らないから、今日中には見つけてもらえないかもね!」
遠ざかる声。
「え、待って!」
一応言うけれど、反応はない。
(つっかえ棒みたいなもの?)
教室の前後の扉で試してみたけれど、びくともしない。ご丁寧に、廊下側の窓も開かなくなっていた。
(……ま、いいか)
私は並べられていた机の上に座る。幸い運び込まれたばかりなのか、埃もほとんどなかった。
両手を腰の横について、のんびりと構える。怖くなんかない。だって、私にはーーそう思って笑ってしまう。
扉のすりガラス越しに人の影、すぐに開かれる扉。
「……なんだ、ヨユーそうだなお前」
「だって仁来てくれるって分かってたもの」
私がそう言うと、仁はほんの少し目を見開いて、それから扉を閉めた。
「?」
ゆっくりと歩いてくる。私のほんの少し手前で立ち止まって、ただじっと私を見下ろしてくる。
「仁?」
私は仁を見上げて、何も言えなくなった。
(なんでそんな切ない目をするの?)
仁の手が、私の髪に触れて、私は息を飲む。
心臓が、ドキリと大きく高鳴った気が、した。
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