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【高校編】分岐・黒田健
【side健】パンケーキ
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設楽はめっちゃ食う。美味しそうに食べる。幸せそうに食べる。俺はそんな設楽を見てんのが好きだ。多分だけど、少し変態性がある、どっかに。
友達……根岸にぽろっと言ったことがある。昔。
「設楽がモノ食ってんの見てんの、好きなんだよな」
「あー、あるある。美味しそうに食べてるのとか、可愛いよな」
そう言われて、俺は頷いたけど、どっか違った。なんていうか、設楽が食ってるとこは「ぐっ」と来る。
そんな訳でパンケーキを食べてる設楽を(まぁ一応失礼にならない程度に……なってないよな?)見つめてる。設楽は俺の視線なんか慣れたもんで、生クリームたっぷりのパンケーキを幸せそうに、とても幸せそうに口に運ぶ。
「黒田くん」
「ん?」
「食べないの?」
そう聞いてくる設楽の視線は、半分以上残されてる俺のパンケーキ。なんだっけな、なんちゃらチーズがどうのこうのなクソ甘いやつ。
「……食う?」
「えへ、いいの?」
嬉しそうに設楽は言った。元々、設楽がコレか今設楽が食べてるやつと迷ったやつだったから、設楽にやんのは織り込み済み。
「いーよ。俺、もう胃が」
「甘すぎた?」
付き合わせてごめん、と少しシュンとする設楽の額にデコピン。
「いたっ」
「いいんだよ。俺も下心あってここ来てんの」
「し、下心っ!?」
少し赤くなる設楽に俺は言う。
「だって俺、設楽がなんか食ってんの、好きなんだよ」
「あは、そういうこと。前も言ってたねぇ」
へにょ、とか擬音がつきそうな笑顔。
「見てもしょーがないでしょーに」
「ほっといてくれ」
そんな設楽に、俺が勝手に惚れてるんだから。
食べ終わって店を出て、ぷらぷら海方面に歩きながら俺は口を開く。
「なぁ設楽」
「なーに?」
「答えてくれ。お前と桜澤青花、どんな関係だ」
ぴたり、と設楽は立ち止まる。俺を見上げる目は驚きで揺れている。
「えっと、その」
「カンだけど」
俺は設楽の手を握り直す。きつく。
「少し前、桜澤には『前世』があるだろう、って設楽は言ってたよな」
だから他人事に見えないんだ、って言う設楽が少し辛そうで、その時俺はあんまり突っ込めなかったけれど。
びくり、と設楽の肩が揺れた。……やっぱ、これ関係か。
そうじゃなきゃ、接点なんかねーだろう桜澤が設楽に執着する理由がない。
(なんで設楽は「前世があるだろう」なんて断言できた?)
設楽の態度を見てると「桜澤について何か知ってる」雰囲気があった。
(だとすれば、設楽と桜澤は「前世」でなんらかの繋がりがある、と見るほうが自然だ)
それが俺の結論で、設楽の態度を見る限り、それは当たってるっぽかった。
「……どっか座るか」
俺は遊歩道にあるベンチに設楽を誘導する。設楽は戸惑いながら、すとんと座った。
「で、桜澤とは前世で何があった」
聞いておきたかった。桜澤から、設楽を守るために。
設楽はしばらく俺を見つめた後、諦めたようにため息をついた。
「観念します」
「おう」
「……引くかも」
「ひかねーよ」
断言すると、設楽はぽつりと口を開いた。
「前、言ってたの、覚えてる? 私の『前世』は、この世界と別の世界だった、ってこと」
「おう」
海からの強い潮風で、設楽の髪が揺れる。設楽は少し髪をかき上げた。
「で、ね。その『前世の世界』からしたら『ここ』はゲームの世界、なの」
「……ゲーム?」
思わず問い返す。ゲーム?
「ほ、ほら引いた!? 引いたでしょ!?」
ぎゃー、って騒ぐ設楽の鼻を摘んで落ち着かせる。ぐう、って変な声を出して設楽は黙った。可愛いよな、なんて思う。
「引いてない。引いてないから続けろ」
「う、うん」
設楽は視線を少しウロウロした後、また話し出す。
「それでね、その『ゲーム』の筋書き的に、桜澤青花は『ヒロイン』で、私はそれを邪魔する『悪役令嬢』なんだ」
「悪役令嬢?」
俺は首を傾げた。なんだそりゃ。
「そ、そうなの。私、悪い人なの……」
「逆じゃなくてか?」
素で聞き返す。逆なら納得できる。設楽がヒロイン。
「ち、違うよ。私、ヒロインなんて器じゃないもの」
「んなコト言ったら桜澤こそヒロインやれねーだろーがよ」
俺は突っ込む。
「イヤだろ、鳩を惨殺するヒロイン」
もしかしたら、カラスも。猫も。犬も。
「……や、それはそうなんだけど」
うむむ、と設楽は首を傾げた。
「前も言ったと思うけれど。多分、というかほぼ確実に……あの子の『中身』は前世の記憶を持ってる」
「おう」
色々不可思議な点は無視する。些事だからだ。大事なのは「設楽をどうすれば守れるか」だけ。
「おう、って」
設楽は笑った。
「そんなんでいいの?」
「いーんだよ」
大したことじゃねーから。
そう言うと、設楽はくすぐったそうに笑う。
「なんだよ」
「あのね」
ふふ、と設楽は甘えるように俺を見た。
「?」
「黒田くんの、そういうとこ、好き」
「……おう」
不意打ちだ。不意打ちすぎる。俺は返事するので精一杯。
「つうか」
このままだと往来で抱きしめてキスでもなんでもしてしまいそうだから、話を戻す。
「そういう訳か。桜澤が言ってた言葉」
「言葉?」
俺は頷く。
「『現実との擦り合わせ作業』そう言ってたよな」
「……ああ」
そういえば、と設楽はうなずく。
「ここは『ゲーム』と似通ってるけど、『ゲーム』そのものじゃないってことだ」
「あ、うん。その通りです」
「それをゲームの世界に近づける、のが桜澤の目的……」
俺は考える。だとすれば、邪魔なのは誰だ?
桜澤の「作業」において一番邪魔なのは。
友達……根岸にぽろっと言ったことがある。昔。
「設楽がモノ食ってんの見てんの、好きなんだよな」
「あー、あるある。美味しそうに食べてるのとか、可愛いよな」
そう言われて、俺は頷いたけど、どっか違った。なんていうか、設楽が食ってるとこは「ぐっ」と来る。
そんな訳でパンケーキを食べてる設楽を(まぁ一応失礼にならない程度に……なってないよな?)見つめてる。設楽は俺の視線なんか慣れたもんで、生クリームたっぷりのパンケーキを幸せそうに、とても幸せそうに口に運ぶ。
「黒田くん」
「ん?」
「食べないの?」
そう聞いてくる設楽の視線は、半分以上残されてる俺のパンケーキ。なんだっけな、なんちゃらチーズがどうのこうのなクソ甘いやつ。
「……食う?」
「えへ、いいの?」
嬉しそうに設楽は言った。元々、設楽がコレか今設楽が食べてるやつと迷ったやつだったから、設楽にやんのは織り込み済み。
「いーよ。俺、もう胃が」
「甘すぎた?」
付き合わせてごめん、と少しシュンとする設楽の額にデコピン。
「いたっ」
「いいんだよ。俺も下心あってここ来てんの」
「し、下心っ!?」
少し赤くなる設楽に俺は言う。
「だって俺、設楽がなんか食ってんの、好きなんだよ」
「あは、そういうこと。前も言ってたねぇ」
へにょ、とか擬音がつきそうな笑顔。
「見てもしょーがないでしょーに」
「ほっといてくれ」
そんな設楽に、俺が勝手に惚れてるんだから。
食べ終わって店を出て、ぷらぷら海方面に歩きながら俺は口を開く。
「なぁ設楽」
「なーに?」
「答えてくれ。お前と桜澤青花、どんな関係だ」
ぴたり、と設楽は立ち止まる。俺を見上げる目は驚きで揺れている。
「えっと、その」
「カンだけど」
俺は設楽の手を握り直す。きつく。
「少し前、桜澤には『前世』があるだろう、って設楽は言ってたよな」
だから他人事に見えないんだ、って言う設楽が少し辛そうで、その時俺はあんまり突っ込めなかったけれど。
びくり、と設楽の肩が揺れた。……やっぱ、これ関係か。
そうじゃなきゃ、接点なんかねーだろう桜澤が設楽に執着する理由がない。
(なんで設楽は「前世があるだろう」なんて断言できた?)
設楽の態度を見てると「桜澤について何か知ってる」雰囲気があった。
(だとすれば、設楽と桜澤は「前世」でなんらかの繋がりがある、と見るほうが自然だ)
それが俺の結論で、設楽の態度を見る限り、それは当たってるっぽかった。
「……どっか座るか」
俺は遊歩道にあるベンチに設楽を誘導する。設楽は戸惑いながら、すとんと座った。
「で、桜澤とは前世で何があった」
聞いておきたかった。桜澤から、設楽を守るために。
設楽はしばらく俺を見つめた後、諦めたようにため息をついた。
「観念します」
「おう」
「……引くかも」
「ひかねーよ」
断言すると、設楽はぽつりと口を開いた。
「前、言ってたの、覚えてる? 私の『前世』は、この世界と別の世界だった、ってこと」
「おう」
海からの強い潮風で、設楽の髪が揺れる。設楽は少し髪をかき上げた。
「で、ね。その『前世の世界』からしたら『ここ』はゲームの世界、なの」
「……ゲーム?」
思わず問い返す。ゲーム?
「ほ、ほら引いた!? 引いたでしょ!?」
ぎゃー、って騒ぐ設楽の鼻を摘んで落ち着かせる。ぐう、って変な声を出して設楽は黙った。可愛いよな、なんて思う。
「引いてない。引いてないから続けろ」
「う、うん」
設楽は視線を少しウロウロした後、また話し出す。
「それでね、その『ゲーム』の筋書き的に、桜澤青花は『ヒロイン』で、私はそれを邪魔する『悪役令嬢』なんだ」
「悪役令嬢?」
俺は首を傾げた。なんだそりゃ。
「そ、そうなの。私、悪い人なの……」
「逆じゃなくてか?」
素で聞き返す。逆なら納得できる。設楽がヒロイン。
「ち、違うよ。私、ヒロインなんて器じゃないもの」
「んなコト言ったら桜澤こそヒロインやれねーだろーがよ」
俺は突っ込む。
「イヤだろ、鳩を惨殺するヒロイン」
もしかしたら、カラスも。猫も。犬も。
「……や、それはそうなんだけど」
うむむ、と設楽は首を傾げた。
「前も言ったと思うけれど。多分、というかほぼ確実に……あの子の『中身』は前世の記憶を持ってる」
「おう」
色々不可思議な点は無視する。些事だからだ。大事なのは「設楽をどうすれば守れるか」だけ。
「おう、って」
設楽は笑った。
「そんなんでいいの?」
「いーんだよ」
大したことじゃねーから。
そう言うと、設楽はくすぐったそうに笑う。
「なんだよ」
「あのね」
ふふ、と設楽は甘えるように俺を見た。
「?」
「黒田くんの、そういうとこ、好き」
「……おう」
不意打ちだ。不意打ちすぎる。俺は返事するので精一杯。
「つうか」
このままだと往来で抱きしめてキスでもなんでもしてしまいそうだから、話を戻す。
「そういう訳か。桜澤が言ってた言葉」
「言葉?」
俺は頷く。
「『現実との擦り合わせ作業』そう言ってたよな」
「……ああ」
そういえば、と設楽はうなずく。
「ここは『ゲーム』と似通ってるけど、『ゲーム』そのものじゃないってことだ」
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「それをゲームの世界に近づける、のが桜澤の目的……」
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