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【高校編】分岐・黒田健
夏休み
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なんだか急に青花が大人しくなって、ありがたいんだけど妙に怖いっていうか、嵐の前の静けさ的な……? とか考えてるうちに夏休みが来る。
「え、千晶ちゃん」
「あ、は、華ちゃん」
黒田くんの空手の大会(またもや全国出場だ!)の会場、その観覧席で千晶ちゃんを見かけてびっくりする。
だって、ここ、京都だし。
(観光ついで?)
私は首をひねる。千晶ちゃんって、そんなに格闘技好きだっけ?
「ていうか、なんでそんなカッコしてるの?」
「へ?」
「いや、室内なのに帽子だし、サングラスだし」
「……よく気がついたよね?」
「自分が美少女なの自覚して?」
千晶ちゃん、なんか見慣れてるけど相当に美少女さんなのです。
「……華ちゃんに言われたくはないけれど」
「残念ながら私は原作ゲームと違い太ってしまったのでそうでもありませんね」
「魅力が増したとは思わない? ……ふう」
千晶ちゃんはサングラスを外す。
「仕方なかったの。約束だったから……」
「約束?」
「ちっあっきっさーん!」
その時、背後からやたらと元気な声。これって。
「あっ華さん! ご無沙汰ッス!」
「あれ、橋崎くん」
私は首をひねった。んんん?
橋崎くんは黒田くんの友達(ライバル?)で、いっつも黒田くんに勝ってるにっくき……いや、良きライバルなのです。
(それで、石宮瑠璃の幼なじみ)
千晶ちゃんが「悪役令嬢」なゲームでのヒロインで、なんやかんやと世間を騒がせた瑠璃の。
どうやら千晶ちゃんが好きっぽいなー、とは思ってたんだけど。
「え、あれ? あのう、ふたりって」
「付き合ってます!」
「ない!」
元気な橋崎くんの言葉を、千晶ちゃんは大声で否定した。
「ないです!」
「でも今日、優勝したら付き合ってくれるんスよね?」
ぐい、と橋崎くんは千晶ちゃんに詰め寄る。
「う、うう、うん……」
「どっちなんすか!」
「つ、付き合う」
「ヨシ!」
むん、と橋崎くんは気合たっぷりって顔で笑った。
「約束ッスよ!?」
「は、はい……」
千晶ちゃんは俯いて、またサングラスをかけてしまった。
「……千晶ちゃん」
「な、なに!?」
「黒田くんが負けると思ってるの!?」
ゲームのとおりなら、黒田くんは橋崎くんに勝つことはない。なぜなら橋崎くんは「攻略対象」だったから……なのか、単なる性格なのか、やたらと本番に強い。
「ち、違っ!」
慌てて千晶ちゃんは手を振る。
「そうじゃない、そんなんじゃないよ、わたし、押し切られて」
慌て顔の千晶ちゃんをみて、思わず吹き出す。
「は、華ちゃん」
「大丈夫だよー。ここは現実なんだもん」
全部が全部、ゲームのとおりになるわけじゃない。分かってる。
「残念だけど、橋崎くんとの交際は先送りになりそうだね?」
「う……」
「好きなの?」
「う、うう……うん」
「どっち!?」
千晶ちゃんはきょときょとしている。可愛い。なんだかホッとした。
(ずいぶん昔な気はしてたけど)
それでもまだ残ってる、千晶ちゃんの手首の傷痕。
橋崎くんが癒してくれたのなら、それはとても素敵なことだと思うから。
「設楽」
「あ、黒田くん」
空手着姿の黒田くんが「よう」って感じで私に手を上げた。
「鍋島も来てたのか。……ああ、橋崎か。さっき自慢してたぜ、彼女が応援に来てるって」
「……まだ違うのに!」
「まだ、な」
黒田くんが少し面白そうに笑った。私は目を細めた。うん、黒田くん、リラックスしてるみたいだしいい感じ。
(今年こそは!)
悔しそうな黒田くん、見たくないもの!
「そーだよ黒田くん、勝ってね」
「おう」
グシャグシャと頭を撫でられる。思わず目を細めた私の頬に少し触れてから、黒田くんは方頬をあげて笑って、軽く手を上げて歩いて行った。
「らぶらぶねー」
「らぶらぶなのです」
ふふ、と笑うと千晶ちゃんも嬉しげに笑った。
「……そういえば、桜澤青花はどうなの?」
「最近はなりをひそめてるんだけれど」
むー、と唇をとがらせた。
「なにを考えてるんだか」
「前世持ちではありそうなんだよね?」
「うん、それはそう」
そうじゃなきゃ鳩殺したりしてないよなぁ、って言葉は飲み込んだ。言っていいこと、悪いこと。
「……とりあえず、様子見?」
「だね」
そんな会話のあとに、試合が始まってーー結論から言って、黒田くんは準優勝。
橋崎くんは、初戦敗退、だった。
「なにやってんだお前は」
試合後、体育館のロビーで、ぺしん、と黒田くんに後頭部をはたかれる橋崎くん。
「いって!」
「痛えじゃねーよ、なにぼうっとしてたんだ」
「いや、そのー」
橋崎くんは頭をボリボリとかいた。
「緊張しすぎてまして」
しゅん、と眉を下げて千晶ちゃんを覗き見る橋崎くん。
「や、別に!? わたしはどうでもっ」
あくまで意地を貼る千晶ちゃんの腕をつつく。
「素直になりなよー」
「す、素直!? べつにっ」
「もう一回!」
橋崎くんは土下座せんばかりの勢いで千晶ちゃんに詰め寄る。
「明日の団体戦! チャンスください!」
「……いいけど」
「やったあ!」
小躍りしてる橋崎くん。すごく嬉しそうだけれど、これもう、さっさと付き合ってしまって方が良いのではないかなぁ。
「え、千晶ちゃん」
「あ、は、華ちゃん」
黒田くんの空手の大会(またもや全国出場だ!)の会場、その観覧席で千晶ちゃんを見かけてびっくりする。
だって、ここ、京都だし。
(観光ついで?)
私は首をひねる。千晶ちゃんって、そんなに格闘技好きだっけ?
「ていうか、なんでそんなカッコしてるの?」
「へ?」
「いや、室内なのに帽子だし、サングラスだし」
「……よく気がついたよね?」
「自分が美少女なの自覚して?」
千晶ちゃん、なんか見慣れてるけど相当に美少女さんなのです。
「……華ちゃんに言われたくはないけれど」
「残念ながら私は原作ゲームと違い太ってしまったのでそうでもありませんね」
「魅力が増したとは思わない? ……ふう」
千晶ちゃんはサングラスを外す。
「仕方なかったの。約束だったから……」
「約束?」
「ちっあっきっさーん!」
その時、背後からやたらと元気な声。これって。
「あっ華さん! ご無沙汰ッス!」
「あれ、橋崎くん」
私は首をひねった。んんん?
橋崎くんは黒田くんの友達(ライバル?)で、いっつも黒田くんに勝ってるにっくき……いや、良きライバルなのです。
(それで、石宮瑠璃の幼なじみ)
千晶ちゃんが「悪役令嬢」なゲームでのヒロインで、なんやかんやと世間を騒がせた瑠璃の。
どうやら千晶ちゃんが好きっぽいなー、とは思ってたんだけど。
「え、あれ? あのう、ふたりって」
「付き合ってます!」
「ない!」
元気な橋崎くんの言葉を、千晶ちゃんは大声で否定した。
「ないです!」
「でも今日、優勝したら付き合ってくれるんスよね?」
ぐい、と橋崎くんは千晶ちゃんに詰め寄る。
「う、うう、うん……」
「どっちなんすか!」
「つ、付き合う」
「ヨシ!」
むん、と橋崎くんは気合たっぷりって顔で笑った。
「約束ッスよ!?」
「は、はい……」
千晶ちゃんは俯いて、またサングラスをかけてしまった。
「……千晶ちゃん」
「な、なに!?」
「黒田くんが負けると思ってるの!?」
ゲームのとおりなら、黒田くんは橋崎くんに勝つことはない。なぜなら橋崎くんは「攻略対象」だったから……なのか、単なる性格なのか、やたらと本番に強い。
「ち、違っ!」
慌てて千晶ちゃんは手を振る。
「そうじゃない、そんなんじゃないよ、わたし、押し切られて」
慌て顔の千晶ちゃんをみて、思わず吹き出す。
「は、華ちゃん」
「大丈夫だよー。ここは現実なんだもん」
全部が全部、ゲームのとおりになるわけじゃない。分かってる。
「残念だけど、橋崎くんとの交際は先送りになりそうだね?」
「う……」
「好きなの?」
「う、うう……うん」
「どっち!?」
千晶ちゃんはきょときょとしている。可愛い。なんだかホッとした。
(ずいぶん昔な気はしてたけど)
それでもまだ残ってる、千晶ちゃんの手首の傷痕。
橋崎くんが癒してくれたのなら、それはとても素敵なことだと思うから。
「設楽」
「あ、黒田くん」
空手着姿の黒田くんが「よう」って感じで私に手を上げた。
「鍋島も来てたのか。……ああ、橋崎か。さっき自慢してたぜ、彼女が応援に来てるって」
「……まだ違うのに!」
「まだ、な」
黒田くんが少し面白そうに笑った。私は目を細めた。うん、黒田くん、リラックスしてるみたいだしいい感じ。
(今年こそは!)
悔しそうな黒田くん、見たくないもの!
「そーだよ黒田くん、勝ってね」
「おう」
グシャグシャと頭を撫でられる。思わず目を細めた私の頬に少し触れてから、黒田くんは方頬をあげて笑って、軽く手を上げて歩いて行った。
「らぶらぶねー」
「らぶらぶなのです」
ふふ、と笑うと千晶ちゃんも嬉しげに笑った。
「……そういえば、桜澤青花はどうなの?」
「最近はなりをひそめてるんだけれど」
むー、と唇をとがらせた。
「なにを考えてるんだか」
「前世持ちではありそうなんだよね?」
「うん、それはそう」
そうじゃなきゃ鳩殺したりしてないよなぁ、って言葉は飲み込んだ。言っていいこと、悪いこと。
「……とりあえず、様子見?」
「だね」
そんな会話のあとに、試合が始まってーー結論から言って、黒田くんは準優勝。
橋崎くんは、初戦敗退、だった。
「なにやってんだお前は」
試合後、体育館のロビーで、ぺしん、と黒田くんに後頭部をはたかれる橋崎くん。
「いって!」
「痛えじゃねーよ、なにぼうっとしてたんだ」
「いや、そのー」
橋崎くんは頭をボリボリとかいた。
「緊張しすぎてまして」
しゅん、と眉を下げて千晶ちゃんを覗き見る橋崎くん。
「や、別に!? わたしはどうでもっ」
あくまで意地を貼る千晶ちゃんの腕をつつく。
「素直になりなよー」
「す、素直!? べつにっ」
「もう一回!」
橋崎くんは土下座せんばかりの勢いで千晶ちゃんに詰め寄る。
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