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【高校編】分岐・相良仁
【side仁】
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いや、だってさ。
まぁ、言い訳なんだけどさ。
親父の七光まで使って婚約申し込んどいてさ。いや正直ダサいと思うんだけど、それはそれで置いといて。
「この期に及んで華の卒業まで待って、いざあのばーさんに会ったときに実はお付き合いしてたの僕でした~あははははとか絶ッッッ対に印象悪いと思うんだよなぁ」
「心配しなくても護衛対象に手を出してる時点で最悪ですから、ご心配には及ばないのでは?」
小西はさらりとその綺麗な髪を揺らした。
「最悪というか最低ですよね~」
「……」
「まさか敦子様も雇ったボディーガードがロリコンだとは想定外でしょう」
「ロリコン言うな」
きりきりと痛む胃を抑えつつ、俺は呟く。
放課後の社会科準備室。もうすぐ、ここまで華が来るはずだ。
窓の外では、ちらちらと雪が降っていた。やたらと冷え込む。
(今年、チョコもらえんのかなぁ)
バタバタしすぎてて無理かもなぁ。
ちょっと残念。
桜澤の色々な色々の色々(ここまで来ると、叩けば叩くほど余罪がぽろぽろ)に際して、華は嫌がったけど警護レベルをあげてた。校内でも俺ら以外からの監視付き。ものすごーく嫌がってたけど、こればかりは我慢してもらわなきゃだ。
「じーん、……あ、小西先生いらしてたんですか」
がらり、と開いた扉の向こうには、すでにコートとマフラーを巻いた華がいた。俺からのプレゼントのマフラー。
「華様、お耳が冷えますよ」
小西は心配気に言った。
「雪が」
「あ、大丈夫です、ほら」
耳当て~、とそのフワフワの耳当てを鞄から出すと、小西はなぜだか荒い息で「つ、つけてみてもらえませんか」と華に迫る。
「? いいですけど」
ぽすりとそれを付けた華を、小西はなぜだか拝んでいた。……俺のこと色々言うけどさ、こいつも結構大概だよな?
そんな言葉は飲み込みつつ(出したら何倍にもなって返ってくる)俺らは時間差で学校から出た。
クルマを運転して、少し離れた、人気のない道で華を待つ。
ややあって、ガチャリと助手席のドアが開いて華が乗り込んでくる。
「うー、寒サムッ」
「冷えるよな今日」
髪の毛についた雪を払ってやる。華は少し気持ちよさそうに目を細めた。
「ねぇ」
「なんだよ」
「緊張してる?」
ふふ、と少し悪戯っぽく華は笑う。
「するよー……」
俺は弱々しく返答した。
何度シミュレーションしても「一昨日きやがれ」って塩撒かれるイメージしか湧いてこない。ていうか警察呼ばれそう。
華が毎日のように「アッシャーさんを連れてこい」とあのばーさんに言われてるとは聞いていた。
それに、この期に及んで下手に長引かせれば長引かせるほど、却って印象は悪くなる、と思う。
(だから、思い切って)
ご挨拶、ってやつだ。
華のばーさんがホテルのレストランを押さえてるってことで、俺らはそこまで向かっている。
「あー……」
「緊張しすぎ」
華はからから笑う。
「ねえその程度なの?」
「なにがだよ」
「ダメだったら拐って逃げるくらいしてくれるんじゃないの」
「……しますけども」
いざとなりゃ、駆け落ちでも高飛びでもなんでもする覚悟ではありますが。
「でもさぁ、まぁまず間違いなく塩は撒かれるだろ今日」
つうか、普通にクビだよな。
(クビになったあと、どうやって華に接触するか、どうやって認めてもらうか)
桜澤のこともある。まぁあれは、もう俺がいなくても大丈夫なとこまでは来てると思うけども。
やっぱり卒業まで待った方が、なんて考えもぐるぐるさせながら、それでも車は地下駐車場に滑り込む。
「華」
「なに?」
車を停めたあと、華の名前を呼ぶ。
不思議そうな華に、唇を重ねた。何度も、色んな角度から。
華の綺麗な歯列をなぞって、頬の柔らかな内側を堪能して、上顎の、華の弱いとこを舌で刺激する。華はあられもない悲鳴を小さくあげて、俺にしがみついた。
可愛らしい舌を絡めとって、吸って。華の身体はびくりと揺れた。
(あー)
可愛い。
可愛すぎる。
……でも、こんなときに欲情してる場合じゃないぞ、俺。
そっと身体を離す。上気した頬と、潤んだ瞳。俺を掴む手が少し震えてる。
そっと手を握った。
「……冷たい」
「今日は冷えるから」
華はそういうけれど、おそらくそれは違う。
(華も怖いんだ)
引き離されるのが。俺と。
思わず抱きしめる。
「最悪でも拐って逃げるから、絶対離れたりしないから」
「……うん」
腕の中で、華がうなずく。
ぱ、と上げた顔はいつも通りで。
「切り替え早えな?」
「だってさ」
ふふ、と華は笑う。
「仁がそういうなら、そうなるんだろうなぁって」
さらりと髪を揺らす華に、今度は軽くキスをする。
その信頼は、絶対に裏切らない。
世界中が俺をクソ野郎と罵っても、それから例え信用してくれなくたって、華さえ信じてくれてるなら、ほんとそれだけで俺は生きていける。
超余裕でお釣りがくるくらいだ。
まぁ、言い訳なんだけどさ。
親父の七光まで使って婚約申し込んどいてさ。いや正直ダサいと思うんだけど、それはそれで置いといて。
「この期に及んで華の卒業まで待って、いざあのばーさんに会ったときに実はお付き合いしてたの僕でした~あははははとか絶ッッッ対に印象悪いと思うんだよなぁ」
「心配しなくても護衛対象に手を出してる時点で最悪ですから、ご心配には及ばないのでは?」
小西はさらりとその綺麗な髪を揺らした。
「最悪というか最低ですよね~」
「……」
「まさか敦子様も雇ったボディーガードがロリコンだとは想定外でしょう」
「ロリコン言うな」
きりきりと痛む胃を抑えつつ、俺は呟く。
放課後の社会科準備室。もうすぐ、ここまで華が来るはずだ。
窓の外では、ちらちらと雪が降っていた。やたらと冷え込む。
(今年、チョコもらえんのかなぁ)
バタバタしすぎてて無理かもなぁ。
ちょっと残念。
桜澤の色々な色々の色々(ここまで来ると、叩けば叩くほど余罪がぽろぽろ)に際して、華は嫌がったけど警護レベルをあげてた。校内でも俺ら以外からの監視付き。ものすごーく嫌がってたけど、こればかりは我慢してもらわなきゃだ。
「じーん、……あ、小西先生いらしてたんですか」
がらり、と開いた扉の向こうには、すでにコートとマフラーを巻いた華がいた。俺からのプレゼントのマフラー。
「華様、お耳が冷えますよ」
小西は心配気に言った。
「雪が」
「あ、大丈夫です、ほら」
耳当て~、とそのフワフワの耳当てを鞄から出すと、小西はなぜだか荒い息で「つ、つけてみてもらえませんか」と華に迫る。
「? いいですけど」
ぽすりとそれを付けた華を、小西はなぜだか拝んでいた。……俺のこと色々言うけどさ、こいつも結構大概だよな?
そんな言葉は飲み込みつつ(出したら何倍にもなって返ってくる)俺らは時間差で学校から出た。
クルマを運転して、少し離れた、人気のない道で華を待つ。
ややあって、ガチャリと助手席のドアが開いて華が乗り込んでくる。
「うー、寒サムッ」
「冷えるよな今日」
髪の毛についた雪を払ってやる。華は少し気持ちよさそうに目を細めた。
「ねぇ」
「なんだよ」
「緊張してる?」
ふふ、と少し悪戯っぽく華は笑う。
「するよー……」
俺は弱々しく返答した。
何度シミュレーションしても「一昨日きやがれ」って塩撒かれるイメージしか湧いてこない。ていうか警察呼ばれそう。
華が毎日のように「アッシャーさんを連れてこい」とあのばーさんに言われてるとは聞いていた。
それに、この期に及んで下手に長引かせれば長引かせるほど、却って印象は悪くなる、と思う。
(だから、思い切って)
ご挨拶、ってやつだ。
華のばーさんがホテルのレストランを押さえてるってことで、俺らはそこまで向かっている。
「あー……」
「緊張しすぎ」
華はからから笑う。
「ねえその程度なの?」
「なにがだよ」
「ダメだったら拐って逃げるくらいしてくれるんじゃないの」
「……しますけども」
いざとなりゃ、駆け落ちでも高飛びでもなんでもする覚悟ではありますが。
「でもさぁ、まぁまず間違いなく塩は撒かれるだろ今日」
つうか、普通にクビだよな。
(クビになったあと、どうやって華に接触するか、どうやって認めてもらうか)
桜澤のこともある。まぁあれは、もう俺がいなくても大丈夫なとこまでは来てると思うけども。
やっぱり卒業まで待った方が、なんて考えもぐるぐるさせながら、それでも車は地下駐車場に滑り込む。
「華」
「なに?」
車を停めたあと、華の名前を呼ぶ。
不思議そうな華に、唇を重ねた。何度も、色んな角度から。
華の綺麗な歯列をなぞって、頬の柔らかな内側を堪能して、上顎の、華の弱いとこを舌で刺激する。華はあられもない悲鳴を小さくあげて、俺にしがみついた。
可愛らしい舌を絡めとって、吸って。華の身体はびくりと揺れた。
(あー)
可愛い。
可愛すぎる。
……でも、こんなときに欲情してる場合じゃないぞ、俺。
そっと身体を離す。上気した頬と、潤んだ瞳。俺を掴む手が少し震えてる。
そっと手を握った。
「……冷たい」
「今日は冷えるから」
華はそういうけれど、おそらくそれは違う。
(華も怖いんだ)
引き離されるのが。俺と。
思わず抱きしめる。
「最悪でも拐って逃げるから、絶対離れたりしないから」
「……うん」
腕の中で、華がうなずく。
ぱ、と上げた顔はいつも通りで。
「切り替え早えな?」
「だってさ」
ふふ、と華は笑う。
「仁がそういうなら、そうなるんだろうなぁって」
さらりと髪を揺らす華に、今度は軽くキスをする。
その信頼は、絶対に裏切らない。
世界中が俺をクソ野郎と罵っても、それから例え信用してくれなくたって、華さえ信じてくれてるなら、ほんとそれだけで俺は生きていける。
超余裕でお釣りがくるくらいだ。
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