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【高校編】分岐・相良仁
桜
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「設楽さん留学ってマジ?」
「うん」
4月、高校三年生になってすぐの昼休みーー教室で、大村さんにそうきかれた。
窓の外では桜が満開で、なんだか眩しい。
「イギリス」
「えー、うっそー、寂しい~」
大村さんは寂しがってくれるけど、でも結構この学校、留学とか多いからみんな慣れてるところはある。
「いつ決まったの?」
「2月くらい……でも本決まりはほんと最近」
言おう言おうと思ってて、なかなかタイミングがなかったのだ。
「そっかあ。いつから?」
「9月から。でも準備もあるし8月にはあっちに行く」
「まじー?」
大村さんは眉をひそめて、寂しそうにしてくれた。
「いっぱい遊ぼうね」
「受験生だけどね」
「受験ねぇ……ね、大学は? イギリスの学校?」
「まだ決めてないんだ」
私はかたをすくめた。大学は、仁がまた後で決めたらいーんじゃない? とか軽い感じで言うから。
「そっかあ。日本のにしてほしいけど……あ、お昼ご飯どうする?」
「お弁当あるんだ」
「あ、じゃあわたし、学食でサンドイッチ買うから一緒にお花見しよ」
「いいねぇ」
窓の外に目をやる。4月のポカポカ陽気の下、桜も満開で最高のお花見日和。
「じゃあ私、先に場所取りしてる」
「おけー!」
るんるん、と桜の木の下のベンチを目指してあるいていて、その途中、がっと腕を掴まれた。
「?」
「設楽先輩っ」
その茶髪のショートカットには、見覚えがあった。
「……ええと、確か水泳部の」
こくりとその子は頷く。
「ご無沙汰してます」
「ううん、……あ、ていうか! この間の試合大活躍だったんだってね! 選抜の合宿にも……て、え、なんで泣くの!?」
「せ、先輩がっ」
「うん」
「り、留学、してしまうって、きいて……」
「へ!?」
う、噂広まるの早くない!?
「ちがうんです。たまたま、職員室で小耳に挟んで……ほんとうか、確かめようと思っ、て」
「ええと、うん。本当。9月からだけれど」
ぶわ、とその女の子の目から涙がこぼれた。
「ええっ!?」
「わ、わたし。先輩に助けられてから、先輩にご恩を返さなきゃって……頑張って……」
「え、そんな、大したことしてないよ」
「してくれてます」
その子はぶんぶんと首を振る。
「先生たちにさからうの、怖くなかったですか。わたしのせいで怒られて、でも先輩は引きませんでした」
「いや、あれは」
「せ、先輩は、本当にみんなのこと思って……委員長にまで、なってくれて。先輩のおかげで、わたし、いちいち黒染めしなくて良くなりました。そりゃ、委員長はやりたい放題だ、青百合の女王だ、とか揶揄する声もありますけど」
「ちょっと待って初耳だよ!?」
知らなかったよ!
(……クラスのみんなが隠してくれてたのかな)
色々言われてるの。もしかしたら、仁もかもだけれど。
「と、とにかくです。わたし、わたしは……」
えぐえぐ、とその子は泣いてしまって、この子自身にも何が言いたいか分からないみたいだった。
(そんなにショック受けてくれたんだ)
ほとんど関わりのない、私が留学してしまうってことに。
(ありがたいなぁ)
ぽんぽん、とその傷んだ髪を撫でる。この子の努力の証。
「部活の成績とか、ちゃんとチェックするからね」
「……はい」
「応援してるからね」
「ううっ、……はい」
私はそっと涙を拭ってあげた。きらきらとした瞳で見上げられる。にこりと微笑むと、なんとかその子も笑ってくれた。
手を振って分かれて、庭園が見えたところでーー私はへんな汗が出た。
(あれ?)
ぽかんと立ち止まる。
(あれ、これって?)
デジャヴ、すごい。
これ、みたこと、ある。
「うん」
4月、高校三年生になってすぐの昼休みーー教室で、大村さんにそうきかれた。
窓の外では桜が満開で、なんだか眩しい。
「イギリス」
「えー、うっそー、寂しい~」
大村さんは寂しがってくれるけど、でも結構この学校、留学とか多いからみんな慣れてるところはある。
「いつ決まったの?」
「2月くらい……でも本決まりはほんと最近」
言おう言おうと思ってて、なかなかタイミングがなかったのだ。
「そっかあ。いつから?」
「9月から。でも準備もあるし8月にはあっちに行く」
「まじー?」
大村さんは眉をひそめて、寂しそうにしてくれた。
「いっぱい遊ぼうね」
「受験生だけどね」
「受験ねぇ……ね、大学は? イギリスの学校?」
「まだ決めてないんだ」
私はかたをすくめた。大学は、仁がまた後で決めたらいーんじゃない? とか軽い感じで言うから。
「そっかあ。日本のにしてほしいけど……あ、お昼ご飯どうする?」
「お弁当あるんだ」
「あ、じゃあわたし、学食でサンドイッチ買うから一緒にお花見しよ」
「いいねぇ」
窓の外に目をやる。4月のポカポカ陽気の下、桜も満開で最高のお花見日和。
「じゃあ私、先に場所取りしてる」
「おけー!」
るんるん、と桜の木の下のベンチを目指してあるいていて、その途中、がっと腕を掴まれた。
「?」
「設楽先輩っ」
その茶髪のショートカットには、見覚えがあった。
「……ええと、確か水泳部の」
こくりとその子は頷く。
「ご無沙汰してます」
「ううん、……あ、ていうか! この間の試合大活躍だったんだってね! 選抜の合宿にも……て、え、なんで泣くの!?」
「せ、先輩がっ」
「うん」
「り、留学、してしまうって、きいて……」
「へ!?」
う、噂広まるの早くない!?
「ちがうんです。たまたま、職員室で小耳に挟んで……ほんとうか、確かめようと思っ、て」
「ええと、うん。本当。9月からだけれど」
ぶわ、とその女の子の目から涙がこぼれた。
「ええっ!?」
「わ、わたし。先輩に助けられてから、先輩にご恩を返さなきゃって……頑張って……」
「え、そんな、大したことしてないよ」
「してくれてます」
その子はぶんぶんと首を振る。
「先生たちにさからうの、怖くなかったですか。わたしのせいで怒られて、でも先輩は引きませんでした」
「いや、あれは」
「せ、先輩は、本当にみんなのこと思って……委員長にまで、なってくれて。先輩のおかげで、わたし、いちいち黒染めしなくて良くなりました。そりゃ、委員長はやりたい放題だ、青百合の女王だ、とか揶揄する声もありますけど」
「ちょっと待って初耳だよ!?」
知らなかったよ!
(……クラスのみんなが隠してくれてたのかな)
色々言われてるの。もしかしたら、仁もかもだけれど。
「と、とにかくです。わたし、わたしは……」
えぐえぐ、とその子は泣いてしまって、この子自身にも何が言いたいか分からないみたいだった。
(そんなにショック受けてくれたんだ)
ほとんど関わりのない、私が留学してしまうってことに。
(ありがたいなぁ)
ぽんぽん、とその傷んだ髪を撫でる。この子の努力の証。
「部活の成績とか、ちゃんとチェックするからね」
「……はい」
「応援してるからね」
「ううっ、……はい」
私はそっと涙を拭ってあげた。きらきらとした瞳で見上げられる。にこりと微笑むと、なんとかその子も笑ってくれた。
手を振って分かれて、庭園が見えたところでーー私はへんな汗が出た。
(あれ?)
ぽかんと立ち止まる。
(あれ、これって?)
デジャヴ、すごい。
これ、みたこと、ある。
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