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【高校編】分岐・鍋島真
晩秋
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真紅に色づいた木々が目に美しい。
「綺麗だよねぇ」
真さんがのんびりと言う。
「はぁ」
「紅葉狩りってなにするの?」
「さぁ」
「鬼でも狩るの」
「なんですか唐突に怖いですけど、ていうかこの状況もなんですか」
私は全裸です。
いやまぁ、全裸もなにも、お風呂にいるので全裸で仕方ないのですが、突然のように真さんも全裸です。
京都は嵐山にある温泉旅館、の部屋についてる露天風呂。
見える景色は紅葉してて、お昼過ぎの柔らかい日差しをきらきらと反射している。
ある朝起きてわーい今日は学校休みだだらだらしよう! と決めてリビングで雑誌を読んでいたら響き渡るインターフォン、苦笑するお手伝いさんの八重子さん、車に詰め込まれる私、ってな感じで気がつけばここにいました。
「……部屋着で新幹線乗ったの初めてですよ」
「コート着てたからいいじゃん」
「良くない……」
「どうせ脱ぐんだし」
「……」
じとりと睨みつけると、真さんは全く気にするそぶりなく髪をかき上げた。
おでこ丸見え。
……不覚にもきゅんとした。
「どうしたの?」
「いいええ」
私はお湯に顔をつける。ああもうなんで何してもカッコよく見えたりいちいちキュンとしてんだろう私は!?
「溺れないでね」
軽く身体を支えられて湯面から顔を上げさせられた。
「華ちゃん、お顔が赤いねぇ」
「……お湯に顔をつけていたので」
「ふうん」
そのまま抱きしめられて、耳を噛まれた。
「ひゃあ! なにするんですっ、かっ」
騒ぐ私に、しー、と真さんは口の前に指を立ててふっと、笑う。
「ほら騒ぐと周りの人に聞こえるよ? 露天風呂だよ?」
「ぐっ、それは真さんが」
「僕が? 僕が何?」
楽しげに唇を上げながら、私を背中から抱きしめて唇を首筋に這わせる。
上がりそうになる声を、手で口を押さえて我慢。ていうか、なにするんですか!
「可愛い華ちゃん」
真さんの綺麗な指が、私の体を滑っていく。
「……っ」
「あーあ、フシダラな子だなぁほんと」
絶対それ私のせいじゃない!
「て、いう、かっ。なんで急に、こんなところ、にっ」
できるだけ声は平静を装いつつ、そう告げる。
「ん? あー、前々から温泉行きたいな~って計画してたんだよねあははサプライズサプライズ」
「サプライズすぎ、ますっ」
のぼせてるのは温泉のせいなのか、この人のせいなのか。
とにかくせっかくの温泉だったのに、記憶にあんまり残ってくれそうにない……。
(あ、あとで絶対一人で入ってやるっ)
私は頭がどんどんポヤポヤしていく中で、そう心に誓う。
……その隙がこの人にあるかどうかは、ともかくとして。
で、結局のところ真さんが私を京都に連れてきたのは準備のため、だったらしい。
準備っていうか、下見というか。
結婚式の。
嵐山の竹林の中をそぞろ歩きしながら、真さんは笑う。
「和装がいいかなぁとか言ってたからさ~」
「あー」
でもそれなら鎌倉でも良くないですか?
顔に出てたのか、真さんが私の鼻をつまむ。
「せっかくだから色々見たいじゃん」
「? ですか?」
繋いだ手があったかい。
真さんを見上げて、嬉しそうな顔を見てやっと気がつく。
「……あの、もしかして結構楽しみにしてます?」
「ドチャクソ楽しみにしてますよ」
ふふん、となぜか自慢げに真さんは答えた。
ていうかドチャクソってなんですか、ドチャクソって。
「きゃわいい華チャンが僕のものですよって世界中に知らしめる日ですよ?」
「なんですかそれは」
そんな日ではないと思う。
「だからね、僕はとっても楽しみ。そんな訳で来週は沖縄なので」
「沖縄?」
「和装なら国内がいいんだよね? 海外も視野にいれるならもっと忙しくなるけど」
「……国内でお願いします」
ちなみに後はどちらに? と恐る恐る聞いてみる。
「北海道数カ所をとりあえずピックアップしてるけど」
「広大」
案外広いんですよ北海道は……!
「大丈夫ヘリ移動チャーターしてるから」
「……了解でーす」
少し投げやりになって言うと、真さんはケタケタと楽しげに笑った。
……半分くらい、私のことからかって遊んでませんですかね?
そんなことを考えながら、私は真さんの手の温もりを感じていた。
ざあ、と冷たい風が竹の葉を揺らした。
もうすぐ、冬が来る。
「綺麗だよねぇ」
真さんがのんびりと言う。
「はぁ」
「紅葉狩りってなにするの?」
「さぁ」
「鬼でも狩るの」
「なんですか唐突に怖いですけど、ていうかこの状況もなんですか」
私は全裸です。
いやまぁ、全裸もなにも、お風呂にいるので全裸で仕方ないのですが、突然のように真さんも全裸です。
京都は嵐山にある温泉旅館、の部屋についてる露天風呂。
見える景色は紅葉してて、お昼過ぎの柔らかい日差しをきらきらと反射している。
ある朝起きてわーい今日は学校休みだだらだらしよう! と決めてリビングで雑誌を読んでいたら響き渡るインターフォン、苦笑するお手伝いさんの八重子さん、車に詰め込まれる私、ってな感じで気がつけばここにいました。
「……部屋着で新幹線乗ったの初めてですよ」
「コート着てたからいいじゃん」
「良くない……」
「どうせ脱ぐんだし」
「……」
じとりと睨みつけると、真さんは全く気にするそぶりなく髪をかき上げた。
おでこ丸見え。
……不覚にもきゅんとした。
「どうしたの?」
「いいええ」
私はお湯に顔をつける。ああもうなんで何してもカッコよく見えたりいちいちキュンとしてんだろう私は!?
「溺れないでね」
軽く身体を支えられて湯面から顔を上げさせられた。
「華ちゃん、お顔が赤いねぇ」
「……お湯に顔をつけていたので」
「ふうん」
そのまま抱きしめられて、耳を噛まれた。
「ひゃあ! なにするんですっ、かっ」
騒ぐ私に、しー、と真さんは口の前に指を立ててふっと、笑う。
「ほら騒ぐと周りの人に聞こえるよ? 露天風呂だよ?」
「ぐっ、それは真さんが」
「僕が? 僕が何?」
楽しげに唇を上げながら、私を背中から抱きしめて唇を首筋に這わせる。
上がりそうになる声を、手で口を押さえて我慢。ていうか、なにするんですか!
「可愛い華ちゃん」
真さんの綺麗な指が、私の体を滑っていく。
「……っ」
「あーあ、フシダラな子だなぁほんと」
絶対それ私のせいじゃない!
「て、いう、かっ。なんで急に、こんなところ、にっ」
できるだけ声は平静を装いつつ、そう告げる。
「ん? あー、前々から温泉行きたいな~って計画してたんだよねあははサプライズサプライズ」
「サプライズすぎ、ますっ」
のぼせてるのは温泉のせいなのか、この人のせいなのか。
とにかくせっかくの温泉だったのに、記憶にあんまり残ってくれそうにない……。
(あ、あとで絶対一人で入ってやるっ)
私は頭がどんどんポヤポヤしていく中で、そう心に誓う。
……その隙がこの人にあるかどうかは、ともかくとして。
で、結局のところ真さんが私を京都に連れてきたのは準備のため、だったらしい。
準備っていうか、下見というか。
結婚式の。
嵐山の竹林の中をそぞろ歩きしながら、真さんは笑う。
「和装がいいかなぁとか言ってたからさ~」
「あー」
でもそれなら鎌倉でも良くないですか?
顔に出てたのか、真さんが私の鼻をつまむ。
「せっかくだから色々見たいじゃん」
「? ですか?」
繋いだ手があったかい。
真さんを見上げて、嬉しそうな顔を見てやっと気がつく。
「……あの、もしかして結構楽しみにしてます?」
「ドチャクソ楽しみにしてますよ」
ふふん、となぜか自慢げに真さんは答えた。
ていうかドチャクソってなんですか、ドチャクソって。
「きゃわいい華チャンが僕のものですよって世界中に知らしめる日ですよ?」
「なんですかそれは」
そんな日ではないと思う。
「だからね、僕はとっても楽しみ。そんな訳で来週は沖縄なので」
「沖縄?」
「和装なら国内がいいんだよね? 海外も視野にいれるならもっと忙しくなるけど」
「……国内でお願いします」
ちなみに後はどちらに? と恐る恐る聞いてみる。
「北海道数カ所をとりあえずピックアップしてるけど」
「広大」
案外広いんですよ北海道は……!
「大丈夫ヘリ移動チャーターしてるから」
「……了解でーす」
少し投げやりになって言うと、真さんはケタケタと楽しげに笑った。
……半分くらい、私のことからかって遊んでませんですかね?
そんなことを考えながら、私は真さんの手の温もりを感じていた。
ざあ、と冷たい風が竹の葉を揺らした。
もうすぐ、冬が来る。
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