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【高校編】分岐・山ノ内瑛
【番外編】夏の日(上)(アキラ視点)
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再会して1年と少し。
華の記憶の蓋は、時折ぱかりと開くみたいで俺は普通に嬉しい。
(なーにがニセモンの7年、やっつの)
ふん、と俺は華のばーさんに対してそんなことを考える。
(ニセモンやろーが、仮初やろーが。続けとったら本物になんねん)
血の繋がらない、実家の両親やきょうだいたちと、俺が本物の家族であるように。
「うん、来たことある、気がする」
華は白いワンピースで、足首まで海水に浸かっている。
目の前にはキラキラしい夏の海。神戸の砂浜。
もう夕方に近い時刻で、海水浴客もずいぶん少ない。
「せやろ」
「ええとね、……アキラくん、他の女の子をお姫様抱っこしてたね?」
「なんでそこだけ思い出すんや!」
思わず突っ込む。いや、人命救助(?)は確かにしたけども!
「あと思い出せないんだもん」
ぷ、と少しむくれたように頬を膨らます華が、めちゃくちゃ可愛い。
ド級に可愛い。ヤバさがメーター突破しとるわこんなん……。
「どーしても?」
「うん」
「そん時、俺。華もお姫様抱っこ、してたんやけどなー?」
「へ?」
ぽかんとした華を、ひょいっと横抱きに持ち上げた。軽い軽い。
「うわわわわ」
「だって、して欲しそうやってんもん」
「そんなこと、……ない、もん」
俺はケタケタ笑う。嘘つきな華。めちゃんこ可愛い。
さくさく歩いて、砂浜を出て遊歩道のベンチに華をおろす。
「もー、……見られてる」
「見せつけてんの俺は」
恥ずかしそうに、ほんの少し目を伏せる華の唇を、そうっと奪う。
「ん」
「……まだ慣れへん?」
「……かも」
「めっちゃドギツイちゅうなんかもしてたんやで?」
「う、うそっ」
「こことか」
指で、華の細い首に触れた。
ぴくり、と華は身体を揺らす。
「ここ、とか」
服の隙間から、するりと手を入れて、鎖骨に触れる。きゅうと華が眉を寄せた。
「……っ」
「ちゅうしてたで?」
「あ、アキラくん」
華はその熱っぽい目線を俺に向けて。
「私たち、……そのう。そゆこと、普通に、してたの? あの」
照れて言いにくそうな華の頬に、指を滑らせる。
「えっちはまだやで?」
「ひゃん!」
華は真っ赤になってアワアワしとる。あー、可愛い。
そのあと、手を繋いで、電車に乗って。
あんま金ないから(華が出してくれるいうけど、要はあのばーさんの金やからなんかヤダ)申し訳ないけどファミレスで夕食食べて。
華は今すんでる北野の洋館、その門の前ですんすん泣いている。
あたりはとっぷり真っ暗。じーじーと夏の虫がどこかでないている。
「華」
「やだ、帰っちゃやだよ」
「うん」
「遠距離きつい~」
華はぽろぽろ泣く。
華はこの家を出るのをまだ許されてなくて俺は大学生で。バスケ推薦で行った東京の私立大学で、俺は法律を勉強しとる。
(結局遠距離やねんなぁ)
華の髪を撫でる。華は泣いてて、俺の胸は痛い。
昔と違って、終電までおれるのは大学生の特権かもしれんけど。
「また来るからな」
「いつ」
「来月」
「……うん」
華の綺麗な目から涙が溢れて止まらない。俺やってキツイ。連れて帰りたい。
「電話するな」
うん、と華が俯く。
帰りの新幹線、今日撮った写真やら動画やら見てて俺も少し泣く。横の人がぎょっとしてた。ええやんけ、世界一大切な人とまた1ヶ月会えへんねんで?
言うても翌日から日常が始まる。朝練行って授業受けてまた部活。部活終わったら1コマだけ塾講のバイト。金稼がなあかん。交通費だけでバカにならんからなぁ……。
その週は試合があって、アップしとるとマネージャーが寄ってきて「先週どこ行ってたの?」と聞いてくる。
「彼女んとこ」
「それ、ほんとー?」
マネージャーが疑うような目線を向けてくる。その目に恋愛感情はなくて、……ふうん。
「誰かに何か言われてんの?」
「んん? んー、まぁ。端的に言うと彼女が本当にいるのか確かめてって頼まれてる」
「ほんまにおるわ、そんなん」
「見たことないもん」
「見せたないもん」
軽い押し問答をしてると、チームのやつが少し高いテンションで「なあなぁ」とやってきた。
「なん?」
「見た?」
「何がや」
「めっちゃカワイイ子来てる! 誰かのファンかな」
オレだったらいいのに、って言うそいつの視線の先に、……華がいた。
「……!!」
「あ、なに? タイプだった?」
「当たり前やドンピシャやアホ」
「……え、彼女は?」
俺が彼女、華にベタ惚れなのはチームのやつらは知ってるから少し驚かれる。
無視して体育館飛び出して、ホールから客席に向かう階段を駆け上がる。
「華!」
「あ、アキラくん~」
華はにこにこ。
俺は少し慌てていた。なんでこんなとこおるんや!
「どうやってきたん!?」
「? 新幹線」
華は首を傾げた。さらりと少し長い髪が揺れる。
華は記憶が色々曖昧なとこがあって、そんな長距離の移動、ひとりでしきるとは思えへん。
「……あ、相良サンか小西サンもおるん?」
「ひとりだよ」
華はにこりと笑う。
「こっそり来たの」
「……こっそり」
「うん」
俺がびっくりしてるのが嬉しいのか、華は楽しそうでえらい可愛い。
可愛いけどやな、……まぁええわ!
「華」
「うん」
「かっちょえーとこ見せたるから、よお見とけよ?」
「うん!」
すっごい楽しみ、と華は少し頬を赤くして、笑った。
華の記憶の蓋は、時折ぱかりと開くみたいで俺は普通に嬉しい。
(なーにがニセモンの7年、やっつの)
ふん、と俺は華のばーさんに対してそんなことを考える。
(ニセモンやろーが、仮初やろーが。続けとったら本物になんねん)
血の繋がらない、実家の両親やきょうだいたちと、俺が本物の家族であるように。
「うん、来たことある、気がする」
華は白いワンピースで、足首まで海水に浸かっている。
目の前にはキラキラしい夏の海。神戸の砂浜。
もう夕方に近い時刻で、海水浴客もずいぶん少ない。
「せやろ」
「ええとね、……アキラくん、他の女の子をお姫様抱っこしてたね?」
「なんでそこだけ思い出すんや!」
思わず突っ込む。いや、人命救助(?)は確かにしたけども!
「あと思い出せないんだもん」
ぷ、と少しむくれたように頬を膨らます華が、めちゃくちゃ可愛い。
ド級に可愛い。ヤバさがメーター突破しとるわこんなん……。
「どーしても?」
「うん」
「そん時、俺。華もお姫様抱っこ、してたんやけどなー?」
「へ?」
ぽかんとした華を、ひょいっと横抱きに持ち上げた。軽い軽い。
「うわわわわ」
「だって、して欲しそうやってんもん」
「そんなこと、……ない、もん」
俺はケタケタ笑う。嘘つきな華。めちゃんこ可愛い。
さくさく歩いて、砂浜を出て遊歩道のベンチに華をおろす。
「もー、……見られてる」
「見せつけてんの俺は」
恥ずかしそうに、ほんの少し目を伏せる華の唇を、そうっと奪う。
「ん」
「……まだ慣れへん?」
「……かも」
「めっちゃドギツイちゅうなんかもしてたんやで?」
「う、うそっ」
「こことか」
指で、華の細い首に触れた。
ぴくり、と華は身体を揺らす。
「ここ、とか」
服の隙間から、するりと手を入れて、鎖骨に触れる。きゅうと華が眉を寄せた。
「……っ」
「ちゅうしてたで?」
「あ、アキラくん」
華はその熱っぽい目線を俺に向けて。
「私たち、……そのう。そゆこと、普通に、してたの? あの」
照れて言いにくそうな華の頬に、指を滑らせる。
「えっちはまだやで?」
「ひゃん!」
華は真っ赤になってアワアワしとる。あー、可愛い。
そのあと、手を繋いで、電車に乗って。
あんま金ないから(華が出してくれるいうけど、要はあのばーさんの金やからなんかヤダ)申し訳ないけどファミレスで夕食食べて。
華は今すんでる北野の洋館、その門の前ですんすん泣いている。
あたりはとっぷり真っ暗。じーじーと夏の虫がどこかでないている。
「華」
「やだ、帰っちゃやだよ」
「うん」
「遠距離きつい~」
華はぽろぽろ泣く。
華はこの家を出るのをまだ許されてなくて俺は大学生で。バスケ推薦で行った東京の私立大学で、俺は法律を勉強しとる。
(結局遠距離やねんなぁ)
華の髪を撫でる。華は泣いてて、俺の胸は痛い。
昔と違って、終電までおれるのは大学生の特権かもしれんけど。
「また来るからな」
「いつ」
「来月」
「……うん」
華の綺麗な目から涙が溢れて止まらない。俺やってキツイ。連れて帰りたい。
「電話するな」
うん、と華が俯く。
帰りの新幹線、今日撮った写真やら動画やら見てて俺も少し泣く。横の人がぎょっとしてた。ええやんけ、世界一大切な人とまた1ヶ月会えへんねんで?
言うても翌日から日常が始まる。朝練行って授業受けてまた部活。部活終わったら1コマだけ塾講のバイト。金稼がなあかん。交通費だけでバカにならんからなぁ……。
その週は試合があって、アップしとるとマネージャーが寄ってきて「先週どこ行ってたの?」と聞いてくる。
「彼女んとこ」
「それ、ほんとー?」
マネージャーが疑うような目線を向けてくる。その目に恋愛感情はなくて、……ふうん。
「誰かに何か言われてんの?」
「んん? んー、まぁ。端的に言うと彼女が本当にいるのか確かめてって頼まれてる」
「ほんまにおるわ、そんなん」
「見たことないもん」
「見せたないもん」
軽い押し問答をしてると、チームのやつが少し高いテンションで「なあなぁ」とやってきた。
「なん?」
「見た?」
「何がや」
「めっちゃカワイイ子来てる! 誰かのファンかな」
オレだったらいいのに、って言うそいつの視線の先に、……華がいた。
「……!!」
「あ、なに? タイプだった?」
「当たり前やドンピシャやアホ」
「……え、彼女は?」
俺が彼女、華にベタ惚れなのはチームのやつらは知ってるから少し驚かれる。
無視して体育館飛び出して、ホールから客席に向かう階段を駆け上がる。
「華!」
「あ、アキラくん~」
華はにこにこ。
俺は少し慌てていた。なんでこんなとこおるんや!
「どうやってきたん!?」
「? 新幹線」
華は首を傾げた。さらりと少し長い髪が揺れる。
華は記憶が色々曖昧なとこがあって、そんな長距離の移動、ひとりでしきるとは思えへん。
「……あ、相良サンか小西サンもおるん?」
「ひとりだよ」
華はにこりと笑う。
「こっそり来たの」
「……こっそり」
「うん」
俺がびっくりしてるのが嬉しいのか、華は楽しそうでえらい可愛い。
可愛いけどやな、……まぁええわ!
「華」
「うん」
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