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(桔平視点)

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 俺の上で、俺ので感じながら、亜沙姫さんが自分で動きながら喘ぐ。

(きれい、だ)

 動くたびに健気に締まるナカ。亜沙姫さんのたっぷりとした乳房が揺れる。
 彼女のナカで蕩けそうになっている俺の屹立。
 クーラーが効いているのに汗ばんで、血の色を透かすかのように赤らんだ亜沙姫さんの肌。
 半開きの唇から見える、可愛すぎる舌。
 きゅんきゅん締まる彼女のナカは、温かくて蕩けて、柔らかな液体を溢れさせながら俺に絡みついてくる。

「亜沙姫、さん」
「な、に……?」

 とろん、とした瞳で亜沙姫さんは言う。
 この行為に、彼女が夢中になっているのは明白で──俺は心底、彼女を(無理矢理にでも)手に入れておいて良かった、と安堵した。
 他の男と、こんな風に行為に耽溺されるようなことにならなくて、本当に良かった、と──。
 そう思いつつ、痛いほど膨張した自身が限界を迎えつつあることを自覚する。

「すみません、……っ、俺、もう」

 ずいぶんと保つようになってきていたのに──初めて亜沙姫さんのナカにナマで……その温かさと柔らかさを直接感じることが、肉体的にも精神的にも気持ち良すぎて。
 吐精感でどうにかなりそう。
 亜沙姫さんが「ん、」と頷く。

「イって、くれるの? 鮫川くん。私の、ナカで?」

 なんでこんなに、自己評価が低いんだろう。彼女に植え付けられた、中学時代のトラウマに心底腹が立つ。
 好きだと言いたい。
 愛してる、と──ひとりの女性として、あなたは俺を虜にしてるんだって。
 でもそれを告げることはできない。
 身体だけでも、それだけでも、繋いでおく。ただそのためだけに。

「気持ち良すぎ、ます」

 愛してるのかわりに、小さく彼女の名前を呼んだ。
 亜沙姫。
 俺の、お姫様。
 俺だけの。

「亜沙姫」

 亜沙姫さんがうっすらと笑う。どこか満足げなその微笑みは、ひどく淫らなのにどこまでも清らかだった。
 まるで、宗教画に描かれている聖母のような。──惚れている欲目、なのだろうか?

「……っ」

 俺は彼女の腰を掴んで、ぐちぐちと前後に動かす。ナカが震えて、奥が俺をトロトロに柔らかく包みながらきゅ、と締まる。
 そこへ直接に、欲望を吐き出す。腰が抜けるような快感に、低く息を漏らした。
 亜沙姫さんの力ががくんと抜けて、俺に落ちるようにもたれかかってきた。

「亜沙姫、」

 大丈夫ですか、と言おうとした唇を、亜沙姫さんが塞いだ。
 たおやかな手つきで俺の両頬をはさんで、触れるだけの優しいキス。
 すぐに離れた彼女の汗ばんだ表情は、ひどく穏やかで、満足そうで、なにより、──幸せそう、で。
 そのまま俺の肩の上に頭を預けて、すう、と目を閉じた。すぐに上がる静かな寝息。
 汗で冷えた身体を抱きしめる。ひんやりして、同時に熱い。

「亜沙姫」

 すやすやと眠る彼女のこめかみに、唇を落とす。

「愛してる」

 俺の上でぐっすりと、安心した顔で眠る亜沙姫さんが愛おしくて仕方ない。
 小さくあくびをした。

「……まぁ、いいか」

 お互い汗だくだ。風呂にも入ってないし、亜沙姫さんから溢れた水分と、俺が吐き出した白濁でお互い汚れていて。
 けれど、そんなものどうでもいいくらいに、俺も眠りに引き込まれていく。
 優しい寝息が、脳を蕩かすように眠りの底に俺を誘って──。

 ば、と目を覚ますと朝だった。
 カーテン越しの、まだ早い朝の光。

「……亜沙姫、さん」

 俺の上で眠っていたはずの亜沙姫さんがいない。とりあえず下着だけ身につけて(なんだか色々、カピカピに乾いていた)茶の間へ向かうと、亜沙姫さんが朝食を作ってくれていた。

「っ、すみません」
「んー?」

 亜沙姫さんは振り向く。そうしてなんだか、ふんわりと丸く笑う。

「おはよ」
「……おはよう、ございます」
「かなり疲れてたみたいだから」

 特別だよ、と亜沙姫さんが首を傾げた。そうして少しだけ怒った顔をする。

「眼鏡、大変だったんだよ。なかなか見つからなくて」
「あ」
「濡れ縁に置きっぱなしだった、あは」

 そう言って、そっと眼鏡に触れた。銀縁の、丸眼鏡。

「すみません」
「ううん、私こそ寝ちゃって……っていうか、上で寝ちゃってたね。どっか痺れてない?」
「全然。羽毛のようでした」

 亜沙姫さんが「うそだ」と笑う。
 もうシャワーも浴びたのだろう、すっかり小綺麗に着替えている亜沙姫さんに、違和感。

(……あ)

 胸を押さえつけていない。
 すこしばかりスッキリとした表情。

「あは、あのね」

 俺の視線に気がついた亜沙姫さんは、はにかんで言う。

「ちょっと、前向きっていうか、自信もてたかも」
「……ですか」

 答えながら思う。
 何が彼女をそうさせたのかは知らないけれど、それって、……ライバル増えないか?

「シャツ、ちょっとぱつぱつなんだけれどね」
「……」

 ちょっと? いや、なんというか、ちょっとじゃない。
 清楚な、ほんの少しだけ刺繍の入った白いシャツ。
 ボタンが飛びそうだ。俺は頭を抱えそうになった。

「息がしやすいよ」

 そのままの亜沙姫さんが素晴らしいと思う自分と、素の亜沙姫さんは俺だけが知っていたらいい、という独占欲の狭間で悶々としながらシャワーを浴びる。
 夕食をちゃんと食べていなかったせいか、……いや、亜沙姫さんの料理が美味しすぎるせいか、とにかく黙々と朝食を平らげる。
 食べ終わった俺に、亜沙姫さんは言う。

「あのね、ローションとか必要だったみたい」
「……は?」
「胸でするやつ」

 目の前で、寄せられた。

「買ってきておくね?」
「……いえその、買うとしたら俺が買います」

 ローションを買う亜沙姫さんを想像して、思う。もしレジが男だったら絶対に「いろいろ」想像する。色々、だ。
 そんなもの、させてたまるか。

「そう?」
「ええ」

 力強くそう言うと、亜沙姫さんは少し不思議そうに頷いたのだった。
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