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拐
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祭は賑やかに、時に厳かに進んでいく。
邸の中庭。祭壇が作られたそこで、お義母様が招待したお客様が楽しげに酒宴を過ごしている。
(ほんとうは、畑で働いてくれてる人たちを労うお祭りなのに)
小作人、と呼ばれる彼らの姿は見えない。いるのはお義母様が招いたお義母様お気に入りのお客様たちだけ。
そんな中、私は手に汗を握りながら、叫びたいのをじっと堪えていた。
(……もうすぐ生贄の時間)
恐怖で胸がいっぱいになる。
可愛い赤麒。あたたかい赤麒。美しい赤麒。
私と浩然にだけ懐いて、周りを困らせてーーでもそんなところが、また堪らなく愛おしくて。
「では耳の準備をしよう」
祀を司る方士が、ゆったりと告げる。
私はびくりとそのお爺さんを見つめる。お義母様が心なしか嬉しそうに、口の端を緩めた。
(なんで)
私にはやっぱり分からない。
なんで、そんなに私が憎いのですか?
「さあ! さあ、連れておいで、あの駄馬を! 忌々しい、あの馬を!」
ぶひひん、という荒々しいいななき。
下男たちが数人がかりで、手綱だけを付けられた赤麒を連れてこようとしている。私は息を飲んで、思わず叫ぶ。
「赤麒!」
涙声の私を、方士のお爺さん以外が嘲笑するように笑った。
(本当に、皇上は助けてくれるの?)
頭がグルグルして、苦しくてーーそこでやっと気がついた。
「……この、牌?」
そうだ、この牌は皇上の庇護下にある証!
ぐっと握りしめ、いざ声を上げようとした瞬間ーーふと気がつく。
(ダメだ、お義母様たちはこれを偽物だと思ってる)
私の言うことなんか、聞いてくれないかもしれない!
頭を真っ白にして、でも動かなくてはと焦っていると、さっきまで聞いていた、穏やかな声が降ってきた。
「いい馬だ」
ば、と振り向く。そこには立派な黒い馬に乗った、ひとりの少年。
落ち着いた色合いの黄、黒目がちの大きな瞳は少し驚いたように赤麒を見ている。
背後には、揃いの墨色の軍服を着た、数人の騎馬兵。
「思った以上だ」
そうして私を見てほほえんだ。
「本当に、俺に?」
「……っ、はい!」
馬上にいる皇上を見上げながら、私は叫ぶ。
「差し上げます! 差し上げます、皇上! あの赤麒は、いまより貴方様の馬でございます!」
あの子の命が助かるのなら!
(もう会えなくたっていい)
構わない。お前が幸せなら、それで。
皇上は、きっとお前を大事にしてくださるよ、赤麒!
叫ぶ私を呆然と見ていた周りの人々が、はたと気がついたように平伏していく。
「皇上」
「本当に?」
「ああ、一度お会いしたことが」
お客様の何人かは官僚だ。どうやら顔を知っていたらしく、皇上なのは間違いないが、なぜここにいるのかは分からない、という風情だった。
視界の隅で、お義母様が震えていた。顔面中に困惑の色が浮かんでいる。
「な、なんで? あんなもの、偽物だろうと、偽物にきまってる」
ぼそぼそ、とお義姉様と言い合う声が聞こえてきた。
(そりゃあ、そうか)
牌が偽物だと思っていたのに、本物の皇帝が現れた。それは、混乱する。
「この馬をな、もらう約束をしていたのだ」
皇上は、馬上からお義母様に話しかける。
「良いだろうか」
「……は」
お義母様は、ぷるぷると震えた。
皇帝にそう問われて、はい、以外に返答できるだろうか。
(……司馬様だったらできるだろうけれど)
当の司馬様は、なにやら難しい顔で馬に乗って後ろに控えている。
(お仕事態?)
軍服を着ると、少しふざけた感じが減って凛々しく見えた。
「しかし、随分と荒いな」
「じ、嫦娥! 赤麒を落ち着かせなさい!」
お義母様が取り乱して叫ぶ。私は急いで赤麒のところへ向かう。
「赤麒、赤麒、落ち着いて、私だよ。ごめんね会えなくて、寂しかったね、ごめんね」
そう言って首筋を撫でると、やがて赤麒はふんす、とため息のような鼻息を出してゆっくりと落ち着いた。
「見事なものだな」
「ありがとうございます」
微笑んで皇上を見上げる。
「乗って良いか?」
「ええと、はい」
赤麒をちらりと見上げた。
(お願い、暴れないでね)
ひらりと黒馬から降りてきた皇上は、鞍も鎧もつけずに、またひらりと赤麒に飛び乗る。
赤麒は暴れはしないものの、不機嫌そうに鼻を鳴らした。
「俺が嫌なんだな」
皇上は笑った。
「ならば」
「へっ!?」
手を引かれ、皇上と目が合う。
「嫦娥も乗って」
手を伸ばされる。
目が合った。真剣な目で、皇上は笑った。
「おいで」
その手を、そっと取る。
引き上げられるように、赤麒の背中に……というより、皇上の膝の間に横向きにおさまった。
まるで、そう、物語のお姫様のように。
「よし。では嫦娥も貰っていくとしよう」
「は?」
「構わないか? 後宮へ召し上げる」
お義母様は平伏したまま、はぁ、ともいえ、ともつかぬ声を出す。
私は目を見開いた。……後宮?
(漫画では、もっと後のはず)
そもそも司馬様へ嫁いでもいないのに!?
「よし、いこう」
「ちょ、ちょっとお待ち下さいっ、皇上」
ゆっくりと赤麒を歩き出させつつ、皇上は私を見て目を細める。
「あー、強引で済まない。でもこうでもしないと、君をこの家から引き離せないかなって」
「そ、そうではなくって」
私は、約束が!
(浩然!)
そのとき、鋭い馬のいななきと共に、目の前に誰かが立ち塞がる。
「嫦娥っ!」
「浩然っ」
浩然が強い目で皇上を見つめるーーが、すぐに困惑した顔で肩を揺らした。
「……皇上?」
着物の色に、引き連れた騎馬で、そうであると気がついたようだった。困惑が隠せない、そんな表情で浩然は固まる。
「こらてめー、馬から降りろ、誰の目前だと思ってんだコラ」
「磊、落ち着きなよ」
馬で浩然の前に出る司馬様に、皇上は穏やかに言った。
「お、皇上」
私はなんとか声を絞り出す。
「これは浩然と申しまして、私の乳兄弟です。彼を置いて私、行けません」
浩然をこんな家に置いていくなんて、そんなことできない!
「乳兄弟」
皇上は首を傾げた。そして笑う。
「わかった。磊」
「は」
「キミに預けます」
「はぁ!? なに言ったんだてめー、じゃなくて何を仰るのです皇上」
「文字通りさ」
皇上は穏やかに言う。
「馬に乗るのも得意そうだ。いい軍人になるんじゃないか」
「そうじゃなくってですねぇ」
茫然としている浩然に、皇上は笑いかけた。
「よろしくね浩然」
浩然は、彼はーーただ、顔色をなくして私を見つめていた。
皇上に抱かれるようにしている私を、ただ、じっと見つめていた。
邸の中庭。祭壇が作られたそこで、お義母様が招待したお客様が楽しげに酒宴を過ごしている。
(ほんとうは、畑で働いてくれてる人たちを労うお祭りなのに)
小作人、と呼ばれる彼らの姿は見えない。いるのはお義母様が招いたお義母様お気に入りのお客様たちだけ。
そんな中、私は手に汗を握りながら、叫びたいのをじっと堪えていた。
(……もうすぐ生贄の時間)
恐怖で胸がいっぱいになる。
可愛い赤麒。あたたかい赤麒。美しい赤麒。
私と浩然にだけ懐いて、周りを困らせてーーでもそんなところが、また堪らなく愛おしくて。
「では耳の準備をしよう」
祀を司る方士が、ゆったりと告げる。
私はびくりとそのお爺さんを見つめる。お義母様が心なしか嬉しそうに、口の端を緩めた。
(なんで)
私にはやっぱり分からない。
なんで、そんなに私が憎いのですか?
「さあ! さあ、連れておいで、あの駄馬を! 忌々しい、あの馬を!」
ぶひひん、という荒々しいいななき。
下男たちが数人がかりで、手綱だけを付けられた赤麒を連れてこようとしている。私は息を飲んで、思わず叫ぶ。
「赤麒!」
涙声の私を、方士のお爺さん以外が嘲笑するように笑った。
(本当に、皇上は助けてくれるの?)
頭がグルグルして、苦しくてーーそこでやっと気がついた。
「……この、牌?」
そうだ、この牌は皇上の庇護下にある証!
ぐっと握りしめ、いざ声を上げようとした瞬間ーーふと気がつく。
(ダメだ、お義母様たちはこれを偽物だと思ってる)
私の言うことなんか、聞いてくれないかもしれない!
頭を真っ白にして、でも動かなくてはと焦っていると、さっきまで聞いていた、穏やかな声が降ってきた。
「いい馬だ」
ば、と振り向く。そこには立派な黒い馬に乗った、ひとりの少年。
落ち着いた色合いの黄、黒目がちの大きな瞳は少し驚いたように赤麒を見ている。
背後には、揃いの墨色の軍服を着た、数人の騎馬兵。
「思った以上だ」
そうして私を見てほほえんだ。
「本当に、俺に?」
「……っ、はい!」
馬上にいる皇上を見上げながら、私は叫ぶ。
「差し上げます! 差し上げます、皇上! あの赤麒は、いまより貴方様の馬でございます!」
あの子の命が助かるのなら!
(もう会えなくたっていい)
構わない。お前が幸せなら、それで。
皇上は、きっとお前を大事にしてくださるよ、赤麒!
叫ぶ私を呆然と見ていた周りの人々が、はたと気がついたように平伏していく。
「皇上」
「本当に?」
「ああ、一度お会いしたことが」
お客様の何人かは官僚だ。どうやら顔を知っていたらしく、皇上なのは間違いないが、なぜここにいるのかは分からない、という風情だった。
視界の隅で、お義母様が震えていた。顔面中に困惑の色が浮かんでいる。
「な、なんで? あんなもの、偽物だろうと、偽物にきまってる」
ぼそぼそ、とお義姉様と言い合う声が聞こえてきた。
(そりゃあ、そうか)
牌が偽物だと思っていたのに、本物の皇帝が現れた。それは、混乱する。
「この馬をな、もらう約束をしていたのだ」
皇上は、馬上からお義母様に話しかける。
「良いだろうか」
「……は」
お義母様は、ぷるぷると震えた。
皇帝にそう問われて、はい、以外に返答できるだろうか。
(……司馬様だったらできるだろうけれど)
当の司馬様は、なにやら難しい顔で馬に乗って後ろに控えている。
(お仕事態?)
軍服を着ると、少しふざけた感じが減って凛々しく見えた。
「しかし、随分と荒いな」
「じ、嫦娥! 赤麒を落ち着かせなさい!」
お義母様が取り乱して叫ぶ。私は急いで赤麒のところへ向かう。
「赤麒、赤麒、落ち着いて、私だよ。ごめんね会えなくて、寂しかったね、ごめんね」
そう言って首筋を撫でると、やがて赤麒はふんす、とため息のような鼻息を出してゆっくりと落ち着いた。
「見事なものだな」
「ありがとうございます」
微笑んで皇上を見上げる。
「乗って良いか?」
「ええと、はい」
赤麒をちらりと見上げた。
(お願い、暴れないでね)
ひらりと黒馬から降りてきた皇上は、鞍も鎧もつけずに、またひらりと赤麒に飛び乗る。
赤麒は暴れはしないものの、不機嫌そうに鼻を鳴らした。
「俺が嫌なんだな」
皇上は笑った。
「ならば」
「へっ!?」
手を引かれ、皇上と目が合う。
「嫦娥も乗って」
手を伸ばされる。
目が合った。真剣な目で、皇上は笑った。
「おいで」
その手を、そっと取る。
引き上げられるように、赤麒の背中に……というより、皇上の膝の間に横向きにおさまった。
まるで、そう、物語のお姫様のように。
「よし。では嫦娥も貰っていくとしよう」
「は?」
「構わないか? 後宮へ召し上げる」
お義母様は平伏したまま、はぁ、ともいえ、ともつかぬ声を出す。
私は目を見開いた。……後宮?
(漫画では、もっと後のはず)
そもそも司馬様へ嫁いでもいないのに!?
「よし、いこう」
「ちょ、ちょっとお待ち下さいっ、皇上」
ゆっくりと赤麒を歩き出させつつ、皇上は私を見て目を細める。
「あー、強引で済まない。でもこうでもしないと、君をこの家から引き離せないかなって」
「そ、そうではなくって」
私は、約束が!
(浩然!)
そのとき、鋭い馬のいななきと共に、目の前に誰かが立ち塞がる。
「嫦娥っ!」
「浩然っ」
浩然が強い目で皇上を見つめるーーが、すぐに困惑した顔で肩を揺らした。
「……皇上?」
着物の色に、引き連れた騎馬で、そうであると気がついたようだった。困惑が隠せない、そんな表情で浩然は固まる。
「こらてめー、馬から降りろ、誰の目前だと思ってんだコラ」
「磊、落ち着きなよ」
馬で浩然の前に出る司馬様に、皇上は穏やかに言った。
「お、皇上」
私はなんとか声を絞り出す。
「これは浩然と申しまして、私の乳兄弟です。彼を置いて私、行けません」
浩然をこんな家に置いていくなんて、そんなことできない!
「乳兄弟」
皇上は首を傾げた。そして笑う。
「わかった。磊」
「は」
「キミに預けます」
「はぁ!? なに言ったんだてめー、じゃなくて何を仰るのです皇上」
「文字通りさ」
皇上は穏やかに言う。
「馬に乗るのも得意そうだ。いい軍人になるんじゃないか」
「そうじゃなくってですねぇ」
茫然としている浩然に、皇上は笑いかけた。
「よろしくね浩然」
浩然は、彼はーーただ、顔色をなくして私を見つめていた。
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