喜劇・魔切の渡し

多谷昇太

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第一場 魔切の渡し場

お邪天に来た天使

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再びBGM「矢切の渡し」。天使の乗った船が下手から現れる。陸に上がった悪魔の頭を竿で叩く。BGM止む。

悪魔「痛(て)っ。あっ、またお前……」
天使「何がまただ、このお。誰が色男だ?おめえが色男なら俺なんかどうなっちゃうの?さしづめ神様か天使……あ、俺天使だっけ……?」
悪魔「なーにをゴチャゴチャ云ってやがる。このかっぺ天使!いっつもいっつも俺の邪魔をしに来やがって」
天使「邪魔っつうんならおめえだって云うの。(観客に)この意味わかります?おい、悪魔。また何か悪だくみしてっぺ。こんどの目当ては、ははあ、向こうさ歩いて行くあの子だな?ダメだよ!あの子からは綺麗なオーラが出てるっちゃ。逆立ちしたっておめえなんかにゃ靡かねえ。諦めな」
悪魔「置きやがれ、かっぺ。このおせっかい野郎。いいか?都会はな、この俺様、悪魔の領分よ。てめーみたいなかっぺは福島でも能登でも、とっとと帰(けえ)りやがれ!」
天使「なんで福島か能登なのよ」
悪魔「当た棒じゃねーか。この地震で天使の助けが要るだろうが?おお?政府の救助活動は遅いしよ。(観客に)ねえ、皆さん、そうですよね?はい、拍手ーっ!」
天使「このやろ、受けやがったな。そっちの方はまんず、はー、おらの仲間が大勢行ってるずら。万事抜かりはねえよ。おめえの餌食にされるあの子の方がまんず心配だっちゃ」
悪魔「てめえ、いったいどこのかっぺだ?福島か秋田か静岡か、ハッキリしろい。だいたいな、あの子にはある婆さんを介して因縁があるんだ。婆さんから元を取りに来たまでのことよ」
天使「お米婆さんだっぺ?あの業突く婆の」
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