ゼフィルス、結婚は嫌よ

多谷昇太

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チェリッシュ

あたしがこの子のマスターさ

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 惑香の腕をつかんでいたボンボンの腕を逆につかみ返しては惑香から引き離し、その当時流行っていた横浜銀蝿の決めゼリフを美枝子が口にする。「悪いな、坊や。ほかあたってくれよ。あたしがこの子のマスターさ」宝塚の真矢ミキのような男気を丸出しにして、また何より気合いの格の違いをあからさまにして眼を飛ばすと、ボンボンは一瞬でちぢみあがり、マッチョ男もたたらを踏まされた。その隙に惑香を引き連れてすばやく離れる。二人は唖然として見送るしかなかった…。

 【「待ちな、ぼうや。そうは行かせないよ」美枝子の突っ張りのイメージ?】


かかるアクシデントの直後だったので、またかくも頼もしい美枝子もいまはおらず、突然現れた義男に思わず警戒感をもよおしたのだったが、しかし先述したとおりにそのようなチンピラどもを連想させるような義男では元よりない。むしろその雰囲気にとても好感が持てた。「あなたにピュア…」とかなんとか云っていた美枝子のミステリー談義を惑香は確かめたくもあったのである。では話を青山のベーカリー喫茶店に戻そう。
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