自らを越えて 第一巻

多谷昇太

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マドンナ、大伴朗子(おおともあきこ)

マドンナの誘い

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そのあからさまな笑いに俺はすっかりパニくってしまい連れの2人や大伴さんへ交互に目を遣るばかりだ。しかしそれを見咎めた大伴さんが2人に振り向いて注意をする。「ちょっとお、カナとミカ、失礼でしょう?大きな声で笑ったりして」と嗜めてから「ごめんなさいね、村田君。この子たちは私の近所に住んでる子たちで、私の幼馴染なの。呼び名はカナとミカ。(2人へ)はい、カナとミカ、村田君に自己紹介して。こちらは私が出た高校の後輩で村田君って云うの。あなたがたよりひとつ年上よ」と促した。2人は互いに目を見合わせたあとシュラッグする風にしてから「カナ、北田加奈子です」と1人が云い今一人が「ミカでーす。吉井美香」と述べた。俺はぎこちない笑顔を浮かべながら「ど、どうも。村田です」とだけ返す。なぜ大伴さんが俺の名を知っているのかまた「お久しぶりでした」とは何からのことを云うのか質したかったが、前記来縷々記したように俺とは〝異種人種〟たる、健康で陽気な人達の邪魔など絶対にしたくなかったし(まして女性たちならなおさら)、大伴さんと一度でも口が聞けたことだけで大いに満足して、その幸福のままに一刻も早くこの場を立ち去りたかったのだ。しかし成り行き上去りも去りならず大伴さんの采配に任す他なかった。その大伴さんが「村田君、そのいでたちはひょっとして登山?どこに行くの?」と訊いてくる。俺は、まさか、まさか、私たちも登山で丹沢に行くなどと云いはすまいなと危惧しながらも「はい、丹沢です」とやってしまう。すると大当たりだった。「ああ、そう。丹沢。それだったら私たちもこれから行くところよ。どう?村田君、ご一緒しない?(カナとミカにふり向いて)いいでしょ?あんたたちも。男子がいた方が楽しいでしょ?」とそれぞれの意向も訊かないで一方的に大伴さんが決め込む。カナとミカは当惑したように顔を見合わせながらも中途半端に頷いて諾を告げた。あとは俺だ。
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