サマネイ

多谷昇太

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第一章 女買い

六道輪廻

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 仏教用語で六道輪廻というものがある。何度も何度も同じあやまちをくり返すことを云うのだが、実際この夜の顛末はそれをよく物語っていた。「これから俺は生き直す、精進するんだ。だったらその前に…を」が実に多い俺だった。しかし現実には…が永遠に続くのであって、精進と称す最中にでも中休みとかなんとか自分を偽って、それをひんぱんに生起させてしまう。畢竟我人生にまぼろしの精舎を何度造ろうとも、まぼろしはまぼろしでしかなかった。そしてついには還俗し果て、佐々木の哄笑が響きわたるばかりである…。

      【六道輪廻から出でられず…佐々木の哄笑 from pinterest】
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