バー・アンバー 第一巻

多谷昇太

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第四章 娼婦殺人事件

今は2021年だ

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「アキね。わかりました。忘れないわ、そのこと」
「本当かな?じゃアキ、俺がさっき云った俺の携帯番号覚えてる?いや、疑うわけじゃないけどさ。ははは」
「大丈夫よ。いい?080の75✕✕…、080の75✕✕…でしょ?わたし記憶力いいんだから。ふふふ」
「だろうな。ははは。何せあんた✕✕大学出の✕✕電力に、それも総合職に進んだ人だから」と俺はおだて上げながらもこの人物の大様さというか、割り切りの速さというか、今の自分の状況を主観なしで(?迷うが…)的確につかむ性癖に驚いていた。そもそもつい今まで慟哭にむせんでいた人間(霊)がかくも早く立ち直れるものだろうか?まったく分からない。しかしさはさりながら俺には彼女に伝えねばならない、認識させねばならないことがどうしてもまだ一つあった。いま自分を取り戻したとは云え、不幸の内に亡くなった霊であるならば、才女であろうとなかろうと、肝心なことを果して認識しているかどうか危ぶんだからだ。何せこのような、普通現実にはあり得ない〝霊との対話〟など始めてなのですべてが手探りだ。俺は彼女がまたパニックに陥りはしまいかと恐れつつもこう聞かざるを得なかった。「でね、ミキ、もうひとつハッキリさせて置きたいことがあるんだけどさ。いいかい?よく聞いて。ミキ、いまは2021年の10月で今の元号は令和というんだよ。たぶん…」とミキの反応を確かめながら云うのに「え?2021年?れ、令和?」とミキの顔色が変わった。やっぱり危惧した通りかと思いつつ「そう、2021年…」と俺は噛んで聞かせるようにもう一度云う。そして〝冷酷にも〟そのまま言葉を続けた。
「たぶん君の頭の中では今だに199✕年、つまり平成✕年の✕月だと思うんだけど…」
「え、ええ…それはそうよ。だってわたし、い、今こうしてあなたとお話しているし、だったら…」とここまで云ったところでミキはハッとばかりに息を飲んだ。どうやら肝心なことに思い至ったようだ。
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