バー・アンバー 第一巻

多谷昇太

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第七章 社会福祉施設の実態

介護への道

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眠れなければ仕事が出来ず致し方なく住み込みOKな介護職に就いたのだが、まさかそれが今に至る介護系のフリージャーナリストへ続く道とは思いもしなかった。とんだ怪我の功名(?…になるのかな?)だったがとにかく、その静岡の老人ホームに居たヘルパーたちは誰も皆まじめで、粛々と〝汚れ〟仕事を熟していた。分けてもある一女性ヘルパーの姿が忘れられない。彼女は実にまめまめしく働き、他のヘルパーたちを教え指導し、そこの職場になくてはならない存在だったのだが、逆にそれゆえのことだろうか男性の施設長から度々叱責を受けていた。実務など何も知らず顧みない施設長であるのにも拘らず、彼女の仕事ぶりが悪い、他のヘルパーへの指導が足りないとか云ってよく叱責していたのだ。ヘルパーの出入りが激しいのも彼女のせいだとか云う(事実は3K職場に堪えられず止めて行く者が多かっただけの話だ)。そうしておけば他のヘルパーたちへの見せしめとなり訓戒にもなって都合がよかったのだろうが、しかし叱責される折りのその彼女のくやしそうな表情(かお)が今でも忘れられない。すべてに堪えて働き続けなければならない自分の家庭の事情がある…とその顔は語っていた。またそれとは別にパートで来ていた別の女性ヘルパーで南島さんという名の女性などは、こちらは自身で美容院を経営している身だった。その商売柄か実にセンスのいい髪形をし、綺麗な人なのだが(こう云っちゃ悪いが)静岡県の地方という場所柄のせいか美容院の収入だけでは暮らして行けなかったようで週何日かのパートで働きに来ていたのだった。その南島さんがこちらはこちらで施設長にではなくある傲慢な入居者に腹を立てていた。生活保護で入居していた、ある男性の入居者で、そのおかげで人(ヘルパー)に傅かれて暮らしているのにも拘らず、我々ヘルパーに対して実に傲慢な態度を取るのだった。曰く「小水の取り方が悪い」「俺への御数の料理具合はこうだと云ったろ?!」とかホントによく云えるものだと正直思ったものだ。まだ40前くらいの男性入居者なのだが筋ジストロフィーでもあったものか下半身がまったく動かず、自分の運命を呪っているような風情があったのだ。しかしそれであるにせよその気難しさ加減に比類はなかった。ある時など度が超えていたようで別棟にいる彼へのケアを終えて帰って来た南島さんが顔を赤らめながら「ねえ、田村さん、どう思う?あの人、生活保護でここに来ているんだよ。それなのによくああいう態度が取れるもんだねえ」と激高している。
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