バー・アンバー 第一巻

多谷昇太

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第八章 天国と地獄のサスペンス(1)

サマンサ・クリニックへ

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E・スェーデンボルグの言葉で「この世の人たちは死んだように生きている」というものがあり「時には夢の途中であなたは迷子になり、より良いものを見つけます」なる言葉をツイッターで見た覚えがある。どちらもその通りだ。渋谷の地縛霊たちの悲しみや苦しみは絶対だった。なぜそうなのか?死後ああなるのだったら人は誰も死にたくないだろう。おそらく真実は逆なのだ。生前霊としての、いや〝魂〟としての自覚をまったく慮らず(換言すれば「自分は何のためにこの世に生まれて来たのか?」を問わず)肉体や物質への快感原則のみに生きてしまった結果がああなのだろう。俺はああはなりたくなかった。気障な云い方を許してもらうなら俺は夢世界で実感し得たイブの光の指向を俺なりに模索し、体現し、またミキの闇(同時にこれは俺の闇!そして万人の闇でもある。その分けは後述する…)をぜひとも晴らしてみたいのだ。いや、晴らさねばならない。「人間というものは良くも悪くも内外の次元を結びつけて、新たな世界を〝変貌〟させてゆく存在」という教えをかつて某宗教団体で聞いたことがある。もしそれであるならば、俺が世界を変貌させるその指向は、その具体策は、先の2つでしかないのだ…。
 さて生理的欲求も果たし終わったし、やおらベンチから立ち上がると俺は来た道を戻って行き、今度は虎ノ門へと向かう。山口との約束時間までにはまだ間があった。邵廼瑩との邂逅はあっけなく終わってしまったので空いた時間に今一人の重要なターゲット、すなわちМAD博士を訪おうと思ったのである。邵廼瑩に告げて効果覿面だったあのサマンサ・クリニック、バー・アンバーでミキが必死の思いで書いてよこしたこのクリニックこそ、МAD博士が開業する医院ではないかと、俺はそう推理したのだった。邵廼瑩が何らかの理由でここにかかりそこでМAD博士と関係を持ったのではないかと。ミキが邵廼瑩の身体に乗り移り、邵廼瑩がはからずも身を霊媒としてささげてしまった所こそ此処なのかも知れない。場所も日本プレスセンタービルから遠からず、精神科にかかることを慮った邵廼瑩が同僚社員らに白眼視されることを恐れて、近在にあったこのクリニックに掛かったのだろう(プレスセンタービル内に精神科クリニックがあることを俺はネットで調べていた。彼女はわざわざここを避けた分けだ)。
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