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ジェダイト編
17、予言
それから慌ただしく時間は流れ、あっという間に、西峨方面へと進軍を始める前日になった。
ここ数日、軍と協議を重ね、暁の鷹の行動についてもおおむねの指針が出された。まずは軍に同行して西峨に入り、それから作戦を開始する。
大きな武器や大砲があるわけではないから、準備は呆気ないものだった。空いた時間で、雪華は久しぶりに薫風楼へ行ってみることにした。
「あら雪華、久しぶりじゃない」
「ああ。最近忙しくて。藍良は元気そうだな」
冬の盛りでも、薫風楼の最高級妓女はすでに春を迎えたかのような華やかな笑みで迎えてくれた。そんな藍良に、明日からの予定を軽く伝える。
「そう、しばらくいないの。……分かってるとは思うけど、無茶しないでよ。報酬が入ったって命がなくちゃ意味ないんだから」
「分かってる。また帰ってきたら顔を出すよ」
「絶対よ? あんた薄情だから今ひとつ信用できないけど、あたし、あんたの骨なんて見たくないからね」
「私も骨にはなりたくないよ……」
軽口で応酬しながらも、なんだかんだで心配してくれる気持ちが嬉しい。藍良は少しの間雪華を見つめ、ふいに口を開いた。
「あんた……もう、大丈夫なの?」
「え……。あ、ああ」
憂いを帯びた大きな目に、ぎくりとした。
……そうだ。藍良にもあのあと心配をかけたのだった。
何でもないような顔で笑うと、納得しかねるといったような表情ながらも藍良はしぶしぶ頷く。
「本当に、無理しないのよ。……あ、そうそう。そういえば、シルキアの彼との仲はどうなったの?」
「……っ!」
「え……。ど、どうしたのよ。何かまずかった?」
「いや、ちょっと驚いただけだ」
悪気ない様子で問いかけられ、大きく肩が跳ねた。目を見開いた藍良へ、雪華は苦笑いを浮かべる。
「噂だと、どうやら本国に帰ったみたいだな。挨拶もできなかった」
「あらそうなの、残念。あんたちょっと本気っぽかったから、何かあったかと期待したのに」
「まさか。そういうのじゃなかったんだ、本当に。……すぐ忘れる。きっと向こうも、そうだ」
「そーお?」
なかばそう祈りながら告げると、藍良は神妙な顔で首を傾げた。そして物憂げにつぶやく。
「戦場で出会ったりしなければ、いいわね。何もなかった相手でも、さすがにそれはちょっとね」
「……そう、だな」
何かの予言のようなつぶやきが、胸に刺さった。雪華は曖昧に頷き、立ち上がる。
藍良に見送られて薫風楼を去っても、その言葉だけがぐるぐると胸を回っていた。
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