憂鬱とサキュ

Alice

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プロローグ

なんでも部の始まり《後編》

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あの先輩から本を持ってかれてから次の日、またあの先輩が目の前に居た。
今度は何か紙を片手に何やら怪しい笑みを浮かべ立っていた。   

「先輩、あんたが昨日持ってった本を返してください。」 

「あ、それなら私が代わりに返してきたよ~!!」

「そうですか。」の一言で本に目を移す。
ん?今この先輩なんて言った? 
耳をただ疑うしかない。

あれはまだ読みかけで昨日読んでいるところがこれから面白くなっていくところだったのにこの先輩は何を?

「まさか、返してきたって……本当ですか?」

「そうだけど、どうしたの?」と案の定不思議そうな顔をしながらそう言った。
嘘だろ……俺がまた借り直さなきゃいけないのか。

「そういえば、君は読書が好きなんだね?」

「そうだとしたらなんだって言うんですか。」

そう言いながら、その先輩が返したも言う本を借りに席を立つ。

「1人で読書じゃつまんないんじゃない?」

なんで急にそんなこと言っていたんだろうか。
俺はただ「別に、俺は楽しいですけど。」の一言を返した教室から出る。

「嘘つき。
目は、嬉しそうじゃないよ。全く笑ってない。」

知るかよ。  
なんであんたみたいのに世話を焼かれなきゃ行けないんだ。

「ハイハイ、そうですか。
よく他人に言われるんですよ。感情が薄いって。
多分そのせいだと思いますよ。」

「そうかな?
私には、もっと他に何があるようにしか見えないよ?」

その言葉はまるで俺の心の底を見透かすかのような言葉、そして俺を見つめる一筋の目。

「そんな君に朗報だ!!!
今なら君の悩みを部員になるのと引き換えに聞いてあげよう!!!」

このタイミングでか?
持つといいタイミングっていうのがあるんじゃないのか? 

そもそも俺の悩みが、この人の手によって解決される訳でもない。

なんなら、こんな奴に俺の家の事情が解決出来たら俺もこんなやけくそに勉強をして、家から出てこうだなんて考えは持ったりしない。
そうぐるぐる考えているとまるで馬鹿にされている気分になった。

「悪いけど、そういう変な勧誘し方する部活には、入らないようにしてるんだ。
他を当たってくれよ。」

そう言い放つと、また俺の唯一の楽しみの図書室に向かった。
そういえば、昔の俺ってこんなふうにきついことを言うようなやつじゃなかっ多様な気がする。

昔はもっとこう……色んなことが好きで興味が湧く物を目にすればとことんやる。  
その上にキツイ言葉なんて一切口にしなかった。

けど、ココ最近だったはず。
あの俺の大好きな家庭あそこ父親あの人の手によってボロボロに壊れてしまう前までは、俺もあんな冷たい人間になることもなかった気がする。

昔のことを考えながら廊下を歩いていた。
懐かしいことからあの日以来の出来事を思い出していた。


その時に湧き上がった父親あの人への怒り。



「クソッ!!!!ふざけんじゃねぇよ!!!
なんであんな奴のせいで……あんな奴のせいでっ!!!!」

なんで、こんな時にあのことを思い出してしまったのだろうか……

そんな静かな廊下には、俺の悔しがる叫ぶの声が響き渡った。
本当に朝とは思えないくらい響いたはず。
なのに教師に1人も駆けつけて来ない。
ここからじゃ職員室も遠いわけだから、聞こえなくても仕方ないわけだけど、さすがにこのままイライラして怒ってても仕方ない。
この怒りを心の底にねじ込んで耐えなければいわけない。
落ち着け、あんなことでイライラしていたら俺まで父親あの人のようになってしまう。
その怒りの感情をどうにか沈めてまた歩き出す。 
 
いつもの通っている図書室に着くと早速あの先輩が返したという本を探し始めた。
それから数分……全ての場所を探したがない。

「あの先輩一体どこに本を返したって言うんだよ。
まさかのポストの方か!?」

そう1人呟きながら後ろを向くといつの間にいたのかまたあの先輩が返したという本を片手に立っていた。

「君、こういうの読むんだ!
意外と内容が難しいもんだね~!」

「その本返してください。まだ読みかけなんですけど。」

「ごめんごめん!君がいつも読んでいる内容が気になってね!」

絶対別の理由だ。
一体どういう理由で人のを盗んでこんな馬鹿みたいなことをしているんだろうか。 

「君~!そんな怖い顔せずとも返すってば!」

なんでそんなにこの人は笑っていられるんだ?
俺は家に帰れば父親あの人からの嫌がらせ、暴力という地獄が待っていて、この人みたいに幸せな家庭が家に待っているわけじゃない。

だからこそだろうか、水槽のかさが増すみたいに俺の中の怒りが湧き上がってきた。

それに耐えることができなかったせいかついに我を忘れ怒ってしまった。

「何がそんなに可笑しいんだよ!!
あんたはなんのつもりで俺に近寄ってくるんだよ!! 
俺はあんたみたいなやつを相手してる暇なんてないんだよ!!」

ついに先輩であることも関係なく敬語でさえもなくなり怒鳴り散らしてしまった。
だが、その先輩は余裕そうな笑顔のままだった。

「まぁまぁ、落ち着こうよ!
確かに私は君の悩みを解決すること出来ないよ。
だって、私は君の心の声なんて聞けるわけじゃないし、その上に超能力者なわけでもない。」

そう言いながら、こちらに近寄ってきた。
本を片手によってきた先輩は、さっきの笑顔とは違う真剣な顔になっていた。

「でも、心の中に溜まった苦しみとか家庭事情を聞いて、君をその苦しみから助けてあげることはできるよ?」

そう言いながら、先輩は俺から取った本と共に入部届け出を渡してきた。
どうやらこの人は、入部させる以外の選択を選ばせない気でいるようだ。

「じゃあ、この入部届け出持って、相談に来てくれるの待ってるから放課後ちゃ~んと忘れずに来てね!!!」 

まるで、俺がその部室に行く前提で会話が終わり、出ていってしまう。
なんだろ、まるで嵐の中を突っ走るように終わった。
その先輩が出ていってしまったあと図書室には、また静けさが戻ってきた。
そして渡された入部届け出を見る。
そこにはと書かれた入部届け出があった。

「そんな部あったか?」と今まで見て回った部活のことを何度も糸を手繰り寄せるように思い返していた。
だが、いくら考えてもこの学校には、なんてものは存在しないのだ。

……まさか俺は変な部の部長に捕まったのではないか……、そう考えた。

その放課後の廊下は、帰宅を準備する生徒の声や体育部の掛け声、吹奏楽部の楽器の音等の色んな音に溢れかえっていた。
もちろん、入部届け出なんて持ってきていない。
1人、俺はなんでも同好会部が活動しているという部室の前に立っている。
そして 、その扉に手をかけるとすっと開けて入っていく。

部室と思わしき部屋の中は、長い机と前後を机を挟んだ対面にソファが2つあるだけの部屋だった。
そしてその机の前に今朝見かけたあの顔があった。

「来てくれたんだね!
それに部活が始まるぴったりに、もしかして君、真面目ちゃん?」

なんで、この人は毎度こんなふざけていられるんだろうか。
なんとも不思議だ。

「あなたが相談に乗ってくれるだんなんて言ってるから俺は、それを信じて来たんですからね?」
「素直でよろしい~!
さぁ、そこに座って!君の話聞かせてよ。」

近くにあるソファを指さしながら言ってきた。
俺は、「失礼します。」の一言だけ言うと、部室に入っていき手前のソファに座る。
 ニコニコと笑っている先輩を前に俺は、話すことにした。

俺の家は、親父がクソみたいなダメ人間で毎日毎日お袋を殴っては酒を飲んで殴っては酒を飲むばかりの奴だった。
だが、お袋がそれに耐えきれなくなって家を出てった。

その際にお袋は、妹の美雨を連れていってしまった。
あまりにも唐突すぎ他出来事だし、お袋はなんで俺も連れて行ってくれなかったのかショックというショックが大きかった。

そして、年が経つにつれて俺に対しての罵声や暴力が増えていった。
当初は俺のことが嫌いだからかと思っていた。

だけど、違った。

どうやら仕事で失敗して、更には実家の親からの圧に耐えきれなくなり、そのストレスが俺たちに向けられただけだった。

あの人だけじゃなくて、俺達も耐えきれなくなりお袋は、妹を連れて出ていった。
俺とあの人に手紙を残して出ていった。
そのあとは、わかるだろう。

暴言を浴びせられて、サンドバックになって、傷だらけの体になった。

だからか、俺もそろそろ耐えきれない。

だから、俺は大学に進学が決まったらすぐ家を出る。

ただ、家を出るにバレたら俺の人生が危うい。
なんなら、何も言わず縁を切り出て行く覚悟でいる。

そうして、こんな長々とした俺の話を先輩は、「うんうん。」と頷いている。

やっぱり、この先輩はわかってくれてるんだ。
話し終えた時には、あの時の憎しみが消えていた。

「そんなところで、そんなことがあったなんてよく頑張ったね。
だから、今こうやって話してくれたのが私ほんとに嬉しいよ。」

先輩は、俺が話し終えた後にそう柔らかく優しい声でそう言った。

やっぱりこの先輩のことを今までは馬鹿なことしかしてない頭のおかしい人。
そんなふうに思ってきてた。
でも、この先輩はまるで先生のようによく話を聞いてくれた。

そして、先輩は何やらが取り出した。

先輩は、今まで以上に清々しい程に綺麗な笑顔で、差し出した1枚の紙。

俺は笑顔でそれを破り捨てる。

ごめん、前言撤回だわ。

この先輩……やっぱり馬鹿だわ。

「あ~!
やっぶちゃっダメだってば~!!!
また先生から貰ってこないと!!」

「何が『破っちゃダメ~!』だ!!
こんな大事な話した直後に入部届け出だす馬鹿な部長がいるかって!!!」

「今後、部活をするには最低5人は必要なの!!
だからお願い部員になって!!」

そんなやり取りをした数日後、俺は書いた記憶もない入部届け出を見つめながら誰がこんなのを書いたのか予想していることになる。

あの時の俺に言えることそれは、あの時に書いた書類の下に入部届け出が書いてあったのに気づけばもっと早く入部することなく順風満帆な人生を送っていたはずだ。

そんな後悔をするなんて俺は気づきもしないのだった。
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