『俺、プロゲーマーになります』

Z姫

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チュートリアル

レベル2/GOEMON

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「たのもおおおおおおおおお__!!」
「やめろおおおおおおおおお__!!」
 どがああん、と殆ど爆撃音に近い轟音を立てて扉が吹っ飛んだ。

「うわあああああああ!? 次は何事だぁああ!!」
 扉が消し飛んだ部室の中で、数名の部員たちが腰を抜かしている。
「むっ……敵なんて何処にも居ないじゃないか」
「だから言っただろう! バットなんか必要ないって!」
 陽介の静止もむなしく、達也がドアを蹴破ったのが数秒前である。
 達也は不服そうにバットを立てかける。
 しかし、カラン、と音を立てて倒れた。壁が歪んでいたのだ。

「あーあー、どうするんだよこの扉、壁、床、何もかも滅茶苦茶じゃないか……」
 青い顔の陽介を後ろに、達也はずいずいと部室に踏み込む。
 部員たちは、ひぃ、と声を上げて後ずさる。
「ふむ、ゲーム部のオタクくん達よ。安心したまえ、私が来たからにはもう大丈夫だ」
「オタ……!? っな、何がでしょうか……と言うか何事、何用なんでしょうか!?」
 うろたえるゲーム部員たちに、達也は続ける。
「“どらえもん”、とか言う連中がキミ達を襲いに来たんだろう?」
 陽介が達也の肩に手を置く。
「達也……GOEMON、五右衛門だよ」
「そう、五右衛門だ!」

 ゲーム部員たちは途端に安堵を浮かべる。
「なるほど」
 ――何がなるほど、なんだろうか。
 彼らはすっかり安心したようで、肩から力が抜けたのが見て取れる。

「貴方が、陽介さんの呼んでくださった助っ人の古賀さんですか!」
 いかにも、と達也は胸を叩く。
「あぁ、良かった……変な人かと思った……」と彼らは口々に言い合う。
『いや、十分変な人だろう』と言うツッコミを飲み込んで、陽介は話を進める。

「それで、みんな被害はどんな状況なんだ」
 するとマッシュの男が垂直に手を上げて、名乗り出る。
「はい、付きましては、わたくし“エノキダ”が説明させて頂きます」

 ・被害対象は部室のPC全て、であり『グラボ』が一台残らず抜かれてしまった。
 ・予備のPCパーツも全滅、部活動の続行は困難。
 ・GOEMONは既に立ち去っており、消息は不明である。

 そして、ことの発端は新人部員が彼らの挑発に乗ってしまったことらしい。

 ふと、達也が左をみると、一年生達が申し訳なさそうにうな垂れていた。
 恐らく彼らの事だろう。
 一年生は弁償を申し出たが、陽介がそれを退ける。
「でも、僕たちのせいで活動できなくなっちゃいますよ……」
「大丈夫だ。持っていかれたのはあくまで、部室のPCだけだろう」
「と言うと?」
「実は明日、予約していた最新のグラボが届くんだ。それもちょうど¨3台分¨」
「3台も!? 一機30万円以上しますよね!どうやってそんなお金を……」
「なぁ待てや」
 思わずGOEMONの被害も忘れて、盛り上がる陽介達に、達也が割り込んだ。
「ちょっと待ってくれや」
「なんですか古賀さん!グラボですよ! それも3台もですよ!」
「それだよ。グラボってなんなんだ」
「あーそうだよな、すまない。説明が遅れたな、グラボ、正式名称はグラフィックボード。パソコンを動かす際に彼らも必要になるんだ」

 陽介はホワイトボードに説明を書き込んでいく。
「“レンダリング”、グラフィックボードの主な役目はこれだ。ものすごく簡単に言うと、文字を絵に起こすって事だ。そうだな、例えば『高さ1,87m重さ80㎏前後でオールバック、学ランを身に纏った男子高校生(助っ人)』とオレが言ってみたとしよう。どうだい?今君は自分を頭に思い浮かべただろう」
 部員たちは一斉に達也をみる。
「なんだよ、俺をみるなよ」
 少し照れたように古賀は扇子で顔を隠す。

「これがグラボの役目だ。俺たちのやるFPSエフピーエスの様なゲームにおいて、これは必須となってくる。処理が遅ければその分相手に後れを取ってしまうからな」

 そこで、
 はい、と挙手する達也。
 陽介は分かった、とばかりに頷く。
「次はFPSだな。これは説明することも多くない。銃で撃ちあうゲームだと思ってくれればいい。そう、つまり今後どうすればいいか分かるな? 達也」
 達也は深くうなずいた。
「うむ! つまり、明日早速『えふぴーえす」でGOEMON達に挑めばいいんだな!」
「「ちょっと待て!!」」
 部員たちが一斉にツッコんだ。

 エノキダは恐る恐ると言った表情で眼鏡を触る。
「ま、まさかとは思いますが、部長、この方¨APEXエイペックス¨に関しては、いや、FPSが全くの未経験では……?」
「あん? えいぺっく?とかは、知らんけど、俺はマリカー(マリオカート)なら得意だぞ。小学生のころはダチの中でも最速だったからな」
 達也を無視して、陽介はエノキダの疑問に答える。
「……ああ、ド素人だ」
 ひええええ、と悲鳴を上げるエノキダを前に、達也は不服そうである。
「なんだよ、別にいいだろ。『たかがゲームくらい』『子供の遊びじゃんか』」

 古賀の発言に、エノキダの耳がピクリと動く。
「『たかがゲーム?』『子供の遊び?』」
「お、おいエノキダ」
 陽介の呼びかけには答えず、エノキダは続ける。
「ふふ、面白いですね。では明日、部室にグラボが届き次第、私が古賀様のお相手を致します」
「お、いいぜ。『たかがゲームだ』ちょちょいと練習したら俺でもすぐ出来るだろうよ」
 陽介がオロオロする一方で、達也は不敵な笑みを浮かべる。

「待ってくれエノキダ。こいつも悪気はないんだ。何も知らないだけで」
「止めないでください部長、私はEスポーツを馬鹿にするこの男を許しておけません」
「決定だな。おい、お前ら! 天才、古賀達也様がゲーム部主将と一騎打ちじゃあ!! 」

『おお、なんだか凄いことになって来たぞ』
『馬鹿だぜアイツ、素人がエノキダさんに勝てるわけないじゃんか』
『でも、相手はあの古賀達也なんだろ。もしかしたら……』
『よし! もっと人呼んで賭けでも開こう。いい宣伝になるぜ』
 部室は異様な盛り上がり様である。
 もはや陽介に止められる余地はなかった。

 翌日、古賀vsエノキダの触れ込みが学校中の噂となる。
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