1 / 1
満月祭
しおりを挟む
やあ、こんばんわ。私はルディ。大学で伝説やおとぎ話を研究している教授です。
今夜は満月ですね。まんまるの月を見ていたら、こんな話を思い出してしまいました。
「ルガルーシティー」というオオカミ人間の街がありました。その街では毎年中秋の名月の夜に、街の広場で「満月祭」という大きな祭りがもよおされます。そしてその祭りで街の人々は皆、自分達は人間じゃないんだオオカミ人間なんだ、という喜びを心からかみしめるのです。
さて、その祭りの夜のことです。
街の広場は、十三歳半の少女の目玉のチャウダーと、十四歳半の少年のすね肉のソテーといったごちそうのにおい。陽気なバンドネオンの音と歌声。歓声と軽快なダンスのステップを踏むたくさんの靴音。たくさんの拍手と手拍子。それらのせいですごくにぎやかになっていました。
広場の入り口には、よそ行きのドレスを着たオオカミ少女が白い箱を持って立っていました。その箱には「満月祭に参加する者は金貨一枚支払うべし 市長」と書かれていました。
その少女から少し離れたところに、オオカミ男が一人街灯にもたれて立っていました。
オオカミ男はガリガリにやせ細っていて、ボロボロの服を着ていました。
彼は広場からただよって来るごちそうのにおいをかいで、ぐうっ、と腹をならしました。
彼はオオカミ少女の白い箱を横目で見ると、ズボンのポケットに手をつっこみました。
でもズボンのポケットからは金貨どころか、銅貨一枚すら出てきません。出てくるものはホコリだけです。
それから彼は、着ていた服のすべてのポケットに手をつっこんでみましたが、それらもズボンのポケットと同じように、ホコリしか出てきませんでした。
彼の頭の中に、高級なスーツを着てヒゲをたくわえた市長の姿が浮かんで消えました。
オオカミ男は「フン、あの野郎」と市長への文句を短くつぶやくと夜空を見上げました。するとこの街で一番高い建物の、ルナティックラジオ局のアンテナ塔が見えました。
満月はそのアンテナ塔のてっぺんにかかって来ていました。
その満月を見たオオカミ男は不意に、昔読んだオオカミ女の詩人、「ガヲ青春詩集」の中の詩の一節、「満月は夜空にはりつけた金貨のようだ」というのを思い出しました。
するとオオカミ男は、アンテナ塔に向かって走って行きました。はらぺことは思えないくらいものすごい速さで。
やがて彼はアンテナ塔に着くと、アンテナ塔のはしごをのぽり始めました。オオカミなのに、サルのようにスルスルと身軽に。たぶんはらぺこで体が軽くなっているせいでしょう。
オオカミ男はすばやく塔のてっぺんにたどり着くと、手を伸ばして夜空からベリベリと月をはぎ取りました。
夜空からはぎ取られた月は、彼の手の中でキラキラ光って本物の金貨のようです。
「詩人が言っていたことは本当だった」オオカミ男はそうつぶやいて、のぼって来た時と同じ速さではしごをおりて行きました。そして広場に向かって走って行きました。
次の日からルガルーシティーは、ただの人間の街になりました。なにしろ夜空にあるはずの月がなくなってしまったんですから。
そのため次の日の夜は日が沈んだ時から、街じゅうがハチの巣をつついたような大騒ぎになっていました。
次の日は新月ではありません。それに月食も起こっていません。そのうえ次の日の夜の天気は雲一つない晴れでした。なのに月が夜空のどこにもないのです。
街の市長は、街じゅうの天文学者と博士、そして警察と探偵に月をさがすように言いました。それから騒ぎをおさめようとルナティックラジオ局に出演して、「みなさん。夜空に月が見えないからといって、心配することはありません。私はさっき街じゅうの天文学者と博士、そして警察と探偵に月をさがすように言いました。ですから間もなく
月は見つかるでしょう」と言いました。すると騒ぎはおさまりました。
だけど月は、天文学者と博士が天体望遠鏡で夜空を隅から隅までさがしても、警察と探偵が虫メガネを片手に街じゅうをさがし回っても見つかりませんでした。
そしたら市長は、また騒ぎが起きるかもしれないと思い、またラジオに出演して、「申し訳ありません。月はまだ見つかっておりません。そこでどうか市民の皆様も、協力して月をさがしてくださいませんか。もし月を見つけた方には金貨百枚さしあげます」と言いました。
すると街の人々はみんな血眼になって月をさがし始めました。市長も、もう人任せにしてはおれんと思ったのか、市長も月をさがし始めました。けれどもだれも月を見つけることはできませんでした。
市長は街じゅうの人々から、「やいこら市長。月がみつからなかったぞ。どうしてくれるんだ! 市長なんかやめてしまえ!」と言われて、仕方なく市長をやめてしまいました。
では、これで私の話はおしまい。えっ、なぜ月が見つからなかったのか、ですって。
だってほら、よく言うじゃありませんか。「金は天下のまわりもの」ってね。 終わり
今夜は満月ですね。まんまるの月を見ていたら、こんな話を思い出してしまいました。
「ルガルーシティー」というオオカミ人間の街がありました。その街では毎年中秋の名月の夜に、街の広場で「満月祭」という大きな祭りがもよおされます。そしてその祭りで街の人々は皆、自分達は人間じゃないんだオオカミ人間なんだ、という喜びを心からかみしめるのです。
さて、その祭りの夜のことです。
街の広場は、十三歳半の少女の目玉のチャウダーと、十四歳半の少年のすね肉のソテーといったごちそうのにおい。陽気なバンドネオンの音と歌声。歓声と軽快なダンスのステップを踏むたくさんの靴音。たくさんの拍手と手拍子。それらのせいですごくにぎやかになっていました。
広場の入り口には、よそ行きのドレスを着たオオカミ少女が白い箱を持って立っていました。その箱には「満月祭に参加する者は金貨一枚支払うべし 市長」と書かれていました。
その少女から少し離れたところに、オオカミ男が一人街灯にもたれて立っていました。
オオカミ男はガリガリにやせ細っていて、ボロボロの服を着ていました。
彼は広場からただよって来るごちそうのにおいをかいで、ぐうっ、と腹をならしました。
彼はオオカミ少女の白い箱を横目で見ると、ズボンのポケットに手をつっこみました。
でもズボンのポケットからは金貨どころか、銅貨一枚すら出てきません。出てくるものはホコリだけです。
それから彼は、着ていた服のすべてのポケットに手をつっこんでみましたが、それらもズボンのポケットと同じように、ホコリしか出てきませんでした。
彼の頭の中に、高級なスーツを着てヒゲをたくわえた市長の姿が浮かんで消えました。
オオカミ男は「フン、あの野郎」と市長への文句を短くつぶやくと夜空を見上げました。するとこの街で一番高い建物の、ルナティックラジオ局のアンテナ塔が見えました。
満月はそのアンテナ塔のてっぺんにかかって来ていました。
その満月を見たオオカミ男は不意に、昔読んだオオカミ女の詩人、「ガヲ青春詩集」の中の詩の一節、「満月は夜空にはりつけた金貨のようだ」というのを思い出しました。
するとオオカミ男は、アンテナ塔に向かって走って行きました。はらぺことは思えないくらいものすごい速さで。
やがて彼はアンテナ塔に着くと、アンテナ塔のはしごをのぽり始めました。オオカミなのに、サルのようにスルスルと身軽に。たぶんはらぺこで体が軽くなっているせいでしょう。
オオカミ男はすばやく塔のてっぺんにたどり着くと、手を伸ばして夜空からベリベリと月をはぎ取りました。
夜空からはぎ取られた月は、彼の手の中でキラキラ光って本物の金貨のようです。
「詩人が言っていたことは本当だった」オオカミ男はそうつぶやいて、のぼって来た時と同じ速さではしごをおりて行きました。そして広場に向かって走って行きました。
次の日からルガルーシティーは、ただの人間の街になりました。なにしろ夜空にあるはずの月がなくなってしまったんですから。
そのため次の日の夜は日が沈んだ時から、街じゅうがハチの巣をつついたような大騒ぎになっていました。
次の日は新月ではありません。それに月食も起こっていません。そのうえ次の日の夜の天気は雲一つない晴れでした。なのに月が夜空のどこにもないのです。
街の市長は、街じゅうの天文学者と博士、そして警察と探偵に月をさがすように言いました。それから騒ぎをおさめようとルナティックラジオ局に出演して、「みなさん。夜空に月が見えないからといって、心配することはありません。私はさっき街じゅうの天文学者と博士、そして警察と探偵に月をさがすように言いました。ですから間もなく
月は見つかるでしょう」と言いました。すると騒ぎはおさまりました。
だけど月は、天文学者と博士が天体望遠鏡で夜空を隅から隅までさがしても、警察と探偵が虫メガネを片手に街じゅうをさがし回っても見つかりませんでした。
そしたら市長は、また騒ぎが起きるかもしれないと思い、またラジオに出演して、「申し訳ありません。月はまだ見つかっておりません。そこでどうか市民の皆様も、協力して月をさがしてくださいませんか。もし月を見つけた方には金貨百枚さしあげます」と言いました。
すると街の人々はみんな血眼になって月をさがし始めました。市長も、もう人任せにしてはおれんと思ったのか、市長も月をさがし始めました。けれどもだれも月を見つけることはできませんでした。
市長は街じゅうの人々から、「やいこら市長。月がみつからなかったぞ。どうしてくれるんだ! 市長なんかやめてしまえ!」と言われて、仕方なく市長をやめてしまいました。
では、これで私の話はおしまい。えっ、なぜ月が見つからなかったのか、ですって。
だってほら、よく言うじゃありませんか。「金は天下のまわりもの」ってね。 終わり
0
この作品の感想を投稿する
あなたにおすすめの小説
主人公の恋敵として夫に処刑される王妃として転生した私は夫になる男との結婚を阻止します
白雪の雫
ファンタジー
突然ですが質問です。
あなたは【真実の愛】を信じますか?
そう聞かれたら私は『いいえ!』『No!』と答える。
だって・・・そうでしょ?
ジュリアーノ王太子の(名目上の)父親である若かりし頃の陛下曰く「私と彼女は真実の愛で結ばれている」という何が何だか訳の分からない理屈で、婚約者だった大臣の姫ではなく平民の女を妃にしたのよ!?
それだけではない。
何と平民から王妃になった女は庭師と不倫して不義の子を儲け、その不義の子ことジュリアーノは陛下が側室にも成れない身分の低い女が産んだ息子のユーリアを後宮に入れて妃のように扱っているのよーーーっ!!!
私とジュリアーノの結婚は王太子の後見になって欲しいと陛下から土下座をされてまで請われたもの。
それなのに・・・ジュリアーノは私を後宮の片隅に追いやりユーリアと毎晩「アッー!」をしている。
しかも!
ジュリアーノはユーリアと「アッー!」をするにしてもベルフィーネという存在が邪魔という理由だけで、正式な王太子妃である私を車裂きの刑にしやがるのよ!!!
マジかーーーっ!!!
前世は腐女子であるが会社では働く女性向けの商品開発に携わっていた私は【夢色の恋人達】というBLゲームの、悪役と位置づけられている王太子妃のベルフィーネに転生していたのよーーーっ!!!
思い付きで書いたので、ガバガバ設定+矛盾がある+ご都合主義。
世界観、建築物や衣装等は古代ギリシャ・ローマ神話、古代バビロニアをベースにしたファンタジー、ベルフィーネの一人称は『私』と書いて『わたくし』です。
冤罪で辺境に幽閉された第4王子
satomi
ファンタジー
主人公・アンドリュート=ラルラは冤罪で辺境に幽閉されることになったわけだが…。
「辺境に幽閉とは、辺境で生きている人間を何だと思っているんだ!辺境は不要な人間を送る場所じゃない!」と、辺境伯は怒っているし当然のことだろう。元から辺境で暮している方々は決して不要な方ではないし、‘辺境に幽閉’というのはなんとも辺境に暮らしている方々にしてみれば、喧嘩売ってんの?となる。
辺境伯の娘さんと婚約という話だから辺境伯の主人公へのあたりも結構なものだけど、娘さんは美人だから万事OK。
妻からの手紙~18年の後悔を添えて~
Mio
ファンタジー
妻から手紙が来た。
妻が死んで18年目の今日。
息子の誕生日。
「お誕生日おめでとう、ルカ!愛してるわ。エミリア・シェラード」
息子は…17年前に死んだ。
手紙はもう一通あった。
俺はその手紙を読んで、一生分の後悔をした。
------------------------------
愛された側妃と、愛されなかった正妃
編端みどり
恋愛
隣国から嫁いだ正妃は、夫に全く相手にされない。
夫が愛しているのは、美人で妖艶な側妃だけ。
連れて来た使用人はいつの間にか入れ替えられ、味方がいなくなり、全てを諦めていた正妃は、ある日側妃に子が産まれたと知った。自分の子として育てろと無茶振りをした国王と違い、産まれたばかりの赤ん坊は可愛らしかった。
正妃は、子育てを通じて強く逞しくなり、夫を切り捨てると決めた。
※カクヨムさんにも掲載中
※ 『※』があるところは、血の流れるシーンがあります
※センシティブな表現があります。血縁を重視している世界観のためです。このような考え方を肯定するものではありません。不快な表現があればご指摘下さい。
どうやらお前、死んだらしいぞ? ~変わり者令嬢は父親に報復する~
野菜ばたけ@既刊5冊📚好評発売中!
ファンタジー
「ビクティー・シークランドは、どうやら死んでしまったらしいぞ?」
「はぁ? 殿下、アンタついに頭沸いた?」
私は思わずそう言った。
だって仕方がないじゃない、普通にビックリしたんだから。
***
私、ビクティー・シークランドは少し変わった令嬢だ。
お世辞にも淑女然としているとは言えず、男が好む政治事に興味を持ってる。
だから父からも煙たがられているのは自覚があった。
しかしある日、殺されそうになった事で彼女は決める。
「必ず仕返ししてやろう」って。
そんな令嬢の人望と理性に支えられた大勝負をご覧あれ。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる