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私小説
豪邸に着くまで
しおりを挟むそれから私は、脇に畑がある道路を進んで、ステーキ屋のある十字路を左に曲がって、坂を降りてゆく。大きな病院があって、自動販売機があったので、私はおーいお茶のペットボトルを買ったのであった。
苦味がとても爽やかで、それもこれも私が歩いているからであろう。ずっと家にいてゴロゴロしていたらこの爽快感を味わうことはできない。三分の一くらい飲んだら、私は、緑色のペットボトルを青いリュックサックの中に入れた。
坂は病院の横で降り切ったと思ったら、今度は上り坂になる。右手に、私の妹が「最近、味が落ちた」と言っていたラーメン屋があって、薄暗いガラス戸の向こうでは、台の上に猫が目を細めて座っていた。
坂を登り切ると、サイゼリアがあったり業務スーパーがあったりして、駐車場には車がたくさん止まっていた。道路の反対側には、ピーナッツ工場があったり、高級卵の自動販売機、幼稚園があって、丘の上には墓地があった。
坂を降り切ると、今度は中華料理屋の福龍というのがあり、そこの定食は950円と割と高めであるが、味は普通であった。また、坂は登って、大きな電光掲示板があるパチンコ屋がある十字路を左折する。
陸橋みたいになっている地帯を抜けると、また下り坂になっていて、左手にラーメン屋、お好み焼き屋、からあげ専門店、右手には、サイズの大きい人用の服の店がある。そこは昔、ブックオフが立っていて、よく買い物に行っていたものであった。
坂を降りると、左手には、アイスクリーム屋31やスーパーがある。右手にはコンビニ、車屋があって、他にも色々あるが、いちいちそういうものを書いてゆくのが私は面倒になってきた。実は、これでもかなり省略して書いてあり、他にも沢山店があったのだ。そんなものをつぶさに書いてみてもしょうがない。
十字路を左に曲がると公園がある。何年か前、スナックで酒を飲み、アパートまで二時間くらいかかるのを歩いて帰ったのを思い出した。酔いなんてものは一切無くなっていた。今、私はもう一時間半くらい歩いている。脹ら脛が少し痛くなっている。
そこから将軍という焼肉屋の脇の小道に入ると、豪邸があったのだ。四条夏生の家である。傾斜の急な山を後ろにかかえていて、まるで、大きな農家のような佇まいであるが、門の向こうには、クラウンが駐車していて、明らかに金持ちの家であった。私はインターフォンを鳴らすと、カーディガンを羽織った四条夏生が現れる。
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