花の香りに誘われて

Daisy

文字の大きさ
上 下
136 / 147

134

しおりを挟む


「翠!やっと見つけた。」


振り返るとそこには今まで忘れることはなかった想い人が。


相手が一歩踏み出せば僕は一歩下がる。


どうしよう。どうしよう。
この場から逃げ出したい。


僕の気持ちが伝わったのか、それ以上近づこうとはしなかった。


「俺はここから動かないから、お願いだ。逃げないでくれ。
何も言わずにいなくなるのはやめてくれ。」


心臓の音がさっきよりも更に大きく鳴る。

あの日から発情期らしいものはきていなかった。
なのに今になって自分に起きているこの状態がわかる。

僕は発情期になりかけている。


貴方が欲しい。ほしい。ホシイ。


「お……お、おかあしゃん?
どしたの?おなかいたい、いたいなの?」


匡の声にハッと自我を取り戻した。

ここには人が多すぎる。
発情なんてしたら大騒ぎだ。
しおりを挟む

処理中です...