花の香りに誘われて

Daisy

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「大丈夫。大丈夫だからね。
早いけど帰ろうか。」


帰ろうなんて言ったが、ダメだ。
こんな状態じゃバスにも乗れない。

近くのホテルで休まないと。


「んーっ!いやっ!」

あっ、と気づいた時には匡は僕の腕からすり抜け彼のところまで駆けた。


「おじちゃん、わりゅいひと!!
おかあしゃんにいじわりゅしないで!

おかあしゃんをいじ、い、いじめないでーっ!!
うわぁー、い、っ、ぅ、っ、いじ、め、っ、ないでーっ!!」


大声で叫び出し、最後は嗚咽混じりに僕を庇ってくれた。

そんな匡に僕は目頭が熱くなった。

僕は子供になんてことを言わせているのだろう。


「ごめんね。匡。ありがとう。」


小さな背中をさすった。
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