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第一話
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その衝撃は突然襲ってきた。
それはヴァイオリンの練習中だったはずだ。
意識を失い、そして目が覚めた時、私は自分が別人になっている事を理解した。
側には使用人が一人、少し離れて編み物をしている。
私は目が覚めたことを悟られないように息を潜め辺りを確認する。
……敵性反応はなし、と。
さて状況を確認しなければ。
まず私は誰? 私は八雲 瑠璃。
私はだれ? 私はヴァネッサ=ヴェルン=ヴァンプリージェ。
一度に二つの記憶があふれ出す。
私の主人格は瑠璃だけどこの身体はヴァネッサというらしい。
これは所謂転生と言うやつなのでは?
私はベッドの上で思案する。
私が寝ているこの部屋はとても大きく、豪華である。
そこは私の部屋だった。
一級品で揃えられた調度品は派手ではないが落ち着いた雰囲気である。
私の寝ているベッドも含め家具も派手さで自己主張をしない物ばかりだ。
それでいて全てが最高級品なのだから恐れいる。
なぜそんな部屋にこんな少女が? と問われれば、この身体の、いやヴァネッサは特殊な家の娘だと答えるしかない。
この国、吸血鬼が支配するアルシュ=ヴィラではとても大切で貴重な……
そこで違和感に気付く
私はこの名前を知っている。 いやこの身体の記憶ではなく、瑠璃としてだ。
ヴァネッサ=ヴェルン=ヴァンプリージェ ニンゲン種で唯一の公爵家の令嬢。
そして今代の鮮血の花嫁。
アルシュ=ヴィラを支配する吸血鬼達、その王を決める際に重要になるのが鮮血の花嫁だ。
そこで私は彼らに愛される一人の少女、もう一人の鮮血の花嫁に嫉妬してそれで……
私は殺される?
……思い出した!
ここってゲームの、『吸血の口づけは誰がために』 の世界じゃないっ!?
しかもヴァネッサってば悪役令嬢だし!
あまりの事に思わず呻き声が出てしまい、それを侍女に、ルサルカに気付かれてしまった。
「お嬢様! お目覚めになられたのですか?」
急いで、だが慌てるそぶりも見せずに静かに側まで近づいてくるルサルカは優れた侍女だ。
「ああ、ルカもう大丈夫よ。 心配かけたわね。」
そういって微笑むとわずかに緊張した表情を緩める。
「それならようございました。」
ルサルカは失礼しますと声を掛けてから、私に異常がないかを軽く調べて旦那様に伝えてまいりますと部屋を出ていった。
ハアッ
ルカが出ていった扉を見やりながら思わずため息を吐いた。
このヴァネッサ、ゲームファンの間では悲劇の悪役令嬢と呼ばれていた。
それは元々ヴァネッサが高潔で慈悲深い性格をしていた事。
花嫁として厳しい教育に耐え、この国のために尽くそうとしていた事。
しかし、花嫁としてはあまりにその力が弱かった事がコンプレックスとなっていた。
そこにきて、本来同時代に一人しか生まれないはずの花嫁がもう一人現れた事。
その娘が歴代の花嫁を超える力を有していた事で、密かに思いをよせていたハルト王子が彼女に惚れてしまった事で嫉妬に狂い、最終的には少女を殺そうとしてしまう。
この国で花嫁に危害を加える者は死罪となる。 そしてヴァネッサは花嫁といえど弱い力しか持たない。
そこには、他の貴族達の思惑なども絡んでいた事が設定資料集で判明している。
それゆえに悲劇の悪役令嬢と呼ばれたのだ。
あと見た目も悪役ぽくなく、凛とした気高い美人として描かれ、絵師さんもツブヤイターでヒロインよりも思い入れがあると書いていた。
と、ヴァネッサの事をつらつらと考えていたら扉がノックされ男性の声で入ってもいいか聞かれた。
ヴァネッサの記憶にある声であったので返事をすると、扉が開き中年の美形のおじ様と、初老の執事の服装をした男性、そしてルカが入って来た。
「ヴィー。 目が覚めたと聞いて安心したよ。」
そう言ってベッドに腰を下ろし、私の頬に手をそえるのはヴァネッサの父である、ヴァングレイ=ヴェルン=ヴァンプリージェ公爵だ。
名前にヴが多すぎるとお思いでしょうがこれには訳がある。
そもそも”ヴ”ァンパイアを崇める国であるし、古エムル語における聖なる言葉が”ヴ”であるると言われている為、貴族の多くは名前にヴを入れる風習があるのだ。
お父様の後ろでは執事のマリクスが、ようございましたとホッとした表情を見せる。
どうやら心配をかけまくったようだ。
「医者の見立てでは、身体に異常は見られないそうだがどうだね?」
お父様がベッドから起き上がろうとする私を支えながら聞いてくる。
「ええ、特に痛い所もありませんし大丈夫ですわ。」
うーむ、お嬢様言葉がスラスラでてくるのはなんか気持ち悪い気もするが面倒がなくていいかしら?
その後はルカが入れてくれたハーブティーを飲み、しばらくして後は寝ていなさいと言って三人が部屋から出ていった。
さて……
私は部屋の近くに誰の気配がないことを確認すると、ベッドから起き上がり大きな姿見の前に立つ。
そこに写ったのは、意思の強そうなキリっとした青紫色の瞳、腰まである長い銀髪。 そしてスタイルのいい身体。
そしてそして見事なたわわ! 前世では夢のまた夢であった大きな胸が! この私に!
ビバ転生! ありがとう転生!! 勝った! 勝った! 私勝ち組! 貧乳人生よさらばっ!!!
……おっと、私としたことが我を忘れるとは。
改めて鏡を見やる。 歳の頃はたしか15になったばかりのはず。
身体に目立った異常はなさそうだ。
ひとしきり確認した後ベッドに潜りこむ。
よしせっかく手に入れたたわわ…… じゃない、第二の人生! 死んでたまるか。 なんとしてでも生き残ってやるっ!
続く
それはヴァイオリンの練習中だったはずだ。
意識を失い、そして目が覚めた時、私は自分が別人になっている事を理解した。
側には使用人が一人、少し離れて編み物をしている。
私は目が覚めたことを悟られないように息を潜め辺りを確認する。
……敵性反応はなし、と。
さて状況を確認しなければ。
まず私は誰? 私は八雲 瑠璃。
私はだれ? 私はヴァネッサ=ヴェルン=ヴァンプリージェ。
一度に二つの記憶があふれ出す。
私の主人格は瑠璃だけどこの身体はヴァネッサというらしい。
これは所謂転生と言うやつなのでは?
私はベッドの上で思案する。
私が寝ているこの部屋はとても大きく、豪華である。
そこは私の部屋だった。
一級品で揃えられた調度品は派手ではないが落ち着いた雰囲気である。
私の寝ているベッドも含め家具も派手さで自己主張をしない物ばかりだ。
それでいて全てが最高級品なのだから恐れいる。
なぜそんな部屋にこんな少女が? と問われれば、この身体の、いやヴァネッサは特殊な家の娘だと答えるしかない。
この国、吸血鬼が支配するアルシュ=ヴィラではとても大切で貴重な……
そこで違和感に気付く
私はこの名前を知っている。 いやこの身体の記憶ではなく、瑠璃としてだ。
ヴァネッサ=ヴェルン=ヴァンプリージェ ニンゲン種で唯一の公爵家の令嬢。
そして今代の鮮血の花嫁。
アルシュ=ヴィラを支配する吸血鬼達、その王を決める際に重要になるのが鮮血の花嫁だ。
そこで私は彼らに愛される一人の少女、もう一人の鮮血の花嫁に嫉妬してそれで……
私は殺される?
……思い出した!
ここってゲームの、『吸血の口づけは誰がために』 の世界じゃないっ!?
しかもヴァネッサってば悪役令嬢だし!
あまりの事に思わず呻き声が出てしまい、それを侍女に、ルサルカに気付かれてしまった。
「お嬢様! お目覚めになられたのですか?」
急いで、だが慌てるそぶりも見せずに静かに側まで近づいてくるルサルカは優れた侍女だ。
「ああ、ルカもう大丈夫よ。 心配かけたわね。」
そういって微笑むとわずかに緊張した表情を緩める。
「それならようございました。」
ルサルカは失礼しますと声を掛けてから、私に異常がないかを軽く調べて旦那様に伝えてまいりますと部屋を出ていった。
ハアッ
ルカが出ていった扉を見やりながら思わずため息を吐いた。
このヴァネッサ、ゲームファンの間では悲劇の悪役令嬢と呼ばれていた。
それは元々ヴァネッサが高潔で慈悲深い性格をしていた事。
花嫁として厳しい教育に耐え、この国のために尽くそうとしていた事。
しかし、花嫁としてはあまりにその力が弱かった事がコンプレックスとなっていた。
そこにきて、本来同時代に一人しか生まれないはずの花嫁がもう一人現れた事。
その娘が歴代の花嫁を超える力を有していた事で、密かに思いをよせていたハルト王子が彼女に惚れてしまった事で嫉妬に狂い、最終的には少女を殺そうとしてしまう。
この国で花嫁に危害を加える者は死罪となる。 そしてヴァネッサは花嫁といえど弱い力しか持たない。
そこには、他の貴族達の思惑なども絡んでいた事が設定資料集で判明している。
それゆえに悲劇の悪役令嬢と呼ばれたのだ。
あと見た目も悪役ぽくなく、凛とした気高い美人として描かれ、絵師さんもツブヤイターでヒロインよりも思い入れがあると書いていた。
と、ヴァネッサの事をつらつらと考えていたら扉がノックされ男性の声で入ってもいいか聞かれた。
ヴァネッサの記憶にある声であったので返事をすると、扉が開き中年の美形のおじ様と、初老の執事の服装をした男性、そしてルカが入って来た。
「ヴィー。 目が覚めたと聞いて安心したよ。」
そう言ってベッドに腰を下ろし、私の頬に手をそえるのはヴァネッサの父である、ヴァングレイ=ヴェルン=ヴァンプリージェ公爵だ。
名前にヴが多すぎるとお思いでしょうがこれには訳がある。
そもそも”ヴ”ァンパイアを崇める国であるし、古エムル語における聖なる言葉が”ヴ”であるると言われている為、貴族の多くは名前にヴを入れる風習があるのだ。
お父様の後ろでは執事のマリクスが、ようございましたとホッとした表情を見せる。
どうやら心配をかけまくったようだ。
「医者の見立てでは、身体に異常は見られないそうだがどうだね?」
お父様がベッドから起き上がろうとする私を支えながら聞いてくる。
「ええ、特に痛い所もありませんし大丈夫ですわ。」
うーむ、お嬢様言葉がスラスラでてくるのはなんか気持ち悪い気もするが面倒がなくていいかしら?
その後はルカが入れてくれたハーブティーを飲み、しばらくして後は寝ていなさいと言って三人が部屋から出ていった。
さて……
私は部屋の近くに誰の気配がないことを確認すると、ベッドから起き上がり大きな姿見の前に立つ。
そこに写ったのは、意思の強そうなキリっとした青紫色の瞳、腰まである長い銀髪。 そしてスタイルのいい身体。
そしてそして見事なたわわ! 前世では夢のまた夢であった大きな胸が! この私に!
ビバ転生! ありがとう転生!! 勝った! 勝った! 私勝ち組! 貧乳人生よさらばっ!!!
……おっと、私としたことが我を忘れるとは。
改めて鏡を見やる。 歳の頃はたしか15になったばかりのはず。
身体に目立った異常はなさそうだ。
ひとしきり確認した後ベッドに潜りこむ。
よしせっかく手に入れたたわわ…… じゃない、第二の人生! 死んでたまるか。 なんとしてでも生き残ってやるっ!
続く
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