吸血の口づけは誰がために 乙女ゲーの世界に転生したんだけど私の前世のせいでややこしいことになってます!?

凪崎凪

文字の大きさ
18 / 19

第十八話

しおりを挟む
都合により、更新時刻を20時以降に変更させていただきます。








「ようこそいらっしゃいましたハルトヴァリオ殿下。」

と、せっかく私が満面の笑顔で出迎えたというのに。

「ああ…… 今日は世話になる。」

なんかダルそうにしている。
なんですか? イヤなら来なくてもいいんですよ? と言いたいがそうもいかず。

「どうかしたんですか?」

そう聞いたところ。

「いや、あー、なんだ。 実は出発間際までヤツらとお話合い・・・・をやっててな。」

と、言われたのだが、なんの話をしていたんだろう? くらいの気持ちであった。
それはともかく、ウチ自慢の歓談室へと案内する。
ウチでは、来客用の歓談室と使用人のための歓談室と二つあるが、勿論今回は来客用の歓談室だ。

「ほう、噂には聞いていたが……」

ハルト王子は、部屋に入るなりそう言って感嘆の声を上げた。 ふふふ。
歓談室は20畳ほどでそこそこの広さだが、調度品は一級品ばかりである。
東方、芸術の国と呼び名も高いサルクベルデより取り寄せたテーブルとソファーのセットは貴金属で装飾されている訳ではないが、その細工の見事さで人の目を引くだろう。
現に王子も、食い入る様にその彫刻を見ている。

「これは、もしやマリク=ジェラーの作か?」

「ええ、よくご存じで。」

へえ、こういうの興味ないかと思ってましたわ。

「いや、幼少の頃はこういった職人にあこがれていてな。 王宮にも一点ある。」

本当に意外。 その後少しだけマリク=ジェラーの作品のすばらしさをかたっておられましたが、目をキラキラさせてとてもうれしそうでした。
その後はルカの入れてくれた紅茶を振るまい、これは帝国より取り寄せた最高級の茶葉を使った品である。

「ほう、これはいい香りだ。 バラの香りに似ているような?」

「帝国より取り寄せました、ロサヌディーエですわ。」

それを聞いた王子は、もう一度香りを楽しんでから。

「これがそうか。 帝国の茶など王家では飲めないからなあ。」

そう言って苦笑しました。 ……まあ、吸血鬼の親玉ですから、人間至上主義国家の帝国から取り寄せるのは難しいでしょうねえ。
かく言うウチも、亡くなったお母さまや、私がいるからこそ輸入が出来る訳で。
なので、ウチが商会を立ち上げ販売している訳ですが、ただウチの商会の独占販売なのでやっかみも凄いですが、ね。
リージェン商会は、輸入専門の商会で帝国だけでなく幅広くやっておりますわ。

「そう言えば、君に兄君がいたと思ったのだが?」

ああ、マルヴェスお兄様ですか。

「ええ、今は帝国の学園に通っていらっしゃいますわ。」

お兄様は幼少の頃は身体が弱く、ここはお母さまに似たんでしょうか?
それで療養のために空気の澄んだ高原のある帝国に行かれました。 それからお会いしていませんけど、お元気かしら?

「なら後継者の問題は無い訳だ。」

「そうですわね。」

すでに体調もよく、普通に学校に通っている。
それで、卒業後に此方に戻ってくるらしい。
そうして、そろそろお開き、という時間になってハルト王子が口を開く。

「そういえば、ヴァネッサ嬢は昔の事を覚えているか? 6歳くらいの時だが。」

「え? 6歳ですか?」

「ああ、あの時の俺はニンゲンに対してとても傲慢で根拠のない優越感にひたっていたな。」

なんか、いきなり過去語りが始まってしまったわ。

「そんな時、ヴァネッサ嬢に出会ったんだ。」

えっ!? そうなの? そんな記憶は…… あったわ!?

「その時言われたんだ。 貴女の態度はヴァンパイアを神と崇める人達に対する裏切りですわ。 とな。 目が覚める思いだったよ。 我らは国、民のためにいると言う父上の言葉がようやく理解できた気がした。」

なんとヴァネッサってばそんな事を。
そしてハルト王子は静かに私を見つめた後、屋敷を去っていくのだった。



続く
しおりを挟む
感想 3

あなたにおすすめの小説

オバサンが転生しましたが何も持ってないので何もできません!

みさちぃ
恋愛
50歳近くのおばさんが異世界転生した! 転生したら普通チートじゃない?何もありませんがっ!! 前世で苦しい思いをしたのでもう一人で生きて行こうかと思います。 とにかく目指すは自由気ままなスローライフ。 森で調合師して暮らすこと! ひとまず読み漁った小説に沿って悪役令嬢から国外追放を目指しますが… 無理そうです…… 更に隣で笑う幼なじみが気になります… 完結済みです。 なろう様にも掲載しています。 副題に*がついているものはアルファポリス様のみになります。 エピローグで完結です。 番外編になります。 ※完結設定してしまい新しい話が追加できませんので、以後番外編載せる場合は別に設けるかなろう様のみになります。

婚約者に毒を飲まされた私から【毒を分解しました】と聞こえてきました。え?

こん
恋愛
成人パーティーに参加した私は言われのない罪で婚約者に問い詰められ、遂には毒殺をしようとしたと疑われる。 「あくまでシラを切るつもりだな。だが、これもお前がこれを飲めばわかる話だ。これを飲め!」 そう言って婚約者は毒の入ったグラスを渡す。渡された私は躊躇なくグラスを一気に煽る。味は普通だ。しかし、飲んでから30秒経ったあたりで苦しくなり初め、もう無理かも知れないと思った時だった。 【毒を検知しました】 「え?」 私から感情のない声がし、しまいには毒を分解してしまった。私が驚いている所に友達の魔法使いが駆けつける。 ※なろう様で掲載した作品を少し変えたものです

ヒロインしか愛さないはずの公爵様が、なぜか悪女の私を手放さない

魚谷
恋愛
伯爵令嬢イザベラは多くの男性と浮名を流す悪女。 そんな彼女に公爵家当主のジークベルトとの縁談が持ち上がった。 ジークベルトと対面した瞬間、前世の記憶がよみがえり、この世界が乙女ゲームであることを自覚する。 イザベラは、主要攻略キャラのジークベルトの裏の顔を知ってしまったがために、冒頭で殺されてしまうモブキャラ。 ゲーム知識を頼りに、どうにか冒頭死を回避したイザベラは最弱魔法と言われる付与魔法と前世の知識を頼りに便利グッズを発明し、離婚にそなえて資金を確保する。 いよいよジークベルトが、乙女ゲームのヒロインと出会う。 離婚を切り出されることを待っていたイザベラだったが、ジークベルトは平然としていて。 「どうして俺がお前以外の女を愛さなければならないんだ?」 予想外の溺愛が始まってしまう! (世界の平和のためにも)ヒロインに惚れてください、公爵様!!

転生してモブだったから安心してたら最恐王太子に溺愛されました。

琥珀
恋愛
ある日突然小説の世界に転生した事に気づいた主人公、スレイ。 ただのモブだと安心しきって人生を満喫しようとしたら…最恐の王太子が離してくれません!! スレイの兄は重度のシスコンで、スレイに執着するルルドは兄の友人でもあり、王太子でもある。 ヒロインを取り合う筈の物語が何故かモブの私がヒロインポジに!? 氷の様に無表情で周囲に怖がられている王太子ルルドと親しくなってきた時、小説の物語の中である事件が起こる事を思い出す。ルルドの為に必死にフラグを折りに行く主人公スレイ。 このお話は目立ちたくないモブがヒロインになるまでの物語ーーーー。

【完結】乙女ゲーム開始前に消える病弱モブ令嬢に転生しました

佐倉穂波
恋愛
 転生したルイシャは、自分が若くして死んでしまう乙女ゲームのモブ令嬢で事を知る。  確かに、まともに起き上がることすら困難なこの体は、いつ死んでもおかしくない状態だった。 (そんな……死にたくないっ!)  乙女ゲームの記憶が正しければ、あと数年で死んでしまうルイシャは、「生きる」ために努力することにした。 2023.9.3 投稿分の改稿終了。 2023.9.4 表紙を作ってみました。 2023.9.15 完結。 2023.9.23 後日談を投稿しました。

悪役令嬢になりたくないので、攻略対象をヒロインに捧げます

久乃り
恋愛
乙女ゲームの世界に転生していた。 その記憶は突然降りてきて、記憶と現実のすり合わせに毎日苦労する羽目になる元日本の女子高校生佐藤美和。 1周回ったばかりで、2週目のターゲットを考えていたところだったため、乙女ゲームの世界に入り込んで嬉しい!とは思ったものの、自分はヒロインではなく、ライバルキャラ。ルート次第では悪役令嬢にもなってしまう公爵令嬢アンネローゼだった。 しかも、もう学校に通っているので、ゲームは進行中!ヒロインがどのルートに進んでいるのか確認しなくては、自分の立ち位置が分からない。いわゆる破滅エンドを回避するべきか?それとも、、勝手に動いて自分がヒロインになってしまうか? 自分の死に方からいって、他にも転生者がいる気がする。そのひとを探し出さないと! 自分の運命は、悪役令嬢か?破滅エンドか?ヒロインか?それともモブ? ゲーム修正が入らないことを祈りつつ、転生仲間を探し出し、この乙女ゲームの世界を生き抜くのだ! 他サイトにて別名義で掲載していた作品です。

転生しましたが悪役令嬢な気がするんですけど⁉︎

水月華
恋愛
ヘンリエッタ・スタンホープは8歳の時に前世の記憶を思い出す。最初は混乱したが、じきに貴族生活に順応し始める。・・・が、ある時気づく。 もしかして‘’私‘’って悪役令嬢ポジションでは?整った容姿。申し分ない身分。・・・だけなら疑わなかったが、ある時ふと言われたのである。「昔のヘンリエッタは我儘だったのにこんなに立派になって」と。 振り返れば記憶が戻る前は嫌いな食べ物が出ると癇癪を起こし、着たいドレスがないと癇癪を起こし…。私めっちゃ性格悪かった!! え?記憶戻らなかったらそのままだった=悪役令嬢!?いやいや確かに前世では転生して悪役令嬢とか流行ってたけどまさか自分が!? でもヘンリエッタ・スタンホープなんて知らないし、私どうすればいいのー!? と、とにかく攻略対象者候補たちには必要以上に近づかない様にしよう! 前世の記憶のせいで恋愛なんて面倒くさいし、政略結婚じゃないなら出来れば避けたい! だからこっちに熱い眼差しを送らないで! 答えられないんです! これは悪役令嬢(?)の侯爵令嬢があるかもしれない破滅フラグを手探りで回避しようとするお話。 または前世の記憶から臆病になっている彼女が再び大切な人を見つけるお話。 小説家になろうでも投稿してます。 こちらは全話投稿してますので、先を読みたいと思ってくださればそちらからもよろしくお願いします。

悪役令嬢に転生したので地味令嬢に変装したら、婚約者が離れてくれないのですが。

槙村まき
恋愛
 スマホ向け乙女ゲーム『時戻りの少女~ささやかな日々をあなたと共に~』の悪役令嬢、リシェリア・オゼリエに転生した主人公は、処刑される未来を変えるために地味に地味で地味な令嬢に変装して生きていくことを決意した。  それなのに学園に入学しても婚約者である王太子ルーカスは付きまとってくるし、ゲームのヒロインからはなぜか「私の代わりにヒロインになって!」とお願いされるし……。  挙句の果てには、ある日隠れていた図書室で、ルーカスに唇を奪われてしまう。  そんな感じで悪役令嬢がヤンデレ気味な王子から逃げようとしながらも、ヒロインと共に攻略対象者たちを助ける? 話になるはず……! 第二章以降は、11時と23時に更新予定です。 他サイトにも掲載しています。 よろしくお願いします。 25.4.25 HOTランキング(女性向け)四位、ありがとうございます!

処理中です...