吸血の口づけは誰がために 乙女ゲーの世界に転生したんだけど私の前世のせいでややこしいことになってます!?

凪崎凪

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第十八話

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「ようこそいらっしゃいましたハルトヴァリオ殿下。」

と、せっかく私が満面の笑顔で出迎えたというのに。

「ああ…… 今日は世話になる。」

なんかダルそうにしている。
なんですか? イヤなら来なくてもいいんですよ? と言いたいがそうもいかず。

「どうかしたんですか?」

そう聞いたところ。

「いや、あー、なんだ。 実は出発間際までヤツらとお話合い・・・・をやっててな。」

と、言われたのだが、なんの話をしていたんだろう? くらいの気持ちであった。
それはともかく、ウチ自慢の歓談室へと案内する。
ウチでは、来客用の歓談室と使用人のための歓談室と二つあるが、勿論今回は来客用の歓談室だ。

「ほう、噂には聞いていたが……」

ハルト王子は、部屋に入るなりそう言って感嘆の声を上げた。 ふふふ。
歓談室は20畳ほどでそこそこの広さだが、調度品は一級品ばかりである。
東方、芸術の国と呼び名も高いサルクベルデより取り寄せたテーブルとソファーのセットは貴金属で装飾されている訳ではないが、その細工の見事さで人の目を引くだろう。
現に王子も、食い入る様にその彫刻を見ている。

「これは、もしやマリク=ジェラーの作か?」

「ええ、よくご存じで。」

へえ、こういうの興味ないかと思ってましたわ。

「いや、幼少の頃はこういった職人にあこがれていてな。 王宮にも一点ある。」

本当に意外。 その後少しだけマリク=ジェラーの作品のすばらしさをかたっておられましたが、目をキラキラさせてとてもうれしそうでした。
その後はルカの入れてくれた紅茶を振るまい、これは帝国より取り寄せた最高級の茶葉を使った品である。

「ほう、これはいい香りだ。 バラの香りに似ているような?」

「帝国より取り寄せました、ロサヌディーエですわ。」

それを聞いた王子は、もう一度香りを楽しんでから。

「これがそうか。 帝国の茶など王家では飲めないからなあ。」

そう言って苦笑しました。 ……まあ、吸血鬼の親玉ですから、人間至上主義国家の帝国から取り寄せるのは難しいでしょうねえ。
かく言うウチも、亡くなったお母さまや、私がいるからこそ輸入が出来る訳で。
なので、ウチが商会を立ち上げ販売している訳ですが、ただウチの商会の独占販売なのでやっかみも凄いですが、ね。
リージェン商会は、輸入専門の商会で帝国だけでなく幅広くやっておりますわ。

「そう言えば、君に兄君がいたと思ったのだが?」

ああ、マルヴェスお兄様ですか。

「ええ、今は帝国の学園に通っていらっしゃいますわ。」

お兄様は幼少の頃は身体が弱く、ここはお母さまに似たんでしょうか?
それで療養のために空気の澄んだ高原のある帝国に行かれました。 それからお会いしていませんけど、お元気かしら?

「なら後継者の問題は無い訳だ。」

「そうですわね。」

すでに体調もよく、普通に学校に通っている。
それで、卒業後に此方に戻ってくるらしい。
そうして、そろそろお開き、という時間になってハルト王子が口を開く。

「そういえば、ヴァネッサ嬢は昔の事を覚えているか? 6歳くらいの時だが。」

「え? 6歳ですか?」

「ああ、あの時の俺はニンゲンに対してとても傲慢で根拠のない優越感にひたっていたな。」

なんか、いきなり過去語りが始まってしまったわ。

「そんな時、ヴァネッサ嬢に出会ったんだ。」

えっ!? そうなの? そんな記憶は…… あったわ!?

「その時言われたんだ。 貴女の態度はヴァンパイアを神と崇める人達に対する裏切りですわ。 とな。 目が覚める思いだったよ。 我らは国、民のためにいると言う父上の言葉がようやく理解できた気がした。」

なんとヴァネッサってばそんな事を。
そしてハルト王子は静かに私を見つめた後、屋敷を去っていくのだった。



続く
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