DEEP BLUE WORLD

白丸

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回収 そして…

捕虜

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 ぼくが治療を受けている間にネオノーチラス号シヴァの回収が終わり旧ユーラシア大陸海域──PANGAEAに直進しているところだった。
 今回の調査では新たな生物が見つかりシヴァの周辺では強力な磁場の影響からか生態系に大きな影響を与えたものと思われるとアリスさんからは報告があった。やはり海は不思議なことがいっぱいあるんだな。とおもい課題レポートを早めに仕上げ今回の一件もレポートにまとめていたところだった。

「くぇ!」
「ソラ?…ああもうお昼ごはんか」
 ぼくは机から出てきた食事とパックに入った冷凍のスルメイカをとりだし、イカはソラにあげた。
「きみはすごいね、ぼくらが苦戦したイカをいとも簡単に丸呑みにするんだから」
「くぇ?」
「…きみにはわからないか」
「くぇ!」
 テレビ電話がなる相手はサヤからだ。
「カイ!無事?」
「うん、無事だけど?」
「よかったしばらく連絡ないから心配したよ」
「ごめん、ブリッジからしばらく連絡するなって言われてて…」
「そう」
「サヤは?大丈夫?」
「ええ、減圧の影響は少ないって」
「そっかそれはよかった」
「そっちは?」
「ぼくも大丈夫減圧の影響は少ないからこのまま安静だってさ、数日もすればであるいていいって」
「…ごめん」
 サヤは画面の前で目をそらした。
「えっ?」
「こんなことになるんだったら引き留めればよかった」
「いいよ、こんなことになったのは想定外だったし」
「まあ、うん」
 しばらくの沈黙が流れた。
「くぇ!」
「あっソラ食べ終わったんだ」
「ソラ元気そうね」
「くぇぇ!」
「ははは!女子が相手だから喜んでるのか?」
「そうなの?」
「まあ、ソラは女性にはすごくなつきやすいんだぼく以外の男はあまりなつかなくって」
「そうなんだ、スケベなのね」
「まあね」
「くぇ!くぇ!くぇ!」
 ソラにくちばしで頭をつつかれてしまった。
「いてっ!やめて、いたいいたいいたいっ!」
「…ふっ、ふふふ」
「どうしたの?」
「いや、最初にあったときのことおもいだして」
「ああ、ターミナルであったとき?」
「そう、あのとき不機嫌だったし仲良くするつもりもなかったからそっけなかったなーって」
「不機嫌だった?」
「うん、まあいつものこと、お兄様のことを馬鹿にする連中をみかけて」
「ああ…」
「あなたもそのひとりかとおもっていたの」
「そうか…」
「でも違った、あなたは責任感がとても強くて優しい人だった」
「あ…そんなことないよ」
「でも、機械にしか興味なのは損してる、少しは女の子に興味持ちなさい…じゃあまた」
「ああ、また」
 テレビ電話の通信を切る。
「さて、お昼にしますか」
「くぇ!」

 昼食を食べ終えレポートを書く。昔はこれが紙媒体だったから大変だったんだろうなとパッドをタップしていると突然画面が真っ暗になった。一瞬電源が落ちたのかと思ったがすぐに起動した。
「なんだこれ」
 タブレットには見たことのない文字が数行表示されていた。見た限り象形文字のようにみえるがいずれにせよ地上では使われていない言語だろう。それらの文らしきものが文字化けのように地上の言語におきかわる。
『あト■んていスニムかいて■くを■たすべクそノ*☆Яб≒×=±を携エ☆メイはた♬∈∉∪スべし』
「ん?んん?『アトランティスにむかいてナントカを携えて使命?を果たすべし』どういう意味だろう?」
 そのとき大きな振動が船を襲い警報が鳴り響いた。
「なっ!なんだ?」
『ナゾの磁場が…はっ…せい、船体がい…どうしています、そう…いんそのばから…うご────』
 途絶えそうなアナウンス、それを最後にぼくの意識は途絶えた。
 


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