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終黎 創愛 side
向けられた刺客
しおりを挟む訓練施設から、噂零課の実戦行動部隊へと配属された創愛は、みるみるうちに成果を残していた。配属されてから、二ヶ月程の月日が経過して、怪異討伐にも自身の怪異を扱うのにも慣れてきていた。
そして、今日もまた噂零課に回されてきた調査依頼に出向き、現場に辿り着くと早速、戦闘警戒体勢で奥まった山道を歩いていた。
「……来る。来幸……対処する」
「応ッ!!気を付けろ?どうも1匹って感じじゃなさそうだ」
ともに行動していた霧谷 来幸が前に出ると、暗い軒下から怪異が姿を現した。潤いを持った緑色の肌。【河童】が、来幸の喉元目掛けて営利な爪を伸ばした。しかし、【河童】の攻撃が当たると、来幸は霧となって姿を消した。
「ばぁか、後ろだよっ!!」
「███#@!@#✳²&!/!?」
霧濃くなるなか、霧をかき分けて現れた創愛の不意討ちに対処出来ずに、腕を斬り落とされる【河童】。そのまま、地面に倒れ込んだ。空かさず、追撃に入ろうとした創愛だったが、首根っこを掴まれて後ろに引っ張られた。
「ってぇ!?何すんだよ来幸?」
「言ったのは創愛…。来た…他の怪異」
「あん?あ───っ……」
来幸が視線を向けた先にいる【河童】の方を見ると、頭部を踏み砕かれて黒い塵となって消える、【河童】の姿があった。踏み砕いたのは、別の怪異。緑色の鱗が張り巡った肌をして、肩甲骨から生えた羽根は竜を彷彿とさせる風貌をしていた。そして、ソイツが残念そうに口を開いた。
「あ~あ、オレっちが一撃であの世に送ってやろうと思ったのによ?やってくれんねぇ?そっちのお嬢ちゃん」
「こいつ、変貌型か?」
「まって創愛…。まだ…居る…」
「なんなんだ?その力ぁ?オレっちに助っ人が居るってことまでお見通しと来たか。出て来いよ【蠱毒】、オレっち達でコイツらやっちまうぜ!」
静かな緑広がる森の方へそう言うと、網タイツが強調される薄布に身を包む、女の怪異が姿を現した。まるで、火傷の痕のように変色した肌が蜈蚣や蠍が這い回った様子を、刺繍されたかのようになっていた。
「我が主、女帝のために怪異ハンターは消させてもらいます」
「へっ上等だぜ!なんなら、あたしは2対1でもいいぜぇ?」
「ダメ…。ここは……退く…」
売られた喧嘩は買うと、意思表示した創愛の腕を掴み、霧隠れのスモークを巻き起こして、忍術を使ったような後だけを残して姿を消した。逃げられたことを察した竜人の怪異は、近くの大木を殴った。
揺れた木に止まっていた鳥達は空へ飛び去り、小動物は木から落ちて慌てふためいて、逃げ出した。拳の跡が着いた大木を見て、歯軋りをする様子を見て【蠱毒】が口を開いた。
「そんなに焦らなくともいいですよ……【天空の飛竜】我が主の仰っていた毒を分け与えられた人間を探し出すことには成功したのです。あとは、連中の居所を見付けて根絶やしにするだけです」
その一言を聞いて、力を発揮することなく取り逃したことに舌打ちして、翼をはためかせて空高く飛翔して、その場を後にした。それを見送った【蠱毒】も続いて、毒液となってその場に溶けるようにして姿を消した。
創愛を連れて一時撤退した来幸は、車を運転して帰還への道を進んでいる。その横で、不満MAXと全面に出す創愛が不貞寝をしていた。
あのまま怪異を討伐した方が、一般社会に被害が広がる前に解決出来たであろうにと文句を言うと、背を向けている創愛に向けて首を横に振り口を開いた。
「あの怪異たち…誰かに命令…受けていた……。狙いは……来幸たち……」
「だった尚更倒しとくべきだったぜっ!!なんで手の内を探らずに逃げてきたんだ?」
「それは……」
来幸が口を噤んだ様子を見て、ため息混じりにまた背を向けて、不貞寝に更けることを再開した。
実際、配属先が一緒であった来幸のこの危険察知能力には、何度か助けられたことがあったが故に、あまり強く食い下がれなかった。来幸の助言がなければ今頃、蘇鉄と代伊伽はこの世には居なかったと言っても、過言ではないとすら思っていた。
「なぁ?お前のその予知能力みたいの……怪異の力なのか?霧を使う能力みたいに見えるんだけど」
「そう…。【霧の湖畔に映る未来】……それが、来幸の…怪異」
要するに未来が見通せるってことなのかと聞くと、そういう訳ではないと返されて、まるで回答になっていないと呆れたように、シートを起こした。
噂零課の対策室に到着したので、車を利用開始同様に戻すと直ぐに【河童】の顛末を報告に向かった。班長室に入って報告しに向かい、来幸はいつも居もしないリーダーが、まるで見えているかのように話していた。
創愛にも代伊伽にも見えないそのリーダーは、来幸曰くいつもそこにいるらしいのだが姿を見たことはなかった。
「本当にいるのか?リーダー……。お前のイマジナリーなんとか何じゃねぇの?」
「やめて…。リーダー、泣いている……」
丁寧に報告してくれるのが来幸だけで、他は報告書を置き適当な口頭報告をして、退室するからと来幸は言っていたが、創愛は全然信じる様子はなかった。そして、自分達を狙ってきた怪異の存在を確認した事を報告し、退室した。
「そんで?明日は休暇なんだけど、あたしも臨時出動あるかな?」
「都合…いい。勿論……、あなたの元にあの竜は現れる……。来幸と代伊伽……明日、もう一体の方と戦う……」
星座占いように、都合のいい使い方をしてくる創愛に、無感動で呆れていることを伝えて、気を付けるように一言添えてそれぞれの寮へと戻った。
怪異を操れるようになっても、世間的には死んでいる人間に表向きに住める場所などある訳もなく、噂零課で働くようになってからは、敷地内にある寮で生活するしかないのであった。
創愛は自分の部屋へ戻る帰り道に、職場からの至急されたスマホでメッセージアプリを開いた。死亡者となった創愛達に、電話番号を発行することは出来ないため、政府側で取り押さえた匿名コードを利用して表に生きる人間達と同じ生活レベルを保たれていることが、救いにもなっていた。
その証拠に、死人に課税はないのでお金がかかるのは、ほとんど食いつなぐためくらいであった。
「まぁ、家も借りれねぇし給料もねぇから意味ないけどな……飯は只で支給されるものしか食えねぇし……っと」
心の声を口に出していると、メッセージに既読が着き返信メッセージが届いた。相手は神木原 麗由だ。本当は兄の総司と食事がしたくて、何度も連絡を送っているのだが既読無視しかしてくれずに進展なし。そのため、妹である麗由経由なら応じてくれるかもしれないと、こうしてやり取りをしていた。
>兄さんが、わたしも居れば行くと言ってます。わたしも居ていいでしょうか?
「かぁー、総司きゅん……こんな照れ屋さんだったかな?まぁ……」
Re:>いいよ。総司きゅん、恥ずかしがってる|ω・)?
送信して既読の確認もせずに、部屋へ戻るべく駆け足で帰った。
食事と題して、休日が被ったこの機会にデートすることが出来ると明日に備えて早めに寝ようと、いつもの日課を済ませて眠りにつくことにした。すっかり、来幸の予言のことなんて忘れて、明日のデートに何をしようかで頭がいっぱいであった。
□■□■□■□■□
目覚ましきっかりに目を覚まして、髪の毛をとかして着替えを済まして家を飛び出し、神木原兄妹との待ち合わせ場所へと超特急で向かった創愛は、結局急いだせいで乱れた髪。それをカキカキと撫でながら、挨拶をした。
「おっはよう総司きゅん♪ヒマワリちゃんも可愛い服着てんねぇ♪」
「そんな……恥ずかしいですよ創愛さん///」
「いいや!もっと胸を張んなっ!!きっとヒマワリちゃんならいいお嫁さんになれるよ」
「────。」
「あん?総司きゅ~~ん……?どして、そんな顰めっ面してるのかな?」
感情が全面に出ていた。
明らかに、ここへ来ることを不服に思っている総司の、その表情を覗き込む創愛の手を掴んだ。キュンとして頬を赤らめる創愛は、次の瞬間────頭は地面に着いていた。
「な、なん……で……」
「さ…、行くぞ……」
「兄さんっ!創愛さん大丈夫?」
手を握ったのではなく、背負い投げをする為に掴んだ総司は綺麗な曲線を描いて、創愛を投げ飛ばすと事前に向かうことを予定していた場所へと向かった。
ショッピングモールで買い物。それが麗由と創愛の提案によるもので、二人は衣服を見て回ることにした。総司の服をコーディネートしようと、あーでもないこーでもない言い合いながら、二、三着誂えて購入した。
「なんで、俺が荷物持ちなんだ……?」
「当然よ兄さん!創愛さんとは幼馴染だけど、だからと言って女の子扱いしないなんて酷いですよ」
「お、いいこと言うねヒマワリちゃん♪そのとおりだぜ総司きゅん♪まぁでもぉ?どうしても持てって言うんなら、ほら────ごふっ!?」
飼い犬を受け入れるように、両手を広げた創愛にドスっと全部手渡して、トイレに行ってくると手洗い場へ向かった。その様子を見て笑顔を向ける創愛を見て、心配そうに麗由が尋ねた。
「創愛さん?辛かったらわたしも半分持ちますよ?」
「いや、いいって♪総司きゅん、あたしのこと頼ってくれてるってことでしょ?なら、こんくらい平気♪」
「────。兄さん……、本当は辛いんだと思います。創愛さんがわたしたちと同じように怪異ハンターとなったこと」
それは、怪異を身体に宿した者の宿命とも言える死者として生きることの辛さを知っているからだと、麗由は言った。ましてや、創愛の場合は自分達とあんな形で出逢いしなければ、怪異と関わらずに済んだはずであった。
だから、総司は自分に対する苛立ちと、まるで他人事のように平然としている創愛に憤りを感じて、板挟みになっていた。それで、強く当たることしか出来ない不器用な兄なのだと伝えると、創愛はそれに重ねるように口を開いた。
「それは違うよ。あたし、最初はわけも分からず変な施設に連れられて、いきなり怪異とかって非現実的な化け物と戦う力を与えられて戸惑いはした。でもさ、同時にこんなことをヒマワリちゃんと総司きゅんは人知れずやっていたんだって思ったら……居ても立ってもいられなくて……。だってさ、あたしら……」
「もうその辺にしておけ……」
言いかけたところに、総司が戻ってきた。そして、創愛に渡した荷物を全て引き取って言った。
「今は楽しむために来たんだろ?なら……思い出作りだけ、考えよう……」
「総司きゅん……。あの……、あたしが怪異を扱えるようになったこと……怒ってるの?」
急に汐らしく聞いてしまったことに恥を感じながらも、総司の目を見て返事を待つ。そっぽ向いたまま「別に……」と小さく返して、一人先に前を歩き始めた総司。麗由が不安そうに創愛を見つめると、創愛は下を向いていた。しかし、直ぐにガバっと顔を上げて、笑顔で総司に抱きついた。
「だね♪ねぇ?あたし、中華が食べたい♪」
「…………っ!?す、好きにしろ……。麗由、置いていくぞ?お前も来い」
「うふっ。待ってよ兄さん……」
創愛は作り笑いを悟られないように、ぎゅっと総司の首に顔を疼くめて笑い声を上げたが、その顔は泣きそうになっていた。それを見た麗由も、形はどうあれ幼馴染の再会をいいものにしたいと、機嫌を上げて兄の隣りを歩いた。
総司も、何を創愛に八つ当たりしているんだと顔を歪ませていた。
気を取り直して、創愛の要望どおり中華を食べ終えた三人は、最上階のゲームセンターエリアに行こうと話し合った。最上階へ迎えるのは別館だったので、連絡通路を歩いていると、館内に女性の悲鳴が飛び交った。
悲鳴が聞こえた瞬間、総司は手に持っていた荷物を降ろして、常時肩に掛けていたバットケースのチャックを開いた。そこには刀が収納されており、総司は刀を手に持って悲鳴の聞こえた場所へ、俊敏な足取りで向かった。
「総司きゅんっ!」
「兄さん、いつも常備しているの……。最近だと、日中でも怪異が現れたりするから……。でも、わたしは今日持ってきてない」
「大丈夫だヒマワリちゃん。総司きゅんのことは任せて!ヒマワリちゃんは荷物をお願いっ!!」
そう言って創愛も総司の後を追って、走り去って行った。麗由は不安を拭えない表情で、怪異かもしれないと向かった二人を見送ることしかできなった。
悲鳴が聞こえたのは、アスレチックエリア。辿り着いた総司は刀を構えて周囲を見渡すが、怪異と思われる姿も悲鳴を上げていた女性の姿も見えない。すると、頭上から影が次第に小さくなっているのを確認して、後ろへと下がった。
ぐしゃりと音を立てて女性の身体が、ぐちゃぐちゃに潰れてしまっていた。次の瞬間、強風が巻き起こる訳でもないのに風切る音を聞いて、刀で防御の姿勢を取ると、鋭い四本の鉤爪が襲いかかってきた。
「へへっ。人間ってのは、空から落ちるとこんな感じになるんだな♪オレっちも、人間だったことはあるんだけどよ。よく覚えてねぇんだわ♪」
「……思い出す必要も……ないっ!……からな」
「そりゃあどういうことだい?まさか、オレっちを倒すってのかい?お前みたいな棒を振り回しているやつがオレっちを斬れると思うなよ?」
膝を曲げて、ピンと伸ばして生じた力で総司を跳ね除け、地に脚を着けると一気に、距離を詰めてきた。しかし、それでは斬ってくれと言っているようなものである────。総司は、上段に刀を構えて力一杯振り降ろした。
しかし、相手は振り降ろした際に生じる、腹部と刀身との間を掻い潜って回避して、去り際に背中に爪を立てた。
「がッ────ゥゥ!?」
「ほらな?斬れなかったろ?お前ごときにこの【天空の飛竜】様は殺られねぇよ♪」
向き直る総司の、胸部に両脚を揃えて降下して蹴りつけ、倒れたところに竜の牙に見立てた、真空撃をお見舞いする。倒れながらも、刀で直撃は避ける。肩に数発当たり、痛みに苦しむ。
立ち上がろうとするところに、翼を広げて強風を起こそうと大きく振りかぶったその時────。
「うぉぉぉぉぉ───っ!!!!総司きゅんから~~~~っ、離れろぉぉ!!!!」
「な、にぃ!?!?」
突如横から現れた創愛の拳が、ワイバーンの頬を捕らえて直撃する。バシンといい音を立てて吹き飛ばし、近くの巨大トランポリンの骨組みを貫いて、崩れた鉄骨の下敷きになった。
「総司きゅん、大丈夫?」
「くっ……、肩を少しな……」
「酷い怪我……。あたし、こんな総司きゅん……見たくない。あたしが宛もなく大学生活を送っている間も……傷だらけになって戦ってさ?それで、誰からも活躍を認めて貰えないなんてさっ!?そんなの……おかしいよッッッ!!!!」
創愛はここに来て、思いの丈を声に出して叫んだ。今日のデートをする前に、聞かされた兄妹の凄惨な人生を知ってしまった今の創愛にとって、怪異と戦わされているなんて感覚は、とうになくなっていた。
中学で離れてから程なくして、神木原兄妹は両親を失った。その両親は、今よりも小規模ではあった怪異を霊能者として、倒す組織に属していた。しかし、バスジャック事件に巻き込まれた、総司達を救う一心で怪異となる前の人をその手にかけてしまったことで、死罪処分を受けてしまった。
その一件で、怪異と本格的に向き合う為の考案がされるようにはなったが、同時にそれは総司と麗由を怪異との因縁に縛り付けるものとなった。今や、この兄妹に怪異を討伐しない普通の生活はその時から存在しない。
そんな意味のないことに、傷を負い続けている幼馴染のことを見ていられるはずもなく、創愛は決心した。
「あたたた……、おっ♪オレっちのターゲット発見♪女帝様からの命令だ。悪く思うなっ?かぁ────ぁぁぁ!!」
「くるぞ……ぐっ!!」
「総司きゅん。だから、見てて?」
「────っ?」
「あたしの覚悟……。こんなふざけた戦い────あたしが、終わらせるから……。────来てっ!【終焉の秒針】ッッ!!!!」
天高く、その名を叫ぶ。
黒紫の光と深緑の雷撃を携えた剣が、創愛の決意を現すように飛来して左手に収まる。
「お前、左利きか?」
「だったら何?テメェはここで終わりにする。このあたしが────」
向かってくるワイバーンに、剣を突き刺す。それを上昇して回避すると、総司に手傷を追わせた時と、同じ戦術を使って反撃に出た。
しかし、それこそ創愛の狙いであった。空を自由に飛べる怪異を相手に、ダメージを負わせるには、やりようは限られてくる。創愛の場合、ラグナロッカーをブラスターモードに変形させて、銃撃戦も可能ではある。だが、ここはショッピングモールの広間で怪異の突発につき、一般人への避難誘導や交通規制はかけられていないため、隠密で倒すことが要求されていた。
「そう来てくれると思ったぜ?」
「なんだってぇ!?」
ワイバーンはその一言を言い終えた時には、地面に叩きつけられていた。それだけではない。ゴトっと倒れた近くに、左翼が斬られて落下していた。
なんと、反撃に爪を光らせていたワイバーンに敢えて、ラグナロッカーのブラスターを蒸して近付いて肩でどついた拍子に、ブレイドモードに戻して翼を斬ったのだ。
痛みに悶えるワイバーンに肩を回しながら、追い討ちをかけ剣と爪で打ち合いへと発展させる。そして、総司から離れた場所に引きずり出した。右翼をはためかせて砂嵐を巻き起こし、創愛の視界を奪って生じた隙に、両肩を押さえ付けられて壁に叩きつけられる。
「剣を手放しちまうとは、形成逆転だな?」
「うっ───、く、く……っ……」
「いいね?その反抗的な眼♪オレっち、実は人間だったころシタことがないんだよ……」
そう言って、壁に強く創愛を押し付けて胸元に鼻が着きそうになる、スレスレのところで匂いを嗅ぎ始めた。匂いを吸い込む勢いがヒヤリと、創愛の布の中まで伝えてくる。
「あっ……ぅ……」
「なんだ?お前、匂い嗅がれただけで感じてるのか?女はみんなそうなのか?」
「うっ……、へへっ♪そうだぜ?好きな男の前で寝取りっぽい雰囲気をちょっと味わってみたかっただけさっっ!!」
パチンと指を鳴らす。
すると、地面に落ちていたラグナロッカーが、自身の主に穢らわしい手で触っている両腕を切断して、創愛を拘束から解放させた。黒い返り血を浴びながらも脚で胸部を蹴りつけて、寄ろけたところにもう一発回し蹴りをお見舞いした。
そして、ラグナロッカーの切っ先を差し向けて夜な夜な考えていた、トドメを刺す前の決まり文句を今の状態を交えて口にした。
━━ 今ここで、あたしらの恋路の邪魔する奴に終焉をッッ!!
側転に飛び込み前転で、斬り込むタイミングをワイバーンに掴めにくくして、振りかぶる────と見せかけてラグナロッカーで、腹部を刺し貫いた。そして、貫通した切っ先からブラスターモードに変形させて、ブラスターを蒸して緊急離脱して爆発から逃れた。
「ふぅ…………。────、総司きゅん?これが……あたしの覚悟……」
「────お前……」
肩を押さえながら立ち上がった総司に向かって、今度は本物の笑顔を向けて、ラグナロッカーを持つ左手を上げた。
かと思えば、フラッと上体を崩した創愛に総司が駆け寄って、拾い上げるように抱き支えた。本当に脱力していた身体の全体重が寄りかかってくるが、しっかりと受け止めて起こすと、創愛がクスクスと笑って上目遣いで顔を覗かせて言った。
「どう?あたしのおっぱいも、大っきくなったでしょ?」
「お、お前な……。俺は本気で……あ、────っ」
「───────、ちょっとだけこのままで居させて……」
胸を押し当てるようにして、総司に全てを委ねきった体勢で甘えた。腰に両手を回して、顔を総司の胸に埋めて抱きついた。総司も肩を痛めているために、変に抵抗する訳にもいかないと、そっと創愛の背中を包むように抱き返した。
「うふ。兄さんと創愛さん、お似合い……って!?2人とも怪我をしているのですか?」
荷物を持った状態で、二人の様子を見に来た麗由は慌てて、抱き合う二人の間を割って入り傷を看て、手当を簡易的に行ない救護班に連絡を取った。
久々のゆったりと、出来るデートの予定が崩されてしまったけど、総司に思っている事をちゃんとぶつけられた創愛は、にっこり笑顔でその日を終えたのであった。
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