【完】意味が分かったとしても意味のない話 外伝〜噂零課の忘却ログ〜

韋虹姫 響華

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【毒酒の女帝】 side

なら、力を貸そう

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    自身の腹心である【蠱毒】が、ボロボロになって帰ってきたのを見て、自身の毒を受けて怪異の力を覚醒させた者たちの強さが窺えた。

「ふぅむ。其方がそこまで手負いとなって戻ってくるとはのぉ?そんなにまで、我が毒血を打ち込まれた人間は強いとはな?」
「は、はい……。申し訳ありませんマイ・エンプレス……」
「ふっ、その名で呼んでくれる必要はないぞ?妾は【毒酒の女帝】セミラミスと名を得たのだ。歌姫共の戯れ事に過ぎぬが、妾もその趣向に肖った」
「はっ!セミラミス様、次なる手は如何様に?」

    仕えるべき主に忠義を示す【蠱毒】は、新たな主の呼び名をすんなりと受け入れて、膝まづいて指令を承ろうとした。すると、セミラミスは手をそっと【蠱毒】の頭を目指してゆっくりと伸ばしていたが、その掌から強毒を垂らすと真横を向いて、手から強毒液を飛ばした。

「おぉ!恐いねぇ~!相も変わらず」
「何しに来た?【偽りの歌姫】ルンペイルは、貴様が忙しくしていると言っていたが……、随分と暇そうだな?【不死の蜃気楼】。貴様のことはなんと呼べばよい?」
「そうね~、ルンペイルの奴ぁ自分のことホウライって呼んでたね?蓬莱……あいや、鳳来凰来ほうらいおうらいってのにかけてそう名付けたらしい。んまぁそんなこったぁどうでもいいんだけどよ」

    威嚇射撃として放った、強毒が触れたレンガ材の壁が溶けていくのを何とも思わずに、セミラミスのいる所へと向かってくるホウライ。舌打ちをして今度は威嚇ではなく、紛れもなくホウライを狙って毒液を放った。
    ニヤリと笑い、かけていたサングラスを毒液に向けて投げた。同時に、サングラスは十字を書いて燃え盛り、焔の十字架がホウライを毒液から護るように退いていった。

「あのな?自分はお前さんと喧嘩しにきたわけでは来た訳ではないんだ。それに暇じゃないのは本当だしな?」
「では、何をしに来た?妾が貴様らに不利益になるような事をしたか?悪いが、今妾は気が立っておる。うっかり毒で侵し殺してしまうかもしれぬぞ?」

    やれやれ。そう言いたげな顔で、内ポケットから予備のサングラスを取り出してかけると、手を挙げて口を開いた。そして、セミラミスは目を見開いて返答した。

「なんだと……?」
「だから、ルンペイルのやつも力を貸すみたいだから自分もの援助してやろうってな♪そゆ訳で、お前らの出番って訳よ」

    ホウライは懐から、空砲を込めて撃てる火薬銃を取り出して、オレンジ色の紙吹雪に使えそうな小さな紙屑を装填した。大空を目掛けて適当に狙いを定めて、バーンと空砲を鳴らした。
    煙が独りでに、大空の星を目掛けて伸びていき、星々が一瞬輝きを放つと三つの光が、まるで流星の如くセミラミスの膝元を目掛けて飛来した。

「なんと……!?が……?」
「そうそう♪それが自分のインフェクターとしての力ってな!んじゃ、後は頼んだぜ────【夏の大三角形】トリアン エスティーヴォ。自分は眠り姫と不良魔将軍とドンパチやって来るんで────」

    そう言い残して、真夏に生じる蜃気楼にようにシルエットを揺らして、消えていった。ホウライの一言を聞き受けた【夏の大三角形】と呼ばれた三人組は、立ち上がって名乗った。

「我が名はチーニ」
「拙者はリーラ」
「我はアクイラ」
『我ら3体ッ!!集って【夏の大三角形】トリアン エスティーヴォッッッ!!!』

    チーニは、両手にアサシンダガーを逆手に持つ小柄な男子の格好を───。リーラは、琴を片手に持ち侍のような笠を被った、和風な乙女姿を───。アクイラは、そんな二人とは打って変わって、機械で拵えた銀色の翼を腰に折り畳むように収納し、全身は機械仕掛けでメタリックなカラーリングをした、人型ロボットの容姿をしていた。
   セミラミスは、手厚いフォローをしてくれたものだと、不快極まりないと三体を見下ろしてろくに会話もせずに、踵を返してその場から移動した。
    その後ろを、大人しくついて行く【夏の大三角形】のことを主同様に、【蠱毒】もよく思っていないという視線を送っていた。その視線を感じ取って、チーニが弾むように【蠱毒】を跳び越えて、アサシンダガーを突きつけた。

「ッ!?貴様ァ!!」
「要らないって目してたからさ?俺らの実力見せないとかなって?」
「チーニ。少し遊びが過ぎます。とはいえ……アクイラさん?」

    琴の弦を弾いたリーラを目掛けて、紫色の魔弾が飛んでいく。爆風を巻き起こしているなか、煙を突き破ってチーニのダガーをクナイで防ぎつつ、攻勢に出る【蠱毒】の姿があった。
    これでもかと、煙の中心地に魔弾を追加するセミラミスは、五発放ったところでその手を止め、自身の乱れた髪の毛を耳にかけると口を開いて言った。

「やめよ【蠱毒】!!この者らは妾に着いて来る。その忠誠心も嘘偽りはないようじゃ……。いざとなれば、妾自らが手を下してやろう。今度は────その程度は済まないと思え?良いな?」
「────、損傷……軽微」
「アクイラの耐久性をお測りになるとは、流石インフェクターです。チーニ、ナイフを納めなさい」
「ふんっ♪あんた、女帝さんの側近やるなら、もうちょっと戦闘の視野広げた方がいいぜ」

    クルクル。シュパッと腰に下げたホルダーの中にダガーをしまって、頭の後ろに腕組んで鼻歌歌いながら、リーラとアクイラの間に戻って歩き出す。【蠱毒】は、クナイを黒い塵として空気に投げ捨てると、腹部に傷みを感じた。それだけでない。身体の至るところに、浅いが切り傷を負わされていた。
    これは、奇襲を仕掛けた時にに付けられたもではない。この真新しさは全て、今し方争ったチーニによって付けられたものであることに気付き、着ている服からはみ出した下乳から、特に濃く滴っている血を見て、なんとも言えない感情を抱いていた。

「何をしている【蠱毒】?早くゆくぞ。まずはその傷を癒すがよい」
「は、はっ!────っ」

    気にしてはいけないと、首を横に振った【蠱毒】にガキっぽい嘲笑いを見せて、鼻歌を再会するチーニ。間違いなく、先の戦闘でことを実感する【蠱毒】は、怒りで表面上の傷を塞ぐと同時に芽生えた怪異としてのも塞ぐのであった。
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