PSY・サティスファクト

韋虹姫 響華

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危険な能力

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    超能力対策課の任務で、海外へ遠征した【PSYCode】達。花才はなかど 能子あたこはその【PSYCode】を監視・観測する事が別に課せられていた。

(検索……、任務状況確認……、対象Code……リーゴ/スキン。)

    休憩に立ち寄ったガレージから、雲一つない空を見上げるがその視点は空ではなくもっと具体的なものを直視する目つきをしていた。とても、何の変哲もない空を眺めている訳ではない眼光に付添いに着いていた対策課の人も不気味に感じていた。

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    荒野が広がる土地に作られた駐屯地。武装している兵が一斉に吹き飛ばされて、中に紛れていた【PSYパッケージ】が襲撃者に反撃に映ろうと超能力を行使していた。念動力サイコキネシスで倒された武装兵が抵抗際に乱射して外した弾丸を浮かび上がらせて、対象めがけて一斉掃射する。

「なぁぁぁ!痛くねぇ痛くねぇ痛くねぇ!!こんなもんはぁ────節分の豆撒きにもなりやしねぇよぉぉぉ!!!!」
「な、何っ!?ぐああああ!!」

    全方向から向かってくる弾丸を一つも避けようともせず、自分にという暗示をかけて一直線に向かってきた。そして見事に反撃を受けたパッケージは殴られた勢いで永久歯が抜けたように口からチップを吐き出して、空中でチップは破裂した。

「うっし♪あん?スキンよォ?もう、パッケージはおれがぶっ倒したぜ?このテロリストどもに戦意はねぇぞ」
「甘いこと言いますねリーゴさん。僕ら【PSYCode】に楯突くということがどういうことか、覚悟のうえで皆さんはテロを始めになられたのですよ♪はいそこッ!!逃げるなんて許しませぇ~~~ん♪」

    リーゴの問いかけにニコニコと返答を投げ、よろよろと立ち上がったテロリストの一人を膝めがけて鞭を打って宙に浮いて無防備となった腹部に檄を入れる勢いで鞭打って倒した。相手は唯の人間だというのに、【PSYパッケージ】を入手するルートを知っているかもしれないと尋問形式で一人また一人と情けも容赦もなく鞭をまるで尻尾の生えた生物が如く自由奔放に操っていた。

「駄目ですね。この人達も出処については知らないみたいです。仕方ありません、彼らが立てた簡易拠点は破壊して土地をもとの状態に戻すとして、記憶も適当に書き換えてその辺に捨てておきましょうか♪」
「ったくよ。バディと違って、お前もお前で鬼畜だぜスキン。何もそこまでやらなくても、パッケージはそのうち消えるだろ」
「そうとも限りません。僕らはともかく、お世話になっている達美様の身にも危険が降りかかるかもしれませんから。早く根絶やしにできるに越したことはないと思いますけどね」

   表情が落ち着いた様子に戻ると鞭を掌に乗せて、もとの形に戻していく。スキンの超能力の一つ念意加工サイコクラフトによって、使用した素材で作れる物にイメージを加えて変形して武器や道具として使用出来る。鞭として使っていたのは現地に到着する前に拾ってきた蛇の抜け殻だった。

「これで出来ましたのが、♪使用感は星5つ中───ズバリ星3つ♪皆さまも1家に1つ如何でしょう?」
「…………?誰に言ってるんだよ、それ?」
「さてさて誰でしょう?それはそうと、また自己暗示だけで無茶をしましたねリーゴ」
「お、おう……」

    念動力で動いていた弾とはいえ、火薬が入っていなくとも鉛が飛んで来て体にぶつかったのは事実。着弾時に爆発しなかったのは、火薬がなかったからではなくリーゴの自己暗示によるものであった。本来の自己暗示であれば痛くないと暗示をかけてもだけに留まるが、リーゴの場合はに変わるため、パッケージの念動力による発火を許さなかったのである。
    そうは言っても、物理的に激突した箇所の擦り傷までは防げないため暗示が切れてしまえば、このまま痛みを感じ始める。スキンはそんなリーゴの体に触れて瞑想に意識を置くと、超能力治療サイコヒーリングで外傷が消し、体内への蓄積ダメージも取り除いた。

「ふぅ。サンキューな」
「お易い御用ですよ。そうしましたら、掃除をして帰還しましょう。達美様が少し心配です」
「そうか。能子の姐さんも観てるんだろうな。おれのカッコいいとこもバッチリ収めてくれてるかねぇ」

    頭の後ろに手を組みながら口笛を吹いて、スキンと一緒に隠蔽作業へと入る。

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   状況を見届けた能子は現在地に意識を戻して、ガレージで凍り付いている職員の目の前で手を振る。

「おーい、どうした。能子達の休憩は終わったぞ」
「え?あ、はい。行きましょうか能子さん」
「すみませんね、わざわざ地方に足を運んで貰っちゃって」
「構わない。それよりも、【PSYCode】の編成について上層部と掛け合いたいと思っているところだ。全地域にも同じ内容の採用をして欲しいもので、能子自ら挨拶に来ているのもあるのでな」

    普通の会話。勿論、今し方の奇妙な光景を目撃した人間の記憶は、対策課の職員、通りすがりの一般人から連れている犬やペットも含めて綺麗にその数分間だけ消去されている。怪しく能子の眼が超能力を行使していたことを物語っているがそれに気づくものは誰もいなかったのであった。

────────────

「────むむっ」
「………………。」
「むっ?──────ぬぬ……」
「はむっ。ん?」

    徳飛家の食卓で、黙食が続く沈黙をパネロが破った。

「何を茶碗と睨めっこしてるのよアギレヴ」
「誰なのだ?童は、納豆に葱は入れない派なのだっ!!葱は嫌いなのだ」
「好き嫌い……よくない」
「犯人は貴様かプレソーアッ!?もういいのだ。童は米抜きでご飯を食べるのだ」
「そんなに嫌なら、別の茶碗にお米盛るよ?」
「いいのだっ!こんな童のワガママに付き合って米が無駄になってしまうのは、いい旦那としては失格なのだ。ほれ、責任取ってプレソーアが食べるのだ」
「いらない……。ごちそうさま……」
「私もごちそうさま」
「ごめん、ボクも」

    続々と席を立って自分達の食器を片付けて各々部屋に戻ったり、外出準備を始めた。食卓には、達美とアギレヴだけが残り最後に残っていた達美も既に装った分を空にしていた。
   しかし達美はアギレヴの前に置かれていた葱入り納豆を乗せられた茶碗を手に取り、配膳用の箸で納豆と触れていた部分を含めて自分の茶碗へ移しアギレヴに残りを返した。

「うっ……うう。達美……お前は天才なのだ。流石、童のお嫁さんなのだ」
「どういたしまして。だけど、いい加減覚えてね?アギレヴはお嫁さんで、僕はなれても旦那さんの方だからね?」
「んー、違いがイマイチ分からないのだ」

    子ども特有の意味は分かっていないがとりあえず、気に入ったから言葉として使っている状態に近いのか達美のこの訂正を何度受けても、言い方を正しくした事がない。他にも幾つも言葉の使い方が間違っている部分があるのだが、達美も悪い気はしていなかった。

「ごちそうさまなのだ」
「うん、ごちそうさま。そうだ、今日は山崎さんの所へ出掛けてくるけどアギレヴはお家に居るかい?」
「ん?コハクは家に居ないのだ?」
「みたいだよ。プレソーア君と一緒に外に出るって」

    先日のこともあって、コハクも超能力を使いこなせるようになること。正確には実践における使い分けを習得するべくプレソーアと修行すると言っていた。
    アギレヴだけが家に残ることになるため、確認をしてきた達美はいつもどおり着いて来るのか確認を兼ねて訪ねた。

「そういうことなのだ。では、達美よ鍵はしっかり掛けていくのだ」
「うん。分かったよ。多分7時までには家に居るから、それよりも前に用事が終わったら山崎さんのところまで来てね」
「分かったのだ。行ってきますなのだ」

    アギレヴにも予定があるとのことで達美が鍵を掛けて、家には誰も居ない時間が珍しく出来たのであった。

    達美には家族と呼べる人がなく、母は自分を産んだ日に亡くなってしまい父も物心つく頃には行方不明になってしまった。兄弟も兄が居たとは聞かされているが、顔を見たことはなく引き取ってくれる親戚も身寄りもない達美は今から向かう山崎さんという人に引き取って貰って高校生活まで面倒を見てもらっていた。
    目的地についてインターホンを鳴らすと、山崎さんが玄関のドアを開けて中へ入っていく。

「いやぁすまないね、おつかいまで頼んでしまって」
「構いませんよ。山崎さんにはお世話になってますから」
「やだなぁ、お世話になっていたの間違いだよ」

    頭をポリポリと掻きながら達美の言葉を訂正する山崎。彼は達美の父の研究仲間で、心理学者をしていた。達美が能子達と暮らしている一軒家は父の持ち家であったが、維持のために尽力を尽くしてくれた人でもある。
   今でこそ、超能力対策課に【PSYCode】の能力が認められ生計が安定しているが、達美にとっては育ての親とも言える山崎にはこうして時折顔を見せているのであった。

「それで、みんなとはちゃんと馴染めているかい?あの家は広いとはいえ、総勢10人で暮らすとなると大変だろう」
「そうですね……。幸い、庭園もありますからテント立てて寝る人達も居てくれているので全員お家に居ても、狭いなと感じることはありません」
「そうかそうか。悪いね、このところ私の方も忙しくて遊びに行ってあげられなくて」

    何の変哲もない世間話を交わして、お茶を飲むだけでも充分過ぎるほど時間が過ぎていく。アギレヴには付き纏われて居るけど楽しんでいることとか、骨芽こつめが最近行きつけの喫茶店が出来たとか、能子が鍋料理に挑戦して指を火傷思想になった拍子に鍋の具材を全て灰にしてしまってその日の食事は結局出前を取って終えた話など。

「おっと、もうこんな時間だよ達美くん」
「本当ですね。19時までには帰ると約束していますので、今日はこの辺で」
「ああ。また来るといい。今度は私の方からそっちに顔を出そう」
「はい。それではお邪魔しました」

    玄関でお辞儀をして山崎の家を後にし、家路を目指して歩いた。すると、道中でバスケットコートのある広間から大声で騒いでいるのが目に止まった。

「マジでこりゃあいいぜ♪」
「ああ。俺のは、テレキネシスだ。ほら、バスケットボールに触んなくても動かせるぜ」
「えぇー!いいなぁ、あっしなんかレビテーションとか……唯空飛ぶだけなんですけど?」
「……………?」
「おい、好美?何黙ってんだよ」
「う、うん……。なんか、うちは特に能力ないみたいなんだけど……」

    会話を聞いて直ぐに達美は超能力の話をしていることに気が付き、近くに隠れて様子を窺った。観たところ超能力が使えるようになったのは直近のようで、パッケージチップを何処かで手に入れたのだろうと考えていると、会話に進展があった。

「んまぁ、好美が付けてた奴だけなんかあっしらと違ったし?不良品掴まされたんじゃない?」
「うん……そうかも。だって……ほら。身体に入っていかないの」
「貸せ。力が足りねぇんじゃねぇの?もっと、こう────ッ!!」
「ッ!?痛ッ!!痛い、痛いってばッッ!!??みんなはすんなり入っていったじゃん。力加減の問題じゃないよ……」

     連中が手に持っているのはやはりパッケージチップだった。そして状況から見てバスケットコート内に居る全員が【PSYパッケージ】へとなりつつあるということ。
    この事を急いで伝えようとその場を離れようとしたその時、バスケットコートの方から物音を立てていないのに声を浴びせられた。

「────ッ!?み、みんなっ!人が居る」
「まずい見られたか?」
「これって他人に見られないようにって約束だったよな?ヤベッ!」

    どうしてバレたかは分からないけど、とりあえず走って逃げて隙を見つけたら誰かを呼ぶことにして踵を返す。しかしそこには黒いフードを被った大柄の男が立っていた。明らかに達美の事を見下ろしている男。次の瞬間、首に重さを感じると意識がスッと抜けて闇へと沈むのを感じると、達美はそこで気を失ってしまった。

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    久しぶりの一人でのお出掛け。という訳でもないが、街中にあるガラスのショーケースに映る自分を見て身だしなみを確認する。

「よしっ。……よしっ。…………ここもよしなのだ」

    声に出して指さし確認をする成人の腰程までの身長しかない女の子が一人という光景に、二度見するものまでいる。そんな周囲の状況なんて気にも止めず、地下に繋がる階段をその足で降りていく。降りて行った頭上の看板には《BAR》と書いてあったのを見た外回りをしていたサラリーマンが何度見かした後に「うぇぇぇ!?」と声を上げて近付いて本当に幼い子どもが入っていたのかと、目を見開いて確認する。

「ようサラリーマンのおじさん」
「や、やっぱり子どもじゃないか?君、迷子なら迷子センターまで、ぼくが送ってあげるよ」
「結構なのだ。それと頼み事が1つ出来たのだ」
「ん?何かな?」
「今見たことは忘れろなのだ。*こんなところに子どもなんか居ない。早く仕事に戻ろう*と言って仕事に戻って欲しいのだ」

    少女に言われたまま復唱するサラリーマン。すると、まるで目の前の少女が見えていないかのように無言で人混みの中へと歩いて姿を消した。ふぅとため息を零しながら、再び階段を降りていき突き当たりを曲がって奥の扉を開けた。
    開いた先は、昼間だというのに開店している飲み屋。カウンター席に昼間から酒を買っ食らって居る人がいる程度には客足のある店のようだ。一番奥のカウンター席へと向かうと、ボックス席に座っていた不良グループの舎弟らしき人が声を掛けてきた。

「おいおい嬢ちゃん?ここがどういう店か知ってて来たのかい?ガキが来るようなとこじゃねぇんだぜ?」
「────ん?おい、バカッ!お前はすっこんでろ!」

    中央に座っていた小太りの男性がガンつけた舎弟を押さえて叱りつける。すると「すんませんした」と平謝りをして席に着く舎弟。

「ほんと申し訳ないっスねアギレヴお嬢様。コイツうちの新入りでして、俺が伝えていなかったんですわ」
「童は構わないのだ。それよりマスターは不在なのだ?」
「ああ今ちょうど仕入れの搬入で対応しているだけっス。直ぐに来やすよ」

    それを聞いて、カウンター席に向かうアギレヴは自分の身の丈より上にクッションがある座椅子の前に立つ。先程の舎弟が「あれ行けるんすか?」と聞くと「まぁ見ていろ」と返す小太りの男性の言うとおりアギレヴの身体が宙に浮いて、クッションに着地してカウンターの方に椅子を回転する様を見て凍り付いていた。

「な、なんなんすかあれ?宙に浮いたし、脚地面に着いてないのに椅子の位置固定出来てるっすよ!?」
「お嬢様はな、超能力者なんだよ。しかも本物のな。俺もあれには何度命を助けられたことか」
「あら、来てたのねアギレヴちゃん」
「おっマスター。今日も綺麗なのだ」
「んもう。開口一番それ?アタシにそう言ってくれるのアギレヴちゃんだけよ」

    不良グループが話しているなか、アギレヴの前に姿を現したBARのマスター。見るからに鍛えている屈強な体にゴスロリ服というクセの強い格好をしたオネエ口調のマスターにいつもの挨拶を送り、いつも頼んでいるメニューを注文する。

「レモンシャーベットなのだ。トッピングはハニーミルク、ミルク抜きなのだ」
「はいよ。相変わらず、ミルクは飲めないのね?お子様なのに」
「ふん……、童の舌はもう大人の域に達しているのだ。今日は追加でこのオススメココアとやらも頼んじゃうのだ」
「かしこまり♪」

    マスターの返しに調子づくアギレヴは、頼んだことのないメニューにも挑戦するほど天狗になってしまっていた。そして、シャーベットとココアがテーブルに置かれて、まずはいつもの味を堪能するためにシャーベットへと手に取ったスプーンを伸ばしていく。

(いつも美味しそうに食べるわねアギレヴちゃんは)
「うん♪美味しいのだ。マスター?これレモンが変わってる気がするのだ?」
「ええ、ちょっとお高いやつに変えてみたのよ流石ね」
(グルメね♪さて、そのココアとても苦いけど大丈夫かしら?)
「────ッ?」

    マスターの心の中を傾聴していたアギレヴの手がピタリと止まる。アギレヴは牛乳が苦手だがココアにしてしまえば飲めるため、ココアはミルクの入った飲み物も飲めるんだというところを見せようと思って頼んだだけであった。それに甘いという認識でいたのに、マスターの内心からは確かにと言っているのが確認出来る。
   実は猫舌であることに最近気付いた等と適当に嘘をついて誤魔化して、心の中で嘘を読み取らせる術をマスターが会得したのではないかと勘繰って何度聴き直しても結果は同じであった。

「ひょっとして、苦い飲み物は嫌いだたかしら?」
「むっ?いや、そういう訳じゃないのだ。さ、そろそろ冷めた頃なのだ?飲ませて貰うのだ」
「おっいくのね。ゆっくり飲みなさいよ」

    マスターの警告虚しく、アギレヴは一気にココアを喉に通した。
    その気になれば、味を誤魔化すことくらいは超能力で出来るのだがマスターの自慢のメニューに泥を塗るように行為はしたくないと敢えてそのままの味で立ち向かった。

「う、ぅぅぅぅ────ど、泥水なのだぁぁぁ」
「あらあら。やっぱりアギレヴちゃんのお口にはまだ早かったみたいね。これ、お水とグレープジュースよ。急いで口直ししなさい」
「あ、ありがとう……なのだ」

    見事に消沈したアギレヴはしばらくテーブルに頬を付けながらグロッキーになっていたのであった。
    やがて、口直しも済ませたところでマスターに最近の街の様子を聞く。ここには色んな客が出入りするため、こうして超能力にまつわる目撃情報がないかを定期的に確認して回っているのだ。

「そうね。それっぽい話で行くと何でも怪しげなチップ?前に押しかけてきた時にはカメラとかに使うSDカード?って言うのかしら?小さなものを売りつけているブリーダーが居たわ」
「ほんとなのだ?それいつぐらいの話か覚えているのだ?」

    これは耳寄りな情報であると身を乗り出して、興奮の余りテーブルに片脚を乗せてしまった。そんなアギレヴの横にひょこっと申し訳なさそうに、先程の舎弟が顔を覗かせて割って入る。

「そう、それよ!あなた、それ何処で?」
「最近、うちの組にも押しかけてくるんですよ。これは、今日ここに来る前にいただいたやつっス。気味悪いんで、使わずにいたッスけど」
「それでそいつは、どこへ行くか聞いてないかなのだ」
「確か今日は住宅街に行くとかって……。自分が言うのもあれっすけど、なんか巨漢で柄悪そうな男連れてたっスそいつ」

    その情報に嘘がないかを目を見て確認する。

(いやぁマジ恐かったぁ。そのせいでこれ受け取らざるを得なかったし)

    確証を得たことで、テーブルにのし上がり置かれているチップを踏んで壊して会計を済ます。汚してしまった部分は舎弟が片付けを代わりにやっていた。

「これ、迷惑料も込で払うのだ。それとあの舎弟にサンキューと言っていてくれなのだ。じゃ、つりは要らねぇなのだ」
「あらら別にいいのに。気を付けてらっしゃいねぇ」

    BARを後にして、情報の真偽を確かめた時に同時に踏み付けたチップから念視能力サイコメトリーで渡してきたブリーダーの残留思念を覗き見て、向かう位置を確認して眺めていた地図が指す場所へ急いだ。

    読み取った場所へと到着したアギレヴの目の前にはバスケットコートがあった。するとそこには、舎弟の言っていた巨漢の男と思われる男が立っていた。
   そして男が足元を見ているので、視線を合わせるとそこには達美が倒れていた。

「達美!?」
「ん?なんですか?こんなところに子ども1人とは……、あ、この人のお子さんですかね?」
「お前達。達美に何をしたのだ?」
「おっ?なんすか?このお兄さんとそこの子どもをやっちゃえばいい感じ?」
「そうですね。私は約束致しましたからね?チップを差し上げる代わりに、超能力になった事は誰にも見られないようにしてくださいと」

    地面に倒れ伏している達美を囲うように、バスケットコートにいた若者達がスーツを着た男性と黒いフードの巨漢の側についた。しかし、一人だけバスケットコートから動かずにいる女子校生の姿があった。

「おい好美。何やってんだ?俺らこのままじゃ、約束破ったことになんだぞ?お前もこっち来て手伝え」
「え?でも……あんな小さい女の子。弱い者いじめは、うち……嫌いだよ」
「そうですか。でも彼女はチップをお使いになっていないようですから、問題はありませんよ」
「そういうことなら、あっしらだけの心配だね♪悪いわねぇお嬢ちゃん」

    確認が済んだ連中は、アギレヴに向かって五人がかりで襲いかかった。レビテーション能力を手に入れた女性が先陣を切り、アギレヴの身長では届かない高さから降下して蹴りを入れるヒットアンドアウェイ戦法を取ってきた。
    当然、アギレヴは応戦するために攻撃を避けると次に周辺に落ちていた木の枝がアギレヴを襲う。軽快なステップで躱しながら、勢いをつけて飛躍した先に居る女性に一撃をお見舞いして地上へと落とす。

「やるじゃねぇか!まさかこのガキも超能力者とはなっ!」
「む?これは超速移動スピードスターなのだ。だが────」

    超能力者になったからとて、相手が放つ読心術などの超能力に対しては耐性を付ける必要がある。目では確認出来ない速さで動いていても、心が読めるのならその攻撃は防がれるのは当然のことである。
    三人の若者を攻略したアギレヴの前に今度は巨漢の男が現れる。見た目どおりの超能力を持っているようで、飛び込んできただけ地面が炸裂した。
    念圧重力グラビティプレッシャー。それが今起きた超能力で、重力というよりは対象の重量を操作する能力。しかし、アギレヴは少し焦りを覚えていた。それは、念圧重力グラビティプレッシャーを相手は自分にかけているということだ。これにより、アギレヴが精神攻撃系の超能力を持っていたとしても容易く干渉する事が出来なくなる。

「どうしました?彼にはあなたの超能力は通じないということですかね?手こずっていただけるのなら、その隙にこの男の生命はいただきます」
「────ッ!?達美ッ!!」
「隙ありゃ!!」
「しまったのだ!?グッ!!??」

    完全に不意をつかれた。よりによって、目の前の巨漢ではなく再起した若者の攻撃をまともに受けてしまうとは。パチパチと点滅する視界のまま、達美を守ろうと包囲を突破しようと試みるが、重力の念を越える前に三人の攻撃を捌き切れずに徐々に被弾回数が多くなっていった。

「やめて……。可哀想だよ!みんな、やめようよ!」
「ふざけんな!これでようやく俺らはアイツらを見返せるかもしれねぇんだ。そのためなら、なんだってしてやるぜ」
「それな。あっしも、もう惨めな自分にさよならしたいからさ。恨むんならあっしらを目撃した自分を恨んでよね」

    既に防戦一方で、急所への直撃を避けるためにその場に蹲って攻撃を耐えるアギレヴに自分達の感情論を吐きながら、手を休めることをしない。その状況下でも、刻一刻と達美の喉元にナイフが突きつけられる。
    このままでは、達美の生命が奪われてしまう。目の前で殺しの惨状を目撃してしまうと恐怖で硬直する女子校生は、次の瞬間糸が切れたように意識を閉ざし首だけ垂れ下がった。

さぁ、どうする?アギレヴ。このままでは達美が殺されてしまうぞ?

    生気のない両眼が水色の炎のようなオーラを放ちながら、達美の方を観る女子校生。その口が開いた時の声は先程のものとは違っていた。感情を持たない人形のように攻撃を受けるアギレヴの方を観る。
    すると、アギレヴのいる地面から紫色の波動が強風を巻き起こし、周りにいた能力者を全員吹き飛ばした。

━━━ ハカイシャ……タイ、ドウ…………

    重々しく上体を起こすが、アギレヴの肩には力が入っていないのか重力に引かれたままだらんと腕が下がっていて、首も座っていない状態。両眼は禍々しい光に包まれて狂気そのものを憑依させたような風貌をしていた。

やはり。それしか、ないだろうな……
    
    アギレヴの変異を見届けた女子校生はその場に倒れ込む。それと同時に起き上がった能力者達は何が起きたのかとそれを目撃する。
    悪魔。そう名付けるのが相応しい姿がそこにはあった。

「な、なんですかこれは?私もこんな超能力は聞いたことも見たことも……?おい!早くやれッ!!」
「お、俺らもいくぞ!」
「う……うん。どうせ虚仮威しに決まってるって。あっしらはそんなんじゃビビんねぇ────し?」

    戦意を奮い立たせて前を向く女性の目の前に逆さ吊りの紫の眼光が迫っていた。かぁと開いた口から、温度差がある訳でもないのに湯煙を溢れさせながら言葉を発する。

━━━ Brain___Hazard___Overflow...破壊者・胎動タミネイト・タオ

「い、いやッ……」

    声を上げる前に閃光が全身を切り刻む。すると体内からチップが吐き出されて壊れることに加えて、レントゲンのように身体がスケルトンになりチップに血管のように繋がれていたが崩壊していくビジョンが映り、紫の焔燃え盛りながら倒れた。脈の総てをしていることを焔は意味していた。
    ニヤリと口が裂けるくらいに口角を開きながら、爪を輝かせると一瞬にして姿が消えた。瞬きの間もなく、また更に二人の能力者を同様にチップと脈を粉砕していく。

「な、なんなんだよこのガキ。まるで化け物じゃないかぁ!?」
「────ゥ?イッヒッヒッヒッ♪オマエ、モ……ハカイ、ハカイ、ハカイナノダ……」
「おいー!!お前の重力で止めろぉぉぉ!!!!」

    巨漢に命令を下し、念圧重力グラビティプレッシャーをアギレヴにかけるが、不気味な笑みを浮かべたまま重さを一切感じていない様子でゆっくりと歩いていた。
    そして、更に重圧をかけようとした巨漢の男が何故が弾け飛び自由落下で頭から地面に叩きつけられた。

「オマエ……、ヤルキ……ナイノダ。ダカラ、モウ……コワレテイイ、ノダ」
「ち、ちきしょう。来るな、来るなぁ!!」

    テレキネシスで物を浮かせて投げつけるも、手団扇を扇ぐように跳ね除けて進行を続ける。再度念を込めるも物が浮かないことに焦る男性は、袖を巻くって自分の腕を見た。

「な、何でチップが抜けているんだ?そ、それに……身体に、身体に入らない!?」
「オマエ、チョーノウリョク……シュウリョウ、ナノダ。モウ、チップ……イレラレナイ、ノダ……」

    絶望的な一言をトドメとしてもいいのに、額に手を当てられオーバーキルと言ってもいい状況に気絶してしまった男性を見て、だらっと腕を降ろす。そこに物音を立て起き上がった巨漢が再び重圧をかけてきた。

「サッキ、ハネカエシタ……マダ、コワセテナカッタノダ?ジャア────」

    両手の爪を合わせて前で組み、握力をかけて手の間に入った空気を握り潰していく。すると、巨漢の男はその場に膝を着いて倒れた。かけられた重圧を跳ね返しても超能力を破壊出来なかったことで、今度はかけられた重圧を圧縮して倍にして返すことで流石に倒れてしまい地べたに伏したところで全身に紫の焔が走る。
    例外なく、立ち向かってきた能力者全員のチップを破壊しただけでなく、適合している脈自体を破壊してしまうアギレヴの力。しかし本人の意思で動いているわけではないのかている訳ではないため、次に護るために近付いた達美を持ち上げて喉元を目掛けて爪を刺そうと狙いを定めていた。

「────ッ!?キョウリョクナ、チカラ……キュウセッキン……ナノダ?」

   ピタリと手を止めて匂いを嗅ぎながら周囲を見渡す。そんなアギレヴの背後からその強力な力の正体が声をかけてくる。

「お前には達美を護ることを託しているのに、その力に呑まれて達美を殺しかけてどうする?」
「アァ────?ハカイタイショウ……ハッケン、ナノダ……」
「やれやれ……。能子のせっかくの遅い昼休憩もこれで台無しだな」

    自我を失い襲いかかってくるアギレヴを迎え討つべく姿勢を落として走り出す。バスケットコートの中心でぶつかり合った二人は腕を掴み合っていた。華奢に見える能子の腕に血管が浮き上がる。

「本当にその力、厄介だな。こんな事なら、さっき割り込んで達美を助けるべきだったよ」
「ガァァァ────ッ!!コワス、コワス、ハカイシテヤル、ノダァァ!!」
「我を失って力に取り込まれるようでは、能子は倒せない」

    先程、女子校生がアギレヴと達美を観ていたのは途中で能子が強制共鳴ギアスシンクロによって体に憑依して透視を行っていたのだ。あくまでも自分は今遠出をしてしばらく達美の家へは帰ることが出来ないから、その間アギレヴがちゃんと護る事が出来ているか遠隔透視リモートビューイングで観るつもりでいた。
   しかし、そうもやっていられない状況になったことでやむなく他人の身体を借りることとなり、結局こうして瞬間移動テレポーテーションで暴走状態のアギレヴの前に現れることになってしまった。
   力比べで押し切ろうとするアギレヴの力に敢えて委ね、よろけたところに腹部に足を付けて巴投げで上空へと蹴り飛ばす。

「いいか、力とはこう使う。言っても今のお前には意味は無いだろうがな」
「────ッ!!??」

━━━ Brain___Hazard___Overflow...再始動の救済リスタートセーバー

    頭上高く舞い上がったアギレヴに手で銃の形を組み人差し指を向けて、指先から銀色の閃光を撃ち出す。アギレヴの左肩を穿いたその一撃でアギレヴの全身に纏っていた禍々しいオーラは消え失せ、仰向けの状態で落下して来たアギレヴを受け止めた。
    暴走を止めたその足で達美のもとへ駆け寄る能子が歩いている周辺は、超能力のぶつかり合いで損壊している。しかし歩いて前に進む能子とは裏腹に周辺は巻き戻し再生しているように損壊した場所が修復されていく。

「パッケージ達の記憶も消しておいた。とりあえず、達美とアギレヴはお家に連れて行くとしよう。アギレヴ、お前はいい情報を手に入れてくれたようだな」

    気を失い眠りに就くアギレヴを見つめながら、瞬間移動テレポーテーションで達美の家に移動した。

   リビングのソファに達美を寝かせて、アギレヴを部屋のベットに寝かせると少し考え込んだ。二人の記憶はどうするべきか。そもそもアギレヴには有効だが、達美には何故か能子の能力のみ一切効かないため、記憶を書き換えることも消すことも出来ない。
    達美、達美と頭で思考を巡らせている能子は不意に恥ずかしくなった。

「今って……能子、チャンスなのでは?」

    超能力が一切通じないせいなのか、能子は達美に対しては強い興味を持っている。そのうちに、これがであることに気付いてしまった能子は、達美と進展出来ないことを思い悩んでいた。
   つまり、今なら達美にバレずに自分だけの思い出を作れるのではと良からぬことを考え始めてしまった。自問自答が来るよりも先に身体が動いていた。達美の前髪を指で退かして口付けをしようと顔に近付く。

「いやいや、待て能子。こんな卑怯な方法で達美の心を奪う気か?達美にだって決める権利はあるのだぞ?そ、それに能子は今────」
(勤務中なんだぞ)

    寸前のところで自制心が勝ち、テレポートで向かっていた地方の事務所まで引き返した。戻ってきた早々の深いため息をついていると職員がようやく見つけたという様子で駆け足で能子のもとへ来て声を荒げて言った。

「能子さん何処に行っていたのですか?休憩入ってから2時間も帰ってこないから皆さん心配していますよ」
「な、何ッ!?そんなに時間が経っていたのか!?能子……不覚……」

   腕時計を観ると本当に長時間不在をしていたことに気が付き、ショックを受けた。今日会談予定だったものを記憶操作で明日の予定に変えることは簡単なことだが、それが出来てもこの場の滞在時間を延長していることに変わりはなかった。わざわざ記憶操作で承認を得ずに直談判するのは証拠映像などを作る手間を省くためである。
   全てを超能力で解決することも能子的には出来ないことではないが、なるべくは能力の行使を省いてことを進めたいという拘りを守るため、一日滞在時間を増やしたのであった。

   能子に助けられた記憶はないが、目を覚ました場所が自宅であった事に驚いた達美とアギレヴは、こんな芸当をやってのけるのは能子くらいだ考え夜ご飯を食べ始めた。

「今日は4人だね」
「そうだね……、パネロも出張だし」
「プレソーア君、ボクのエビフライ1個あげる」
「ありがとう……」
「────むむ……」
「ど、どうしたの?アギレヴ?嫌いな食べ物は入れてないと思うけど?」
「能子に助けられたの……嫌だった、とか?」

    抑揚のない声で投げてきたプレソーアの質問に対して「そうじゃないのだ」とテーブルに顎を置いて返答する。苦しいそうな顔をしてぶるぶる身体を震わせる姿に心配になって立ち上がって隣に達美が寄り添うと飛び上がって叫んだ。

「左肩が痛いのだ!?能子のヤツ、助けてくれたクセに傷の手当てしてくれなかったのだッ!!」
「そんなこと……。見せてよ。僕……治せるから」
「プレソーア君、本当に何でも出来るんだね。ボクも、頑張らないと。達兄ぃ、ご飯お代わり!」
「はいはい了解。同じ量入れるね」

    痛みを訴えるアギレヴの傷を治療して、食事に戻ると元気になった瞬間に箸を目にも止まらぬスピードで手に取り、プレソーアの盛皿に箸を伸ばした。

「あっ……」
「ふっふっふっ。これはコハクがプレソーアにあげたエビフライなのだ。つまり童が食べてもコハクのエビフライを取ったことにはならないのだ♪」
「あはは……、欲しいなら僕のあげるのに。いるかい?」
「いいや、達美は童のお嫁さんになるのだ。沢山食べて健康を保つのだ」
「もう絶対……治さない……」

    静かに怒りを吐くプレソーア。今朝と同じテンションのアギレヴ。目標に向かって進もうとするコハク。達美はそんなみんなを見てつい笑みが零れてしまっていた。

    何だか今日も平和に過ごせたと、その日達美は気持ちよく眠りに着くことで出来たのであった。
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