意味のないスピンオフな話

韋虹姫 響華

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ハズレな話

届くことのない贈り物

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「こりゃあ、だめですっ!はいっ!」
「あっ、それはないじゃないの燈火ちゃん」

 茅野から、写真集を没収した燈火。
 麗由のグラビア写真集を、辰上にプレゼントするつもりで本人もノリノリで撮っていた。取り返そうとしてくる麗由と茅野と、長テーブルを挟んでの睨み合い。両手を交差して抱き抱える燈火の姿は、親の言うことを聞かない一次反抗期を迎えた子どものようにも見える。

「いいですか?麗由さん!こんなものを後輩が手に入れてしまった時のこと、考えてください!日夜、怪異調査に明け暮れ彼女とも連絡が取れない……。そんな仕事でプライベートの時間を作ることが出来ない後輩にとって、これは禁術の記された魔本にも等しいんですよ……はい!!」
「そんな大袈裟じゃないかしら?」
「何も分かってないですね芳佳さんはっ!!こんな付き合ってる人間のあられもない姿を見たら、誰だって理性を保っていられない!!それどころか、後輩は普通の人間。その後輩には、刺激が強すぎて戻って来れなくなるですよ、はいっ!!」

 大きな声で持論を述べ、麗由を指さす。
 目をパチクリと瞬きする麗由は、戻って来れなくなるとはどういうことなのかと質問をした。すると、耳を貸すようにひょいひょいと指を捻って、耳元でコソコソと説明する燈火。
 途端に麗由は耳の先から、顔面を余すことなく真っ赤にして口元に手を当てた。茅野は、何を吹き込んだのよと呆れた顔で見つめる。そして、茅野の方へ走り耳打ちする麗由は、遂に顔を全部手で覆ってしまった。

「あのね……、それは辰上くんの自由でしょう?私と麗由ちゃんは、ただ離れていても麗由ちゃんを感じていられるように、写真集にしたんじゃないの」
「よ、芳佳様!?感じられるようにとか、言わないでください!!」
「何でよ?別に辰上くんが、これで抜────」
「だあぁあぁぁぁあぁぁぁぁぁぁ!!!!!!やめろです!!それ以上は!!!!」

 言い出しっぺは燈火だろうに、茅野の言葉を大声を出して遮った。
 とにかく、これは辰上に渡すべきではないと、燈火は押収することにした。茅野は心底残念と、凹んでいる。その隣にいる麗由は、とうとうカーテンにくるまって全身を隠してしまった。そんなに恥ずかしいことなのかと、茅野は疑問に思いつつ諦めることにした。
 燈火は、写真集を持って事務所を出て自宅へ保管しに向かうのであった。

 すぐ近くだからと、包装や袋に入れることなく持ち歩いていた。これが仇となる出来事に、遭遇してしまった。

「何持ってるんだ?それ」
「ギクッ!後輩?は、早かったですね?」
「そりゃあ、ラットさんが戦闘を担当している調査だったからな。合流した時には、怪異討伐終わってたんだよ」
「そ、そうですか……。じゃ、私は家に帰りますんで……はい」
「おい、ちょっと待て」

 如何にも怪しい燈火の態度に、気付かない辰上ではない。首根っこを掴んで、逃げれないようにして、手に持っているものについて尋ねる。幸い、表紙にはグラビアは使われていないため、中身が麗由の写真集であることはバレていない。
 しかし、明らかに不自然だった燈火を見て、よからぬ事を考えているのではないかと、疑いの目を向けている辰上をやり過ごすのは至難の業だろう。

「りょ、料理の本ですよこれ……はい?」
「ならなんで、僕と目を合わせないんだ?」
「うぐっ!?そ、それは……」
「見てもいいか?僕」

 カマをかけてきた。ここで、真っ直ぐダメと言えば完全にバレてしまう。
 その誘いには乗らないと、咄嗟に出そうになるところを必死に堪え、料理本から繋げられることを探した。すると、近日中にメンバーの中に誕生日を控えているものがいるのを思い出し、そのままのテンションで答えた。

「じ、実は総司さんの誕生日が間近に迫ってきましたので、サプライズに料理を作ってプレゼントしてあげようと思っていたのですが……、後輩に見つかってしまうとは……」
「料理本から、麗由さんが付けている香水の匂いがするんだけど?麗由さんと総司さんは、同居はしていないし。麗由さんは、総司さんの食べ物の好みを知らないって言っていたぞ?」
「はい?」
(うえぇぇぇ!?そ、そんなの知らねぇです、はいっ!てか、後輩。麗由さんに関しては匂いまで、記憶しているとか────す、すげーイチャラブパワーです……はい)

 完全に読みを越えてきた辰上。
 疑いの目は、完全に本の表紙に向いていた。麗由から借りたと言えば、「麗由さんは、自分で料理手帳を作っている」と答え、麗由の家に持ち込んだことがあると言えば、ここ数週間は辰上以外の客人を家に入れていないと答えられてしまい、ボロが出まくりバレていないわけがない窮地に立たされた。

「もう、見せてくれないか?お前が嘘をついてまで、僕に見せたくないのはおかしいだろ?」
「べ、別に後輩じゃなくても、見られたくねぇですっ!!」
「このぉぉ、いい加減なこと言うな!見せろっ!!」
「いぃやですぅぅ!!はぁぁぁい…………っ!!」

 最早、不毛な争いに発展してしまった。こうなれば、どちらかが根を上げるまでの我慢比べになるだろう。ここにいる両者がそう思っていた。しかし、奇跡は誰にも分からない形で舞い降りるものだ。
 二人が取り合う衝撃で、上空に上がった本。二人の頭上から落ちてくる。野球のヒットボールをキャッチしに行くように、落下地点を目指す。お互いに体当たりやどつきで、妨害していると本に伸びる一筋の影がダークホースを決めた。

「よぉぉぉぉやく、見つけたぞっっっ!!!!わたしのネタ帳ォォッッ!!」
「あ、家小路いえのこおじさん……」
「おっ?マァァイ、ハニィィィィではっ!ないかっ!!まさか、これを見つけたのは?」
「はい!そうですっ!家小路さぁぁん♪」

 目を潤わせて、旦那の家小路に抱きつく燈火。
 辰上は、家小路のネタ帳であるのなら見せられないのも無理はないかと、ため息をついて諦めた。それで、色々と嘘をついていたのかと納得して、燈火に謝った。

「まさか、まだ世に出てないネタや原案があるかもしれないネタ帳だったとは。お前も、それくらいなら言ってくれてもいいじゃないか」
「いや~、家小路さんの作品については、1ミリも他言したくないので……はい」

 頭を掻きながら、辰上と別れる燈火。

 自宅に到着し、リビングに向かう夫婦。すると、そこに家小路の本物のネタ帳が置かれいた。一瞬、自身の目を疑っている家小路の手から写真集を奪い、寝室にしているキャットハウスに放り投げる燈火。
 家小路は、灯台もと暗しでネタ帳をなくしたと勘違いして、今日巡ったカフェや打ち合わせしたスタジオを駆け回ったと、大爆笑していた。

その夜。
家小路が寝た後に、キャットハウスに豆電球が点いていた。

「うひゃー……、カァーーー!?こんなセクシーショット、後輩が見たら捗るでしょうね……はい。こりゃあ、いいものを手に入れましたよ♪────はいっ♪」

麗由のグラビア写真集は、しばらく燈火のお楽しみとして重宝されたのであった。
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