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メインストーリーな話
レッドヒール
しおりを挟む門を覆う城壁を走る紅き閃光と、衝突を繰り返す碧き閃光。空中で激しくぶつかり合い、地上へと降り注ぐ。アンドロイドアームが土煙から、飛び出すように大地に受け身を取る。アサルトキックがレッドヒールの頬を蹴りつけ、後転からの起き上がりでアンドロイドアームの追撃がくる。
「アッハッハッハッ♪ちょっとは面白くなったんじゃんかよ、おいッ♪もっと、もっと───っ、ヒールと踊ろうよ♪」
「キッ……、ッッ!?」
「オラッ、リズム崩すなよ!!ちゃっちゃと立て直せッ!!アーッハッハッハッ♪」
受け止めきって退く、レッドヒールの身体に巻き込まれる形で不自由の身となったサタナキア。そこへ、容赦なくレッドヒールの反撃が飛んで来た。音速にもなる脚撃に、アーマーは一瞬にして亀裂が走る。悪魔の角を模した、ナキアーマーのアンテナ部を鷲掴んでへし折る。
落ちるサタナキアの顔面に、力一杯の膝蹴りをお見舞いする。両腕を盾に直撃を避けるも、吹き飛んで壁にバウンドする。無防備になった急所にヒールの踵が突き刺さる。吐血するサタナキアを見て、ニヤリと笑みを浮かべると瞳孔が小さくなるほどに目を開けて、くの字の身体を逆くの字にさせる回転蹴りで地面に叩き付けた。
肩で息をしながら、内股混じりに立ち上がろうとするサタナキア。立ち上がると同時に、憑依形態変化をして装甲の耐えうる限り、レッドヒールの攻めを耐えた。以前に負わされた傷は完治していたも、この実力差。やがて、大木に打ち付けられたサタナキアの肩をヒールがアーマー毎穿いた。串刺しにしたまま、痛みに悶えるのを堪えているサタナキアの髪を掴んで額をぶつける。
「ねぇ?もう終わり?ヒール、全然楽しくないんだけど?飽きてきちゃった……」
「はぁ……っ、はぁ……っ、はぁ……。その割には……っ、何だって身体光っているんですかねぇ?ケッ───、ヒヒヒヒ…………ッ」
レッドヒールはサタナキアとの決戦を始めてから、すでにアンリードの能力に異常が見られる現象が起きていた。
ルーティンやプロメテウス同様の兆候が現れていたのは、サタナキアのせいであるとレッドヒールは口にした。弱くて、踊りの才能もない女の姿こそレッドヒールの素体とされた少女。その生前の記憶である、夢半ばの未練。未完の夢に重なっていたのであった。
✳✳✳✳✳✳✳✳✳✳✳✳✳✳✳
少女は、両親から何でも与えてもらった。
それでも、少女の夢は与えてもらえるものでは、叶わなかった。習い事にまで通い、バレエを愛した少女。しかし、それでも努力が実らないこともある。両親は少女に、踊りは諦めない限りは応援することを約束した。
そんな仲睦まじい家族愛をよく思わないものが居た。少女を快く思わない者の手によって、階段から突き飛ばされたことで両脚を骨折してしまい踊りを続けることが出来ない日が訪れる。
「すごぉーい、あの人のダンスとっても可愛いわっ!!」
「ほんとだ。あの軽やかな、軽快って言うんだろあれ?とにかく、スゲーよ」
「あ、でも。こないだ見た子は……出ていないのね……ちょっと残念」
車椅子から覗いている、舞台の真ん中で賞賛の声を浴びるバレリーナ。彼女こそ、少女を突き飛ばした張本人だった。別に少女に踊りの才能はなく、彼女の引き立て役にすらなることもない実力しか持ち合わせていない。それでも、家族に愛を向けられている少女に嫉妬していた。
動機なんて、そんなものでしかなかった。自分の続けてきたことで、家族ではなく見ているものを魅了出来ている。それだけで満足できるよう、少女に当たったのであった。少女は夢を断念せざるを得なかった。
その後も、家族は少女が大人になる道のりを見守りながら、無償の愛を与え続けた。その度に周りからは、妬みによる仕打ちを受け続けた少女は、家族の愛情が恐ろしいと感じるようになっていた。家族に愛を向けられた分だけ、誰かの怒りをぶつけられる日々。
踊り続ける悪夢のような人生。それでも、家族以外に縋る者がない少女は大人になった。大人になった彼女に待っていたのは、向けられた愛の清算だった。
「ごめんね……、もう耳もまともに聴こえないよ……」
「なぁ、珈琲のお代わりはまだ貰えるのだろう?早く頼むよ……」
耳も目も不自由になって、介護が必要となった母親。最早、自分の娘だとも認識していない父親との生活に追われていた。仕事もしなくては、両親はもちろんのこと自分の生活も守れない。それどころか、何の才も開花することなく平凡な能力しか持たない自分には、手取りを上げる術などなかった。
時間をかけることも出来ないし、親に与えられた道を歩み続けた彼女には、自分で決断するなんてこと出来るはずもなかった。
───これまで与えてきたくせに、今度は自由すら奪って来る。こんな愛なら、家族なんか...───
とっくに心は限界だった。踊りを踊って、みんなから感動の声を浴びたいという幼気な夢が、今も呪いのように付き纏う。続けたって結果に結びつくことがなかったのか。それさえ分からないまま、次に与えられた道を歩いた。ピアノも弾けても感動させられない。絵を描いても、評価される出来映えはしない。
永遠に抜け出せない、不平等というspiralを生き続けた。いや、生かされ続けた彼女。彼女にとっての踊りが、掌で踊っていたことに変わった時───。両手は真っ赤に染まっていた。目の前には、家族だったものの残骸が尚も床を赤く染めていく。
返り血で全身が朱く染まったまま、彼女は外へ出た。道中で目撃した人達は、殺人事件が起きたのではないかと騒ぎ立てる。その雑音に頭を押さえながら、かつて見た夢が砕かれた舞踏台に向かう。血塗られた服を着たまま踊る舞、その様は猟奇的で狂気的だった。なのに、どこか爽快的な舞であった。
少女の日に夢見た、光景が彼女の最期を包み込んでいく。踊りを終え、深々とお辞儀をする。そして、隠し持っていたナイフを自身の首に突き付ける。
「やっと……わたしの自由を見付けたよ……ママ……、パパ……」
小さくか細い声で、その場に居合わせた人々に聴こえない言葉を漏らして鮮血を散らし、その生涯に終幕を迎えた。
✳✳✳✳✳✳✳✳✳✳✳✳✳✳✳
肩に突き刺したヒールを更に奥深くへ、抉り込むように脚を突き上げるレッドヒール。
「ヒールはねぇ?誰かの手の内で踊らせられるんじゃないの。延々と自分の踊りを続けるのっ!!!!もう誰にも邪魔なんてさせない、【赤い靴を履いた女】の怪異と不平等に喘いで死んでいったあの子に代わって、今も。そして、この後の人間が滅んだ世界になっても───、舞踏は終わらないわっ♪♪アッハッハッハッ♪」
レッドヒールの全身に浮かび上がる、マグマ色の紋様。血管のように浮き出していたそれらが、熱が引いたように輝きを失った。黒い焼け跡だけが、蚯蚓脹れのように残り頭をひたむける。再びサタナキアを睨むために上げた顔は、右反面の瞳孔が真っ黒になり、瞳は赤と緑の二色が入り交じった色へと変貌していた。
サタナキアを見ていることで、生前の惨めな少女時代を思い出して不快になっていたレッドヒール。しかし、湧き出た激しい怒りと自己嫌悪によって、アンリードが及ぼす弱体化を克服したのであった。
克服した姿を近くにあった硝子の破片で確認したレッドヒールは、狂ったように頭を振りながら笑った。アンリードに弱点があることは、レッドヒールもルーティンに聞かされていた。ボニーはプロトタイプのため、再起動が必要だがそれ以外のアンリードは、記憶を繋ぎ止めないようにすれば時期にもとどおりになる。
しかし、今のレッドヒールは違う。生前の記憶を認知した状態で、理性もアンリードとしての機能も保っている。それが叶ったことで、本当の完全な存在になれたことを確信したからこその狂笑。レッドヒールは自分をアンリードの完成形に進化させてくれたこと、感謝するように拳を突き出した。
露出している腹部に、青紫色の痣をいくつも作るように殴りつける。サタナキアはそれを防御もせずに受け続ける。冴え渡る感覚を堪能したレッドヒールは、サタナキアの肩を穿いていたヒールを切り離して、バク転を繰り返し距離を取った。
「はぁ……っ、はぁ……っ、ハァ──ッ、ハァ───ッ……」
「これで終わりにしたげる♪ヒールを完全体にしてくれた御礼だよ♪精々、己の無力さを知りながら人間に肩入れしたことを恨むのねぇ♪」
新たに生えてきたヒールを光らせて、舌なめずりを魅せる。側転で勢いを付けた、渾身の跳び蹴りがサタナキアにトドメを刺す。すると、向かってくるレッドヒールの一撃を前に、目を向けずに口角をV字になるくらいに吊り上げて、邪悪な笑みを浮かべるサタナキア。
狂ったのか。いや、違う。サタナキアは至って正気だ。長い蛇舌をベロォ~っと垂らして、顔を上げた。そして、変身解除をして完全に無防備な状態を晒した。同時に全身が醜悪色に耀き出し、無数のコウモリとなってサタナキアの体が崩れ去った。
大木を一瞬で粉砕する、レッドヒールの一撃を回避したことで辺り一帯が煙幕に包まれた。レッドヒールは、獲物が逃げたことに歓びを覚えた表情で当たりを探す。
「やれやれ……わっちも見くびられたもんスねぇ~~?エヘヘッ……♪それと水砂刻クン……、遅過ぎますよ───、力使うの……。危うくわっち、本当に殺られちまうとこでした……」
「────ッ!?そこねぇ♪」
視界が遮られても、聴覚が繊細になったレッドヒールには暁咲の小言ですら、位置を特定することは造作もないことであった。煙幕を突き破って拳を突き出したレッドヒール、その一撃を片手で受け止める暁咲。
呆気にとられた一瞬で、グッと顔前に腕を引いて近付きレッドヒールの顔を睨み付けた。その眼は、明確に敵と認識した相手に見せる蛇睨みに等しい冷徹なものを宿していた。
「いいか、ゼンマイ人形?わっちは、人類がどうとかって他の連中みたいに正義振ってここに来てないんだよッ!!」
「ぐ、ぅぅ……っ」
「せっかくだから、耳かっぽじって聴いていけよ。不条理、理不尽、不平等?大いに結構ッ♪そういう、変化が生まれる社会の縮図があるからこそ、人生ってのは楽しむことも苦しむことも出来るッスよ!!」
格差がある。当然のことだ。それらがない平等な世界なら、誰も夢など抱かない。いや、抱く必要のない普遍的なものしかない世界なら、そこに正確な化学反応はあっても不確かな化学反応は生まれない。
結局、人間のように感情や知性を持ち合わせる生き物が生まれてくるなら、目に見えた差というものを求めだし、終わりのない探究を繰り返すことになる。暁咲は、そう思える出逢いをしていた。そして今、怪異と人間の境界を研究するきっかけをくれた存在から、送り届けられた力でレッドヒールを迎え討つ。
人の想像から成し得た存在、怪異。それがこの世界の現状を作った原因であると、久遠は定めた。しかし、人も怪異も生まれは同じであるとする出逢いが、この世界には存在する。人間を捨て、怪異へと堕ちた一人の女。それが鳴堕 暁咲、またの名も【恋路に潜む魔窟】。
「ん?口紅?ああ、死に化粧ってやつ?ヒールのフィナーレに付き合ってくれるのね♪生意気抜かした代償は高ぇからな?アァンッ?」
「エヘヘヘ……、ネーミングは《デビルージュ》ってとこですかね?ギャハハハハハッ♪」
腰につけていたカプセルアイテム。耀き出したそれは、口紅の機能を果たし暁咲は唇に塗った。すると、全身に赤黒い魔障がまとわりつく。同時に、周辺からポリゴン状のコウモリ、クモ、ヘビと姿を形作って暁咲の身体へ集まって行った。
そして、再びサタナキアへと姿を変え悪魔憑着する。今度は、新形態へとパワーアップした姿へ変身を遂げた。
───ウェスペルティーリオ...アラーネ...セルペンス...ナキアーマーV.A.S...ロードアップッ♪
「どうよ?コウモリ、クモ、ヘビ。3種類のラテン語でお送り致しましたぁ♪わっちの新フォーム♪」
「それがなによ。どうせ、ヒールには勝つことは出来ないわ♪」
「そんじゃ───、ラストダンスに付き合ってやりましょうかね?ギャハハハハハッ────、エヘヘッ───、ィヤハハッ♪」
互いの拳がぶつかり合う。
パワーではレッドヒールが上かに見えた、初手のやり取り。衝突してすぐに、後退りしたサタナキア。止まらず、レッドヒールの回転連脚撃が襲う。それを素早い回避ですべていなし、ストレートキックを受け止めた。
ガッチリと脇腹でロックし、腰に着けてあるカプセルの一つをリストのカートリッジ装填口に嵌め、コウモリの力を行使した。キロプテラと学名を無声音が発すると、アーマーの背面に巨大なコウモリの翼がシルエットを浮かび上がらせた。ジュルリと涎を啜る音を立てながら、サタナキアはレッドヒールを連れて空中へと飛翔した。
「はい、そんじゃあスピード勝負といきますかぁ?キロプテラカプセルを真ん中に装填♪ヘビのカプセルを反転して装填♪」
腹部にベルトの役割をしている装填口に、三つのカプセルの順番と向きを組み替えるサタナキア。すると、クモ、コウモリ、ヘビの順番で無声音が再生される。
───アラーネ...キロプテラ...アングイス...。レスバでヒートアップ?ナキアーマーa.k.a、コンプリーションッ♪
アイバイザーがコウモリをモチーフにしたシルエットから、クモが脚を広げているシルエットへと変わった。同時に、獲物を狩るPredatorとして備わったクモの奇襲能力と、素早く噛み付くヘビの瞬発力を兼ね備えた機動性を発揮する。
レッドヒールへ一瞬で近付き、マウントを取ったまま地面に叩き伏せた。そして、これまで受けたダメージをお返しと言わんばかりにタコ殴りにする。不快な笑い声を罵声のように浴びせながら、レッドヒールの再生力を上回る速度で傷をつけていった。
地面が凹んだところでマウントを解き、起き上がり際のカウンターを避け裏拳をカウンターカウントで当てる。延伸力でグルグルと回っている間に、リストにカプセルを装填したサタナキア。今度はヘビの力を使った、無声音はティタノボアと絶滅した巨大ヘビの名を呼んだ。
途端に、レッドヒールの反撃が無防備となっていたみぞおちを捕らえた。その一撃が、サタナキアの露出した腹部に突き刺さる。はずが、ヒールが砕けた。ティタノボアの強固な鱗を身体能力に変え、引き締まっているサタナキアの腹部。そこに薄っすらと浮かぶ筋、とても頑丈とは思えない腹筋だがレッドヒールの踵から伸びる刃を易々と、砕くほど硬質化していた。
「おいおい♪それじゃあ、話にならないッスよぉ♪それがアンリードの限界ですかぁ?」
「ギッ!?ナメんなぁぁぁ!!!!」
「ふんっ♪さっきなんて言ってましたかねぇ?わっちが雑魚みたいなこと、言ってましたよね?それじゃあ……お返し♪────ざぁこざぁこ♡」
レッドヒールの追撃すらも凌ぎ、ベルトにカプセルを戻しすべて奥に押し込む。両脚に醜悪で禍々しい、赤黒いエネルギーが溜まっていきサタナキアは飛び込みと挟み込みを同時に行ない、レッドヒールを頭から地面に突き刺さるように両脚で引っ張り上げて叩き付けた。
空かさず距離を取り、カプセルを冷却状態に戻した。アンリードとの戦闘データをもとに、急ピッチで開発した新システム。過度な負荷がかかり過ぎると、強制変身解除の危険性があることにサタナキアは気付いた。
それは同時に、次の一撃で決めないとレッドヒールに逆転されてしまうことを意味していた。レッドヒールは埋められた体を救出し、自己修復機能で全快するなか息を整えていた。サタナキアは確信する。今のレッドヒールは完全体になったのではなく、人間に近付きすぎていることを。怪異使いと大差のない存在に、ただ成り下がっているということはコアを一撃で穿けば勝機はある。
「どうした?息切れか?怪異ってのも、絶倫じゃねぇのかと思っていたのによぉ?ヒールの番ってことでいいかぁ?」
「いやぁ?ダンスはもう終わりですよ……イヒヒヒヒッ♪」
電光石火の如く、今度はこっち番だと向かってくるレッドヒール。
それに対して動じることなく、サタナキアはもう一つのカプセルを翳す。それは、新形態を獲得した際に使ったデビルージュだった。サタナキアはそれを起動させるための、トリガーを捻る、すると緑色の電磁波が走ると一瞬時が止まった。
刹那の隙を突いて、回避とクロスカウンターをヒットさせるサタナキア。着地した場所で、デビルージュに口付けをして頬を紅潮させた。なんと、デビルージュには水砂刻の力が宿っていた。サタナキア風に言えば、水砂刻成分が水砂刻に渡した御守りを経由して、ブランクカプセルに運ばれたことで完成した出来たてホヤホヤのアイテム。それがデビルージュなのであった。
つまりは、試運転でこれだけの性能を発揮したということになる。サタナキアは改めて、クロノスの力を使ってくれた水砂刻を思って口付けする。
「ヒールは、負けないッ!!お前みたいな、ふざけた奴が蔓延る世界は淘汰されるべきなのッ!!怪異も人間も居なくなった、新しい世界でヒールは踊り続けるのッッ」
「あ~……?まだそんなこと宣ってるんスかぁ?水砂刻クンの居ない世界なんて、つまんないですし……。それに聞き飽きたんですけど?その二番煎じなギャグ……」
もうすっかり、興味のないサタナキア。
実験のやり甲斐があるものは、怪異であろうと人間であろうと彼女は目を輝かせる。しかし、もとよりその一個単体で完結しようとしているアンリードは、彼女のメガネには叶わなかったようだ。
冷めきった態度を浴びせて、デビルージュをベルトの真ん中に装填する。すると、悪魔が持っているフォークが目の前に現われた。フォークの三又部分に、ヘビ、コウモリ、クモのカプセルを装填して必殺技のチャージが開始された。
対してレッドヒールも片方の脚にエネルギーを集約し、飛び蹴りを放った。その姿は、まるで正義のヒーローの決め技そのものであった。とすれば、こちらは悪の大幹部か悪逆のヒーラーとでも見えるだろうかと、口角を上げるサタナキア。
───ハルマゲドン・デッドセーバーッッッッ!!!!
フォークから撃ち出された暗黒弾が、レッドヒールを包み込んだ。
脚撃で押し返そうと、サタナキアの方を目指すレッドヒールであったが、体が融解していき両腕が消し飛んだ。そのまま暗黒弾を通過して、失速したところをフォークで突き貫かれたことでコアに届く一撃。
サタナキアに涙目を向けて睨みながら、振り落とされて地面に転がったレッドヒール。その体からは、黒い灰が霧散し始めていた。
激しい闘いの末、勝利を収めたサタナキアは変身を解除して暁咲の状態に戻った。そして、コアを穿かれて消滅寸前のレッドヒールのもとへ近寄った。
レッドヒールの顔に浮かび上がっていた、黒い焼け跡は消え失せもとの表情を取り戻していた。それは表情だけでなく、態度にも変化が伺えていた。最初に出会った時の優しそうな声、陽気な性格を宿したレッドヒール。
「そういうことですか……。そっちがレッドヒール本体ってことッスね。さっきのは、少女の無念と【赤い靴を履いた女】の怨念に取り憑かれた───みたいなとこッスかね」
「ふふっ♪そう、みたい……。ヒール、また踊らされちゃってた……みたいだね……♪でも、ありがとう…………、ようやく────踊り終えることが……出来た…………」
暁咲に見届けられながら、全身を風に乗せるレッドヒール。
灰となって巻き取られ、大空へと消滅していくなか最後に思い残した未練があったように、言葉を紡ぎ風に載せて放った。
───『ゴメンね、フロンティア。ヒール達……行くね…………?』───
その言葉が鳴り止み、周辺に敵が居なくなった。
ドサッと背中からその場に倒れる暁咲は、脱力し切って呼吸をしていた。水砂刻に来てくれないと、一歩も動けない。そう自分に言い聞かせて、やる気ゼロモードになってしまった暁咲。するとそこへ、二人の男の叫び声が聞こえてきた。
一人は辰上であることが目に入り、心底嫌な顔をする。しかしそのもう一方が、水砂刻であると視界入れた途端に目をキラキラさせた。人形兵に追いかけ回されて、退却している二人のもとへ合流する暁咲。
それでも、ナキアーマーのリチャージが済んでいないと言って、お荷物が増えただけだと水砂刻にツッコミを入れられながら、三人仲良く茅野達と合流するべく人形兵の軍勢から逃げ続けるのであった。
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