意味のないスピンオフな話

韋虹姫 響華

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クロスオーバーな話〜意味ない × トライワイト篇〜

燈火 ╳ 『天邪鬼』

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 暗い、狭い、足場悪いの三拍子が揃った、地下歩道を奥へ奥へ進んでいく燈火。事前に読み込んだ資料から、怪異を特定している燈火は早速キャリーケースに入れていた、二丁拳銃を手に息を殺して忍び足で警戒する。

 すると、暗闇の中で弾ける火花。線香花火のような閃光が、二つの影が争っていることを燈火の視界に映し出す。

「天を衝くは灯りを灯せ!」

 覇気のこもった女性の声が地下歩道に木霊すると、それを合言葉にでもしているように天井に風穴が空いた。そして、次はお前だと夕陽に全貌が映し出される前に、争っていた怪異にとどめを刺す。
 逆手に持った刀が穿いたのは、燈火が特定していたとおりの怪異【天邪鬼】であった。寸分たがわず中心を刺し穿つ女性の刀。その場に力なく倒れ附した【天邪鬼】に向かって、刀に着いた血を返すように振り落としながら口を開いた。

「へっ♪そんなんであたしはなんだってんだよ。歯応えのねぇやつだぜ!」

 崩れた天井が作る瓦礫の山。その頂上で勝利に酔いしれる女性。というよりは、少女という方が妥当な見た目をしている。
 それとは裏腹に格好は、とても現代に生きる人間の服装とは言い難いものであった。黒いミディアムヘアにところどころ白髪のアホ毛を生やし、白と黒の三つ編み。尖り耳に赤いボロマントに軽装の肩当てと小手、アシンメトリーなレギンスに下駄を身に着けたていた。

 そして、こちらを見ている燈火に気が付き振り返ることで見える表情はオッドアイ。驚くべきは他にもあった。それは向こうから先に切り出される。

「おっ?おまえ……パチモン?」
「はい?パチモンですか?いや、あんまりこういうことって言わないんですけど……なんかちょっと、私に見た目……そっくりですね…………はい」

 両者、対面した時に思ったことは同じであった。
 なんと、燈火とその女性は髪色、目の色、耳の形は異なっているが顔は瓜二つと言っていいほど似ていたのだ。しかも女性の方は、自分と同じ見た目をしたものと過去に会ったことがあるため、燈火をそのそっくりさんに付けていたあだ名「パチモン」と口にしていた。
 しばらく見つめ合い、手を振ったりと鏡でも見ているのではないかと確認する動作までもが、息ピッタリの二人。燈火は【ドッペルゲンガー】であると思い、二丁の銃口を向けた。

 すると、首をバキバキと鳴らしながらリラックスして刀に手をかける少女。威嚇ではなく、明確に牽制を込めた二発の弾丸を中心から真っ二つに斬り伏せる刀捌き。ニヤッと口角を上げて、今度はこちらの番と走り出す。
 蛇縫いに走り、照準を狂わせてる間に懐を取り蹴りを入れる。壁に叩きつけられた燈火へ追い討ちの拳を突き出す。紙一重で回避して、回り受け身で体勢を取り直す燈火。その目には、さっきまで壁であったコンクリートが拳に貫かれ、瓦礫となって床に崩れ落ちている光景であった。

「へっ、そらぁ避けるよなぁ♪でなきゃ、さっきの怪異ヤツと同じで歯応えねぇーっつの!!」
「はへぇ~~。とんでもないバケモノに出会っちまったみたいですね……はい」

 コンクリートにめり込んだ拳を引き抜き、裏拳で一気に距離を詰める少女。バックステップで回避した燈火は名前を聞く。明らかに【ドッペルゲンガー】ではないこと。それ以上の上級怪異であると、確認も兼ねて尋ねた。すると、燈火は目を見開いてその名前を聞いた。
 なんと、少女の名前は『天邪鬼』。先程戦闘していた怪異【天邪鬼】と同じ名前である。怪異ではないが、怪異に匹敵するかそれ以上には戦闘力のある存在であると知り、次元の穴からの来訪者だと分かった燈火。
 下手に戦闘するよりも、話し合いで理解を得ようとするも『天邪鬼』は聞く耳を持たない。走りながら両脇から鎖を飛ばしてきた。
 一本目を縄跳びのように跳び越え、もう一本に銃弾をぶつけて凌ぐ。その先で待つ『天邪鬼』の横斬りを上体逸らしで躱し、視界が逆さのまま『天邪鬼』の後頭部を撃った。銃弾が貫いたことで身体が浮き上がり、地面に転がり落ちて脱力する。

「……はい?あ~~っ!?やっちまったです~~~~っ!!??」
「騒ぐなよ、こんなんじゃ死なねぇよ!てか、っ!!」

 ヌルッと起き上がり、ヘッドバンキングで頭部に刺さった弾丸を体外へ排出すると、みるみるうちに傷口が塞がっていく。
 その恐るべき再生力は、先日まで相手していたアンディレフリード。通称アンリードとの戦闘を彷彿とさせていた。悪夢が再びの状況に、思わずそれを口ずさむ燈火。

「はぁ?アンリビーバボーだぁ?馬鹿ほざいてねぇで、目と体を動かせよな♪ほらほら、鎖もう1回いくぜ!!」

 満面の笑みで『天邪鬼』は鎖を投げ飛ばす。
 拳銃が効かないのならと、キャリーケースを遠隔操作しキックボードに変形させて鎖から逃げる。どこまでも追い続ける鎖を地下歩道の柱を縫って走り、撒いていきドリフトをかけて追いかけてきている『天邪鬼』の方へ、ロケットランチャーを構えて振り返る。
 驚いた顔をするのも見送らずに、弾道を発射する。それを跳び箱のように飛び越えて、あかんべえと瞼を引っ張りながら追跡を続ける『天邪鬼』。

「足元注意ですよ?…………はいっ!!」
「そうかい♪《まきびしの機雷は嫌いだね。全部金平糖コンペイトウになればいいさ。》あらよっと♪」
「えぇ!?そんなんありですか?────グエッ!?」

 突如、不気味に反響する『天邪鬼』の声を聞いた燈火。
 ロケットランチャーを避けられることを前提で、創造していたまきびし型の機雷を床一面にばら撒いていた。
 しかし、『天邪鬼』のデタラメな言葉が現実のものとなり、まきびしが金平糖に変わったのだ。これに仰天している燈火の背中に、ドロップキックが炸裂してキックボードから蹴り落とされてしまった。
 起き上がる前に刀を差し向けて、勝負は着いたことを告げる。一瞬のこととはいえ、怪異との戦闘でも常に命懸け。『天邪鬼』という別次元からやって来たアンデッドが相手であっても、その道理は変わらない。

 このままでは殺されてしまう。そう思った燈火は手持ちに武器がないことから、抵抗の意思がないことを伝えるために頭を押さえる。
 すると、『天邪鬼』は振り上げた刀を持つ手をピタリと止める。

「はっ……、何だよ。お前があたしの文字主ワープロットかよ」
「ひぃ~~、お助けぇぇ───、……えっ?文字主ワープロット?なんですかそれ?」
「勘弁してほしいぜ。危うく、主人殺しでWORDに失格判定喰らうとこだったぜ……」

 全く話についていけない燈火は起き上がると、伏せていた頭の近くに落ちていた絵馬を拾った。その絵馬こそが、『天邪鬼』の文字主ワープロットである証だと伝える。
 顎に手を当てて、絵馬を手に入れた時のことを思い出そうとする燈火。それは1週間ほど前に、休暇で旦那の家小路いえのこおじとともに行った神社での出来事であった。


 ✳✳✳✳✳✳✳✳✳✳✳✳✳✳✳


 孤児保護施設に向かい、近いうちに燈火と家小路の養子となることが決まった赤ん坊。その引き受け手続きを済ませた帰りのこと。

「マァイッハニィィ!!今度、来た時に願い事を書くとしてッ!!絵馬を買って行かないッッッかッッッ????」
「おっいいですね♪はい♪」

 家小路の提案に乗り、絵馬売り場へ向かった二人。
 その神社では絵馬のデザインに凝った、一風変わった風潮があった。願い事を書いてその場で吊るすもよし、次回まで家に持ち帰って書いて来るもよしの何でもありな神社であった。
 燈火は数ある絵馬の中から目に止まった絵馬。それは色鮮やかな赤と黒が屋根部分に塗られていた。裏面には、太極式たいきょくしきが象られていた。

「陰陽師みたいでカッコいいですね♪」
「ん?そちらの絵馬にするかい?」
「はい♪」
「ちょうどお預かり。ふふっ、ワタシの知り合いにそっくりだなキミは」
「そうなんですか?なんてお願い事を書きましょうかね……?家小路さん、私は絵馬を買いましたよ。家小路さんは────」

 こうして、燈火が購入した絵馬が『天邪鬼』の絵馬だったのである。


 ✳✳✳✳✳✳✳✳✳✳✳✳✳✳✳


「んじゃ、さっさと本契約アクティベートしてくれ」
「はい?この絵馬、そんなこと出来るんですか?私こう見えて、35歳のおばさんなんですよ……、ハイテク機能がこんなにあると慣れるのに────」
「だぁぁぁぁ!もうぉぉ!!!!貸せッ!!」

 絵馬に触った途端に、ホログラム映像が飛び出し操作出来るようになったことで困惑している燈火。それにしびれを切らした『天邪鬼』が絵馬をぶんどり、本人確認の部分まで画面操作を行なった。
 なんでこんな奴と契約関係なんだと文句を言いながら、自身のプロフィールが載っているページで燈火に絵馬を返した。


────────────────

文字版サクリフォト名:『天邪鬼』
ランク:A+
スキル:言霊(反転)
ワードライブ:反転する現象と架空事象フィクショネス・リバースガイスト 他

────────────────

「これお前の資料ですか?ランクってこれ、強いんですか?……はい?」
「強さは十分分かったろさっきので……。いいからスクロールして同意ボタン押せって!!」

 据わった目で『天邪鬼』を睨みながら、同意をタップする燈火。すると、契約成立しましたの通知が届きWORDへの参加が確定したお知らせが届いた。
 これから、九人の文字主ワープロットと九体の文字版サクリフォトによる、願い事をかけた闘いが幕を開けることを『天邪鬼』から告げられる。

 やがて、ルール説明を終えた『天邪鬼』が欠伸をしながら燈火と一緒に地下歩道から出てきた。戦闘時以外は、絵馬に格納されていることが基本だと告げると絵馬の中へ、吸い込まれて姿を消した。
 燈火は倒されてしまった【天邪鬼】の報告書を書くことに頭を抱えながら、家小路の待つ家へと帰るのであった。
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