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クロスオーバーな話〜意味ない × トライワイト篇〜
WORD開幕!?9人の文字主と9つの怪異!?
しおりを挟む大穴が塞がりつつあった時、噂観測課のもとに流れ込んできた新たな怪異の情報。そのどれもが、これまでと毛色の異なったものであった。
なんでも、すべて人間にかなり酷似しているらしく、擬態型の怪異あるいはインフェクターの可能性があるという報告のみで、詳しい目撃場所等の情報が記されていない。
「ん~~、古い書物に記されている鬼のような存在……ですか。…………はい」
外見から得た調査班からの目撃例をもとにした、薄っぺらい情報を頼りに廃墟となっている旧地下鉄に来ていた燈火。
大した情報でもないため、頭をポリポリと書きながら自席に座ったままでいると向かいの席から、情けない声で項垂れているのが目に止まった。辰上 龍生である。
「後輩?何をしょぼくれているんですか?はい?」
「別に……。麗由さんも茅野先輩もここのところ、事務所に顔出さないし。今日もお前と2人きりなのがちょっと嫌になっただけだよ」
「ふーん?よっと♪」
燈火は席から立ち上がり、資料を鞄に詰めて廊下へ向かう。
嫌気がさしている辰上はこれで一人になれるのだから、少しは真面目に仕事する気になるだろうと思っての行動だった。ふと思い出したように振り返って、紙飛行機を辰上のデスクに飛ばした。
拾い上げてゴミ箱に捨てようとする辰上に、中身を見るように言って内容を確認させる。それは、ここ最近起きた次元の大穴騒動が収束しつつあるなかで目撃報告の多い、人型の怪異が示唆されていることについての忠告文であった。
そんな事は口で伝えろと睨む辰上であったが、そこに書かれていた文字の奥にも何かが書かれていることに気がついた。天井の蛍光灯に透かしてみることで、燈火の本当に気にしていることが記されていた。
──何で今になって人型怪異かもしれないって話になったんですかね?
「…………知るか」
それはここ数日の間も、次元の穴から色んな人間が確認されていたのに政府はそれらを怪異とも、新たなる脅威の可能性も考えず容認して来た。
だというのに今回に限って、明らかに怪異の疑いの目を持ったうえで燈火達に依頼が来ているのである。しかし、辰上は次元の穴が完全に塞がるまでに時間がないから、慌て出してとりあえず怪異かもしれないと情報を渡してきただけかもしれないと、首を傾げて雑務に取り掛かり始めた。
仕方なく、目撃情報が多く上がった現場へ向かおうと踵を返したその時、事務所の電話が鳴り出した。同時に辰上のスマホにも、燈火の方にも通話の着信音が鳴り出した。
辰上の送信者は麗由、燈火の送信者はというと────、
「あのですね?私、暇じゃねぇんですよ!おっぺぇがデカ過ぎて過呼吸になったてんなら、医者に電話しろですよ!はいっ!!」
『うるせぇ!!ってそうじゃねぇんだ!!憐都が……!憐都の顔にラクガキがされちまってて……、拭いても取れねぇんだ!!テメェの仕業じゃねぇのかと思って電話したんだよ!!』
「因縁つけるのも大概にしろです……はい」
早々に電話を切り、今度は事務所になっている電話を手に取る。相手は課長の実 真であった。
しかし、本人は電話に出たのが燈火であることを確認すると、驚いている様子であった。事務所勤務のはずの燈火が河原でサボって雑魚寝しているところを捕まえたらしく、調査依頼が届いていることも確認するために電話をかけてきたのであった。
『え?カヤ子ちゃんがそっちにいるってことは、この子は一体誰なんだ?…………うわっ!?』
「ん?ちょっと!?真さん?もしもし……、実ちゃ~~~んっ!!??」
呼びかけ虚しく電話が途切れてしまった。
辰上の方も電話でのやり取りを盗み聞きしている限り、本人確認をされている様子であった。
もしかすると、巷に出没した怪異とは【ドッペルゲンガー】のことで噂観測課に成り済まして、パニックを引き起こしているのではないか。それもインフェクターによる、新しい作戦の可能性もあるかもしれないと燈火は仮説を立て、急いで現場へ向かうことにした。
車での移動中に他のメンバーにも連絡を試みる。
茅野もラットもディフィートすらも反応がない。それどころか、職務とは関係なく声を聞いて安心したいと思って、旦那の家小路にも電話をかけるが反応がなかった。
唯一の頼みと思って、神木原 総司をタップし送信する。
『どうした?何やら、全員様子がおかしいようだが?』
「よかった……総司さんは大丈夫みたいですね……はい。もしかすると【ドッペルゲンガー】が大量に発生したのかもしれないです」
燈火は今起きている現象から、自分が考え得ることを総司に話した。
話し終えて、可能であれば実の様子を見に向かってほしいことを伝えると、これから海外へ派遣任務に向かわなければいけないと断られたしまった。
こうなったら、自分の依頼をさっさと片付けて助けに向かうしかなさそうだと肩を落として、目的地に車を停めるのであった。
その見るからに廃墟となっている地下鉄駅へと足を進ませる燈火は、キャリーケースのローラーを転がしながら深い闇の中を警戒しながら突き進むのであった。
□■□■□■□■□
少し時間が経ち、街がネオンカラーに光り出す夜。
吹き抜ける風に素肌を晒したまま、つまらなさそうに夜空を眺めて寝そべっている悪魔が一匹。人間態であるその名は鳴堕 暁咲。徐ろに胸を滑らせて伸ばした手をだらしなく着ているパーカーの、内ポケットに当てて弄る。
そして、取り出したものを天高く手を伸ばして見上げた。すると、そんな暁咲を覗き込む複数の影。一体が暁咲の頭上にしゃがみ込んで声をかけてきた。
「んで、どうっすかね?わらひらと協力する気になりやしたか?」
「────。」
「ふん。よせ『黒蝙蝠』、こやつは我らと組む気はなさそうだ。他をあたることとしよう」
「────んで……」
小さく言葉を発した暁咲に反応を示す二つの影。すると、暁咲は大声で叫んだ。何故、自分は参加出来ないのかと。
取り出した絵馬を投げ捨てようと、振りかぶる暁咲を全力で止めようとする二つの影。一体は『黒蝙蝠』、もう一体はその相棒の『毒蜘蛛』である。
暴れ回る二体の文字版。暁咲はそんな二体を自身の傍から引き離しながら、手に持っている絵馬に表示される内容を確認する。
まず感動するべきは、神社に飾ること以外でその使用用途を知らない絵馬がプロジェクターのように機能すること、スマホ顔負けに膨大な情報が入っていることであった。
目をキラキラさせながら、空中に映し出された情報に目を通し内容を理解していく。
文字版。それはWORDと略されたデスゲームに参加させられた人間。すなわち、文字主と契約し代行して戦闘するアンデッド。とある世界では代理戦争の道具として、利用されていた存在の文字版。
当然、暁咲が生きるこの世界のものではない。しかも、毛色が少し異なっているようであった。
「へぇ~~♪そういう設定のヴァーチャルアプリケーションなんスね♪それでわっちは、水砂刻クンと違って参加者じゃないんスね……イヒヒヒヒッ♪」
「お、おい『毒蜘蛛』?あの女いきなり不気味な笑い声を出したぞ?実はかなりのヤベェヤツなんじゃないのら?」
無駄に発達した八重歯のせいで、滑舌が絶妙におかしい『黒蝙蝠』の問いかけにたじろいでいると、その後ろに控えていた文字版が急にスイッチが入った暁咲に近寄る。
そして、暁咲の腰に手を回して抱き寄せる形で顎を持ち上げた。咄嗟のことに硬直する暁咲は、水砂刻以外の男に馴れ馴れしく触られることを極端に嫌うようになっていた。そのはずだったが────、
(何このイケメンクン……、タイプ……♡)
「このWORDは仕組まれたものだ。どうだい?わたし達と来る気はないか?きみの大好きな彼を助け出すためにもこのわたし────『異文明』と契約してはくれないかな?」
「しますっ!契約しますっ!しますっ!てか今すぐして♡」
即堕ちとはこういうことを言うのであろう。
暁咲はすぐに抱き寄せられた身体を『異文明』に委ねるように、抱きしめて絵馬を強く握りしめた。絵馬の側面に『異文明』の文字が彫刻されたことで、契約が成立する。
これからよろしくという言葉に耳を貸すことなく、目の色がすでにくすんでいる暁咲。その瞳を確認するや『異文明』は確信の笑みを浮かべているが、それが本人に疑念として移ることはない。
何を隠そう、暁咲はこの『異文明』が放つ文字版スキルによって洗脳を施されたからである。本人が元々持っている探求に対する知識吸収量が多いことが、返って洗脳をスムーズに行わせることが出来たのだ。
「さっ、行きましょうか『毒蜘蛛』さん『黒蝙蝠』さん。今頃、あなた方のお仲間がアレを持つ人間を見つけてくれた頃でしょう」
不穏な空気を持つ三体の文字版と、洗脳されてしまった暁咲は闇夜に風と消えた。
かくして、噂観測課達を巻き込んだ大いなる陰謀と無意味な代理戦争が幕を開けようとしていた────。
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