48 / 73
クロスオーバーな話〜意味ない × Beymind篇〜
月はBeyondでも美しい
しおりを挟むフィオの実験によって開かれた時空の大穴。それは日本だけでなく、世界各地にも小規模ながらに発生していた。
各地に散らばった、里人を探す旅を続けていた瞬姫の前にも例外なく、その兆候は現れていた。里人の一人を発見した瞬姫は、Beymind能力者と戦闘を繰り広げいていた。
お互いに怪異ではないから倒すことが出来ない、能力者ではないから無力化することができない攻防が続いていた。
「こいつでどうだ!」
「っ!?舐めないでちょうだい!!」
ブレードスケートで敵の攻撃を受け止める瞬姫。
身を翻した拍子に天に向かって伸びる脚部を敵に蹴り下ろすが、敵の能力は体を液状化させるものであるため瞬姫のブレードが通り抜けてしまう。しかし、攻撃に転じる際に実体を晒すこととなるため、相手も瞬姫のカウンターを避けながらでは攻勢に出ることが出来ない。
体力勝負となった平行線の戦い。どちらかといえば、里人を庇いながら戦闘している瞬姫に不利が回っていた。それに敵が気付くまでにそんなに時間はかからなかった。
液状化して瞬姫をすり抜け、里人を人質に取る能力者。武装解除を要求され、ブレードスケートの刃をしまう。その瞬間を見逃さなかった能力者は、強酸の液体を放つ。勿論、瞬姫は回避することは容易であった。しかし、里人にその液体の宿った人差し指を向けたことで、形成は完全に傾いた。
人質を開放するよう申し出て、その場に膝をつく瞬姫。能力者は敵意を無くした瞬姫を見て頷く。次の瞬間、指先に溜まった強酸の液体を瞬姫に向けて拡散させて放った。
反射的に動く身体でも時姫には分かった。これは、間に合わない。怪異の力を消耗していたせいで、時を止める力を一秒としても行使できない瞬姫は歯を食いしばった。
「な、なんだって!?」
「下劣……、許さないッ!!」
蹲る瞬姫の前に立つ黒い影。それはすべての強酸液を光学のレーザーバックラーから展開された、バリアで防ぎ切った。高周波で高速振動するレーザーバックラーには、強酸性の溶解が発生することなく地面に落ちBeymind能力のなくなった、ただの液体となり乾燥を潤していた。
スタタタッと、野うさぎの如く小回りの利いた高速移動で見る間に里人を掴む能力者の顎に蹴りを当てる。腕から離れた里人を掴まえ、受け身を取る影。その顔は半分、黒い瘴気を纏ったウサギの面で隠れていた。
「任務発令……、ルインアクト────テクト、オンッ!!」
「て、てめぇリアースの?」
「今その話題、いらないっ!!」
ウサギの面をした少女は、レーザーバックラーであったものをダブルメリケンにチェンジし、組織名を口にした能力者の顎を拳で砕いた。
すぐに液状化して、元の形に戻る能力者。最早、無限の再生力といっても過言ではない能力者を相手に、果敢に挑むウサギの面の少女。
彼女の名は景月 宇叉李。彼女の持つBeymind能力『月光招来』は、月の光をテクストした武装変換を可能とする。
月の氏族と呼ばれた月の民であり、最後の生き残りでもある。彼女は、自分達の月の氏族を壊滅させた存在を追って地球へやって来た。その後も、リアースと言われている組織に属して、果那美やモルディネ達とともにBeymind能力を悪用する存在と戦っている。
「それ、もう飽きた」
「ぬぉお!?うがぁぁ!!??体に電流が!!??」
宇叉李がメリケンから、アームソードに変形させたルインアクトによって電流が放出し、能力者を感電させることに成功する。
内包する電気を外へ放出するには、能力を完全に解かなくてはならない。しかし、このまま解除していしまえば宇叉李のアームソードが身体に突き刺さり致命傷を受けてしまう。能力者の決断が揺らぐ間に宇叉李が答えを出す。
能力者を放り投げて、両手銃へと変形させながら走り込む宇叉李。電気を外へ逃すために、能力を全解除する能力者。すぐさま能力を再度展開するが、時すでに遅しの状況であった。宇叉李が構えていた弾丸はサンダーバレット。つまりは、能力者の液状化では防ぐことが出来ない弾丸だったのだ。
呆気なく断末魔を上げて、能力を無力化されて気絶する能力者。Beymind能力を封殺する手錠を掛けて、腕時計を見つめる宇叉李。しかし、ここは宇叉李の居た世界ではないため時間が正確ではない。すると、宇叉李は瞬姫に声を掛けた。
「21時46分───、確保」
「それ……必要なのかしら?見るからにこっちの世界の人じゃないでしょ、貴女?」
こうして、能力者との戦闘は終わった。
戦闘を終えて、近くに見つかった大穴へと向かう宇叉李。その後を瞬姫も里人を安全地帯に送ったあとに着いていくことにした。
それは宇叉李が能力者を追って抜けてきた、次元の穴であった。任務中に空間が不安定になり、ターゲットをロストした宇叉李の部隊。しかし、宇叉李は次元の穴へ消える能力者を発見したため、一人追跡を試みたというのだ。
その勇気の凄まじさにあんぐりの瞬姫を横目に、ふと空を見上げる宇叉李。すると、空に浮かぶ月を見て穏やかな表情になる。自分の世界にある月と全く変わらない色をした満月。しかし、この満月に周期があることを聞かされ驚く宇叉李。
そう、宇叉李達の次元では満月以外の月になることは自転する星との重なり具合によって異なることまで同じだが、満月以外の月になることの方が珍しいのだ。
「ところで、大変そうね……生き残った仲間を探す旅は」
「そんなことないわ───、って言えればカッコいいのでしょうけど、ほんっと骨が折れるわ……」
「そう。でも、仲間が居るというのはいいもの。特に同じ星の同じ集落で過ごした人達がまだ生きていて、これからも一緒に居られるなんて……もうわたしにはないから……」
宇叉李は自分が月の出身であったこと。そのおかげで、地球に来てからの人間達とのコミュニケーションで苦労した話を聞かせた。
今でこそ、当たり前のように会話をする果那美達に対してもいい感情を持っていなかった。自分達と同じ苦しみを味わって貰わないように尽力を尽くしてはいたが、自分達にもそんなふうにしてくれる者が居れば結果は違ったのかもしれないと、思った日があったのも事実であったからだ。
「それでも乗り越えたのね宇叉李さんは?」
「そんな、大したことじゃない……。さて、報告しに帰還しないと……。今度、公式他次元観光なんてあったら、あの月に行ってみようかな?」
手でピストルを作り、月に向かって発砲のジェスチャーを取る宇叉李。
そして、瞬姫に向かってこれからの旅の安全と仲間たちとの再会を祈り、次元の穴へと消えていった。その瞬間、次元の穴が閉じた。瞬姫はまた、日本へ帰国した時に弟である水砂刻への土産話が出来たと伸びをして、里人の待つ場所まで引き返した。
宿を取り、英気を養った翌日。救出した里人を日本行きの便に乗せ見送る瞬姫。彼女の世界各地に散った里人を探す旅は、まだ終わってはいない。次なる目的地を決め、再び歩みを始めるのだ。
これは、次元の穴が塞がり始めた時に起きた噂観測課も知らないお話である。
0
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
わたしの下着 母の私をBBA~と呼ぶことのある息子がまさか...
MisakiNonagase
青春
39才の母・真知子は息子が私の下着を持ち出していることに気づいた。
ネットで同様の事象がないか調べると、案外多いようだ。
さて、真知子は息子を問い詰める? それとも気づかないふりを続けてあげるか?
そのほかに外伝も綴りました。
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
与兵衛長屋つれあい帖 お江戸ふたり暮らし
かずえ
歴史・時代
旧題:ふたり暮らし
長屋シリーズ一作目。
第八回歴史・時代小説大賞で優秀短編賞を頂きました。応援してくださった皆様、ありがとうございます。
十歳のみつは、十日前に一人親の母を亡くしたばかり。幸い、母の蓄えがあり、自分の裁縫の腕の良さもあって、何とか今まで通り長屋で暮らしていけそうだ。
頼まれた繕い物を届けた帰り、くすんだ着物で座り込んでいる男の子を拾う。
一人で寂しかったみつは、拾った男の子と二人で暮らし始めた。
俺は陰キャだったはずなのに……なぜか学園内でモテ期が到来した件
こうたろ
青春
友人も恋人も居ないボッチ学生だった山田拓海が何故かモテだしてしまう。
・学園一の美人で、男女問わず憧れの的。
・陸上部のエースで、明るく活発なスポーツ女子。
・物静かで儚げな美術部員。
・アメリカから来た金髪碧眼でハイテンションな留学生。
・幼稚園から中学まで毎朝一緒に登校していた幼馴染。
拓海の生活はどうなるのか!?
17歳男子高生と32歳主婦の境界線
MisakiNonagase
恋愛
32歳の主婦・加恋。冷え切った家庭で孤独に苛まれる彼女を救い出したのは、ネットの向こう側にいた二十歳(はたち)と偽っていた17歳の少年・晴人だった。
「未成年との不倫」という、社会から断罪されるべき背徳。それでも二人は、震える手で未来への約束を交わす。少年が大学生になり、社会人となり、守られる存在から「守る男」へと成長していく中で、加恋は自らの手で「妻」という仮面を脱ぎ捨てていく…
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる