意味のないスピンオフな話

韋虹姫 響華

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クロスオーバーな話〜意味ない × Beymind篇〜

Beyondなお呪いでいくよ♪

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「やっと見つけた!モルディネちゃん、帰るよっ!!」
「はぁ?モルヒネだぁ?あたしそんなふざけた名前してねぇぞ」

 午前終了の任務帰りだったディフィートの腕を掴む、女子校生のような格好をしている元気な少女。
 戦闘はあったものの、楽勝で仕事を終えて気分の良かったディフィートのテンションがどっと下がる。なんとも非力な引っ張る力に、無視して帰り道を歩くことは出来るが執拗さが尋常ではない。
 ふと、手を離してくれたことでようやく人違いだと諦めたと見たディフィート。そのまま走って停めていたバイクを目指す。すると、いきなり上半身が地面に沈んだ。転んだわけではない。

「イテテ……、てか身体おんもっ!?」
「むっふっふっふ♪意地でも帰らない気かね?モルディネちゃん」

 それは少女の力によるものであった。
 よく見れば、絵本に出てきそうな魔女の格好をした少女の手には杖が握られていた。少女は重力を操る魔法の力を使ったのかと尋ねる。すると、得意気な顔でチッチッチッと舌を鳴らして指を横に振って言った。

「これは魔導師の力よ!いいこと、モルディネちゃんっ!!いっつも言っているでしょう?私の使う魔導は魔法を越えた超絶、魔の力が宿った最高の術式なんだって」
「あ、いや初耳だけど?つか、お前の名前もあたしは……知らんっ!!」
「うえぇぇぇぇ!!!!????」

 人違いと知った驚きではない。
 ディフィートにかけられた重力は凡そ十倍。常人なら立つことすらままらない。だというのに、ディフィートはゆっくりではあるが二本の脚で立ち上がり、手を伸ばした。
 そして、言っても聞かない相手には実力行使が一番と口角を上げ、愛棒の名を叫んだ。

「来い、【終焉を刻む指針ラグナロッカーツヴァイ】ッ!!」
「へ?モルディネちゃん、クラエレメントツヴァイでしょ?のわぁ!?飛んできたぁぁ!!」

 口では驚きつつも、いつもの光景であるかのように身を翻して飛来してきたラグナロッカーを躱す。同時に重力の魔導が効力を失い、ディフィートの身体に自由が取り戻された。
 すると、少女は空高く飛び上がり杖から眩い光を放つと魔女の格好から、煌びやかなドレスにドレスアップした。そして、こちらもディフィートの厨二病顔負けの口上を述べる。

「魔導の星に導かれ、只今参上ッ!!プリティカナミンッ!!」
「プ、プリティだぁ!?」
「ようやく分かったわ!この偽モルディネちゃんめっ!私の魔導で懲らしめてやるぞ!!」
『おいおい果那美かなみ?コイツどう見てもモルドレッドの小娘ではないぞ!それにBeymindビィマインドのにおいもしねぇ』
「あー、魔核まかくちゃんは黙っててよ!」

 一人で急に狂乱しているようにしか見えないディフィート。油断していた隙を突かれ、拳を頬に受けてしまう。
 先程のか弱い力がまるで嘘のように、ディフィートを一瞬で叩き伏せて地面に砂埃が巻き起こった。

 少女の名は井堂いどう 果那美かなみ。Beymind能力が蔓延る世界で、日夜魔導の修行に励む女子高生。本人にはBeymindの適正が低く、クラスでの能力者階級は最低ランクであるが、ある時その本当の理由を知ることとなる。
 今言えることは、彼女もBeymind能力者なのである。それとは別に受け継いだ、魔核という魔力を無限に生成出来る刻印を持つ彼女は魔導解放した姿、それがプリティカナミンなのである。

 砂埃を払い除け、ディフィートが切っ先を差し向ける。それを当然のように回避する果那美。しかし、果那美の身体は一瞬にして宙を旅していた。
 何が起きたのかを整理する前に、ディフィートの剣身から繰り出される叩きつけで今度は果那美が地面に埋まった。空かさずディフィートは天に向けて、ブラスターの空砲を吹かし追撃を仕掛ける。しかし、その一撃が果那美に届くことはない。

「なっ!?変な感覚がより強まった!?」
「導きの扉開きし時、永劫の影は人理に可能性を与えん!!ロード・カナミンッ!!」
「また変わった!?ぐあっっ!!??」

 ロード・カナミンへとクラスアップした果那美。その衝撃波だけで、ディフィートの追撃を跳ね返した。
 ディフィートはラグナロッカーを地面に突き刺して、体勢を立て直すと指笛を吹いた。同時に両眼が翡翠色に輝き出す。そう、手加減をしていられる相手ではないと直感したからこその姿である。

 赤雷と紫電を巻き起こして手元へ君臨した愛剣、【最後の審判・真ドゥームズデイ・リバイブ】を持ちディフィートは二刀流でロード・カナミンを迎え撃った。
 二人の激戦は、最早周囲に目撃者が多発したって可笑しくない。だというのに、悲鳴の一つも上がっていない。これには、ディフィートはほくそ笑んで口を開いた。

「大したやつだな、お前。こんなけ、あたしとやり合ってるのに結界───、いやフィールド変換って言うのか、これ?とにかく、あたし達だけのバトルエリアを形成しながら戦うなんてさ!」
「そっちこそ!偽モルディネちゃんとはいえ、私のデバフ魔導を30個も喰らって互角だなんて、凄く強敵だわ!!」
「ディフィート。あたしの名さ!よろしくな果那美」
「え?」

 本名から文字った名前を叫んではいたものの、果那美とは一言も言っていなかったのに、名を言い当てたディフィートに驚く。その一瞬の隙で両者が、地上に足をつけると同時に果那美の張っていた亜空間魔導が切れる。

 目の前に立っているディフィートに戦意は感じられない。それどころか、手に持っているスマホの画面を見せていた。そこには、果那美の探しているモルディネが噂観測課の事務所に居ることが記されていた。
 ディフィートはその情報の送り主、噂観測課極地第1課の課長インビジブルの文面に果那美の名前が入っていることで、本名を口にしたのであった。

「それにしても、最後のこのP.Sってとこ見るからにこの人───相当影薄いみたいね?ぬ~~ん、分からん……」
「まぁな。年に2回くらいしか、事務所に顔出さねぇし」

 それは違うと思うと、果那美は目を細めながら答える。
 誤解も晴れたことで、後は本物のモルディネと合流するだけとなった果那美は場所が分かれば、楽に済むことをディフィートに伝える。仕方なく、地図アプリを開いて現在地と事務所の立体マップを見せる。

「ふむふむ。それじゃ、魔力を補給して直ぐに向かおう♪」

 そう言って変身を解いた果那美は、魔女の帽子をひっくり返した。そして、中からママレードサンドを取り出して大きな口を開けた。しかし、果那美が顎を閉じたその時、手にはすでにママレードサンドがなくなっていた。
 なんと、果那美のママレードは何処からともなく現れたカラスに持ち逃げされてしまった。

「あーーーッ!!??別次元に来ても、あのカラスは居るのね!!仕方ない……、魔ロンの甘煮で我慢するか……」
「お前、相当の災難体質なんだな」

 モルディネにも同じことをいつも言われている果那美は、甘栗を頬張って魔力を補給し終えると魔法陣を描かずに杖を真下に突いた。
 すると、果那美を中心に魔法陣が形成され周囲が光り輝く。これにはディフィートも目を飛び出して驚いた。周りに人が居るのに、全くこちらに関心を持っていないのは、果那美の魔導の力によってステルス化しているからである。
 とはいえど、今から何が起こるのかディフィートは身構えていた。本当に大丈夫なのか問いかけると、果那美はキョトンとした顔で答えた。

「おーい!やっぱり今の光は、おまえの魔導だったか!果那美ッ!!」
「モルディネちゃんッ!!」

 再会した二人は胸に飛び付き合いその場で回転しながら、もう二度と離すもんかとギュッと抱きしめ合う。
 その再会の横で、モルディネを睨むディフィート。隣には何処から現れたのか、燈火までも同じ険しい表情で見つめていた。二人は確かに、ディフィートとモルディネがそっくりであると頷いた。

「って!?いつの間に居たんだよファイヤーボールッ!!」
「あたぁ!?いや、それはここ私達の事務所ですよ?そりゃあ居ますよ?……はい?」

 その後、二人がこちらへやって来た次元の穴が見つかり、モルディネと果那美は無事に帰ることが出来たのであった。


 □■□■□■□■□


 ━ おまけ ━


 怪異調査に向かった麗由。
 何でも、よく分からないことを話している機械を装着した少女が居るというもので、政府は怪異【未来人と名乗る者】の可能性があると判断し、麗由に依頼が回っていた。
 現場へ到着し、武器をいつでも取り出せるように怪異の力を解放した状態で、通報のあった場所へ出向いた。今回はあくまでも、怪異であるかの判断ではあるが交戦となる恐れもある。
 そうなれば、周囲にいる民間人も怪異目撃者である以上は適切な処置を行なうこととなるし、それ以前に死者が出ないとも限らない。

 そうこう考えながらも、対象と思わしき少女が口論している声が聞こえてくる。いよいよ、偵察を開始する麗由の顔に緊張が走る。しかし、その少女の言っている言葉を聞いて麗由は警戒を解いた。

「ちょっとッ!!アタシは天下のマキヤ様よ!!ここは旧極東よね?だったら、マキヤカードは使えるはずよ?何度言ったら分かるのよ、このポンコツ」
「で、ですから……当ホテルは勿論のこと、マキヤカードなどというクレジットカードを扱っている会社は存在しません。ですので、そちらのカードではお支払いが出来ません」

 如何にもプライドの塊といった黒髪ショートの少女。彼女の名はマキヤ15世。果那美やモルディネと同じ世界の住人で、マキヤコーポレーションの社長にしてマキヤシティという街のおさも務めている。
 どうやら、彼女もモルディネ達同様にこの世界に迷い込んでしまっていたようだ。

 そして、麗由のもとにモルディネが探していた知人である果那美と再会し、元の世界へ帰ったことが知らされる。深いため息をつきながら、マキヤのもとへ向かう麗由。

「ったく!モルディネバカ剣士もバッカナミもどこに行ったのよ?絶対にこの異次元に迷い込んだに違いないわ!穴をくぐる直前には、生体反応がこっちの世界にあったもの……」

 マキヤシティに住む人間のバイタルは確認出来るマキヤ。
 その独裁者ぶりを遺憾無く発揮して、行方不明になったモルディネと果那美を探しに単身乗り込んできたのであった。

 やがて、麗由の説明を受け二人が無事に戻ったことを知ると、マキヤは早々に元来た道を戻って帰還するのであった。
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