意味のないスピンオフな話

韋虹姫 響華

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クロスオーバーな話〜意味ない × Beymind篇〜

Beyondな出会いは剣士のカン!?

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 久々の休暇を満喫する麗しの女性が一人。
 普段のメイド姿とは違い、カジュアルコーデに身を包む彼女の座る席に注文していたデザートが届いた。

「パンナコッタ……イチゴタルト……抹茶ロールケーキ…………じゅるり」

 テーブルに並べられた数々の品々を前に、ヨダレを我慢できない女性。さっそく手をつけるは山盛りパフェ。

「あ~ん……♡」
「はむっ!んぐんぐ……、ん~~ハマノヤのパフェに比べればイマイチだな」
「えっ?あ、あの…………」

 デザートに囲まれた至福のひとときを楽しんでいた女性の名は、神木原かみきばら 麗由りゆ
 山盛りパフェの強大なカップの大きさに、向かいの席が見えていなかった麗由の目には確かに映っていた。黒髪のロングヘア、隻眼、黒い革ジャンチックなパンクロック系の服装。
 そして麗由は、どことなく似ていた知人の名を口にする。すると、口もとに生クリームをつけながら椅子から立ち上がって麗由の方を見て言った。

「ディフィート?誰だそいつ?あたしゃ、モルディネって言うんだけど。人違いだぜ、人違いっ!はむっ♪」

 素っ頓狂な顔で名乗って、もう一口パフェを頬張るモルディネ。頼んでもいないデザートに手をつける不届き者に、麗由はムスッとした表情を向ける。

 次の瞬間、店内はザワつくこととなった。なんと、麗由と謎の少女モルディネによるデザートを大食いバトルは開幕したのであった。
 ウェイトレスは空いた皿を片すのとテーブルに新たな注文を置くので、手がいっぱいになってしどろもどろ。それにお構いなしに届いたデザートを味会うことなく、ひたすらに頬張っていく両者。
 戦いは長く続いた。何せデザートではお腹は膨れないらしく、両者の食べるペースは互角であった。遂には、店長が材料が底を尽きたことを知らせに現れ、土下座するという両者引き分けで幕を閉じた。

「それでお会計なのですが……」
「これは2軒目で決着を───」
「────えぇぇぇ!!!???マキヤカード使えねぇの!!??」

 モルディネはこの世の終わりみたいな顔で店員に向かって叫んでいた。
 そのやり取りを見て麗由は確信する。国毎に通貨の単位が違うことに驚きを示し、来た場所の地名を聞いて昔の極東の名前だと言っている以上、例の次元の穴から迷い込んだ人間で間違いないだろうと。
 代わりに会計を済ませて、モルディネの腕を掴んで店を後にする麗由。近くの公園まで歩き、自販機で飲み物を買ってベンチに腰掛け一息つくことにした。

「いや~、助かったぜ。あんがとな!」
「いいえ。まさか、異次元からの来訪者……いえ、この場合は迷子と呼ぶべきなのでしょうか?」
「はぁ……。んで、あたしな人を探してるんだよ。絵本とかに出てくる魔女が被ってる帽子あんだろ?それ被ってるマヌケそうな顔した女子高生なんだけどよ」

 ベンチに胡座をかいて、麗由にこれまでの経緯を語り始めるモルディネ。

 なんでも、自分達の世界にいるBeymindビィマインド能力を悪用している犯罪者を捕まえて、現場の事後処理をしていた最中に突然現れた大穴。開いた途端に一緒に居た仲間が穴に吸い込まれてしまい、後先省みずに追いかけるため大穴に飛び込んだ。
 そして、辿り着いたのが此処。元いた世界と余りにも酷似していたこの世界を放浪していたところ、お腹が空いたから適当な場所で腹ごしらえをしようとして現在に至る。

「どうせ食べるなら、見知っているものがいいなってことで。あぁ……悪かったって……」
「……………。んんっ!それで、こちらに来てどれくらい経ちますか?」
「あ~、2日目。それまでは持ち合わせの非常食で繋いでいたんだけどな、あいつ……お腹空かないのかな……?まぁ魔力で空腹は凌げるって言ってたっけ?」

 探している仲間の心配をしつつも、ベンチから立ち上がり麗由の方へ向き直るモルディネ。
 すると、いきなり地面に頭を擦り付けた。それは異世界に来て、お金を持ち合わせていなかったところを助けてくれたことへの謝罪。合わせて、支払ってもらったデザート代の恩返しをさせてほしいというものであった。

「そんな!?困りますよモルディネ様ッ!!顔を上げてください!!」
「あいや、一宿一飯の恩義はやらないとあいつに叱られちゃうからさ!!とりあえず、何でもする!!」
「は、はぁ……」
(お探しになっている方は、とてもお偉い方なのでしょうか?)

 内心で考察をしながらも、とりあえず本人の誠意に甘えることにした麗由。


 ━ 翌日 ━


「あの、麗由ちゃん?その子……次元の穴から迷い込んだ子なんでしょう?」
「はい。……っ?肩を揉む力が弱くなっていますよ?」
「あっはいはいっ!!にしても、麗由さんってめちゃくちゃ肩凝ってねぇか?そんなにデスクワークが多いのか?」

 モルディネを職場に連れ込み、自身の身のまわりの世話係を申し付けていた。
 そのなんともいえない変貌ぶり、事務所では自分が一番遜る立場でしか振る舞いを見せない麗由とのギャップに驚愕する一同。辰上と燈火に至っては、持っていたカップを手放して落としてしまうほどインパクトを受けていた。
 燈火は思わず辰上に耳打ちして、麗由は普段隠しているだけで相当にストレスを抱えているに違いないと告げ、自分に飛び火しないように大慌でその場から立ち去った。

「わたくしのマッサージは終わりで構いません。では次に茅野様、そして燈火様は外回りに行かれましたので、龍生様にもマッサージをお願いいたします。それと、わたくしこれから調査に向かいますのでくれぐれも?龍生様には丁寧に───、色目は使わずに雑事を全う頂きますようお願いしますね?」
「応ッ!任しとけッ!!」

 まるで、ディフィートのようにノリノリな返事をしたモルディネ。麗由が車で走り去る背中を大手を振って見送り、茅野と辰上にもマッサージを行ない事務所内の清掃もこなす。

「んで?辰上だっけ?あんた、麗由さんの彼氏だろ?」
「え?まさか麗由さんから聞いている?」
「いいや、ただの剣士のカンさ!って……あたしゃ、戦闘は抜群にセンスいいことで定評なのに今回、全っ然戦ってねぇな……。まっいいか!!」

 いつもなら、戦闘で冴えるモルディネの剣士のカン。今回は辰上と麗由の交友関係を見抜くだけに使われた。
 その後も、どこまでの関係に至っているのかも根掘り葉掘り言い当てるモルディネ。茅野も隣で関心してしまうほど、どれも的確な推理。当の本人は赤面になりながら、モルディネのマッサージを受けるのであった。

 やがて、麗由から連絡が入る。それは、モルディネの探していた知人が見つかった旨の報告であった。
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