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クロスオーバーな話〜意味ない × トライワイト篇〜
スペクタクルこそ、宇宙だ!!
しおりを挟む「なんだお前?って、オトシゴちゃんのダチ公!そうか……、んじゃそれが『小宇宙』ってやつか」
参加者全員を知っているディフィートは、すぐに相手が誰かを言い当てた。
音速。さらに速いのは光速。耳に聞こえてきた鉄のぶつかり合う音。
正体は『小宇宙』の拳撃であった。正確には手の甲から伸びた、レーザーソードがディフィートの急所を狙ったのだ。
「なんだ、次はてめぇが相手か?」
「なっ!?光の速さを受け止めたというのか、この女」
それすらも受け止めて見せたディフィートは、鍔迫り合いを制して殴りかかる。頭が震える衝撃を受け、頭突きをくらい水砂刻のもとへ返される。
額に手を当てて、水砂刻の肩を借りる『小宇宙』は「やるな」と、説得力のない体勢で感心していた。
乱入者が現れた隙に、絵馬の中に『発明家』を戻したトレード。高みの見物とはいかないが、木陰に隠れてやり過ごすことにして芝生に伏せた。
残光だけが見えている『小宇宙』の光速攻撃を直感だけで凌ぐ、人間離れした芸当にいつも驚かされると目を皿のようにして眺めることしかできない以上、三つ巴戦は避けるのが得策だろう。
「こいつ!」
「慣れねぇとちょっと面倒だけど、てめぇの動きはもう見切ったぜ!」
「何ッ!?」
単なるはったりだと思い、真横に脚撃を繰り出した『小宇宙』。その一撃には手応えがあった。と同時に太ももに衝撃が走った。
「人使い荒いんだから♪さぁ~、お注射の時間デス♪」
「痛ッ!?これは痛毒の類か?とんでもない文字主にとんでもない文字版ってのは、いい組み合わせしてるぜ運営のやろう!それよりも文字主!そっちに紫のお嬢ちゃんが行ったぜ!」
光の速さなのは、運動神経だけでなく状況把握能力にまで及ぶ。これこそ、『小宇宙』の持つ《第2スキル》。その名も《彗星を飛び越えて》。
如何にも年頃の子どもが憧れそうな名をしているが、その能力は文字版の中でもかなり上級のものになる。光の速さを心身ともに受けるだけになく、
「そろそろ毒が全身を侵しはじめるころよぉ♪キシシシシ……♪」
「それは……どうかな?」
光に液体が付着する。そんなことがあるだろうか。
液体を物体化させるのに光の屈折を用いることはあれど、それは決して光を物質化させたわけではない。『小宇宙』は宇宙に輝く惑星や恒星をモチーフとした文字版であるということは、ある意味では光そのもの。
そんな彼に毒が効くというのは、あまり期待を持たない方がいいだろう。
とっくに並の文字版なら、失神していてもおかしくはない量の毒液を注入された『小宇宙』は今もケロッとしている。
いつまでも脚を掴んでいる『修羅場』に向けて、地に着けていた脚を肩に乗せ腰を軸に地面に振り降ろす。抵抗の間もなく脳天から地面に刺さる『修羅場』は、畑から顔を出している大根のように埋まってしまった。
「よし、文字主ッ!!早速の必殺技を見せてやるぜ!」
「お……おう!この人、強いけど……死なない程度に頼むッ!!」
ディフィートの剣撃を槍で防ぎながら、助太刀に入った『小宇宙』とともに連携攻撃で反撃に出る。
しかし、息を合わせるためにスピードの損なわれた『小宇宙』の拳は、同時に向かってくる水砂刻の槍撃と同じ容量で捌き切れる。これでは返ってディフィートに反撃のチャンスを与えてしまっている。
水砂刻を踏み台に斬りかかるディフィート。愛剣が拳に弾かれ宙に飛ぶ。後ろに腕を引き、みぞおちにストレートパンチをぶつけようと力を込める『小宇宙』を見て、靡く長髪からチラつく口角を上げる。
「待て!それはその人の罠だ!」
「なら、乗ったうえでその速さを越えるまでッ!!」
右拳に水色の針状に伸びる光が集う。
確実に人間なら絶命するだけのエネルギーを肌で感じる水砂刻は、ディフィートを狩り取ろうとするその力よりも『小宇宙』に迫っている危機の方に向けて大声を上げていた。
踏みしめる大地から衝撃波が生じる。だが、その色は明らかに『小宇宙』が放つ正拳突きで溜めて発生したものではない。
ズブシュッ!!
肉が貫かれる鈍い音がした。
ディフィートの目の前に『小宇宙』は居ないが、『小宇宙』が痛みに咽び喚く声が空高くから響いてきた。
「お仲間の忠告は素直に聞くもんだぜ宇宙ボーイ?そぉらいくぜ!」
「くっ、やらせるか!!」
槍回しで気合いを入れて、ディフィートを追いかける水砂刻。
目指している先には、先程の『発明家』との闘いで現れた二本目の長剣。ドゥームズデイを愛剣とするなら、こっちは愛棒としてディフィートが信頼を置いているもう一つの怪異。
見事に【終焉を刻む指針】の奇襲を受けた『小宇宙』の腹部から抜け、持ち主のもとへと帰ってくる。手に握ると同時に力がこもり、翡翠色の雷切を纏うディフィート。
その姿とこれから繰り出そうとしている技は、文字版であっても一溜りもないものであると、地中から顔を出すことに成功した『修羅場』が箔を押して笑った。
ワードライブにも匹敵する攻撃を打たせまいと、ディフィートの前に立ち塞がる水砂刻も負けていない。彼もまた【刻回廊が観る恐怖】の力を解放した一撃で迎え撃つ。
「こいつで終焉だ!フェイタル・エンドッッッ!!」
「破裂を生む純生な槍撃───ッッ!!ぐおぉぉぉぉ!!!!」
激突する二人の怪異使い。
WORDのルールには、文字主同士の戦闘行為による死亡は反則とはされていない。つまり、この一撃によりどちらかの敗北あるいは両者相打ちとなっても、ルール上は二名脱落となるだけである。
怪異同士の技の影響はスキャニングフィールドに穴を空ける程にまで、膨れ上がってもなお拮抗していた。
花火のようにキラキラしている激突の最中、「お前、やるな」と笑顔を向けるディフィートであった。
だが、水砂刻は違う。槍に込める力を緩めることなく、絵馬を取り出すとワードライブを行使して技の撃ち合いを続けた。そこへ、彼方から傷を修復し終えた『小宇宙』が光の翼をはためかせて水砂刻に加勢する。
急降下の最中、自信満々にキックを繰り出して水砂刻の隣に並び立つ一撃を放った。
───天変地異、小宇宙では常日頃ッッッ!!!!
形勢が逆転する一撃。
徐々に圧倒され始めるディフィートは、地面に押しやられている自分にムチを打つように「こんなもんかぁ」と、叱咤激励して出力を更に上げて押し返そうと頑張る。
しかし、奮闘虚しく力負けしてしまい爆発の衝撃を受けて墜落する。地上に居た『修羅場』がディフィートをキャッチ出来たため、命に別状はなかった。今度はディフィートの方が目をグルグルさせていたことは、『修羅場』にしか見えていなかったのは不幸中の幸いだろうか。
「クッ、クゥゥゥ……ッ!お、覚えておきなさいっっ!!!!」
へばってしまったディフィートを担いで、情けなく逃げ去っていく『修羅場』であったがそれを見逃す水砂刻達のはずもなく、すぐに挟み込まれてしまう。
拳を構えて、光速ダッシュをする『小宇宙』を前に最早これまでと思ったその時であった。
突然、『修羅場』の目の前で動きが止まった『小宇宙』。もちろん水砂刻は、止めてなどいない。何とかして、前へ前へと進もうとするところへ両脚飛び蹴りが襲いかかる。
「へっへー♪光あるところに影ありとは言ったもんだぜ!」
「なん、だと……?」
「ヒトの決闘の邪魔をして、漁夫の利ってのは見過ごせねぇぜ!ほら、そこの恐いお姉ちゃん達は行った行った」
遅れてやって来たトレード。
そして、『小宇宙』の光速を打ち消したのは『発明家』の発明品《影踏み君3号》であった。どう見ても古いタイプの掃除機にしか見えない、重そうな機械から黒い物質が噴き出して『小宇宙』の影に重くのしかかっていた。
鼻の下を人差し指で擦りながら、照れ気味に笑う『発明家』にトレードは拳骨を喰らわせた。
「あったっ!!なんで?」
「馬鹿野郎!あのままディフィートのやつの絵馬壊してもらえれば、脱落させれただろうが!」
「いやでも、文字主がフェアじゃねぇのは嫌いだって言ったからだぜ?アタシは悪くないだろ!」
それとこれとは話が別だと、怒鳴りつけるトレード。逃げ果せたのか『修羅場』達の姿はもうない。
水砂刻は動けないでいる『小宇宙』を絵馬に格納して槍を構える。撤退の機会をうかがって、向かい合っていると絵馬からアラームがなり始めた。それはバトルタイム終了の合図である。
「どうやら、これ以上の戦闘は違反になるらしいな。命拾いしたと思っておくべきかな……」
「そうだそうだ♪おとといきやがれぇぇ♪────ったぁ!!??」
スキャニングフィールドが解かれていくなか、夜道に消えていった水砂刻を頭を押さえながら見届ける『発明家』であった。
やがて、朝陽が差し始め小鳥が囀りを奏で始めるなか、トボトボと帰り道を歩くトレードと『発明家』。結果的に一番の敗戦を期したのは、自分たちであることに変わりはない。
それどころか、ディフィートという一番の強敵を倒せるチャンスを取り逃してしまったことで、この先のWORDの勝ち残りが厳しくなったのである。
「帰ったら、とりあえず朝飯にしよう……」
「よっしゃー文字主の手料理だぁ♪あ痛ッ!?」
またしても、拳骨をくらいギャグ漫画のようなタンコブを頭頂部に作りながら家路に着くのであった。
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