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クロスオーバーな話〜意味ない × トライワイト篇〜
動き出す陰謀
しおりを挟む「姐御ォォ!!兄貴ィィ!!」
「戻ったか『蠍抵牾』ッ!!ぶじだったのらね。わらひは心配してまひたよぉ!うぅ……」
巨大な尻尾のように膨れ上がった腹部を持つ、虫人間のような高身長の女型文字版と『黒蝙蝠』、『毒蜘蛛』が三体仲良く抱き合って涙を流している。
感動の再会を果たしたように大団円を迎えようとする『黒蝙蝠』達を通り過ぎ、『異文明』の前に立つ人影が二つ。
「待っておりました『小悪党』。そやつが、Beymindホルダーを手に入れた異世界に住まうという者ですか?」
「間違いねぇな!しかも、『異文明』様の見越したとおりでこいつも文字版になりやした」
記憶を探る能力を持つホルダーを手に入れた、次元の穴から迷い込んだ人間はすでに死にかけていた。
死の近い生き物の匂いを探るために、『蠍抵牾』は同行することになり見つけ出した人間。自分達と同じ文字版へと、改造することの出来るトライワイトシステムの簡易キットを使って蘇生措置を行なった。
目的はこれまでにいない文字版を生み出すため。偉人本体や遺物を組み込むことで、その逸話に基づいた能力を引き継ぐように別次元のテクノロジーと掛け合わせた存在。
言うなれば、文字版のミュータントと言えば具体的だろうか。その第一号でる『異文明』は、偶然死から発現する怪異出会ったことがきっかけで生まれてしまった。
「よもや、『黒蝙蝠』の出来心で我らをこき使う『異文明』なんていうものを生み出したとは……これ皮肉……」
「悪かったれす。そのせいで、怖い思いをさせたな『蠍抵牾』ッ!!」
「いえいえ!こうでもしないと、姐御も兄貴も消されてしまうところでしたのでぇぇぇ、うえぇぇ───んっ!!」
陰謀めいたものを招いた原因であるのに、被害者ぶる三体の隣に生気のない暁咲が姿を現す。捕まえてきた人間を『異文明』達の前に投げる。
「いでっ!な、何すんねん!」
「コイツか?管理役で呼ばれた文字版と一緒にウロチョロしていたネズミってのは?」
「油断したで……、『解説者』はやられはったんか?」
捕まったのは噂観測課のラットであった。
WORDの管理役として選ばれた彼は、『解説者』とともに今回の不穏な動きの調査をしていた。そこへ送り込まれた刺客の文字版と相討ちになった『解説者』と、襲いかかってきた暁咲に頭を殴られ気絶させられたラット。
怪異と文字版のハイブリットタイプ。それが『異文明』であることを聞かされるラット。それはつまり、このWORDは噂観測課案件でもあることを意味していた。
「全部を知ったところで、君たちにはここでご退場いただくことになるだろうがね。さっそく、君の力を見せていただきたいな───『召喚師』」
洗脳されている暁咲はラットの隣に座り、『小悪党』に押さえつけられたラットの頭に杖が差し向けられる。
「承知。あなた方の脳内に眠る、二度と会いたくないほどの強敵を召喚させていただきます。想像力に体力や気力も変換させていただきますので、目が覚めた頃にはこの戦いの勝敗が決まっているかと思いますよ……」
言葉のとおりに怪しい光が視界に入ったと同時に、意識を失うラットを立ち上がらせる。
額に当てた杖から、記憶を覗き込んで誰もいない空間にホログラムが組まれてシルエットを帯びていく。その様子を生気のない目で見ている暁咲を抱き上げる『異文明』は、耳元で囁き声をかけて洗脳を解いた。
記憶を覗き込むには、解除する必要があったからだ。我を取り戻す暁咲だが、目の前にいる美男にキュンとする。その間に杖の先が割り込んでチカッとフラッシュがたかれ、記憶を探られる。
「うっ……。わ、わっちの……っ、記……憶……?」
「君の素敵な夢を覗かせてくれないか?」
「イケメンクン……♡水砂刻クン……ごめんなさい……」
抵抗することもなく、脳内に描く強敵をホログラムされて意識を失う暁咲。
やがて、気力を吸い終えたラットと暁咲を『小悪党』はその辺に捨て置いて、病院へ搬送されるようにするべく連れ出した。
ホログラムで『召喚師』のスキルで召喚された、紅いドレスの少女と蒼いパーカーの青年に『黒蝙蝠』達は近付いた。次の瞬間、スカートから美脚が伸び『毒蜘蛛』の首を逆Vラインに挟み込む。
拘束された仲間を救おうと八重歯を光らせるも、『黒蝙蝠』の前にデジタルバリアが生まれて顔をぶつけてその場に倒れてしまう。鼻を押さえている間に、胸ぐらを掴み上げられる。
「姐御!兄貴!」
「分析……、妙だな……怪異に該当が見当たらない」
「それって、コイツらもヒール達と一緒でアンリードって事かな?ねぇ見てルーティン、このおチビちゃんヒールのアンクが項に刺さってるのに直ってきてる♪」
そこに居たのは、以前燈火達に倒されたはずのアンディレフリード。アンリードと呼ばれていた強敵達。ラットの記憶からルーティン、暁咲の記憶からレッドヒールが召喚されたのだ。
呼び出された当人達は、現れて早々に近寄ってきた『黒蝙蝠』達を敵とみなしたのか攻撃を仕掛けてきた。
補聴器のようなダイアル式のヘッドパーツを回し、怪異の検索を試みるも文字版は引っかからないことに気づいた。自分達の知っている状況になっていないことを再分析し、次元の繋がりが不安定になっていることを把握した。
警戒態勢を解くようにレッドヒールに言い聞かせ、『異文明』からは怪異の反応が確認出来たことで体を向けて口を開いた。
「なるほど。わざわざ負けたボク達を呼び出して、キミ達は何がしたいのかな?」
「君たちが敗れたのは、そのアンリードの特質上にあった弱点を突かれたからであろう?わたしに召喚された御二方は、その弱点を対策さえすれば無敵の存在ではありませんか?」
「へぇ~、ヒール達の力が借りたいってこと?────うん♪いいよ♪」
あっさりと承諾するレッドヒール達。
その首には、『召喚師』の使い魔であることを示す首輪が着けられていた。文字版達の手を一体一体取って、笑顔で握手して回るレッドヒールとは対照的にダイアルを回して検索を続けているルーティンの姿があった。
怪異と文字版、Beymindと文字版のハイブリット種として誕生することのできた『異文明』と『召喚師』。目的はすでに果たした。
あとは試運転も兼ねて、偽装で開催したWORDに招かれた文字版と噂観測課を筆頭とする文字主を殲滅するのみという、目論見を閲覧し終えたルーティン。
レッドヒールの首根っこを掴んで、『異文明』達の隠れ家から立ち去ろうとする。当然の如く、事情を聞かされていない『小悪党』は立ち塞がり首元に剣を向ける。
「任務の更新を確認──、これより妨害行為を開始する──。それでいいのだろう『召喚師』?いや───、『祭騒動』さん?」
召喚されてわずかな時間で、『召喚師』がもう一つの真名を隠していたことを見破ったルーティン。ジタバタしているレッドヒールをそのまま引きずって、その場から姿を消した。
やがて、WORD参加者へ攻撃を仕掛けるために各員は持ち場へと向かった。遅れて、管理役がその場を突き止めラットと暁咲を保護することに成功したが、裏組織の全貌は明かされることはなかった。
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