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クロスオーバーな話〜意味ない × トライワイト篇〜
踊り踊って乱舞客演
しおりを挟むライブステージに残されたラウと『修羅場』。会場の声援は尚も鳴り止まずに、ラウに向けられ続けている。
シザースソードを取り出し、ラウに斬りかかる。もちろん、殺す気はない。しかし、絵馬を奪うためには威嚇は十分以上にやらないと意味はない。ましてや、相手がディフィートの知人である以上は加減はするだけ怪我のもとに繋がる。
バク転で華麗に回避して、舞台袖に置かれたスポーツドリンクを飲む。水分補給が目的ではなく、怪異の力を発揮するために水分が必要なため半分残して空中に撒くことを試みる。
しかし、すでに能力行使に水分が必要であることをしっていた『修羅場』は、開け口に手を当て放出を防いだ。顔面を狙った拳を首を捻って避け、ペットボトルを叩き落として距離の離れた場所まで蹴り飛ばし、ラウをステージへ戻すようにぶん投げる。
砂埃を立てて、耐え切るラウのもとへ物が投げつけられる。それは金属製の水筒であった。『修羅場』は封を開けられる前に、ラウを遠ざけようと急ぎ駆け出した。
「やらせねぇぞ、あぁん?」
「────、ならばッ!!」
起き上がり、その場で空中を蹴って回転する。
着地と同時に、胸前に飛んできた水筒を『修羅場』目掛けて殴り飛ばす。予想外の行動に回避が間に合わずに顔面に直撃する水筒。ラウの拳の力と衝突の勢いで破損し、辺りに水飛沫を巻き起こす。
これによって、ラウの反撃が始まることとなる。鼻を押さえながら、向き直ってシザースソードを両手に携えて向かってくる『修羅場』。
急に減速、いや動きが止まる。文字版である故、冷気を感じるのに時間がかかった。まさか、自分の両脚が凍らされているとは気付かずラウの拳撃を喰らう。
腰下まで凍りつき、サンドバッグ状態になる『修羅場』。ラウも相手がディフィートとともに行動していたのなら、文字版であると見抜いているため、その手を緩めることなく拳を叩き込んだ。
ファンのみんなは、カメラがどこから映しているのかも不明な映像がモニターに映され、歓喜の声を上げている。アイドル衣装の露出部分で激しく揺れる肌色、汗滴り飛沫を立たせるラウの肉体美にテンションが爆上がりである。
少々恥ずかしくなりながらも、強めの一撃をお見舞いしようと振り被って突き出した。
「おい……っ。あまり、調子に……乗るな!オラァァァ───ッ!!!!」
「ッ!?なんて怪力……」
お前が言うなと、気合い入れの声のように叫んで氷を吹き飛ばし巴投げする『修羅場』。
空かさず、振り返って起き上がると両手に注射器を装填したサブマシンガンを持ち、乱射しながら追撃を開始する。その様子に、ファンは『修羅場』もアイドルの一人だと思い、パフォーマンスの迫力に歓声を浴びせる。
一瞬、乙女の顔になりウィンクしてファンサービスをする。秒で殺気全開の顔でラウを追いかけ、ライブステージから姿を消すのであった。
□■□■□■□■□
その一方で───。
鍔迫り合いと激しい打ち合いを繰り広げているディフィートと『大喝采』。
弾き合って距離が生まれて、お互いに武器を交換する。ビームセイバーを指揮棒に見立て、スカートに着いていたベルや装飾品が宙に舞う。クルッと一回転するとペンライトへと変わった。
「ゆけ、ペンライトピッドッッ!!」
「ぶっ放せ、ラグナブラスターッッ!!」
飛来してくるペンライトを撃ち落とすディフィート。
しかし、それが『大喝采』の撒いた囮であった。弾幕を越えて、急接近したビームセイバーが腹部を捕らえた。紙一重で胸三寸もないところを通過する。
ジュウゥゥと前髪が少し焼け焦げた匂いを残し、ラグナブラスターの砲台を地面に向かって斜面上に突き立て、吹かしを放ったオーバーヘッドキックで反撃する。
「ふむ♪やるではないか。しかし、お主……そんなに大きいと肩は凝らぬか?」
「へっ、ご心配無用だぜ。あたしはちゃんとケアしに行ってっからな♪なんなら、仕事仲間で今回のWORD参加者にはあたしの倍はあるやつが居るからな。心配なら、そいつにしてやんな!控えめなアイドルさんっ♪」
お互いにあるものの大きさ比べを皮肉った会話を交わしながら、再び剣術の打ち合いに持ち込んでいった。
ディフィートが足を取り、倒れたところへ追い討ちをかけると『大喝采』は二本目のライトソードを取り出し受け止める。ブレイクダンスでディフィートを遠ざけ、二刀流で構えを取る。
これは負けていられないと、ディフィートもドゥームズデイとラグナロッカーの二刀流で応戦する。回転斬りで力任せな戦い方に出るディフィート、ステップと防御で上手く逃げ宙返りをみせる『大喝采』にドゥームズデイを投擲する。
「なんと!?大事な武器を捨ててまで、反撃の隙を与えんとは……」
「いいやッッ、そうじゃねぇさッッッ!!!!」
型破りな戦術。それこそが、ディフィートが最強の怪異使いと呼ばれてきた所以である。
ただ我武者羅に投げられたように見えていた愛剣は、雷切を纏って背後から『大喝采』を襲う。咄嗟の防御に対応しきれず、ビームセイバーが弾かれて通過する。ディフィートはドゥームズデイを受け取り、駆け抜けて『大喝采』に斬りかかった。
──ライブを抱いて、アンコールを刻めッッ!!ドゥームズデイッッ、リッッバァァイヴッッッ!!!!
赤雷、翠雷、紫電の三位一体の電撃を乗せた、ディフィートの必殺剣が『大喝采』を刺し貫いた───。
少なくともこの時、『大喝采』は斬られたと思いトライワイトによる再生を急がせる備えをしていた。だが、直前に『大喝采』の背中を蹴りつけられ斬撃を飛び越えて壁に叩きつけられた。
乱入者はドゥームズデイの一撃を一身に受け、大爆発を起こす。爆発音を聞いていた、ラウと『修羅場』も戦いの手を止める。ドゥームズデイをまともに受けたのが『大喝采』ではないとするなら、一体誰が───。
煙から浮き上がるシルエット。ディフィートは乱入者の蹴りを愛剣で防いでいた。
「なんで、てめぇが───ここに……!?」
「ごきげんよう、噂観測課最強の怪異使いさん。とても賑やかなご様子でしたので是非とも───、ヒールも混ぜて欲しいなぁ♪」
ディフィートと戦闘している乱入者を見て、ラウも驚愕する。
その紅い姿に有り得ないと、首を振って見つめるしかなかった。ディフィートを突き返して、スカートの裾を摘み小さくお辞儀をする乱入者の両隣に『黒蝙蝠』と『毒蜘蛛』が並んだ。
「このお方こそ、わらひらの特別ゲストッ!……じゃなくて、えっと…………」
「助っ人にして切り札だ!!」
「文字版の皆さん、お初にお目にかかります。レッドヒールと申します」
膝を立てて座り込んでいたディフィートは気だるそうに起き上がるなか、『修羅場』が近寄ってきた。ラウと『大喝采』の方も同じく、情報共有を求めている状態になった。
アンディレフリード。通称アンリードと呼ばれた、人造怪異使いを造る計画の一つアンデッドオーダーが生み出した不死兵器。そう説明するのが、話は早いだろう。
何を隠そう、レッドヒールはすでに鳴堕 暁咲ことサタナキアとの対決で撃破された存在。不死兵器である彼女達にも弱点があり、噂観測課と人怪調和監査局の協力によって全滅した。そんな彼女が再び、こうして目の前に現れたのだ。
「さぁ、踊りましょう♪とことん、ねっっ♪」
「来るぞ!!シュララ、狙いはあたしらじゃないみたいだ」
ならば、この場は撤退あるのみ。その続きを聞くまでもなく、行動に出る『修羅場』は『黒蝙蝠』を殴り飛ばして一点突破する。バイクを呼び出して、ディフィートは『修羅場』を絵馬に格納するとエンジンをかけた。
撤退の最中、レッドヒールが狙いに定めた『大喝采』との戦闘が映り込んでいたが、顛末を見届けることなく走り抜けた。そして、レッドヒールが何らかの形であれ復活していることについて、噂観測課全員に一斉送信のメッセージを送るのであった。
こうなっては、WORDなんて面白おかしくやっていられるゲームなんてやっている場合ではないかもしれないと、最強の怪異使いのカンがそう告げていた。
□■□■□■□■□
狙われた『大喝采』とラウは、その後も戦闘を続けていた。
「いいわいいわ♪貴女の踊り、ヒールも愉しくて愉しくて♪」
「ぐぬぅ……。やるな……!」
(流石に、あのディフィートという剣士に負けを認めていたところにこのような戦闘は……些か堪えるな……)
加勢に向かおうとするラウの前にも、『毒蜘蛛』が立ちはだかる。
見た目は幼い白髪の少年だが、その手に装着されている鉤爪はアサシンの持つ武装と同じものであった。それゆえ、文字版であることは分かっているラウ。
十分に警戒して対処する。蜘蛛の糸を手から出し、手首に巻き付けられたことで身体を引っ張られる引き寄せたラウに横振りで鉤爪を振った。
次の瞬間、ラウの全身が氷像に代わり鉤爪にぶつかった衝撃で砕け散った。仕留めることが出来た手応えがなく、周囲を確認する『毒蜘蛛』。
冷気が彼を包んでいる足元から、氷像が砕けて出来た雹が密集する。背後に集結した雹がラウに変わり、拳を鉄槌の如く振り降ろした。地面を叩き割る鉄拳を躱すことが出来たが、『毒蜘蛛』は粉砕されてひび割れているコンクリートを見て戦慄していた。
冷気状態から戻ったラウの格好は、戦闘でもうごきやすい執事服に戻っていた。それがまたしても、『毒蜘蛛』の戦意を削ぐこととなった。
「お、女執事……ッ!?」
「───ッ?」
一瞬動きを止め、首を傾げるラウであったが足を上に蹴り上げ『毒蜘蛛』の顎を蹴り飛ばす。
宙に上がった敵を両肩を抱くようにして、アクセルターンで追跡するラウ。エナメル質の軋む音を聴かせながら、『黒蝙蝠』のいる方へ叩きつける。ようやく起き上がった『黒蝙蝠』に覆い被さるように落ちてきた『毒蜘蛛』。
相棒にぶつかってしまったことよりも、ラウに殴られたことが嬉しかったのか現実逃避に浸っている『毒蜘蛛』の頭を叩き、レッドヒールと『大喝采』のもとへ向かおうとしているラウの止めに入ろうと奮戦する。
しかし、もうその場にラウの姿はなかった。デレデレする要素の多い、噂観測課をこれほど恨むことはないと心に誓った瞬間である。
やがて、ラウの助太刀が入り『大喝采』は戦況を立て直した。レッドヒールにとって、二対一で踊るのは美徳に反すると興醒めした態度を取る。
「まぁ、ヒールは命令されただけだし。貴女達、噂観測課とつるんでる文字版は全員消せってね♪また遊ぼうね、アイドルの文字版さん♪」
足踏みをして、熱風を巻き起こしその場から消えるレッドヒール。それを見て、急いでその場から退散する『黒蝙蝠』達。
バトルタイム終了のアラームが鳴り、この日の戦闘が終了した。今回のWORDがイレギュラーであることが、参加者にも知れ渡った日でもあった。
ディフィートが一斉送信した情報を最後に、絵馬による通信機能、スマホによる連絡手段が絶たれることとなることをこの時は、まだ───誰も知らないのであった。
『───通信遮断、隠密完遂。続いて、このまま───理論再構築に入る…………』
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