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クロスオーバーな話〜意味ない × トライワイト篇〜
第三勢力!?
しおりを挟むアンリードの復活はレッドヒールだけではなかった。
それを知ることが出来たのは、水砂刻と『小宇宙』。そして、対戦をしていた夏蝶火、『未確認』、ライゼンジャスティス、『絶好調』の三組であった。
(てか、アンリードって確か……妖精の森って呼ばれている怪異保護区画であったゴツゴツした人形使いだったような……?)
「くぅ~~っ、絶好調ォォォ♪うちら文字版の上位互換だなんて、本当だったら嬉しいね♪」
「そんなこと言っていられる状況かよ?コイツ……、オレの早さをものともしてないぜ……」
光速の攻撃を閲覧し終えたアンリード。ルーティンの前では、『小宇宙』のスキルが通じないものも同然になっていた。
正面から向かってくる『絶好調』と『小宇宙』に対し、バリアを展開して攻撃を防ぎ背後から光線銃と毒液で攻撃してきた夏蝶火達には、手をかざして放った光線で対処してみせた。
「なるほど……、『祭騒動』召喚従者であるのも悪くはないものだな……」
一度に大勢の文字版を相手しても、遅れを取らない反応速度と処理能力。そこに追加された、仮想武装の具現化する能力がルーティンの凶悪性を物語っていた。
以前、戦闘していた時は夏蝶火一人でもバリアを破壊することは出来ていたが、今回は違う。ハッキングスキルによって生み出された、ちゃちなのものとは天と地ほどもある武装に変わっていた。
そもそも工作員である彼は、武装に拘りを持っていなかったこともある。『召喚師』の手駒として、ラットの記憶から蘇生された以上は戦線に出ることとなるため、武装を強いものにするのは当たり前であろう。
「隙ありッ!!」
「それはこっちの台詞だ……」
「がふっ!?」
「ならよぉ!!」
縦に使っていたバリアを射出して、攻撃型の遠隔兵器にも用いることが出来る。それを避けたことで、反撃に出ようとした『絶好調』を片腕でクロスカウンターを決め、振り返り『小宇宙』の攻撃の盾に使った。
攻撃を受け止めて揺れる『絶好調』の身体。腰部に手を添え、空想武装の新たなバリアを発生させ発勁の役割を果たさせる。弾丸となって弾け飛ぶ『絶好調』と『小宇宙』。
今度は背後から水砂刻が槍で奇襲をかける。海を泳ぐ海洋生物のように軽やかな身のこなしで、薙ぎ払いも突きも軽々と避け手の甲にバリアでコーディングを施して、鍔迫り合いを始める。
「く……っ」
「どうした?キミ達はこんなにも弱かったかな?それとも、ボク達を倒したくらいで平和ボケするような、弱い心の持ち主だったのかなっ!!」
「ぐはっ……」
「────ッ!?」
パワーで打ち勝ち、水砂刻の懐に踏み込んだルーティン。
その額にガントレットが飛んできた。上体を逸らしながら地面を引きずり、数メートル後退りする。殴打と同時に打ち込まれた弾丸で焼けた皮膚が、みるみると巻き戻しのように再生していく。
「今のは予想外……。ギャル2名は油断大敵、かな……?」
その分析どおり、前後から『絶好調』とライゼンジャスティスが向かってきていた。
上空に逃げようと、身体を回転させて飛躍する。同士打ちとなる勢いのギャル二名は激突───、を利用して『絶好調』をルーティンの逃げた空へスウィングした。
同時に絵馬を取り出し、文字進化を行ない『最高潮』となって蹴り技を繰り出した。バリアを二重に張って防御を取る。ルーティンの計算では、その対処で間に合う───。
「やはり、越えてくるか……」
「最ッ高潮ォォォ────ッ!!!!」
蹴りだけでダメならと、パンチを連続で繰り出して破壊する『最高潮』。バリア突破と同時にルーティンの頬を捕らえ、地面に向けて渾身パンチをお見舞いする。
コンクリートを抉り倒して、叩きつけられる。強過ぎる力の流れに、ピンと天に向けて伸びる脚が痙攣を起こしているが、ルーティンにはダメージは入っておらず力の微動が終わると、何食わぬ顔で起き上がった。
自由落下している『最高潮』の着地狩りを狙うバリアを展開し、ライゼンジャスティスと同時に背後からバネのように攻撃を仕掛ける。首を回してバキボキ音を立たせ、向かってくる両名に全力疾走からのダブルラリアットを当てる。
抜き去ったまま、今度は『未確認』を狙って壁を走り抜けくの字を描いてコーティングされた手で殴りかかる。しかし、攻撃は身体をすりぬける。空振りしたルーティンは近くの構築物に突っ込んだ。痛みに悶える時間の代わりに、イヤーカバーのダイヤルを回して再分析を開始する。
「透明化……?いや違う。これは……《バリアチェンジ》。キミのような低ランクの文字版でも、持てるらしいな……なら……」
「ルギャルギャ イラ ギャ ギャ ギャ ヴィ ヴィ ギャッ!!」
「宇宙語か。それもかなりヘクターの遠い言葉みたいだ。それで怒っているのかい?」
頭の水槽部からミサイルを取り出し、ルーティン目掛けて発射する『未確認』。
そんな彼女の言葉をお得意の分析能力が解読したルーティンも、発生させたバリアで反撃に出る。そのバリアはすでに《バリアチェンジ》で備えた属性や性質の異なるものであり、今の『未確認』では防ぐことが出来ない。
ミサイルを防ぎ、空中を飛来する半透明のブロックに当たった『未確認』は敗れてしまった。夏蝶火は倒れた『未確認』に駆け寄って絵馬に戻した。
ヨロヨロと起き上がるライゼンジャスティスと『最高潮』。同じく、槍で杖つきながらも起き上がる水砂刻と『小宇宙』。
しぶとく向かってくる事に、飽きが来たルーティンは欠伸を始める。と同時に指を鳴らして、全方位にバリアを剣状に展開したソードピッドを放った。直球のものから拡散型、追撃型まで役割を分担し全員を轟沈させる。
進化が解け、『絶好調』になって膝をつくことで圧倒的差を思い知らされる。
水砂刻を庇って多くのピッドを受けた『小宇宙』は、水砂刻に有無を言わさずに絵馬の中に消えてしまった。消滅しなかっただけ、まだマシであると絵馬をしまってルーティンを睨む。
どうあっても、この場は退かなければ勝ち目はない。不安、恐怖、劣等感。抱いている感情が手に取るように想像出来てしまうルーティンは、思わずポケットに手を突っ込んだまま笑ってしまった。
「いいよ?逃げたければそうしな。もうボクにとって、キミ達を抹殺しろって命令はいつでも達成出来るものになりつつある。それよりも────」
「────はっ!?」
戦闘不能の夏蝶火はもちろん、水砂刻にすら目もくれず迅滅の速度でライゼンジャスティスを連れて、土煙を立てながらその場から姿を消す。
置いて行かれた『絶好調』はダメージで満足に動かすこともできない身体に鞭を打って、足を引きずってライゼンジャスティスのことを追いかけていった。
✳✳✳✳✳✳✳✳✳✳✳✳✳✳✳
木の枝が幾つか、背中にぶつかり激しい損傷で変装スーツが破けるライゼンジャスティス。水砂刻達から離れるどころか、スキャンニングされた空間をはみ出したエリアまで吹き飛ばされて地面に転がる。
誰にも見られていないなら、怪異の力を行使して抵抗するしかないと空美はバトルセーラーに身を包んだ。ダメージを受けているせいもあって、完全な装着が出来ていないがこのままやられる訳にはいかないと身構えた。
「よしてよ。闘いたくて、2人きりになった訳じゃない。そっちだって、訳ありで連中に嘘つくような真似しているんでしょ?変装スーツに関しては直しておくよ」
「狙いは……何?あーしと2人きりになって、何する気?」
すると、空美の身体に向かって手を翳して眺め始める。
輪郭をなぞるように頭の先から足先まで、隈なく見終えるとダイアルを回して解析を開始した。
そう、空美は怪異が入り乱れている身体の持ち主。純血の人間と純血の怪異が混ざっている、怪異使いの中でも変わった体内環境になっていたのだ。そんな彼女の状態は、まさに『召喚師』と酷似しているものがあった。
正確には『召喚師』にされた、異世界のBeymindホルダーと似た体質をしているということになるのだが───。
「彼の場合は完全に飲まれている。キミの場合は……コレが原因でもあり、奇跡を呼んだと言っても過言ではなさそうだ。でも……」
ルーティンには分かっていた。
この刻まれている烙印は、近いうち空美にまた新たな試練を与えることを。だが、今は目的を果たす手がかりをくれたことに感謝するだけに留めておくことにした。
お詫びどおり変装スーツを直し、おまけにハッキングスキルを使い空美の傷を回復まで行なった。あとで合流するであろう『絶好調』用に、回復アイテムの付与を済ませその場を立ち去ろうとする。
敵であることに変わりはない空美は、どうして見逃してくれるのか尋ねる。
「ボクには、キミの未来が見えた。それが何を意味するのか……ここから先は言わなくても分かるだろう?次に合う時があれば、容赦はしないさ……」
振り返ることなく、手を出して振らずに別れの挨拶を済ませ姿を消すのであった。
やがて、ボロボロの状態の『絶好調』と空美は合流して渡された回復アイテムで治療した。「絶好調ぉぉ!」と元気いっぱい叫んで、全快した『絶好調』。
空美の身体をチョロチョロ周り、キョロキョロしながら隅々までチェックする。匂いまで嗅いで、空美の顔を覗き込み質問する。
「ねぇ、あのルーティンって子にえっちなことされなかった?」
「へ?な、なんでそう思ったし?」
「う~ん……、もしかしたらあの子、そういうむっつりな子なのかなぁって」
「何もされてないし~。ていうか、むっつりに見えてたの『絶好調』には……」
人は見かけによらないからと、腕組みして頷いている。
そして、明日以降のバトルタイムではWORD参加者の誰かと勝敗をつけたいと意気込んで、全速前進で走り出す『絶好調』。空美はライゼンジャスティスとして、このWORDに潜んでいるアンリードとどう立ち向かうべきか。
考えるのは後にしたいから、一緒に夜道を駆け抜けるのであった。
□■□■□■□■□
空美と別れた後、ルーティンは同じく参加者と戦闘を繰り広げたレッドヒールが待つ、見晴らしのいいビルの屋上へと向かった。
「あら、随分遅かったわね?」
「そういうキミは、随分とご機嫌だな」
いつもどおりといえば、いつもどおりのレッドヒール。
彼女はベースとなった人間の持つ生前の記憶から、常時踊り続けている。その姿はまるでと例えるのも同じく、【赤い靴を履いた女の子】という怪異が宿っているからでもあるのであろう。
見たまんまの行動を取っているだけに過ぎないが、それでもダンスにキレのある事から上機嫌であることを伺える。
そんなレッドヒールが更なる上機嫌となる、耳寄りな情報を持ってきたとルーティンが持ちかけた。たったその一言を聞いて、脚をとめることなくターンしながらルーティンに接近して、内容を聞かせてと耳に手を当てながら踊り続ける。
「首輪に触る。踊りをやめてくれないか?」
「えぇ?いいけど、すぐ済ませてよね?」
頬をプクゥと膨らませて、不機嫌気味になりながらも『召喚師』に召喚され、従者となっている証である首輪に触れる。
スキルによる使役は、この首輪がなくなると効力を失いもとの形に戻ってしまう。人間の記憶から作り出された二人は、夢のように消えてしまう。そのため、アンリードとしての弱点はなくなった代わりに首輪が壊されたら、死体に逆戻りになるということである。
トライワイトに依存しないだけで、結局は文字版の延長線上にいる召喚された駒であることに変わりはない。このまま参加者を早く消してしまえば、自分達も早く消されてしまう。
少しでも長くいるには、戦いを早急に終わらせないようにするしかない。
だからこそ、今回は挨拶に来ただけと言って誰も倒さずに帰ってきたレッドヒール。理由を同じくして、ルーティンもそうであったが自由に奇襲先を選べたのが幸運を招いた。
首輪が解除される音が聞こえ、レッドヒールの首から外れる。だが、レッドヒールは消滅しない。
「これって……」
「ボク達はアンリードとして、復活したことになった」
目の前で首輪を取って、握る様子もなく床に落として見せた。
ルーティンは、音雨瑠 空美の怪異構造と『召喚師』となったBeymindホルダーの体質が同系列パターンであることを見抜いていた。
そして今、Beymind能力についての情報を閲覧し終えた彼にとって、怪異との繋がりを断つのと同然に文字版の力とBeymind能力を切り離すことは、欠伸をしていても解ける問題であった。
とはいえ、アルゴリズムと配列パターンを閲覧していなければその手順が踏めなかった。そのために空美を分析して、『召喚師』の従者であることを切り離す方法を編み出したのだ。
アンリードは怪異を否定し人類を導く存在。人類を保護するために生まれた、文字版は人類の持つ感情を補完する存在。存在意義の方針が相容れないものであると、結論付けたルーティンは独立する方法を使うことで戦局を変えることにした。
これより先は、人類と怪異、文字版、アンリードの三つ巴の戦が始まるのであった───。
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