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クロスオーバーな話〜意味ない × トライワイト篇〜
フェイカーフェイス
しおりを挟むWORD崩壊直前のこと。WORDに参加していた夏蝶火と水砂刻の戦いに、『異文明』が介入して来ていた。
そこへ管理役の者が駆けつけ、戦闘は混乱を極めていた。『季節風』、『天中殺』の二体はその戦力を分断することを迫られていた。謎の情報提供者《偽S》の情報をもとに、WORDに参加していた文字版の偽造文字を見破ったことがきっかけである。
「う、嘘だろ?────『小宇宙』ッ!?」
「どうやら……そうらしい。看破を受けてから、体の調子がおかしい……。文字主、貴殿に危害を加えたくはない。この街にもだ。だから頼む───『大銀河』を倒して、この不出来な『小宇宙』の暴走を止めてくれ……」
最後の言葉を残して『小宇宙』は偽名が剥がれ落ち、『大銀河』という真名を持つ文字版へと姿を変えた。
不正登録によるこの存在は、倒されてしまった場合に誰の記憶にもないものとして、マテリアルスペースには帰ることがないことを知らされ、一時は躊躇いを見せる水砂刻であった。しかし、先程まで戦っていた夏蝶火が重傷を負ってもなお、侵攻の手を止めない彼を見て決心がついた。
「エゲェ、リリョ ギャ ギャ ヴィ ギャ ギョ ギュ!!───ギュ ギャッッ!?」
「その辺にしてもらうか『大銀河』。管理役というものも、面倒事が多いものだ。そこの文字主も力を貸してくれ、こいつを倒すぞ」
「ああ、もとよりそのつもりさ」
倒れている夏蝶火を庇って、契約している文字版の『未確認』に巨大な爪が覆い被さるところに立ちはだかる、『季節風』によって攻撃は弾かれる。
その隣に水砂刻が立ち、『小宇宙』と契約を交わした絵馬を取り出し天高く投げた。そして、槍を投げつけて破壊した。契約破棄、ではなくこの短い期間とはいえ、戦線を共にしてきた友との誓いを果たすために行なった決別の証。
咆哮を上げる『大銀河』は、水砂刻と人型の『季節風』を圧倒的にな目線位置で見下ろせる体格差がある。咆哮が止む前に拳を突き出して、二人に襲いかかった。
双方散り散りになるように飛び出し、拳を跳び越え腕に着地して走り出した水砂刻は、絵馬を砕いて自由落下している得物を手に持って薙ぎ払った。目的は槍先を当てるものではない、薙ぎ払いで生じた旋風で牽制をかけるためであった。
しかし、水砂刻の目論みは脆くも打ち砕かれた。『大銀河』の両肩から生えている煌めきを持つ角、まるで宇宙へと通じているホワイトホールとでもいうべきか。放った旋風はその場所へ引き寄せられるように、微風へと弱まりながら吸い込まれていった。
「ブラックホールとホワイトホールの力を兼ね備えているのか?しかし、あの角からはトライワイトを感じない……。あれでは、トライワイトエナジーを持たぬものを吸い込むもののように見える」
「くっ……。幸い、こっちが宇宙空間になっている訳ではないから、俺の時跳びの力は使える」
水砂刻の怪異能力が時を飛べる力でなければ、とっくにこの世には居ないものとなっていただろう。倒れていた夏蝶火も、『未確認』に担がれて撤退したため影響を受けなかったようだ。
しかしこれでは、文字版でしかまともに近付いて戦闘ができないということになる。そうなれば、最早WORDのゲームどころではないと水砂刻は汗を浮かべて槍を構える。角が光った時にそれは起こる。初撃は相手が角を起動させなかったからいいものの、今後は下手に槍を投げる訳にもいかない。
その時、肩の角を手に持ち双剣にしたのである。しかも振り回しの速度は、その巨体から想像がつかない程に俊敏であった。これには、堪らず防戦に徹するしかない水砂刻。
「早すぎるっ!?」
「ん?あれは───っ!?」
高速剣を繰り出している『大銀河』に向けて、水砂刻を逃がすための援護射撃を行ないながら『季節風』が何かに気が付いた。援護射撃に飛んできた四季折々を彩った弾丸、その一つ一つを防ぐ時と撃ち落とす時で共通して、頭部の球のようなものが光る。
続いて双剣にした角が光り出す。光り出した球こそ、『大銀河』の文字版として偽装された文字核であると、『季節風』は見事に見抜いた。しかし、問題がある。見つけた文字核を破壊さえ出来れば、『大銀河』を倒すことは出来る。
(そのための突破口を開くとすれば、この身を払ってでも彼に繋がなければならない。しかし、彼一人に時間稼ぎを要求すると一体どうやって文字核を打ち砕けば……?)
戦況的に、二対一の構図を崩すことは出来ない。
この戦いの裏では、『天中殺』とその文字主であるアブノーマルが戦っている。そちらが空いてしているのは、この偽装文字を布陣として仕組んでいた張本人、『異文明』である以上は応援を要請する訳にもいかない。
一瞬の悩みは命取りになる。それは文字版同士の戦いにおいても、命は尽きないだけで変わりはない。「危ないぞ!!」と水砂刻の声が届くよりも先に、二つの刃が『季節風』に襲いかかった。辛うじてのところでガードには成功するが、地面を転げ落ちて追撃には対処出来ない。
この文字版を倒すためにも、ここで消滅するわけにはいかない。そう思っていても体が動かない。大きく振り被った双剣は、水砂刻の時跳びによって防ぎきれないように両側から挟み斬る構えを取った。
時を跳び越える能力は、対象の人間を連れ出すことに使用する際、消耗が激しいことを何よりも水砂刻自身が知っていた。そうなれば、片側を押さえつつギリギリのところでもう片方も防ぐ方が、能力の消耗は抑えられると水砂刻は行動を先に取っていた。
「だ、だめか……?」
「案外、文字版ってのは素直じゃねぇんだな。こんな偉そうにふんずり返ってそうなデカブツを野放しにしたくねぇんなら、出し惜しみは無しだろ『季節風』。つまりは────」
「「────ッッ!!??」」
水砂刻と『季節風』は、どこからともなく聞こえてくる反響した声に反応した。直後、赤黒の禍々しい電撃が『大銀河』に降りかかる。双剣を光らせて、その電撃をすべて無効にする。防ぐ挙動までに直撃していたことで巻き起こった砂煙、雲間を穿いて雷撃の主が姿を現した。
「───オレ様も混ぜろよ『季節風』」
「なっ!?アスモダイオスだと!?どうしてお前がここに?」
「それは、わたしの文字主だからだ。しかし、暁咲という女性を利用したもの達を見つけるまでは姿を現さないと───」
「そんなもん、コイツらの仕業に決まりだ!!だったらもう、姿を隠しておく必要なんざねぇよ!!オレはオレのやりたいように暴れるだけだぜ♪」
邪剣を手に握り、『大銀河』へ向かっていくアスモダイオス。『大銀河』は雷撃にトライワイトを感じなかったことで、対象を消し去るべく双剣を輝かせた。
しかし、アスモダイオスはそれを待っていましたと、口角を狡賢く上げて自らの世界へ誘う禁術を唱えた。水砂刻と『季節風』もその空間へ誘い、自分が絶対の領域で『大銀河』の力を一時的に無力化させたのである。その空間の名は冥境暗黒亜空域。
宇宙空間へと繋ぐ光が、アスモダイオスの創り出す深い闇によって輝きを失う。それでも、そう長くは続きそうにない。すでに、暗黒空間を展開し終えた時点で顔は余裕を見せているが、肌が見えている箇所からはしんどさを伝える汗が噴き出していた。
「お、おい。大丈夫なのか?」
「大丈夫に見えねぇなら、さっさと済ませろ!!絵馬にオレのトライワイトってのは全部注ぎ込んである。あとは好きなだけぶちかませよ」
心配して駆け寄った『季節風』に絵馬を託し、水砂刻とともに『大銀河』を押さえ込むことに専念するアスモダイオス。
冥境暗黒亜空域は、使用者であるアスモダイオスを無限に強くさせる固有結界のようなものだ。しかし、『大銀河』は力を封じている闇でさえも、宇宙空間に少しずつ放出していたのである。堕性と呼ばれる闇の素となっているものを、直接奪い取られている。体内の水分を暑さに持っていかれて、いつも以上に早くに脱水が起きると言った方が想像に難くないだろう。
この空間を維持出来ている間に、『季節風』は閃いた勝利への法則を完成させるべく意識を集中していく。文字版には、生気がないためアスモダイオスの空間で不快感や不調を起こすことはない。そのため、トライワイトを一点に集中させる精神統一にも干渉しない。
「春────」
季節を呟くと、右耳のピアスが春を彩るピンク色の明かりを灯す。
「夏────」
次いで、左耳のピアスに夏色のアクアブルーが灯る。
「秋────」
カラフルだった髪飾りの色が秋を思わせるオレンジに。
「冬────」
片側に結んでいた髪の毛が解け、雪色の髪へと色を変えていく。
時を同じくして、アスモダイオスの結界が解ける。跪いて肩で息をしながら、『季節風』に向かって「オーバーワードライブ Fin!!」と叫んだ。
大声聞きつけ、これからよからぬ事が起きようとしていることに気が付いた『大銀河』は、空高く翔び上がった『季節風』を目で追った。見上げた夜空に一筋の星が走る。
「四季彩、爆来ッ!!この一撃を持って、我が幕引きとさせていただくッッ!!」
季節とは移り変わりゆくもの。一度は死に一巡を迎え生き還る。空へと消える運命である文字版もまた、季節のようなもの。それを特に『季節風』は色濃く引き継いでいるとも言えるであろう。
──序曲から終曲まで奏でる四季ッッッ!!!!
四色、いや七色の螺旋を纏った四季彗星が『大銀河』に降りかかる。衝突と同時に虹の波紋を天空に轟かせ、双剣とぶつかり合う。
管理役として呼ばれた文字版には、それぞれ何かしらの役目があって選ばれる。大半は大会の運営として、ルール違反がないことを判定する立場に置かれる。しかし、この異例であれば違う。
そして、彼女に課せられた指名は不正に誕生させられた偽ものの文字版を、星へと還すことであった。ただそれだけである。
双剣は亀裂を走らせて、粉々に砕け散っていく。そこまでで『季節風』の一撃も止み、クルクルと体を回転させながら地に向かって無気力に落ちていった。足先から消滅が始まり、マテリアルスペースへ帰還するその直後目を見開いた。同時に、文字主であったアスモダイオスも同じ言葉を紡いだ。
「「水砂刻っ!!決めろっっっっ!!!!」」
「はぁぁぁぁぁ、ぜぇぇぇいやぁぁぁぁぁ!!!!!!」
彗星となって空高く消えた『季節風』。それを目で追っていた『大銀河』には、水砂刻が頭に入っていなかった。宇宙空間へと繋ぐ摩訶不思議な力を持つ角は、たった今砕かれた。それはつまり、トライワイトを持たない者の攻撃も有効となったことを意味していた。
水砂刻が投げ放った槍は、『大銀河』の額にある文字版を見事穿いてみせた。断末魔を上げて崩れ落ちていく、『大銀河』は退去した『季節風』同様に消滅していく。しかし、正規の文字版ではないため消滅後はもう二度と、姿を現すことはないのである。
まさに、誰の記憶からも忘れ去られた存在になることが確定している。深手を負ったアスモダイオスが姿を消すなか、消えゆく巨人の中に見た『小宇宙』に向けて静かに言葉を投げかける。
「ありがとう。俺はお前を忘れない」
その一言を添え、黙祷を捧げる水砂刻。
激戦を終え一息つけると思われたその時、大地が揺れ出した。そう、ゲームクラッシュと呼ばれる災厄が起こってしまったのだ。それは同時にアブノーマルと『天中殺』が敗北を、喫したことを告げる悲しきサイレンでもあった───。
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