意味のないスピンオフな話

韋虹姫 響華

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クロスオーバーな話〜意味ない × トライワイト篇〜

ルートサイド

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 WORD参加者への攻撃が本格的に始まっていた。
 これに対し、管理役に抜擢されたメンバーも対策するべく、チームを編成して迎え討つ。『黒蝙蝠』と『毒蜘蛛』の攻撃を受けていたトレードと『発明家』のもとに到着するチームがあった。

「やってますねやってますね……。おっ?あのデカパイにムカつく筋肉の付き方は、何処かで……。え?あれって『探検家』じゃねぇですかね、はい」
「馬鹿やってないでいくぞ『着火材』。芳佳、指示は任せるっ!!」

 駆け付けた『騎士道』と『着火材』は、謎の情報提供者《偽S》と名乗るものから、襲撃場所を特定することに成功していた。

 見事二体の撃墜を果たし、トレード達と話し合いに運ぶことになる。

「この『着火材』、このでけぇ女とだけは手を組みたくないですね、はい」
「んなもん、こっちから願い下げだぜ!『発明家』帰ろうぜ」
「でも気を付けてねトレードさん、敵は他にも刺客を送り込んでくるかもだから」

 茅野の言葉が正解となって、目の前で起こる瞬間であった。
 突然一筋の閃光が『着火材』を貫いた。「正解……」という言葉と同時にその場に倒れ伏してしまう。「やられたぁ、です……はい」と言い残して消滅する『着火材』の両隣にいた茅野と実までも、襲い来る光の壁によってダメージを受けていた。
 煙が立つ中に浮かび上がった人影に向かって、『騎士道』が剣を取り向かっていった。火花散る鍔迫り合い、しかし相手が剣を防いでいるのはスカイブルーカラーの四角い物体であった。

「「「ルーティン!?」」」
「解析完了。『騎士道』、ランクB-の文字版サクリフォト。進化の兆しを持っている故、油断大敵……か」
「なん、だと!?コイツ、オレのことを知っているのか?───ぐあっ!?」

 驚いている『騎士道』の不意を突き、デジタルビットを当てる。吹き飛んだ先で、球技のラリーを続けるように胴上げされている『騎士道』を叩き付け、一瞬で監督役は全員戦闘不能となった。

 倒れている面々を見下ろしているルーティン。
 その背後にトレードと『発明家』が、両サイドから攻撃を仕掛ける。トレードの攻撃を躱し、『発明家』にはデジタルビットを仕向けタイマンの状況を作って戦いに持ち込む。
 大振りなトレードの攻撃を避けるは容易く、避けて通り過ぎるすれ違い様に一撃腹部に叩き込んで、怯んだところに回し蹴りを入れる。しかし、トレードも簡単には通すことなく首で敢えて受けて、挟む込むことで逃げる場を奪った。
 この距離ならば避けきれないであろう角度で、鎌を切り込もうとした時に脚元に『発明家』が飛ばされてくる。足を取られたことで形成は逆転、踏みつける脚をお互いの邪魔にならないように避けて立ち上がる。

「このヤロウ、強ぇな」
「ああ、でも妙だ。コイツ、前よりも強い」
「隙ありすぎだよ、2人とも」
「「────ッ!?」」

 間に立って、ビットを急所に送り込む。避けて叩き割り、ルーティンに畳みかける『発明家』。
 体制を崩したルーティンに、スタンプを打ち込むがバリアで防がれる。大地を叩き、地割れを起こして『発明家』をシーソーで打ち上げられたように、真上に向かって投げ飛ばす。
 追撃をかけてきていたトレードに、裏拳で頭を殴りつけ水平蹴りで再び足を取り、拳で地面を叩き割る。明らかに身体強化のプログラムバフを盛っている、インファイターなルーティンの戦術を前に追い詰められる。

 やがて、限界を迎えた『発明家』を絵馬にしまい一人で戦い続けたトレード。しかし、無限の再生力と文字版サクリフォトすらも圧倒するルーティンを前に、為す術なく遂に倒されてしまった。

「ど、どうして……あなたが復活したの?」
「さぁね。でも、これだけは言える。ボクとレッドヒール、『召喚師』という文字版サクリフォトが召喚した使い魔であったが、今は違うよ。アンリードとして、もう一度君達に挑戦させて貰おうと思って分離の処置を施した。だけど……」

 いざ、戦ってみればこの結果。
 あの時、どうしてこんなものを相手に負けたのかと、当時の敗因を振り返ることが今の目的になってしまうほどには退屈を感じていた。
 ルーティンにとっては、WORDの不正開催やそれを利用して異次元異世界の力を併用した、新しい存在となり得たと喜んでいる『異文明』達など、どうでもいいものでしかなかった。

 なんなら、この後彼等と全面戦争をする方が楽しいかもしれないと、興味の対象に加えたところで手をかざしデジタルビットを束ね始める。形状を変えて、巨大なレーザー砲を作り上げた。
 トドメの一撃にと、レーザーを倒れている一同に向けて発射した。その間に割り込んでくる気配を感じ、眉間を曇らせる。ルーティンはそのまま、静かに拍手で賞賛する。

「凄いね……。そんな眠そうな顔して、やっていることはなかなかに精巧じゃないか?」
「…………トレードって言ったよね?『発明家』は……、僕の娘は無事かい?」

 レーザーを滑り込みで現れて、弾き返した美少年。目の前で起きた現象に驚いている茅野達を置き去りにして、トレードに質問していた。絵馬を見せて無事であると伝える。
 背後に回ってきていたルーティンが、後頭部を目掛けて形成したメイスを叩きつける。ガチンッと金属音が発する。『天才肌』は《!》の頬に手を当てながら、後ろを振り返ってルーティンを睨みつける。

「君がアンリードか?実に興味深いな……、解読させてくれないかな♪」
「!?避けずに受けた?こちらも再分析……文字版サクリフォトから検知されるはずのない波長……、感情に近いものを確認……」

 脅威、ではなく驚異。ルーティンの中に『天才肌』から伝わってくる、解読不能な精神構造がノイズを生みたじろいだ。
 互いに押し飛ばし距離を取り、ヘンテコなバイザーを装着する『天才肌』。ジーニアスアナライザーと名付けられた、対象を高速分析する装置でルーティンを───、アンリードを分析する。

 演算処理能力ならば、ルーティンも負けてはいない。解析の阻害に立てられたオペレーションで、ビットによる妨害工作を開始する。防具すらまともに付けてすらいない身体で、走り抜けて避ける。直撃コースを取ってきたパネルによじ登り、接近を試みる。
 動く足場を攻略する容量で、ルーティンへ拳を繰り出す。避けろと言っているようなものである一撃は、当然かすりもしない。だが、それは『天才肌』の読み通りであった。
 地面に直撃したと同時に電磁パルスが発生し、逃げゆくルーティンを捕らえる。空かさず、ベーゴマのように体を大回転させて勢いをつけた裏拳が、防御に転じたバリアビットをも穿きダメージを与えた。

「分析、終了……。アンリードへの理解……、履修完了」
「解読完了。『天才肌』、文字版サクリフォトでは珍しく感情的な一面を持つ。故に行動をパターン化させることは───」
「喋ってる余裕……あるの?」

 顔面に膝が飛ぶ。
 吹き飛んだ先に回り込み、空高く蹴りあげる。浮き上がった中心に肘を突き、地面へ叩き付ける。そんなものでは、アンリードには無傷と言ってもいいだろう。
 本来であれば、そうなるはずであった───。治らない。『天才肌』から受けた攻撃による外傷、その一切が修復を開始出来ない。それどころか、痛みを継続して与え続けている感触───、これは、

「感電!?」
「うん……。所詮は、腐敗しない……だけ、の……肉の器……」
「そう来たか。やるな、キミ」
「そういう君も……、『着火材』と、『騎士道』を……、負かす、だけの事は…………ある……」

 含まれていない『発明家』のことを訊ねる。
 ルーティンの質問に、行動で返答するかのように電光石火の雷霆を巻き起こして、戦闘を再開する。
 読み合いと読み合い。裏の裏の裏、さらにその裏さえも読み合った打ち合いは、何度もスキャニングフィールドを震撼させる。最早、周りにいる者への考慮など、そこには微塵もない。

 カキィィンと爆音を掻き鳴らし、クロスカウンターが生じる。両者、顔面を殴打し仰け反る。まるで鏡合わせのように、起き上がるタイミングも次の一手を出すまでの予備動作まで、タイミングがまったく一緒の戦い。
 この戦闘に終わりなど、訪れないのかもしれないと誰もが思った。すると、茅野の絵馬に通知が飛んできた。内容を確認して間もなくして、戦局は雌雄を決する事になった。

「───ッ!?」
「こんな勝ち方、したくはなかったけど……、仕方ないか……」

 一瞬の出来事だった。
 強力な電磁場が発生し、文字版サクリフォトの動きが止まった。それは、ルーティンがはなったものではない。それでも、『天才肌』の優勢を崩しルーティンがトドメを刺すには、充分すぎる時間があった。
 腹部を貫かれ、口からエーテル体を吐き出している『天才肌』。何が起きたのか分からなかったことを、《!》と《?》の頬にエーテル体の着いた手で触れていることが、痛々しく物語っていた。

『父ちゃんッ!!??』
「あっ、おい!出るなっ!おめぇはまだ……ぐっ…………」

 トレードの制止も聞かずに、倒れゆく『天才肌』を抱き支える『発明家』。
 出てきたのなら、消すと殺気を込めたビットを集結させたレーザー砲を放つ。最後の力を振り絞って、娘にだけは当てさせないと突貫で作成したフィールドバリアを形成する。
 球体状に包まれたバリア毎、遠くまで吹き飛ばされる二体。レーザーが消えたと同時に、スキャニングフィールドが解かれる。踵を返して、その場から離脱する前にルーティンは意識のある茅野とトレードに向け、言葉を発する。

「これで管理役の文字版サクリフォトは全滅。彼等はこのWORDを終わらせ、次の世界へ飛び立つ準備を始める。ボクとレッドヒールは、そんな野望ともこの世界ともオサラバさせてもらうとしようかな」

 止めに来るな。止めても無駄だ。だから、『異文明』と『召喚師』の野望を撃ち砕く事に専念し、アンリードとは関わるな。そう言いたげな目を向けたのが、彼の最後の姿であった。

 言葉を失ったまま、その場に凍りつく一同。
 やがて、トレードは絵馬に書かれた名前を見て、『発明家』の無事を確認するために走り出して二体の消えた方へ、姿を消したのであった。


 □■□■□■□■□


───変な気分だ。

───娘と言ったって、データで生み出した文字版存在

───『天才肌』の閃きと『探検家』の果敢さ、その両方を取って付けた名前。

「父ちゃん、父ちゃん!しっかりしてくれよ!!」
「…………。は、……つめ……い、か…………、よか、……った……。無事、か……」

 敵の罠。偽装で組まれたWORDを無効にするため、ゲームをクラッシュさせたのだと直ぐに理解した。
 それによって、ゲームを運営するための存在は不要のものとなる。すなわち、管理役に任命された文字版サクリフォトは持ち場を失い、座に組まれているマテリアルスペースへの強制帰還が作動したのだ。
 生まれた隙でこのザマだ。守り切れたのが、唯一の救いだろうか。しかし、このままでは引き下がれないと血潮に近い何かが、かくなる上の考えを与え行動する力を与えてくれる。

「これ、を……お前に…………。父さんに、変わって……あい…………つ、を……倒、してほ、し……いん……だ…………」
「嫌だよ!無理だよ!アタシ、父ちゃんのように強くないよ!!あんなヤツに勝てっこないよ……っ!!」

 いつまで、甘え上手でいるつもりだ。
 お前はもう───。

───『天才肌父さん』も『探検家母さん』も越えている。

───当たり前だろ……。だって、お前には…………。

 視界が暗い。もう形を保つこともできそうにない。
 内包していたトライワイトも底を尽きた。『探検家』に似た人間よ。この自信を失った娘をよろしく頼むよ。そして、一度は打倒した相手なのだろう。
 なら、楽勝なんじゃないか。一緒に勝利を勝ち取ってくれ。彼らを此処へ呼び戻した者達の野望とともに、思い出に返してやってくれ。

「任せな。おめぇの娘は絶てぇにルーティンあいつに勝てる。あたいらで勝って見せるさ」

 嗚呼───。
 時折、彼女が見せてくれる頼りになる言葉が聞こえた気がするよ。さよなら、愛しき愛娘───、『発明家』。結果は、戻って来たら聞かせてくれ───。

「父ちゃぁぁーーーんっっ!!!!」

 今少女の手の中で、一つの想いを形にした存在が消滅した。

 しばらくの間、大号泣する彼女に同情するかのように空もまた、大量の涙を大地に降り注がせていた───。
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