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EXTRA FILM 3rd ※三章の幕間
閉ざした想い ★☆☆
しおりを挟む逃げてきてしまった。
見られたくなかったから。この穢れた体で、向き合うのが恐い。あんなにボロボロな状態だったのに、それでも声をかけてくれた。
「お姉ちゃん?大丈夫?顔色悪いよ?」
「あ……っ、いえ、その…………っ」
通りのベンチに座って、顔を落としていた麗由に声をかける少女。
少女はチカと名乗り、麗由と隣りに座るとまじまじと顔を見つめた。続いて服装、靴、見上げて髪の毛の順に視線を向けていく。
「お姉ちゃん、麗由お姉ちゃんにそっくりだね。うちのウェイトレスドレスを着せていた、金髪のお姉ちゃんなんだけどね────」
「────ッ!?」
麗由はチカの言っている女性とは、意識を閉ざしていた間のネクベトであることを察した。
実は、麗由も深層意識下ではあるが、ネクベトがこの親子のもとで何をしていたか、少しだけ記憶に残っていたのである。チカの純粋で真っ直ぐな話を聞き、ますます暗い顔になってしまった。
辰上を避けて、とりあえず記憶に新しかったこの場所へ来てしまった。あれから、三週間くらいは経過しているが辰上どころか噂観測課の捜索隊も、遭遇することなく街の住人のように留まっていた。
「見て見て♪あれ、チカんちの喫茶店。お母さんとチカだけでお店回すの大変で、アルバイト?を募集しようって言ってるんだ。お姉ちゃんさえよければ、うち来ない?」
「あ……っ、あの……それは…………」
戸惑う麗由。
それもそのはずだ。何を隠そう、似てる似てると言っている《麗由》と、今こうしてチカと話している麗由は同一人物も同然なのだから。このまま、チカの誘いに乗ってしまえば、喫茶店に戻ってきてしまったことにもなる。
落ち着かない様子を見せるも、何とか考えさせてほしいと伝える麗由。すると、チカはそんな麗由の様子をみて、純粋な疑問をぶつけた。その言葉は、余りにも直球的で麗由の心に芽生えた後ろめたさを逆撫でするものであった。
「お姉ちゃん、好きな人と何かあったの?お母さんがお父さんと喧嘩した後と、同じ顔してる」
「っ!?え、その……っ、わたくしは…………、その方を────」
「あぁ!!いっけな~~いっ!!そろそろ、夕飯時のお客さん達来ちゃう。お母さん1人にしちゃうと大変だから、チカもう行くね♪バイバーイ、また会えたらお話ししようね」
チカは足早に喫茶店へと姿を消した。
やがて、ベンチに独り座る麗由も宿へと戻り、部屋のベッドに身体を沈ませる。
現実の光を引き付けない眼で、床をぼんやりの眺める。まるで、魂の抜かれた人間あるいは、寿命間近の夏虫のようにピクりともせず死を待っているかのように静かに倒れ込んでいた。
ふと、脳裏に電撃が走ったようなフラッシュが起こると、胸の内より声が響いてくる。これは、ネクベトの声である。
『せっかく表に出てきたと思いきや、まだ塞ぎ込んでいたのですね』
「何?これ……」
『ご安心を♪わたしは、神木原 麗由。あなたの内より怪異の力、その断片を貸していたネクベトと申します』
「そういうことではなくてですね……」
自分の体内から声がする。
それもはっきりと、自分の声ではない声で語りかけてくる。麗由はその奇怪な状況に、驚きと動揺をしていた。これまで怪異を幾度となく、倒してきた人間が何を言うのかとネクベトが諭すも、これまた根暗なメイドへと戻ってしまった麗由。
見かねたネクベトは、術式を立て麗由の記憶にあるものを流し込んだ。それは、辰上とネクベトの肌を重ねた日の記憶であった。目の前にある訳ではなく、視界を遮って脳内映像が再生されることに麗由は自身の頭を掻きむしり始めた。
凡そ幻覚作用で、幻影に悩ませている薬物依存状態ともとれる挙動を起こし、ベッドを転げ落ちて逃げ惑う麗由。普段、戦闘でも凛としていた彼女からは想像もつかない、奇声の狂喜乱舞。頭から流れてくる光景を止めるために、何度も壁に頭を打ち付ける。
同時にネクベトが呼び起こしている記憶に連鎖して、忌まわしき記憶が刷り込みしてくる。発狂して、半開きになった口からヨダレを垂らし、恐怖的興奮を起こす麗由。
メイド服を破り捨てるように脱いで、シャワールームに駆け込む。落ち着かない手で、バルブを回しお湯に変わることを確認せずに秘裂にあてがう。過呼吸起こしながら、胎内の洗浄をはじめる。
『あらあら?そこを今洗っても、綺麗にはなりませんよ。それにもともと、綺麗な状態に戻してますから、返って傷が着いちゃいますよ?』
「止めて、止めて、止めてっっ!!!!龍生様と貴女の秘め事など、観たくもありませんっっ!!!!」
『ならどうして、あの時止めなかったのですか?』
「へ?」
『観ていたんですよね?奥にずっと隠れながら、あなたと同じ別の肉欲に染まるのを……?辰上 龍生は、あなたの身体であると知って────、わたしでいっぱい果てましたよ?とはいえ────』
あれはアスモダイオスに注がれた、堕性を完全に浄化することが目的であったと補足しつつも、麗由のトラウマを誘発させてしまったことに謝罪をして、要求どおり記憶の再生を止めた。
すると、麗由の発狂はエスカレートする。今度は、自身の見に受けた調教の記憶だけが残り、その身に施された性的開発の恐怖でその場にしゃがみ込んでしまった。これにはネクベトも、やれやれと両肩を上げて麗由の記憶に介入する。
「めんどくさい女の子ですね♪まぁ、乙女はそれくらい繊細な方が、可愛げがありますから♪神木原 麗由、もっと性に奔放になりなさい」
なんと、ネクベトが表に出て体の所有権を無理矢理にでも交換した。
そしてシャワーを止め、身体を拭き服も着ないで麗由に所有権を返してベッドに寝かせた。
『いいですか?今は何もかも忘れなさい。そのために、もう一度わたしと辰上 龍生の記憶を再生いたします。止められたのに止められなかった。それが悔しいのなら、辰上 龍生への愛だけで自分を昂らせるのです。そして、本当の自分をさらけ出せるように解放しなさい』
「本当の……わたくし?」
麗由はネクベトの言葉に自問自答するように、復唱を始めていた。意識はその答えを出すために、この場にはない。しかし、手が秘裂に向かって伸びる。
宣言どおり、再び脳裏に過ぎる辰上の乱れた姿。相手は、自分の体を使って行為に及んでいるネクベト。その時、辰上が見させられた麗由の調教された記憶。それに堕性が合わさって、凶悪になった怒張で麗由のカラダをめちゃくちゃにしている光景。
麗由の全身は熱くなる。汗、涙、血、愛液。そのすべてがそれを覚えている。例え、その場にいて感じていたのがネクベトであっても、その快楽が刻まれたのは、他ならぬ麗由の身体。だからこそ、麗由は奥底ではまだ求めているのだ。
「居たい……っ。お傍に……っ」
『違います』
「肌に触れていたい……っ」
『それも』
「1つになりたい……っ」
『嘘を装いにしないで』
「「「龍生様をわたくしのものにしたいっっっ!!!!!!」」」
腰を浮かせて、頂点に達し高揚する渦に声を漏らさないようふんばり、内より出てし慾望の汁を噴き出す。
それでも、愛撫する自身の手を緩めない。グチュグチュと、すでに発情は子作りの用意まで済ませている蜜穴。卑猥な音をさらに掻き立て、心の中に沈めていた本心を煩悩のままに口して、更なる絶頂を向かえる。
「龍生様はわたくしだけのものですっっ!!だから、わたくしを────っ、麗由をもっと見て、わたくしをもっと使ってくださいっっ!!堕性だって、この身で受けます。こんな穢れたカラダを上書きして欲しいッッッ!!!!」
全身から、汁が迸る。
とっくに体の水分は出し尽くしているであろう、体液噴出を披露してだらんと糸が切れたようにへたり込む麗由。
『最初からそう言えばいいのですよ♪辰上 龍生、本人にもそう言っちゃいましょうっっ///』
それは出来ないと、麗由は心の中で反論し意識を闇に閉ざした。
ネクベトが再生術で、体内の水分量を適量に調整してくれたおかげで、無事に目を覚ますことのできた麗由。
術式で新調したメイド服に、目を輝かせ関心しながらも着替えを済ませて街へ出る。向かった先は、例の喫茶店だ。アルバイトの件を正式に断わるために、足を運ぶ。すると、近くに気配を感じて視線を向ける。
気配の出処は、なんと向かおうとしていた喫茶店であった。ネクベトが、身に覚えのある感じがすると麗由に警告する。喫茶店へと入店し、気配が濃い人の手を掴む。
「はぁ?なんですか?あ、こりゃあまた可愛いメイドさんだぁ。店主、新しいバイトさんかい?」
「あっ、いえ……その……っ」
「あ、お姉ちゃん。来たんだ。んでもその顔、お断りの挨拶かな?」
チカが麗由に近付いてそう言うと、麗由は頷いた。
そして、腕を掴まれた老人がどさくさに紛れて、麗由の臀部を触る。すると、この感覚は前のメイドと同じだと口走りそうになった。そこを口を押さえ、外へと連れ出す麗由。
突然のことで店内は、一瞬だけザワついた。
麗由は連れ出した老人をある程度、人気のいないところまで連れていき離れる。
「はぁ、はぁ、酷いな嬢ちゃん。おれとえっちなことしたいからって、こんな怪しげなところまで連れて来るなんてさ……」
「ネクベト様。この方は、人に戻せますか?」
『無理です♪だって、人由来の怪異ではないので浄化するしかないでぇ~~すっ♪』
いつの間にか、怪異との戦闘の相棒のように会話する麗由とネクベト。
ネクベトの一言を聞いて安心した麗由は、小刀を取り出して怪異の浄化はじめた。
「冥土への介錯、わたくしが致します……」
『くぅぅ~~~っ♪生で聴くの久ぶりですぅぅ♪』
麗由にしか、聴こえていないことが悔やまれるなか、怪異の浄化が完了する。
そして、喫茶店に戻りこの街を出ることを伝えた麗由は、スマホを取り出して噂観測課極地第2課へ連絡を取った。まずは、本来調査のペアを組むことになっていた、ゴーマのもとへ向かうことにする麗由。
(龍生様……。わたくしは勇気がありません。自信もありません。ですので、ワガママを承知で聞いてほしいです────わたくしの本当の想いを…………)
心の中に持った、新たな決意を胸に麗由は再び歩き出した。
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